労災保険の特別加入制度(海外派遣者)について【労働保険徴収課】

更新日:令和4年4月

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≪1≫特別加入の範囲について

 海外派遣者として特別加入することができる範囲は以下のとおりです。

◎独立行政法人国際協力機構等開発途上地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除きます。)を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する方

◎日本国内で行われる事業(有期事業を除きます。)から派遣されて、海外支店、工場、現場、現地法人、海外の提携先企業等海外で行われる事業に従事する労働者

◎日本国内で行われる事業(有期事業を除きます。)から派遣されて、海外にある次の表に定める数以下の労働者を常時使用する事業に従事する事業主及びその他労働者以外の方
 

業 種 労働者数
金融業/保険業/不動産業/小売業 50人
サービス業/卸売業 100人
上記以外の業種 300人

 派遣される事業の規模の判断については、海外の各国ごとに、かつ、企業を単位として判断します。例えば、日本に本社があって海外に事業場を持つ企業の場合には、日本国内の労働者も含めると総数では上表の規模を超える場合であっても、派遣先のそれぞれの国ごとの事業場において上表の規模以内であれば特別加入することができます。

≪2≫特別加入の手続について

(1)新たに特別加入を申請する場合について

 派遣元の団体または事業主が、日本国内において実施している事業(有期事業を除きます。)について、労災保険の保険関係が成立していることが必要です。
なお、派遣先の事業については、有期事業も含まれます。

 海外派遣者の派遣の形態(転勤、在籍出向、移籍出向等)や派遣先での職種、あるいは派遣先事業場の形態、組織等については問いません。

◎派遣元の団体または事業主は、所轄の労働基準監督署長(以下「署長」といいます。)を経由して都道府県労働局長(以下「局長」といいます。)に対して「特別加入申請書(以下「申請書」といいます。)」を提出します

◎海外派遣者の特別加入の加入申請を行う場合には、派遣元の団体または事業主がその事業から派遣する方で特別加入させるものをまとめて行います

◎新たに派遣される方に限らず、既に海外の事業に派遣されている方についても特別加入することができますが、現地採用の方は、国内の事業からの派遣ではないことから特別加入することはできません。また、単なる留学を目的とした派遣についても、海外において事業に従事するものと認められないことから特別加入することはできません

◎特別加入の申請を行う際には、作業の具体的な内容及び希望する給付基礎日額等を申請書に記入し、署長を経由して局長の承認を得るという手続きが必要となります

◎海外派遣特別加入者の具体的な範囲は、申請書の名簿により確定されることとなりますが、この名簿の「業務の内容」欄については、実際に災害が起こった場合に、業務上外の判断をする上で重要な事項であり、また、派遣予定期間は特別加入者としての身分を有している期間を確定するために必要な事項ですので正確に記載してください

◎特別加入の申請に対する局長の承認は、当該申請の日の翌日から起算して30日の範囲内において特別加入を申請する方が加入を希望する日となります
 

(2)既に特別加入を承認されている場合について

◎既に特別加入を承認されている方で、氏名や作業内容等に変更があった場合には、派遣元の団体または事業主を通じて、「特別加入に関する変更届(以下「変更届」といいます。)」を署長を経由して局長に対して提出することが必要です。
変更届が必要な例としては、このほか次のものがあります。

◎派遣先の事業場の名称や所在地が変わった場合

◎派遣先の国が変わった場合

◎その他特別加入者に関する事項に変更があった場合

◎新たに海外派遣者となった方を追加して特別加入させる場合

◎帰国等により派遣先の事業に従事しなくなり、特別加入者の資格を失った場合

◎中小事業の代表者等として海外に派遣される方は労働者として派遣される方とは異なり、特別加入申請書の「業務の内容」欄に派遣先の事業における地位、派遣先の事業の種類、当該事業における労働者数及び労働者の所定労働時間も付記することが必要です。また、申請書には派遣先の事業の規模等を把握するための資料(派遣先事業に係る労働者名簿の写しまたは派遣先の事業案内等)を添付する必要があります

