平成17年度 神奈川県内個別労働紛争解決制度施行状況 【企画室】

照会先

神奈川労働局 総務部 企画室

企 画 室 長 悦見 博
労働紛争調整官 松渕 由紀夫
        西岡 正純
(電話) 045-211-7357

神奈川労働局発表
報道関係者 各位

個別労働紛争解決制度の利用が増加
~雇用関係の終了をめぐる深刻な紛争が増加~
(多数の女性労働者に対するセクハラに係るあっせんも実施)

 

 神奈川労働局では、

1. 県内14ヶ所の総合労働相談コーナーに配置された総合労働相談員による労働関係の相談への対応
2. 神奈川労働局長による助言・指導
3. 弁護士等の有識者で構成する神奈川紛争調整委員会による労使紛争事案のあっせん

 を実施しているところであるが、平成17年度における利用状況は以下のとおりである。

 なお、相談から発展して、本制度の「助言・指導制度」、「あっせん制度」を利用する場合も、現在では14箇所の相談コーナーのどこでも受付・受理できる体制をとっており、相談者が相談しやすいコーナーでの利用が可能である。
 また、「あっせん制度」を担当する「紛争調整委員」も平成17年度からは弁護士の数を増やしており、本制度の特徴である「簡易・迅速・無料・プライバシーの保護」に沿った紛争の解決に向け体制を整備しているところである。
 

個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律施行状況(平成17年度)
 

1. 総合労働相談件数 46,165 件(対前年比 5.8 %増)
2. 内、民事上個別労働紛争関係の相談件数 12,045 件(対前年比 5.9 %増)
3. 助言・指導申出受付件数 179 件(対前年比 30.7 %増)
4. あっせん申請受理件数 228 件(対前年比 3.2 %増)
 個別労働紛争解決制度は、平成13年10月の施行から4年半を経過したところであるが、厳しい雇用情勢を反映し、本制度に基づく総合労働相談、助言・指導、あっせんの利用件数がいずれも、前年に比し増加している。

 また、その内容別内訳を見てみると、助言指導申出件数及びあっせん申請件数が前年に比べ、「解雇」「退職勧奨」等の「雇用関係の終了に係る紛争」の割合が増加しており、雇用関係の終了に係るトラブルにおいては相談で終わらず、助言指導、あっせんに移行する、より深刻なトラブルが増加している。

 本制度は、労働者のみならず事業主も利用できるものであり、事業主によるあっせん申請もあった。

 個別労働紛争解決制度は、平成13年10月の施行から4年半を経過したところであるが、厳しい雇用情勢を反映し、本制度に基づく総合労働相談、助言・指導、あっせんの利用件数がいずれも、前年に比し増加している。
 また、その内容別内訳を見てみると、助言指導申出件数及びあっせん申請件数が前年に比べ、「解雇」「退職勧奨」等の「雇用関係の終了に係る紛争」の割合が増加しており、雇用関係の終了に係るトラブルにおいては相談で終わらず、助言指導、あっせんに移行する、より深刻なトラブルが増加している。
 本制度は、労働者のみならず事業主も利用できるものであり、事業主によるあっせん申請もあった。
 

1 相談受付状況

 神奈川労働局では、神奈川労働局、県内12の労働基準監督署内、横浜駅付近のテナントビル内の県内計14箇所に、労働に関するあらゆる相談にワンストップで対応するための「総合労働相談コーナー」を開設(別紙1参照)しているところであるが、平成17年度1年間に寄せられた相談は、全体で46,165件であった。
 これは、平成16年度比で、5.8%の増加となっている。
 このうち、関係窓口や手続等の案内で終了するもの、法違反を伴うため労働基準監督署の取り締まりの対象となるもの等を除いた、不当解雇や労働条件の引下げ等の民事上の個別労働紛争に関するものが12,045件に上り、平成16年度比5.9%の増加となっている(【表1】、【図1】)。
 

