リスクアセスメントとこれからの「安全」

国際的な「安全」の定義は、『許容できないリスクがないこと』です。つまり、「安全」は「リスク」を経由して定義されるということであり、「リスク」の概念を理解することが不可欠となります。ここでは、「リスク」の概念を含め、リスクアセスメントとこれからの「安全」について、知っておきたい考え方を挙げてみます。

 

全ての危なさをなくすことはできない

17.png災害が絶対に起きないと保証することは、誰にもできません。このことからも「絶対安全」と呼べる状態が、あり得ないことは明らかです。また、この世の物事は、単純に「危険」と「安全」の2段階に割り切れるものではなく、その中間がほとんどです。ですから「危険」、「安全」と2段階で区別するのでなく、どのくらいの「度合い」であるかを考えることが最も合理的です。

 

「リスク」は、危なさの度合い

「リスク」とは、負傷や疾病の「発生確率」と「ひどさ」の度合いを組み合わせたものです。
「危なさの度合い」と言い換えてもいいでしょう。
リスクアセスメントで、リスクを見積り、評点を付けるのは「度合い」の考え方そのものです。評点を付けると、重要なものとそうでないものとを層別でき、管理しやすくなります。危なさの度合いが高いものには、注意を払い、低いものと区別するといったメリハリを付けることができるようになるからです。


リスクに応じた対応を取る

16.png高リスクのものには対策を講じ、必ず評点を下げねばならないと考えている方がいますが、必ずしもそうではありません。実際には、技術的に解決できない問題があり、対策を講じても評点が下がらないものもあります。例えば放射性物質による疾病の重篤度は、低減することができないので、リスクも一定以上には下がりません。動力の大きい機械設備等も基本的に同じで、ある程度のリスクは必ず残ります。
よく、「リスク○以上は撲滅」といった目標の立て方を目にしますが、あまり正しいやり方ではありません。このような目標を立てると、現場は、高リスクのものを隠し、低リスクあるいはリスクゼロと見せかける方向に動いてしまいます。
是が非でもリスクの評点を下げることが目的でなく、可能な対策を講じた上で、なお残る高リスクのものは、それを承知し、重点として管理すべきでしょう。むしろ高リスクを事前に把握し管理できるようにしたのであれば、それは、リスクアセスメントの大きな成果と評価すべきです。

 

危なさを「見つける」のでなく「調べる」

11.pngこれまでの災害防止では、危険感受性を高め、できるだけ多くの危なさを「見つける」ことに力を注いできました。一方で、「見つける」順序は、目に付いた順、気づいた順など、各人に任されていました。本来の「安全」を確保するためには、個人の危険感受性や気づきに期待するのでなく、道筋を決め、順序立てて危なさを調べる方法に切り替えていくことが必要です。主観的に「見つける」姿勢から、客観的に「調べる」姿勢に切り替えるということです。

 

災害発生プロセス

危なさを順序立てて調べるためには、「災害発生プロセス」を踏まえることが最も合理的です。
全ての労働災害は、「災害発生プロセス」によって説明することができ、災害の成り立ちを理解し、危なさを「調べる」上での基本理念となります。JIS、ISOのリスクアセスメントの原則や、厚生労働省のリスクアセスメント等に関する指針(*)においても、このプロセスは重要な位置づけをされています。
*「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」
 平成18年3月10日、危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第1号

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災害発生プロセス

 

■危険源(ハザード/Hazard)

リスクが生ずる原因となるもの、災害を起こす根源となるものを言います。

■危険状態

危険源があるだけでは、災害は起こりません。人間が危険源に近づいた状態を「危険状態」と言います。

■危険事象

危険状態が発生する場合には、各種の安全対策を施します。もし安全対策の不足や、不適切、不具合、あるいは人の誤りなどがあった場合には、人間が危害を受ける事態になります。これを「危険事象」と言います。

■回避

危険事象が発生したとき、人間が逃げることができれば危害を受けないですみます。これを回避と言います。例えば機械のスピードが遅ければ逃げられる可能性がありますが、速ければ逃げるゆとりはありません。

■危害

災害が発生し、人間が身体的傷害、または健康障害を受けることを言います。

■リスク(Risk)

人間が危険源に近づいたことによって発生する、危害の「発生確率」と「ひどさ」の組み合わせを言います。つまり、その危険源が元になって、どのくらいの見込みで危害が発生するか、どのくらいのひどさになるかを、両方考えて大きさを表すということです。

■「安全」とは(労働衛生・健康を含みます)

