就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例

  

面接者の中には、面接という雰囲気からくる緊張を少しでも和らげたいということから、次に示すような質問をする場合があります。
しかし、受験者としては、下記の「なぜこのような質問はいけないのか」に示すように、ひとつの質問からかえって緊張したり、気持ちが沈んだりして、それが態度や返答に出てしまいます。ひいては、そのことが採否の判断基準に大きな影響を与えてしまうことにもつながります。

また、企業の方からは質問しないのに、他の質問に関連して、受験生の方から「家族の職業」「親の勤務先」などについて話し出すケースがあります。このようなときは、趣旨を応募者に説明し、これらのことについて話す必要はないことを一言伝えてください。

具体的な質問例を挙げて、説明します。

1. 本籍に関する質問
● あなたの本籍地はどこですか。
● あなたのお父さんやお母さんの出身地はどこですか。
● 生まれてから、ずっと現住所に住んでいるのですか。
● ここに来るまでどこにいましたか。
 
◆ なぜこのような質問はいけないのか? ◆

本籍を質問することは、結果的に就職差別につながるおそれがあり、公正な採用選考から同和関係者や在日韓国・朝鮮人の人たちを排除してしまうことになりかねません。

2. 住居とその環境に関する質問
● ○○町の△△はどのへんですか。
● あなたの住んでいる地域は、どんな環境ですか。
● あなたのおうちは国道○○号線(○○駅)のどちら側ですか。
● あなたの自宅付近の略図を書いてください。
● 家の付近の目印となるのは何ですか。

3. 家族構成や家族の職業・地位・収入に関する質問
● あなたのお父さんは、どこの会社に勤めていますか。また役職は何ですか。
● あなたの家の家業は何ですか。
● あなたの家族の職業を言ってください。
● あなたの家族の収入はどれくらいですか。
● あなたの両親は共働きですか。
● あなたの学費は誰が出しましたか。
● あなたの家庭はどんな雰囲気ですか。
● あなたは転校の経験がありますか。
● お父さん(お母さん)がいないようですが、どうしたのですか。
● お父さん(お母さん)は病死ですか。死因(病名)は何ですか。
● お父さんが義父となっていますが、詳しく話してください。

4. 資産に関する質問
● あなたの住んでいる家は一戸建てですか。
● あなたの住んでいる家や土地は持ち家ですか、借家ですか。
● あなたの家の不動産(田畑、山林、土地)はどれくらいありますか。
 
◆ なぜこのような質問はいけないのか? ◆

応募者の適性・能力を中心とした選考を行うのではなく、本人の責任でないことがらで判断しようとしていることです。このことは、前近代的な身分制により形成された部落差別により、教育や就職の機会均等の権利を侵害されてきた人たちを排除することにもつながるものです。住宅環境や家庭環境の状況を聞くことは、地域の生活水準等を判断することになり、主観的判断に属する事柄です。これらは本人の努力によって解決できない問題を採否決定の基準とすることになり、そこに予断と偏見が働くおそれがあります。

5. 思想・信条、宗教、尊敬する人物、支持政党に関する質問
● あなたの信条としている言葉は何ですか。
● 学生運動をどう思いますか。
● 家の宗教は何ですか。何宗ですか。
● あなたの家族は、何を信仰していますか。
● あなたは、神や仏を信じる方ですか。
● あなたの家庭は、何党を支持していますか。
● 労働組合をどう思いますか。
● 政治や政党に関心がありますか。
● 尊敬する人物を言ってください。
● あなたは、自分の生き方についてどう考えていますか。
● あなたは、今の社会をどう思いますか。
● 将来、どんな人になりたいと思いますか。
● あなたは、どんな本を愛読していますか。
● 学校外での加入団体を言ってください。
● あなたの家では、何新聞を読んでいますか。
 
◆ なぜこのような質問はいけないのか? ◆

思想・信条や宗教、支持する政党、人生観などは、信教の自由、思想・信条の自由など、憲法で保障されている個人の自由権に属することがらです。それを採用選考に持ち込むことは、基本的人権を侵すことであり、厳に慎むべきことです。思想・信条、宗教などについて直接質問する場合のほか、形を変えた質問を行い、これらのことを把握しようとする企業がありますが、絶対に行うべきではありません。