◎海外の事業に労働者として派遣されていた方が中小事業の代表者等に就任した場合または中小事業の代表者等として派遣されていた方が労働者となった場合には、派遣元の団体または事業主を通じて変更届を提出することが必要です。変更届には派遣先事業の種類及び当該事業における労働者数を記載するとともに派遣先の労働者名簿の写し、事業内容等の資料を添付する必要があります

◎特別加入の変更届出に対する効力が生じる日は当該届出の日の翌日から起算して30日以内の希望する日となります

≪3≫海外派遣と海外出張の区別について

 国内の事業場で就労していた方が海外で業務に従事するケースにはさまざまなものがありますが、大きく区分すると、「海外出張」の場合と「海外派遣」の場合が考えられます。
 
 「海外出張」である場合は、当該海外出張者に関して何ら特別の手続きを要することなく、その方が所属する事業場の労災保険により給付を受けられますが、一方「海外派遣」である場合は、当該海外派遣者に関して特別加入の手続を行っていなければ、労災保険による給付が受けられないこととなります
 「海外出張」と「海外派遣」との区別については、「海外出張者」とは、単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず、国内の事業場に所属し、当該事業場の使用者の指揮に従って勤務する方であり、「海外派遣者」とは、海外の事業場に所属して、当該事業場の使用者の指揮に従って勤務することになる方と定義され、これらは勤務の実態によって総合的に判断されることとなります


<海外出張と海外派遣のケースを一般的に例示すると次表のようなものとなります>

区分 海外出張の例 海外派遣の例
業務威容 1.商談
2.技術・仕様等の打合せ
3.市場調査・会議・視察・見学
4.アフターサービス
5.現地での突発的なトラブル対処
6.技術習得等のために海外に赴く場合
1.海外関連会社(現地法人、合弁会社、提携先企業等)へ出向する場合
2.海外支店、営業所等へ転勤する場合
3.海外で行う据付工事・建設工事(有期事業)に従事する場合(統括責任者、工事監督者、一般作業員等として派遣される方)
 

≪4≫給付基礎日額及び保険料について

(1)給付基礎日額について

 給付基礎日額とは、労災保険の給付額を算定する基礎となるものです。特別加入を行う方の所得水準に見合った適正な額を申請していただ き、局長が承認した額が給付基礎日額となります。
 なお、決定された給付基礎日額は、3月2日から31日までの間、または、年度更新期間中に、変更の申請をすることができます。なお、変更申請する際は、3月2日から31日までの間は「給付基礎日額変更申請書」を、年度更新期間中は「第3種特別加入保険料申告内訳名簿」を提出して下さい。

(2)保険料について

 特別加入者の保険料については、保険料算定基礎額(給付基礎日額に365を乗じたもの)にそれぞれの事業に定められた保険料率を乗じたものとなります。
 なお、年度途中において、新たに特別加入者となった場合や特別加入者でなくなった場合には、当該年度内の特別加入月数(1ヵ月未満の端数があるときは、これを1ヵ月とします。)に応じた保険料算定基礎額により保険料を算定することとなります。

【給付基礎日額・保険料一覧表】

給付基礎日額 A 保険料算定基礎額 B
= A × 365日
年間保険料=保険料算定基礎額×保険料率
海外派遣者の場合
保険料率 3/1000
25,000円 9,125,000円 27,375円
24,000円 8,760,000円 26,280円
22,000円 8,030,000円 24,090円
20,000円 7,300,000円 21,900円
18,000円 6,570,000円 19,710円
16,000円 5,840,000円 17,520円
14,000円 5,110,000円 15,330円
12,000円 4,380,000円 13,140円
10,000円 3,650,000円 10,950円
9,000円 3,285,000円 9,855円
8,000円 2,920,000円 8,760円
7,000円 2,555,000円 7,665円
6,000円 2,190,000円 6,570円
5,000円 1,825,000円 5,475円
4,000円 1,460,000円 4,380円
3,500円 1,277,500円 3,831円


≪5≫補償の対象となる範囲について

(1)労働者として海外派遣される方の場合

 国内の労働者の場合と同様、業務災害または通勤災害を被った場合に労災保険から給付が行われます。

(2)中小事業の代表者などとして海外派遣される場合

【業務災害について】
 業務災害の保険給付の対象となる災害は、一定の業務を行っていた場合(業務 遂行性)に限られています。したがって、次に該当しない場合には、被災しても保険給付を受けることができませんので注意してください。
また、災害がその業務によって生じたものであるかどうか(業務起因性)の判断は労働者の場合に準じることとされています。

