事業主は、従業員の募集・採用を行う際に、求職者に対して労働条件を明示する義務があります。
その具体的なルールについては、平成29年に改正された職業安定法とその政省令・告示により、平成30年1月1日から下記の※の項目が追加されました。詳細は、「労働者を募集する企業の皆様へ」(職業安定法改正パンフレット)をご覧ください。
また、令和6年4月より★の項目が追加されます。詳細は「令和6年4月より、職業紹介を行う場合等に明示すべき事項が追加されます」をご覧ください。
(1) | 労働条件を明示する時期 | ||
1 |
労働条件は、ホームページ・求人広告などで募集情報を掲載したり、ハローワークへ求人申し込みをする際に、求職者に対して明示する必要があります(職業安定法第5条の3第2項)
|
||
---|---|---|---|
2 |
当初明示した労働条件が変更される場合は、速やかに その変更内容について明示する必要があります(職業安定法第5条の3第3項) ※ | ||
3 |
従業員の採用とは、その従業員と労働契約を結ぶことであり、 「労働条件通知書」等により、改めて本人に労働条件を明示する必要があります(労働基準法第15条) | ||
|
|||
(2) | 明示すべき労働条件の項目 | ||
・ |
労働者の求人・募集を行う事業主が、求職者等に対して最低限明示すべき労働条件の項目は次のとおりです。 |
||
・ | なお、当初の段階で求人票のスペースが足りないなどやむをえない場合は「詳細は面談の時にお伝えします」などとして、労働条件の一部を記載することも可能ですが、初回面談の際など最初に求職者と接触する時点までにはすべてを明示する必要があります。 | ||
・ |
求職者に対して明示した労働条件の内容は、実際の労働条件と相違がないようにしなければなりません。 |
<最低限明示すべき労働条件> (※の項目がH30.1追加項目 ★の項目がR6.4追加項目) |
|
・ |
業務内容 |
・ |
契約期間 |
・ |
試用期間の有無、試用期間がある場合はその期間、期間中の労働条件 ※ |
・ |
就業場所 |
・ | 就業時間・休憩時間・休日・時間外労働 |
・ | 裁量労働制を採用する場合はその旨 ※ |
・ | 賃金 |
・ | 固定残業代制を採用する場合、固定残業代を除く基本給の額、固定残業時間、固定残業時間を超えた場合は追加で給与を支払う旨 ※ |
・ | 加入保険 |
・ | 労働者を雇用(採用)しようとする者の氏名、名称 ※ |
・ | 派遣労働者として雇用(採用)する場合はその旨 ※ |
・ | 従事すべき業務の変更の範囲 ★ |
・ | 就業の場所の変更の範囲 ★ |
・ | 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は更新回数の上限を含む) ★ |
(3) | 労働条件の明示のポイント | ||
・ |
明示する労働条件は、虚偽又は誇大な内容としてはなりません。 | ||
---|---|---|---|
・ | 試用期間がある場合、その期間中の労働条件を明示しなければなりません。 | ||
・ | 労働条件の水準、範囲等を可能な限り限定するよう配慮が必要です。 | ||
・ | 労働条件は、職場環境を含め可能な限り具体的かつ詳細に明示するよう配慮が必要です。 | ||
(4) | 労働条件の明示義務に違反した場合 | ||
・ |
虚偽求人を申し込むなど労働条件の明示義務に違反した事業主などに対しては、ハローワークが、指導・助言、是正勧告・公表、報告徴収・立入検査を行うことがあります。 |
||
・ |
特に、事業主がハローワーク等に対して虚偽求人を申し込んだ場合、6カ月以下又は30万円以下の罰金を課せられることがあります。 |
■ 【ルール2】公正な採用選考(就職差別の禁止)
従業員の採用選考に当たっては、応募者の基本的人権を尊重し、能力と適性に基づく、就職差別のない公正な取り扱いを行う必要があります。
・「公正採用人権啓発推進員」の選任
公正採用選考を行うためには、人事担当者だけでなく、経営トップから各職場の従業員まで、応募者の人権問題に正しい理解を持つことが重要です。そのための事業所内の取り組みの推進役として、原則として従業員80人以上の事業所では、「公正採用人権啓発推進員」の選任をしていただいています。
*「公正採用選考人権啓発推進員選任状況報告書」様式と提出先
■ 【ルール3】募集・採用における年齢差別禁止
事業主は労働者の募集及び採用において、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならず、年齢制限は原則禁止されています。(雇用対策法第10条)
■ 【ルール4】募集・採用における男女差別禁止
事業主は、労働者の募集及び採用において、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならず、男女差別は禁止されています。(男女雇用機会均等法第5条)
(1) 募集・採用における男女差別禁止・「募集・採用についての性別を理由とする差別の禁止」(パンフレット抜粋)
(2) コース別雇用管理総合職・一般職などに分けて雇用管理を行う「コース別雇用管理」は、男女いずれかのみを一定のコースのみで採用するなど、運用の仕方によっては法違反となりますのでご注意ください。
(3) ポジティブアクション男女雇用機会均等法第8条においては、男女の雇用機会均等・待遇確保の支障となる事情を改善するための措置(「男女差別禁止指針」第2の14に掲げるポジティブ・アクション)については、男女差別に当たらないとされています。
・「女性管理職の中途採用を行いやすくなりました」(リーフレット)
例えば、各役職に占める女性の割合が4割を下回っている場合、女性のみの採用が認められます。
(4) 間接差別の禁止性別以外の事由を要件とする措置であっても、男女いずれかに相当程度の不利益を与えるものを合理的な理由なく講ずることは、「間接差別」として男女雇用機会均等法第7条により禁止されています。
■ 新卒者の募集・採用の手続
■ 中途採用者の募集・採用の手続
(1)ハローワークにおける求人申込の流れ
(3)「年齢にかかわりない転職・再就職者の受入れ促進のための指針」・「転職者の活躍に注目が集まっています!」(リーフレット)若年労働力人口が減少する中で、今後新規学卒者の採用だけでなく、さまざまな職歴をもった中途採用者(転職者)を年齢にかかわりなく採用して戦力化していかなければ、労働力を確保できなくなってきます。このような転職者を戦力化するためのガイドライン(転職指針)が定められています。
(4)中途採用を拡大した場合の助成措置中途採用を拡大(中途採用率の向上又は45歳以上を初めて雇用)した場合に助成を受けられます。東京圏から移住者を雇い入れた場合に助成を受けられます。(5)制約条件のある労働者を採用する場合の助成措置等職業経験の浅い労働者、フリーター、高齢者、障害者など制約条件のある労働者を採用する場合には、採用や企業内訓練に対する助成措置が設けられています。