6. 男女雇用機会均等法に抵触する質問
結婚や出産後も働き続けようと思っていますか。
●当社は、女性(または男性)は少なく、また長く働き続けられる仕事ではないが、それでも入社しようと思いますか。
●(男性だけに、または女性だけに)残業は可能ですか、また転勤は可能ですか。
※労働条件の事前確認のため、応募者全員を対象に質問することを妨げるものではありません
●スリーサイズはどれくらいですか。
 
◆ なぜこのような質問はいけないのか? ◆

性別を理由(または前提、背景)とした質問は、男女雇用機会均等法の趣旨に違反する採用選考につながります。
また、男女共に同じ質問をしていても、一方の性については採用、不採用の判断に影響がなく、他方の性についてはその返答が採用、不採用の判断要素となるような場合は、採用において性別を理由として差別していることになります。

就職差別につながるおそれのある不適切な質問事例

大阪労働局では従来から、公正な採用選考についての啓発・指導を行っているところです。しかしながら、最近においても、応募者の適性・能力とは関係のない事項を質問するなどの就職差別につながるおそれのある不合理な採用選考が後を絶たない状況にあります。

ハローワークが指導した主な事例

事例1
採用面接時に、次のような質問を受けた。
会社:何でこの会社を受けたの。
生徒:貴社の製品が好きですので。
会社:学校で言われた通り言わなくていい。
生徒:いえ、本当にグッズが好きなんです。
会社:それやったら、○○や△△(遊園地)で働けばいいやろ。
生徒:・・・。
会社:職場見てきたか。
生徒:まだです。
会社:女やったら、運動神経なかったら、怪我してしまうぞ。
会社:女、採用してもええけど、すぐやめるやろ。
生徒:やめません。
会社:自分、すぐ投げ出すやろ。
生徒:そんなことはないです。女の人が働いていたことはあったんですか。
会社:泣いてすぐやめる。男ばっかりの中に女一人で大丈夫か。
生徒:はい。若い男の人もいるんですよね。
会社:去年も若い男入っているし、男が好きやったら、やっていけるんちがう変な言い方やけども。

事例2
面接試験の前にアンケート用紙を渡された。
アンケート用紙には、「携帯電話番号」、「家族の関係」、「父母の有無」、「兄弟の人数・学年」などを記入する項目があった。


事例3
採用面接時に、次のような質問を受けた。 会社:自宅は、○○市のどのへんですか。家の近くには、何がありますか。
生徒:○○公園の近くです。
会社:通勤が不便だけど大丈夫ですか。

会社は、通勤方法について訪ねようとしているが、結果として住居環境について訪ねることとなっている。

事例4
採用面接時に、「ご両親はおられますか」「自営業ですか」「兄弟はいますか」「どのあたりに住んでいますか」「家は持ち家ですか」「いつから住んでいますか」などの質問を受けた。
また、求人票の選考方法には「一般常識と面接」とありながら作文が実施され、作文題名も「私の家族」というものであった。


事例5
面接が始まると、「聞いたらあかん質問ってどんなことかな。」「学校からどう聞いてる。」「これから君のことをもっと知りたいので、違反質問するかもしれないけどいいかな。」と言われた。
その後の面接で、家族の職業、兄弟の有無などを質問された。


事例6
採用面接時に、次のような質問を受けた。 会社:女の人がお茶くみや掃除をするのをするのをどう思いますか。
生徒:やれる人がやれば良いと思います。
会社:私は、男性より女性にやってもらいたいなあ。
生徒:じゃあ、喜んでお出しします。
会社:人付き合いは得意な方ですか。彼氏はいますか。
生徒:・・・。


これらは、指導の対象となった面接でのやり取りの一部を再現したものですが、こうした質問が「統一応募用紙」の趣旨に反するばかりでなく、応募者の人権を侵害するものです。

また、面接時以外にも、求人開拓のため訪問した学校の先生に対し、「外国籍の生徒を採用はするが、日本名で働いてもらう」といった事例や、採用内定後、応募者の自宅を見に行き、家業について質問した事例がこれまでにも報告されています。

各企業におかれては、本人に責任のない事柄や本来自由であるべきものを採用条件とすることは、応募者の基本的人権を侵害するということを理解していただき、差別のない公正な採用選考の実施をお願いします。

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