◎申請書の「業務の内容」欄に記載された労働者の所定労働時間内に行われる業務及びこれに直接附帯する行為を行う場合(ただし、例えば株主総会に出席している場合のようにその行為が事業主の立場において行われる業務を除きます。)

◎労働者の時間外労働又は休日労働に応じて就業する場合

◎労働者の就業時間に接続して行われる準備・後始末の業務を中小事業主等のみで行う場合

◎就業時間内における事業場施設の利用中及び事業場施設内での行動中の場合

◎当該事業の運営のために直接必要な業務(事業主の立場において行われる業務を除きます。)のために出張する場合

◎通勤途上であって次に掲げる場合

 1.事業主が労働者のために用意した通勤用のマイクロバス等を利用している場合
 2.台風、火災のような突発事故等による予定外の緊急出勤の途上にある場合

◎事業の運営に直接必要な運動競技会、その他の行事について労働者を伴って出席する場合

【通勤災害について】

◎国内の労働者の場合と同様に取り扱われます。
 

(3)留意していただきたい事項について

 海外派遣者の補償の範囲に関して、特に次の事項に留意してください。

◎赴任途上における災害については、次の要件をすべて満たすものについて業務災害と認められます。

 1.海外派遣を命じられた労働者が、その転勤に伴う移転のため転勤前の住居等から赴任先事業場に赴く途中で発生した災害であること。
 2.社会通念上、合理的な経路及び方法による赴任であること。
 3.赴任のために直接必要でない行為あるいは恣意的行為に起因して発生した災害でないこと。
 4.赴任に対して赴任先事業主より旅費が支給される場合であること。

◎派遣先事業からの国外出張については、国内の事業場からの海外出張の場合と同様の考え方によって業務災害であるか否かが判断されます。

◎他人の暴行による災害または伝染病や風土病による災害については、業務内容と関連があると認められるものを除き、一般には業務災害と認められません。

≪6≫保険給付・特別支給金の種類について

 特別加入者が業務災害または通勤災害により被災した場合には、所定の保険給付が行われるとともに、これと併せて特別支給金が支給されます。
 保険給付及び特別支給金の種類は次の表のとおりです。

保険給付の種類 支給事由 給付内容 特別支給金
療養補償給付療養給付 業務災害または通勤災害による傷病について、病院等で治療する場合 労災病院または指定病院において必要な治療が無料で受けられます。また、労災病院または指定病院以外の病院において治療を受けた場合には、治療に要した費用が支給されます。 特別支給金はありません。
休業補償給付
休業給付
業務災害または通勤災害による傷病による療養のため労働することができない日が4日以上となった場合 休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額が支給されます。 休業特別支給金は、休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額が支給されます。
障害補償給付障害給付 障害(補償)年金
業務災害または通勤災害による傷病が治った後に障害等級第1級から第7級までのいずれかの障害が残った場合

障害(補償)一時金
業務災害または通勤災害による傷病が治った後に障害等級第8級から第14級までのいずれかの障害が残った場合
障害(補償)年金の場合
第1級は給付基礎日額の313日分~第7級は給付基礎日額の131日分が支給されます。

障害(補償)一時金
第8級は給付基礎日額の503日分~第14級は給付基礎日額の56日分が支給されます。
障害特別支給金は、第1級342万円~第14級8万円が一時金として支給されます。
傷病補償年金
傷病年金
業務災害または通勤災害による傷病が療養開始後1年6カ月を経過した日又は同日後において

①傷病が治っていないこと

②傷病による障害の程度が傷病等級に該当すること

のいずれにも該当する場合
第1級は給付基礎日額の313日分、第2級は給付基礎日額の277日分、第3級は給付基礎日額の245日分が支給されます。 傷病特別支給金は第1級が114万円、第2級は107万円、第3級は100万円が一時金として支給されます。
遺族補償給付遺族給付 遺族(補償)年金
業務災害または通勤災害により死亡した場合(年金額は遺族の人数に応じて変わります。)

