私には、この春小学1年生になった娘がいます。その娘が以前、 「パパはどんなお仕事をしているの?」と私に聞いてきたことがありました。 その時私は、「おばけを掃除機で捕まえる仕事だよ。」と答えました。 それ以降、娘の中で私の仕事はおばけ退治ということになっています。
もちろん本心では労働基準監督官だよと答えたいところでした。 なぜこのように答えたかというと、まだ幼い娘に対して、 労働基準法とか是正勧告といった、私たちが仕事で当たり前に取り扱う言葉を用いて 労働基準監督官の職務内容を説明するのはあまりに難しいと考えたからです。
「働く人の現在(いま)を守り、未来を支える仕事だよ。」と説明することも考えましたが、 それも曖昧でうまく伝わらないと思いました。お医者さんやケーキ屋さんのように、 労働基準監督官の仕事を一言で伝えることは難しいことだと日々感じています。
でも本当は、「おばけ退治」という言い方は、あながち間違いでもないのかもしれません。 私たちが向き合っているのは、長時間労働やサービス残業、危険な作業環境といった、 目には見えないけれど、働く人の体や心をむしばむ存在です。 それらはまるで、知らないうちに人を苦しめる“おばけ”のようなものです。
労働基準監督官の仕事は、そうしたおばけを見つけ出し、 正しいルールに基づいて取り除くことだと私は考えています。 働く人が安心して毎日を過ごせるように、会社に改善を求めたり、 時には厳しく指導したりします。決して目立つ仕事ではありませんが、 誰かの「当たり前の毎日」を支える、大切な役割を担っています。
また、現場で働く人の声に耳を傾けることも、私たちにとって欠かせない使命です。 一つひとつの声の背景には、それぞれの人生や家族の暮らしがあり、 その重みを受け止める責任があると感じています。 だからこそ、制度や数字だけでは測れない現実にも向き合い続けたいと思っています。
労働の環境は社会情勢とともに絶えず変化しています。 スポットワーク等の新しい働き方も生まれていますが、 いつどのような時代であっても、「安心して働けること」はとても大切で当たり前なことです。 このような役割を担えるのは労働基準監督官ならではであることを改めて自覚し、 今後も与えられた環境の中で自分の職務に精一杯取り組んでいきたいと思います。 そして、いつか娘が自身の将来や進路を考える日が来た時には、 選択肢の一つとして労働基準監督官というやりがいのある仕事があることを伝えたいと思います。