【表1】 年度別件数の推移

年代別 相談件数 助言・指導申出件数 あっせん受理件数
労働相談 個別紛争
平成15年度 件数 41,037 10,016 108 200
対前年比 + 4.3% + 52.6% + 103.8% + 62.6%
平成16年度 件数 43,639 11,370 137 221
対前年比 + 6.3% + 26.9% + 13.5% + 10.5%
平成17年度 件数 46,165 12,045 179 228
対前年比 + 5.8% + 5.9% + 30.7% + 3.2%

 

【図1】 年度別件数の推移

年度別件数の推移(1)
 

 また、民事上の個別労働紛争にかかる相談内容の内訳は、「解雇」、「雇止め」、「退職勧奨」等の「雇用関係の終了」に関するものが37.5%と4割弱を占め、また、「労働条件の引下げ」等の「労働条件」に関するものが32.3%となっている。
 相談内容の内訳を、平成16年度と比較すると、「労働条件」に関するものが件数、全体に占める割合とも増加し、「雇用関係の終了」に関するものが若干減少している (【表2】、【図2】)。
 

【表2】内容別内訳

  年代別 平成15年度 平成16年度 平成17年度
件数 全体比 件数合計 全体比合計 件数 全体比 件数合計 全体比合計 件数 全体比 件数合計 全体比合計
個別労働紛争相談 雇用関係の終了 普通解雇 2,966 26.4% 5,083 45.1% 2,970 23.3% 5,426 42.5% 2,774 19.3% 5,379 37.5%
整理解雇 385 3.4% 442 3.5% 533 3.7%
懲戒解雇 530 4.7% 510 4.0% 503 3.5%
雇止め 326 2.9% 452 3.5% 397 2.8%
退職勧奨 876 7.8% 1,052 8.2% 1,172 8.2%
労働条件 労働条件の引下げ 1,272 11.3% 3,090 27.5% 1,837 14.4% 3.925 30.8% 1,175 12.1% 4,641 32.3%
出向・配置転換 405 3.6% 417 3.3% 585 4.1%
その他の労働条件 1,413 12.6% 1,671 13.1% 2,311 16.1%
その他 セクシュアルハラスメント 144 1.3% 3,080 27.4% 146 1.1% 3,410 26.7% 285 2.0% 4,333 30.2%
女性労働問題 122 1.1% 146 1.1% 234 1.6%
募集・採用 283 2.5% 284 2.2% 371 2.6%
雇用管理等 131 1.2% 203 1.6% 303 2.1%
いじめ・嫌がらせ 668 5.9% 859 6.7% 1,249 8.7%
その他 1,732 15.4% 1,772 13.9% 1,891 13.2%
合計 (重複回答を合計した総数) 11,253 100.0% 11,253 100.0% 12,761 100.0% 12,761 100.0% 14,353 100.0% 14,353 100.0%
(受理件数) 10,016 10,016 11,370 11,370 12,045 12.,045

 

【図2】個別労働紛争相談の内容別内訳

個別労働紛争相談の内容別内訳
 

2 神奈川労働局長による助言・指導

 平成17年度の助言・指導申出受付件数は179件で、平成16年度比30.7%の増加となっている(【表1】、【図3】)。
 

【図3】年度別件数の推移

年度別件数の推移(2)

 助言・指導申出内容の内訳は、「解雇」、「雇止め」、「退職勧奨」等の「雇用関係の終了」に関するものが6割を占め、また、「労働条件の引下げ」等の「労働条件」に関するものが26.8%となっている。
 申出内容の内訳を、平成16年度と比較すると、「雇用関係の終了」に関するものが全体に占める割合は平成16年度の47.4%から大幅に増加し、「労働条件」に関するものが38.0%から減少している(【表3】、【図4】)。
 

