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全国労働衛生週間に寄せて 【新見労働基準監督署】

全国労働衛生週間の準備間中である平成27915日に一般社団法人岡山県労働基準協会新見支部主催の衛生管理講習会において、お話をする機会を得て、全国労働衛生週間の取組、労働衛生の現況、ストレスチェック制度、受動喫煙の防止対策、安全衛生優良企業認定制度などについてお話をして参りましたが、私がその中で一番申し上げたかったことは、心の健康についてです。お話しました内容を改めて以下に記しましたので、ご笑覧ください。

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                                              ☆☆☆心の健康☆☆☆ 

心の健康については、専門的知識を要し、難しい部分がありまして、「うつ病は、心の風邪であり、誰でもなり得る」、「いつもと様子が違うと要注意」、「早く専門医に診てもらうように指示する」、「頑張れ、と励まさない」くらいの知識しか持ち合わせず、対応に及び腰な方々も多いのではないでしょうか。

有名な落語家が「高座に上がるのが怖い」と嘆き苦しんだときに、師匠さんは「私にはそういう経験がない。なったことがないさかい、どないもいうてやりようがない」と述べられたそうです。皆さま方の対応の多くは、似たようなものだと思います。その落語家が存命であれば、今頃はどんな名人芸を披露して楽しませてもらえたことかと残念でなりません。

この121日から始まるストレスチェック制度は、労働者自身がストレスに気づき、メンタルヘルス不調となることを未然に防止する「一次予防」を目的としています。労働者自身がストレスに気づき、これに対処するための知識、方法を身につけ、それを実施していくことが重要です。私は、そのための何か参考になるものがあればといろいろな本を読んでみました。その中からいくつかを紹介いたします。

精神科医といえば、香山リカさんが有名ですが、彼女の著書に『本を読むってけっこういいかも』(七つ森書館)がありました。

「心の病は、心のとても深いところが傷ついて起きるのです」といわれていたが、今では「心の病は脳の傷、脳の故障なのです」といった言い方のほうが好まれている。

ひどいトラウマ体験をした人たちの脳の様子をMRIの装置で検査したところ、「海馬」と呼ばれる記憶に関係した部分に変形や萎縮がみられるという医学的研究がある。

「うつ状態は、脳のこの部分でセトロニンの流れが悪くなって起こるのです」といわれる。

原因は脳といわれるとそれだけで「私のせい」という罪悪感からも「変えるのはあなた次第」というプレッシャーからも、かなり解放される。

一方、クリストファー・レーン氏が『乱造される心の病』(河出書房新書)の中で、

「上司に呼び出されるとドキドキするんです」、「結婚披露宴で突然、歌を歌えと指名され手足が震えました」 誰でも経験するようなことだが、「それは社会不安障害という脳内化学物質の不均衡で起きる病気です」「(精神分析?)そんなもの不要です、その脳内の異常を是正する良い薬があるのです」

性格や持ち味とされてきたものが、「精神疾患は脳の病気」と考える、と批判している。

香山さんは、「心を解放することが必要で、やっぱり最後に来るのは、脳ではなく心ということになりそうだ。」と締めくくっておられました。

唯物論か、唯心論か、という感じがします。また、心は、いったい身体のどこに存在するのだろう、と考えさせられます。

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次に、経済小説を数多く書かれた城山三郎さん。財界総理と呼ばれた石坂泰三の世界や、国鉄総裁をされた石田禮助の生涯、岡山県の出身では大原孫三郎の生涯などの伝記物も書かれておられ、私もファンの一人ですが、彼の著書に『打たれ強く生きる』(新潮文庫)がありました。その本で、精神科医の山田禎一さんが書かれた『もっとアバウトに生きてみないか』(かんき出版) を紹介し、

「視線を15度上げる」というすすめ  一日に一度は空を見上げるべき

「心が明るくなり、みるみる自信が湧いてくる」し、「全身から無駄な力みを取り去って」「まったく違ったアイデアを教えてくれる」ともいう。

空を見上げることは、浮き世の思いをしばし忘れることでもある。

忘れるというのは、「人間の自己防衛の機能」なのに、現代人は「忘れることを忘れたのではないか」と著者(山田禎一さん)はいう。

城山さんは、「月見は、ひとりで物静かに宇宙に向かう。何かがそこには生まれて来るはずである。」

と論じておられます。

 927日は中秋の名月。空を見上げ、物静かに月を眺めると、浮世の思いを忘れさせてくれて、心が明るくなり、何かが生まれて、掴めるものがあるかもしれません。月に限らず、天の川、流星群など季節ごとに眺める対象はあります。雲を眺めるのもいいです。

常見陽平さんは、『「すり減らない」働き方』(青春出版社)を出されており、

 「睡眠時間が4時間半以下という日が3日以上続くと「うつ」になりやすいといわれている。」

と書かれています。3日程度でもうつになるのかと驚きでもありますが、睡眠時間の確保は、本当に重要です。

「生き抜く は 息抜く」であるという、心に残る言葉がありました。

 ほんの少しをご紹介いたしましたが、本を読んでいると、なるほど!と膝を叩きたくなるような話がたくさん出てきます。

私は、今年度に新見監督署に着任してから、通勤の電車中では本を読んでおります。半年で160冊読めました。本はいろいろな知識や智恵を授けてくれます。皆さま方もシルバーウィークなどには読書をされまして、いよいよ12月から始まるストレスチェック制度に向けて、労働者自身のストレスの気づき、これに対処するための知識、方法などについて会得され、労働者が心の病にならないように、また、心の病になったときには管理者として的確な対応ができますように、さらなるご研鑽をなさっていただきまして、全国労働衛生週間が有意義なものとなられますように、また、ストレスチェック制度の活用を進めていただきますように期待いたしております。

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                       新見労働基準監督署長 小松原邦正 

 

⇒ 本年12月からストレスチェック制度が始まります(岡山労働局HP)

この記事に関するお問い合わせ先

労働基準部 健康安全課 TEL : 086-225-2013

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