第2.労働時間
労働時間とは
労働時間とは、使用者の指揮監督下にある時間をいい、原則的には、始業時刻から終業時刻までの拘束時間から休憩時間を除いた時間ということになります。したがって必ずしも実際に業務に従事しているかどうかは必要ではなく、手待時間は労働時間となります。
さらに、本来の業務ではない始業前の準備時間、終業後の後始末時間も労働時間ということになります。
労働時間の原則
労働時間は、原則として、1週40時間、1日8時間までとなっています(労基法第32条)。
ただし、常時9人以下の労働者を使用する事業場で、商業、映画・演劇業(映画制作の事業は除きます。)、保健衛生業及び接客娯楽業(これらを「特例措置対象事業場」といいます。)については、1週44時間、1日8時間となっています(労基法第40条)。
変形労働時間制
業務の忙しいときは長く、比較的手すきのときには短く、というように所定労働時間を配分し、卜一タルで法定労働時間の枠内に納め、労働時間の短縮を図る方法を変形労働時間制といいます。
- 1ヵ月単位の変形労働時間制(労基法第32条の2)
- フレックスタイム制(労基法第32条の3)
- 1年単位の変形労働時間制(労基法第32条の4)
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制(労基法第32条の5)
の4種類があります。
1ヵ月単位の変形労働時問制
このうち、1), から6), は必ず明示しなければならない事項で、7), から10), は制度を設ける場合に明示しなければならない事項です。
1ヵ月単位の変形労働時問制
(1)は、1ヵ月のうち月初めは比較的暇で、月末に業務が集中する会社や職場で利用しやすいタイプで、1ヵ月以内の一定期間の中で、月末に比較的長い所定労働時間を組み、休日も少なくする代わりに、月初めには休日を多く、所定労働時間も短くすることで労働時間を短縮しようというものです。次に述べる一定の要件を満たす必要があります。
- 変形期間中の所定労働時間の合計は次の計算式による法定労働時間内に収めなければなりません。
(特例措置対象事業場は44時間) - 就業規則などで定めるか、労使協定の締結が必要です。
- 定める事項
- 変形期間(1ヶ月以内)
- 起算日(変形期間を開始する最初の日を定める)
- 労働時間の特定(変形期間内の各日及び各週の労働時間を具体的に定める)
- 労使協定による場合には、上記に加え、協定の有効期間を定め、さらに、労使協定届を所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があります。
フレックスタイム制
(2)は、1日の所定労働時閥の長さを固定的に決めずに、1ヵ月以内の一定期間の総労働時間を決めておき、その範囲内で各労働者が各自の始業時刻、終業時刻を決め、各労働日の労働時間を自主的に決めて働く制度です。
1年単位の変形労働時間制
(3)の方法は、1ヵ月を超え1年以内の一定期間の中で、業務の忙しさに合わせて所定労働時間、休日を組み、1週間あたりの労働時間が40時間を超えないようにしようというものです。
次に述べる一定の要件を満たす必要があります。
- 対象期間は1ヶ月を超え1年以内とすること。
- 対象期間を平均した1週あたりの所定労働時間は40時間以内とすること。所定労働時間の総枠は次の計算式による法定労働時間内に収めなければなりません。
- 対象期間中における労働日数は、1年間に280日以内とすること。
- 1日の所定労働時間は最長10時間まで、1週間の所定労働時間は最長52時間までとする。また、対象期間が3ヶ月を超える場合には
- 週48時間を超える所定労働時間を設定するのは連続3週間以内とすること。
- 対象期間を初日から3ヶ月ごとに区切った各期間において、週48時間を超える所定労働時間を設定した週の初日の数が3以内であること。
- 連続して労働する日数は最長6日以内とすること。
- 次の事項について労使協定を締結し、これを所轄の労働基準監督署に届け出ること。
また、就業規則に1年単位の変形労働時間制を採用する旨を記載し届け出ること- 対象労働者の範囲
- 対象期間及び起算日
- 特定期間を定める場合にはその期間
- 労働日及び労働日ごとの労働時間
- 労使協定の有効期間
1週間単位の非定型的変形労働時間制
(4)は、小売業、旅館、料理店、飲食店のいずれかに属し、かつ常時使用する労働者が30人未満の事業場では、週の法定労働時間の範囲内で1日10時間まで働くことが可能な方法で、一定の要件を満たす必要があります。
労働時間の算定
労働時間の管理が難しいときは、次の制度により、一定の労働時間働いたものとすることができます。
- 事業場外のみなし労働時間制(労基法第38条の2)
- 裁量労働制
- 専門業務型裁量労働制(労基法第38条の3)
- 企画業務型裁量労働制(労基法第38条の4)
労働時間の適正管理
使用者は、その事業場で働いている労働者ごとに、実際に働いた時間を適正に把握・管理する必要があります。