【表3】内容別内訳

  年代別 平成15年度 平成16年度 平成17年度
件数 全体比 件数合計 全体比合計 件数 全体比 件数合計 全体比合計 件数 全体比 件数合計 全体比合計
助言 ・指導の申出 雇用関係の終了 普通解雇 45 41.7% 73 67.6% 41 29.9% 65 47.4% 81 45.2% 108 60.3%
整理解雇 2 1.9% 6 4.4% 5 2.8%
懲戒解雇 6 5.6% 3 2.2% 2 1.1%
雇止め 7 6.5% 9 6.6% 10 5.6%
退職勧奨 13 12.0% 6 4.4% 10 5.6%
労働条件 労働条件の引下げ 10 9.3% 22 20.4% 19 13.9% 52 38.0% 20 11.2% 48 26.8%
出向・配置転換 5 4.6% 6 4.4% 8 4.4%
その他の労働条件 7 6.5% 27 19.7% 20 11.2%
その他 セクシュアルハラスメント 0 0.0% 13 12.0% 2 1.5% 20 14.6% 3 1.7% 23 12.9%
女性労働問題 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0%
募集・採用 2 1.9% 3 2.2% 2 1.1%
雇用管理等 1 0.9% 0 0.0% 2 1.1%
いじめ・嫌がらせ 6 5.6% 6 4.4% 13 7.3%
その他 4 3.7% 9 6.6% 3 1.7%
合計 108 100.0% 108 100.0% 137 100.0% 137 100.0% 179 100.0% 179 100.0%

 

【図4】助言・指導の申出の内容別内訳

助言・指導の申出の内容別内訳

 平成17年度1年間に手続きを終了した事案について、神奈川労働局における処理状況をみると、平成17年3月末までに手続きを終了したものは179件であり、全数について助言・指導を実施した。処理を要した期間は、1ヶ月以内が175件で97.8%となっている。
 平成17年度1年間に申出を受付けた事案179件についてみてみると、申出人は、全数が労働者であった。就労状況は、正社員が74.8%と最も多く、パート・アルバイトが9.5%、派遣労働者が8.4%、期間契約社員が7.3%となっている。事業所の規模は、10~49人が49.7%と最も多く、次いで50~99人が19.0%、10人未満が17.3%となっている。
また、労働組合のない事業所の労働者が73.2%である。なお、助言・指導の実施事例は、別紙2のとおりである。
 

3 神奈川紛争調整委員会によるあっせん

 平成17年度の、あっせん申請受理件数は228件で、平成16年度比 3.2%の増加となっている(【表1】、【図3】)。
 あっせん申請の内容の内訳は、「解雇」、「雇止め」、「退職勧奨」等の「雇用関係の終了」に関するものが61.8%と6割を超え、また、「労働条件の引下げ」等の「労働条件」に関するものが21.5%となっている。
  申請内容の内訳を、平成16年度と比較すると、「雇用関係の終了」に関するものが全体に占める割合は平成16年度の51.2%から大幅に増加し、逆に「労働条件」に関するものが26.2%から減少している(【表4】、【図5】)。
 

【表4】内容別内訳

  年代別 平成15年度 平成16年度 平成17年度
件数 全体比 件数合計 全体比合計 件数 全体比 件数合計 全体比合計 件数 全体比 件数合計 全体比合計
あ っせん申出 雇用関係の終了 普通解雇 87 43.5% 141 70.5% 67 30.3% 113 51.2% 100 43.9% 141 61.8%
整理解雇 4 2.0% 6 2.7% 8 3.5%
懲戒解雇 10 5.0% 5 2.3% 6 2.6%
雇止め 11 5.5% 15 6.8% 11 4.8%
退職勧奨 29 14.5% 20 9.0% 16 7.0%
労働条件 労働条件の引下げ 17 8.5% 34 17.0% 29 13.1% 58 26.2% 21 9.2% 49 21.5%
出向・配置転換 8 4.0% 9 4.1% 7 3.1%
その他の労働条件 9 4.0% 20 9.0% 21 9.2%
その他 セクシュアルハラスメント 3 1.5% 25 12.5% 22 10.0% 50 22.6% 7 3.1% 38 16.7%
女性労働問題 0 0.0% 0 0.0% 1 0.4%
募集・採用 2 1.0% 5 2.3% 3 1.3%
雇用管理等 1 0.5% 0 0.0% 3 1.3%
いじめ・嫌がらせ 8 4.0% 8 3.6% 17 7.5%
その他 11 5.5% 15 6.8% 7 3.1%
合計 200 100.0% 200 100.0% 221 100.0% 221 100.0% 228 100.0% 228 100.0%

