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労災保険二次健康診断給付について
『労災保険二次健康診断』
第1章 労災保険二次健康診断の概要1.二次健康保険診断とは?
私たちが病気やけがをしたときには、健康保険、国民健康保険等の社会保険により診療を受けられますが、このうち仕事が原因となって生じた負傷、疾病、障害、死亡(以下「業務災害」といいます。)及び通勤が原因となって生じた負傷、疾病、障害、死亡(以下「通勤災害」といいます。)については、労働者災害補償保険(以下「労災保険」といいます。)により必要な給付を受けられます。
労災保険では、業務災害や通勤災害を被った労働者やその遺族のために必要な保険給付を行うことを主たる目的としています。
平成13年4月1日より、労働安全衛生法(以下「安衛法」といいます。)に基づき事業主が行う健康診断において、労働者に脳血管疾患及び心臓疾患(以下「脳・心臓疾患」といいます。)の発症に関連する血圧、血糖値等に異常の所見があると診断されたときに、脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査を行う二次健康診断及びその結果に基づいて脳・心臓疾患の予防のために行われる特定保健指導を、受診者の負担なく受けることができる二次健康診断等給付が始まりました。
2.二次健康診断等給付のしくみ
Ⅰ 二次健康診断等給付の概要
二次健康診断等給付は、安衛法第66条第1項または同条第5項ただし書の規定による健康診断のうち、直近の
もの(以下「一次健康診断」といいます。)において、脳・心臓疾患に関連する一定の項目について異常の所見
があると診断された場合に、労働者の請求に基づき、二次健康診断等給付として二次健康診断及び特定保健指導
を給付します。
Ⅱ 給付の流れ
二次健康診断等給付は、労災病院又は都道府県労働局長が指定する病院もしくは診療所(以下「健診給付医療機
関」といいます。)において、直接二次健康診断及び特定保健指導そのものを給付する、いわゆる現物給付方式
になります。
そのため、受診した労働者は、二次健康診断及び特定保健指導に要する費用を一時的に立替払いして負担する
必要はありません。
3.二次健康診断等給付の対象
Ⅰ 対象者
二次健康診断等給付の対象者は、一次健康診断において、脳・心臓疾患に関連する一定の項目について異常の
所見があると診断された労働者となります。
ここでいう労働者とは、労働基準法第9条に規定する、「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる
者。」のことです。このうち、安衛法で規定される定期健康診断等の対象者は「常時使用される労働者」を指し
ます。
なお、パートタイマー等の短時間労働者については、
ⅰ 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であっ
て、当該契約の更新により1年以上使用されることが予定されている者を含む。)であること。
ⅱ 1週間の労働時間数が当該事業所において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間
数の4分の3以上であること。
のいずれの要件をも満たせば、健康診断を行うべき「常時使用する短時間労働者」となります。て、当該契約の更新により1年以上使用されることが予定されている者を含む。)であること。
ⅱ 1週間の労働時間数が当該事業所において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間
数の4分の3以上であること。
Ⅱ 一次健康診断
二次健康診断等給付における「一次健康診断」とは、安衛法第66条第1項の規定による健康診断または同法第5
項ただし書の規定による健康診断のうち、「直近のもの」を指します。
したがって、安衛法第66項第1項に基づき省令で定める健康診断はすべて該当し、定期健康診断(労働安全衛生
規則(以下「安衛則」といいます。)第44条)のほかにも、雇入時の健康診断(安衛則第43条)、特定業務従事者の
健康診断(安衛則第45条)、海外派遣労働者の健康診断(安衛則第45条の2)も対象となります。
また、事業主が実施する定期健康診断を労働者が受診を希望せずに、内容などが定期健康診断に相当するような
別の健康診断(人間ドックなど)を代わりに受診し、その結果を事業主に提出した場合には、安衛法第66条第5項
ただし書の規定により、実施した検査を一次健康診断として扱うことができます。
なお、安衛法に基づく定期健康診断の検査項目は以下のとおりとなっています。
(1) 既往歴及び業務歴の調査
(2) 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
(3) 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
(4) 胸部エックス線検査及び喀痰検査
(5) 血圧の測定
(6) 貧血検査
(7) 肝機能検査
(8) 血中脂質検査
(9) 血糖検査
(10) 尿検査
(11) 心電図検査
4.二次健康診断等給付の内容
二次健康診断等給付では、二次健康診断と特定保健指導が給付されますが、その内容は次のとおりです。
1.二次健康診断
(1) 空腹時血中脂質検査
(2) 空腹時血糖値検査
(3) ヘモグロビンA1c(エーワンシー)検査(*一次健診で受けた場合は不可。)
(4) 負荷心電図検査又は胸部超音波(心エコー検査)のいずれか一方の検査