遺族(補償)一時金

①遺族(補償)年金を受けることができる遺族がいない場合

②遺族(補償)年金を受けている方が失権し、かつ他に遺族(補償)年金を受けうる方がいない場合において、既に支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たない場合
遺族(補償)年金
遺族の人数によって支給される額が異なります。
 
遺族の人数 支給される額
1人の場合 給付基礎日額の153日分
または175日分
2人の場合 給付基礎日額の201日分
3人の場合 給付基礎日額の223日分
4人の場合 給付基礎日額の245日分

遺族(補償)一時金
左欄の1の場合には給付基礎日額の1000日分が支給されます。ただし、2の場合は給付基礎日額の1000日分から既に支給した年金の合計額を差し引いた額が支給されます。
遺族特別支給金は300万円が一時金として支給されます。
葬祭料葬祭給付 業務災害または通勤災害により死亡した方の葬祭を行う場合 給付基礎日額の60日分か31万5千円に給付基礎日額の30日分を加えた額のいずれか高い方が支給されます。 特別支給金はありません。
介護補償給付
介護給付
業務災害または通勤災害により、障害(補償)年金または傷病(補償)年金を受給しているある一定の障害を有する方で現に介護を受けている場合 常時介護の場合
  介護の費用として支出した額(171,650円を上限)が支給されますが、親族等の介護を受けていた方で、介護の費用を支出していない場合または支出した額が73,090円を下回る場合は一律定額として73,090円が支給されます。

随時介護
介護の費用として支出した額(85,780円を上限)が支給されますが、親族等の介護を受けていた方で、介護の費用を支出していない場合または支出した額が36,500円を下回る場合は一律定額として36,500円が支給されます。
特別支給金はありません。
 
注1 「保険給付の種類」欄の上段は業務災害、下段は通勤災害に対して支給される保険給付です。
注2 派遣先等の海外において療養する場合、診療内容等で派遣先国独自の治療であっても、我が国または外国における医学常識に照らして妥当と認められるものについては支給されることとなっています。療養の費用として支給される額は、支給決定日における外国為替換算率(売レート)により換算された邦貨額となります。
注3 遺族(補償)年金の受給資格者である遺族が1人であり、55歳以上または一定障害の妻である場合には、給付基礎日額の175日分が支給されます。
注4 休業(補償)給付については、所得喪失の有無にかかわらず、療養のため補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務または作業について全部労働不能であることが必要となっています(全部労働不能とは、入院中または自宅就床加療中若しくは通院加療中であって、補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務または作業ができない状態をいいます。)。
注5 各種保険給付請求書又は届書を所轄労働基準監督署長に提出するときは、当該請求書又は届書の記載事項のうち事業主の証明を受けなければならないとされている事項を証明することができる書類その他資料を、当該請求書又は届書に添付しなければなりません。


≪7≫支給制限

 特別加入者が業務災害または通勤災害を被った場合には保険給付が行われますが、その災害が 特別加入者の故意 または 重大な過失によって発生した場合及び保険料の滞納期間中に生じた場合 には、支給制限が行われることがあります。

≪8≫特別加入者としての地位の消滅

(1)脱退により消滅する場合

 派遣元の団体または事業主は、当該事業について特別加入させた海外派遣者を事業単位で包括して、政府の承認を受けて脱退することができます。
 この場合には、署長を経由して局長に対して「特別加入脱退申請書」を提出し、承認を受けることが必要です。
 特別加入の脱退申請に対する局長の承認は、当該脱退申請の日から起算して30日の範囲内において脱退を申請する方が脱退を希望する日となります。

(2)自動的に消滅する場合

◎派遣元事業の廃止等により、その事業についての保険関係が消滅した場合には、その日に特別加入者たる地位も消滅します。この場合、派遣元の団体または事業主は、その旨を署長を経由して局長に届け出なければなりません

◎海外派遣者が、出向期間の終了により国内に帰国した場合等にも、その日に当該海外派遣者の特別加入たる地位は消滅することとなります。この場合においても、派遣元の団体または事業主は、その旨を署長を経由して局長に届け出なければなりません

(3)取消により消滅する場合

◎派遣元の団体又は事業主が関係法令の規定に違反した場合には、特別加入の承認が取り消される場合があります。


 

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