日常的な災害とどう向き合うか

  「危なさと正しく向きあう」と述べましたが、例えば転倒災害、交通事故、あるいは腰痛のように、日常生活の中でも起こり得る災害については、どう考えれば良いでしょうか。 これら日常的な災害は、とかく本人の焦りや不注意のせいと片付けられがちです。 しかし、そこで終わらせずにもう一歩踏み込むのが、危なさとの正しい向き合い方でしょう。 以下、転倒災害を例に、事業者と労働者が何をすべきか考えてみます。
  (1) 転倒災害防止のために、事業者が行うべき事項
  つまずきや滑りの原因を解消するための環境整備や、ルールの設定及び労働者への教育等が、事業者が行うべき事項にあたります。具体的には次のような事項が考えられます。
  遠くまで歩かなくても良いよう動線短縮を工夫する。
  通路の広さ・明るさを確保する、段差や路面の凹凸等を解消する、風雪等の影響を低減するため屋根等を設ける、その他の措置により事業場内の通路を安全に保つ。
  通路と他の場所とを区画するため、ラインを引き、あるいはガードレール等を設ける。
  荷物の運搬をし易くする方法を検討し、措置する。
  適切な服装を定め、滑りにくい靴を配備する。
  事業場内の通行や荷物の運搬に関するルールを定め、教育し、守られるよう管理する。
 
  (2) 転倒災害防止のために、労働者が行うべき事項
  労働者は、事業者から命令を受けて業務にあたりますから、まず事業者の命令を守るべきです。また、賃金をもらう代わりに労務を提供する義務を負いますので、これを果たせるよう健康保持に注意を払うべきです。具体的には次のような事項が考えられます。
  定められた服、靴等を着用する。
  事業場内の通行や荷物の運搬に関するルールを守る。
  周囲を確認し、不要に走らないようにする等、一般的な注意事項を守る。
  体力維持と健康保持に努める。
  既にお気づきのように、転倒災害防止対策のうち、根本的なものは、ほとんど、(1)の事業者が行うべき事項に含まれることとなります。「災害発生プロセス」に沿って転倒災害を考えると、つまずきや滑りの原因になる物が「危険源」に当たりますが、これらを解消する措置は、通常、事業者にしか行えません。労働者は、「災害発生プロセス」の下流に当たる事項に取り組み、事業者が行った措置を補完する立場になります。 このように考えると、日常的な災害も他の災害と、基本的に変わりないことにお気づきいただけるでしょう。まず、(1)のような事項に事業者が取り組み、次に(2)のような事項に労働者が取り組むという順序になります。
  しかし、いかに事業者が力を注いでも、労働者の参加がなければ、災害防止を果たせないのも事実です。日常的な災害を防止する上で難しい点は、ここにあるとも言えます。事業者と労働者、双方の努力により災害防止に努めましょう。
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