(5) 頸部超音波検査(頸部エコー検査)
(6) 微量アルブミン尿検査(*一次健診で±、+の所見の方のみ可。)
2.特定保健指導
(1) 栄養指導
(2) 運動指導
(3) 生活指導
第2章 二次健康診断を受けるには
Ⅰ 一次健康診断の結果、異常の所見が認められること
二次健康診断等給付は、一次健康診断において、次のすべての検査項目において、「異常の所見」があると診断
された労働者が受けることができます。
(1) 血圧検査
(2) 血中脂質検査
(3) 血糖検査
(4) 腹囲の検査又はBMI(肥満度)の測定
なお、一次健康診断の担当医師により、(1)から(4)の検査項目において異常なしの所見と診断された場合であっ
ても、安衛法第13条第1項に 基づき事業所に選任されている産業医(産業医が選任されていない事業場につい
ては、地域産業保健センターの医師等)等が診断を受けた労働者の就業環境等を総合的に勘案し、異常の所見
が認められると診断した場合には、産業医等の意見を優先して、異常の所見があるとみなされます。
Ⅱ 脳・心臓疾患の症状を有していないこと
一次健康診断またはその他の機会で、医師により脳・心臓疾患の症状を有すると診断された労働者は、二次健康
診断等給付の対象とはなりません。
これは、二次健康診断等給付は脳・心臓疾患の発症前の予防を目的とした給付であるのに対して、脳・心臓疾患
を発症している状態は、すでに療養が必要な状態にあると考えられるためです。
ただし、高血圧症、高脂血症、糖尿病等の疾患について現に治療を受けている場合、あるいは一次健康診断の結
果で血圧、血中脂質、血糖、BMIの各検査項目について「要治療」の判定がなされている場合でも、医師によっ
て脳・心臓疾患の症状を有すると診断されていない場合には、二次健康診断等給付を受けることができます。
Ⅲ 特別加入者でないこと
労災保険に特別加入している方(中小企業事業主、農業等の特定作業従事者等)については、安衛法の適用がな
く、定期健康診断の適用対象となっていないため、二次健康診断等給付の対象とはされていません。
2.給付を受けることができる医療機関
二次健康診断等給付は、労災病院又は都道府県労働局長が指定する病院もしくは診療所である「健診給付医療機
関」で受けることができます。
* 愛知労働局長が指定した健診給付医療機関については、ここをクリックして下さい。
3.給付を受けることができる回数
二次健康診断等給付は、1年度内(4月1日から翌年の3月31日までの間)に1回に限り受けることができます。そのた
め、同一年度内に2回以上の定期健康診断を実施している事業場において、同一労働者について2回以上の健康診
断結果が二次健康診断等給付の要件を満たしている場合であっても、その年度内に受けられる二次健康診断等給
付は1回となります。
なお、一次健康診断を受診した年度と二次健康診断等給付を受ける年度が異なる場合であっても、「給付を請求で
きる期間」内であれば、二次健康診断等給付を受けることができます。
4.給付を受けることができる期間
Ⅰ 給付を請求できる期間
二次健康診断等給付は、一次健康診断の受診日から3ヶ月以内に請求しなければなりません。そのため、一次健
康診断の受診日から3ヶ月を過ぎて請求した場合、二次健康診断等給付を受けることができません。
これは、二次健康診断等給付は、一次健康診断の結果、脳・心臓疾患を発症するおそれが高い者に支給されます
ので、一次健康診断の結果判明後、できる限り早期に給付される必要があるためです。
ただし、次のようなやむを得ない理由がある場合は除きます。
(1) 天災地変により請求を行うことができない場合。
(2) 一次健康診断を行った医療機関の都合等により、 一次健康診断の結果の通知が著しく遅れた場合。
Ⅱ 給付を受けることができる期間
二次健康診断等給付を受ける権利は、労働者が一次健康診断の結果を知ることができる日から2年で時効になり
ます。
5.二次健康診断等の内容
二次健康診断等給付では、二次健康診断と特定保健指導が給付されます。
Ⅰ 二次健康診断
二次健康診断は、脳血管及び心臓の状態を把握するために行われる必要な検査で、具体的には次の検査の全てを
いいます。
ⅰ 空腹時血中脂質検査
空腹時に血液を採取し、食事による影響を排除した低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコレステロール)、高
比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライド(中性脂肪)の量により血中脂質
を測定する検査
ⅱ 空腹時血糖値検査
空腹時に血液を採取し、食事による影響を排除した血中グルコースの量(血糖値)を測定する検査
ⅲ ヘモグロビンA1c(エーワンシー)検査
食事による一時的な影響が少なく、過去1~2ヶ月間の平均的な血糖値を表すとされているヘモグロビンA1cの
割合を測定する検査
* 一次健康診断でこの検査を行っている場合は、二次健康診断で行うことはできません。
ⅳ 負荷心電図検査または胸部超音波検査(心エコ-検査)のいずれか一方の検査
- ・負荷心電図検査
- 階段を上り下りしたり、ベルトコンベアの上を歩くなどの運動により心臓に負荷を加えた状態で、心電図
を計測する検査 - ・胸部超音波検査
- 超音波探触子を胸壁に当て、脳に入る動脈の状態を調べる検査
超音波探触子を頸部に当て、脳に入る動脈の状態を調べる検査
ⅵ 微量アルブミン検査
尿中のアルブミン(血清中に含まれるタンパク質の一種)の量を精密に測定する検査
* 一次健康診断の尿蛋白検査で、擬陽性(±)または弱陽性(+)の所見が診断された場合に限り行われます。