国際的には、「安全」とは、「許容できないリスクがないこと」と定義されています(ISO/IECガイド51:2014)。リスクが「ない」状態を指しているのでなく、「安全」と呼んでいる状態のなかに許容可能なリスクは含まれているということです。また、この定義において「災害」の有無はまったく関係ありません。災害の起きない状態を指して「安全」と呼ぶわが国の一般的な習慣は、国際的な定義とは相容れないものであると言えます。


このように「安全」はリスク経由で定義されていますので、正しく理解するためには、まず「リスク」の概念を理解することが不可欠です。

 

「災害発生プロセス」の入口から調べる

15.png「危険源」は、災害を起こす根源となるものを言います。例えば機械の稼動部分や、高所の作業床などがこれに当たります。これら「危険源」に「人」が関わると、プロセスは次の段階へ移行し、リスクが生ずることとなります。
ここで重要なのは、同じ「危険源」であっても「人」の関わり方によってリスクは変わるということです。例えば、プレス機械の加工部分という「危険源」に対し、定常作業で人が関わる場合、金型交換で人が関わる場合、保守や調整作業で人が関わる場合…、シチュエーションによってリスクはそれぞれ違います。定常作業のリスクさえ低ければいい、というものではありませんから、「危険源」に対しどのような「人」の関わり方があるか、言い換えれば関与する作業にどのようなものがあるかを、洗い出す必要があります。
また、「危険源」についても、ひとつの設備が加工部分、材料供給部分、搬送部分など、複数の「危険源」を持つ場合が普通です。これらの「危険源」と、「人」の関わり方を順立て調べていくことが、「災害発生プロセス」の入口から調べるということです。

 

これまでの見方との違い

「危険源」と言われても馴染みがない、ピンと来ないと感じる方がほとんどではないでしょうか?それは、これまでわが国に、「危険源」=「ハザード」に当たる概念がほとんどなかったからです。欧米では「危険源」、「危険状態」、「危険事象」を、それぞれ別々の概念ととらえていますが、わが国ではこれらを全部まとめて「危険」と呼びならわしてきました。それだけ「危険」に関する概念が大雑把であったということです。
「プレスのスライドにはさまれる」とか、「足場から落ちる」は、「危険事象」にあたります。普段用いる日本語の「危険」は、どちらかというと、「危険源」(=ハザード)よりも、危険事象」=「デンジャー」に近い意味合いです。わが国では、これまで、災害発生プロセスの入口を飛ばして、いきなり「危険事象」を探し、しかも気づいた順に提案してきたわけです。これが危なさの見つけ方が散発的であった根本的な原因です。
私たちは、「災害発生プロセス」の入口から調べることに慣れておらず、切り替えていくのは容易でありません。特に作業者をそのように誘導するためには、各企業の安全衛生担当者の創意工夫が必要です。リスクアセスメントに取り組む上で、実はこの点が最も難しく重要なポイントとなります。「危険事象」をいきなり探すのでなく、まず「危険源」と「人」の関わりを洗い出すよう、どうしたら誘導できるか、是非考えてください。リスクアセスメントというと、評点の付け方にばかり目が行きがちですが、いままでどおり気づいたものだけを集め評点を付けていても、根本的に何も変わりません。主観的な「気づき」から客観的な「調査」にならない限り、母数はほとんど変わらないのですから。
「災害発生プロセス」の入口から調べるよう、切り替えていきませんか?

  

危なさと正しく向き合った状態が「安全」

19.png国際的な「安全」の定義である、『許容できないリスクがないこと』を実現するためには、
まず、危なさをひととおり順序立てて調べることが必要です。次に、許容できないリスクについては対策を講じて危なさの「度合い」を下げ、許容できる「度合い」とします。しかし、リスクゼロにすることは、一般的に不可能なので、残留リスクを記録して、その「度合い」に応じて日々の管理を行います。また、設備や作業の変更等とともに、危なさの「度合い」は変化しますので、これらを把握し、調べることも継続していかなくてはなりません。
危なさを把握する仕組みを持ち、対策を講じ、その上で付き合わざるを得ない危なさについては、承知して管理下に置く。これらが継続的に行われている状態、つまり、危なさと正しく向き合った状態が「安全」です。

  

そして「安心」は「安全」をベースに

個人の「安心」は、個人の心の持ちようによります20.png。しかし、企業が労働者や社会に「安心」を示すためには、客観的な「安全」をベースにすることが必要です。「安全」を客観的なものにするためには、個人の危険感受性や気づきなど、主観を頼りにしたものでなく、説得力のある論理性が必要です。
「安心」と「安全」のために、愛知労働局では、「論理的な安全衛生管理の推進・定着」を提唱しています。

 

 

 

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