 

 【図5】あっせん申請の内容別内訳

あっせん申請の内容別内訳

 平成17年度1年間に手続きを終了した事案248件の処理状況をみると、紛争当事者が手続きに参加しない(「不参加」)ため打ち切りとなった事案は72件(29.0%)、申請が取下げられた等のため処理を行わなかったものは18件(7.3%)で、実質的にあっせん委員があっせんの処理を行ったものが158件である。
 この158件のうち、合意に至ったものが105件(66.5%)、合意に至らず打ち切ったものは53件(33.5%)であった。
 処理に要した期間は、1ヶ月以内が48.8%、1ヶ月を超え2ヶ月以内が31.5%となっている。
 平成17年度1年間に申請を受理した事案228件についてみてみると、申請人は、労働者が227件(99.6%)、事業主が1件であった。
 労働者の就労状況は、正社員が74.6%と最も多く、パート、アルバイトが9.2%、派遣労働者が8.8%、期間契約社員が7.4%となっている。
 事業所の規模は、10~49人が53.9%と最も多く、次いで50~99人が18.0%、10人未満が14.0%となっている。
 また、労働組合のない事業所が75.0%である。

 なお、あっせんの実施事例は、別紙2のとおりである。
 平成17年度の助言・指導申出受付件数は179件で、平成16年度比30.7%の増加となっている(【表1】、【図3】)。
 

4 本制度の利用方法

 労働問題のトラブル・悩みを抱えた方(労働者側・事業主側を問わず)が本制度を利用するためには、県内14箇所に開設している「総合労働相談コーナー」(別紙1参照)に対して相談を寄せていただくこととなる。
 特に、横浜駅西口の横浜STビル内に開設している「横浜駅西口総合労働相談コーナー」は、労働局・労働基準監督署とは独立した「気軽に相談を受けられる場所」として開設しており、積極的にご利用いただきたい。
 

(用語説明)

※ 個別労働関係紛争
 個別労働関係紛争の範囲は、「労働条件その他労働関係に関する事項についての」紛争で、労働関係に関する事項についての個別の労働者と事業主との紛争であれば、分野、内容に関係なく、すべての個別労働関係紛争に含まれる。ただ、労働組合と事業主との間の紛争や、労働者と労働者の間の紛争は、個々の労働者と事業主との間の紛争ではないので、個別労働関係には含まれない。

※ 神奈川紛争調整委員会によるあっせん制度
 神奈川労働局長が委任している神奈川紛争調整委員会(松田保彦会長)によるあっせん制度は、あっせん委員が紛争当事者の間に立って、当事者間の話合いを促進することにより、紛争の解決を促進する制度である。具体的には、双方の主張の要点を確かめ、必要に応じて参考人からの意見を聴取する等により、事実の調査を行った上で、紛争当事者間の話合いを促進し、その間を仲介して、双方または一方の譲歩を求めたり、具体的な解決の方策を打診している。 なお、あっせんにより、当事者間に合意が成立した場合において、当該成立した合意は、民法上の和解契約となる。

※ 神奈川労働局長による助言・指導制度
 神奈川労働局長による助言・指導制度は、紛争当事者に対して、問題点を指摘し、解決の方向性を示唆することにより、紛争の解決の促進を図るものである。 具体的には、事実関係を調査・整理した上で、労働関係法令や関係判例等に基づき、さらに、必要に応じて大学教授、弁護士等専門家の意見を参考にしながら、都道府県労働局長が助言・指導を行っている。

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