Ⅱ 特定保健指導
特定保健指導は、二次健康診断の結果に基づき、脳・心臓疾患の発症の予防を図るため、医師又は保健師の面接に
より行われる保健指導です。具体的には、次の指導の全てを行います。
なお、特定保健指導は、二次健康診断の結果、脳・心臓疾患の症状を有していると診断された場合は実施されませ
ん。
(1) 栄養指導
適切なカロリーの摂取等食生活上の指針を示す指導
(2) 運動指導
必要な運動の指針を示す指導
(3) 生活指導
飲酒、喫煙、睡眠等の生活習慣に関する指導
6.給付請求の方法
二次健康診断等給付を受けようとする労働者は、二次健康診断等給付請求書(様式第16号の10の2)に必要事項を記
入し、一次健康診断の結果を証明できる書類を添付して、健診給付医療機関を経由して、労働者が所属する事業
場を所轄する都道府県労働局長(事業場が2以上の都道府県労働局の管轄区域にまたがる場合には、その事業の主
たる事務所を所轄する都道府県労働局長)に提出します。
7.請求に必要な書類
二次健康診断等給付の請求の際には、次の書類が必要となります。
Ⅰ 二次健康診断等給付請求書(様式第16号の10の2)
給付請求書に記載する事項は次のとおりです。
(1)労働者の氏名、生年月日及び住所
(2)事業の名称及び事業場の所在地
(3)一次健康診断の受診年月日
(4)一次健康診断の結果
(5)二次健康診断等給付を受ける健診給付医療機関の名称及び所在地
(6)二次健康診断等給付の請求年月日
Ⅱ 添付書類(2)事業の名称及び事業場の所在地
(3)一次健康診断の受診年月日
(4)一次健康診断の結果
(5)二次健康診断等給付を受ける健診給付医療機関の名称及び所在地
(6)二次健康診断等給付の請求年月日
給付請求書には、一次健康診断において、二次健康診断等給付の支給要件となる検査のいずれの項目にも異常の所
見があると診断されたことを証明できる書類を添付しなければなりません。
この書類は、一次健康診断の結果票の写しなどを指したもので、様式は任意となっています。
なお、これらの書類については、給付請求書に記載された一次健康診断の受診年月日及び添付書類が一次健康診断
に係るものであることについて、給付請求書の事業主証明欄に事業主の証明を受けることが必要となります。
8.二次健康診断等の結果
二次健康診断等給付の受診結果は、受診した健診給付医療機関から「二次健康診断等の受診結果」(受診者用)によ
り受診者にお知らせします。また、併せて事業主提出用の受診結果についても渡されますので、受診者は、これを
事業主に提出することとなります。
9.事業主の責務
Ⅰ 医師からの意見聴取(労働者災害補償保険法第27条、同施行規則第18条の18)
二次健康診断を受けた労働者から、二次健康診断を受けた日から3ヶ月以内に二次健康診断の結果を証明する書
面の提出を受けた事業者 は、安衛法第66条の(4)及び安衛則第51条の2第2項の規定により、提出から2ヶ月以内
に、労働者の健康を保持す るために必要な措置について、医師の意見を聴かなければなりません。
また、聴取した医師の意見は健康診断個人票に記載しなければなりません。
Ⅱ 健康診断実施後の措置
事業者は、前記(1)による医師からの意見を勘案し、その必要があると認めるときは、安衛法第66条の5の規定
により、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減
少等、就業上の措置を講じなければなりません。
Ⅲ 二次健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払
健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、「いわゆる一般健康診断は、一般的な健康の
確保を図ることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、 業務遂行との関連において行われる
べきものではないので、その受診のために要した時間については、当然に事業者の負担すべきものではなく労使
協議して定めるべきものであるが、労働者の健康確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考える
と、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい」(昭和47年9月18日付け基発第602号)とさ
れています。
二次健康診断を勤務時間中に受診せざるを得ない場合も同様に、その受診に要した時間に係る賃金の支払いに
ついては、当然には労働者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものではありますが、脳・心臓疾
患の発症のおそれのある労働者の健康確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、その
受診に要した時間の賃金を事業主が支払うことが望ましいものです。
Ⅳ メリット制における二次健康診断等給付の取扱い
二次健康診断等給付に要した費用の額は、メリット収支率の算定の基礎となる保険給付の額及び保険料の額には
含まれません。
二次健康診断指定医療機関名簿について
労災保険二次健康診断指定医療機関(ここをクリックしてください)
※上記のリンク先である厚生労働省ホームページ(「労災保険二次健康診断給付等」)に全国の指定医療機
関名簿が掲載されていますので、参照してください。
問合せ先
労働基準部労災補償課医療係 電話 052-855-2148