安全週間に岡山労働局長が行動災害防止に取り組む事業場を視察しました(JFEスチール(株)西日本製鉄所(倉敷地区))

 今年で96回目となる全国安全週間(7/1~7/7)は、労働災害を防止するために産業界での自主的な活動の推進と、職場での安全に対する意識を高め、安全を維持する活動の定着を目的としています。
 労働災害は全国的に転倒や腰痛といった行動災害が増加を続けており、令和4年の岡山県内における休業4日以上の労働災害(新型コロナウイルス関係を除く)をみてみますと転倒が505件で全体の23%、腰痛等の動作の反動は358件で全体の16%となっており、行動災害だけで約40%を占めています。これらの要因は様々ありますが、特に労働者の高年齢化が高まっていることが考えらえます。
 行動災害を減らすために作業環境管理や作業管理の改善を進め、また、高年齢労働者を中心に安全に作業を行うことができる身体能力の向上を図ることは急務といえます。
 
 こうしたことから、岡山労働局長(成毛 節)は全国安全週間中の7/3(月)に行動災害防止に積極的に取り組まれている事業場の視察としてJFEスチール(株)西日本製鉄所(倉敷地区)(以下JFEスチールと表記)を訪問しました。



 JFEスチールでは約20年前に労働者の高齢化等による行動体力の低下を原因とする転倒災害や筋骨格系疾患が多発したことを契機に、作業環境管理や作業管理の改善を推進してきました。
 しかし、それだけでは加齢による行動体力の低下を防止することができないため、安全に働くために必要な体力を「安全体力🄬」と定義し、作業環境管理や作業管理の改善と並行してその向上を図ってきました。



 その一つ目のポイントとして、労働者一人ひとりの「安全体力🄬」の把握を行うためのスクリーニングテスト「安全体力🄬機能テスト」を開発しました。
 この「安全体力🄬機能テスト」は、全労働者が定期健康診断と共に毎年行います。労働者自身の気付きに加え、現在の身体能力を数値化することにより、中長期的な体力の変化(衰え)を的確に把握することを可能としています。
 また低体力と判断された労働者は運動指導を受け、改善を図る仕組みになっています。



 二つ目のポイントとして、腰痛など筋骨格系疾患を防ぐための「アクティブ体操®」partⅠ、転倒災害を防ぐための「アクティブ体操®」partⅡを開発しました。
 それらをJFEスチールでは毎日各職場実施しています。継続的に体操を行うことにより、多くの労働者の「安全体力🄬」は維持・向上し、行動災害の件数が長期的に年々減少しています。





このようにJFEスチールにおける行動災害の減少につながった「安全体力🄬機能テスト」と「アクティブ体操®」の実施状況を岡山労働局長が視察し、実際に体験しました。
 
まず安全健康室へルスサポートセンターにおいて、アスレティックトレーナーの乍(ながら)氏より「安全体力🄬機能テスト」のうち「5mバランス歩行」「片脚立ちテスト」「2ステップテスト」の説明を聞きました。



その後、岡山労働局長や倉敷労働基準監督署長をはじめ、取材に来られた記者の方々にも体験をしてもらいました。


40cmの椅子から片脚でふらつきながらもなんとかギリギリ立ち上がることができた成毛岡山労働局長(以下、成毛局長)


よろけてしまい、うまく立ち上がることができなかった金武倉敷労働基準監督署長(以下、金武署長)は身体能力の低下をしみじみ痛感しました


5mバランス歩行では基準値となる時間を大きくオーバーしてしまった成毛局長
足元が見えない状況で直線を歩くのはかなり難しいと感じました


比較的スムーズに歩行することができた岸本健康安全課長(以下、岸本課長)


2ステップテストでは股関節の柔軟性の低下が明らかになった成毛局長
乍氏から「家でもできるトレーニングに励んでください」とアドバイスされました


岸本課長は自信をもって臨みましたが、思ったより記録が伸びず、身体能力の低下を感じることとなりました


「安全体力🄬機能テスト」を体験した成毛局長・金武署長・岸本課長はいずれも50歳代であり、まさに身体能力(柔軟性・脚筋力・平衝性)が顕著に低下する年代です。3人は普段の業務においては現場に出ることも少なくなり、デスクワークが中心となる中、今回の「安全体力🄬機能テスト」を体験してまざまざと自身の身体能力の低下に気付く結果となりました。
 

 
続いて、JFEスチールの「棒線工場」に赴き、当該工場の労働者のみなさんが行う「アクティブ体操🄬」を見ながら、成毛局長をはじめ視察メンバー全員及び取材に来られた報道陣のみなさんで実践しました。

「アクティブ体操🄬」を毎日行っているJFEスチールの皆さんは指先までピシッと伸びていて、流石だなと思わせる美しさでした


JFEスチールのみなさんの行う「アクティブ体操🄬」を見習いながら必死にくらいつく視察メンバー


「アクティブ体操🄬」の想像以上のハードさに視察メンバーはゼーゼーと息を切らしながら・・・


股関節を広げる体操では痛みで悶絶する成毛局長



 体操終了後、成毛局長は「棒線工場」の労働者のみなさんと意見交換を行いました。
 「毎日行う「アクティブ体操🄬」のおかげで身体能力が維持されているのを色々なシーンで実感することがあります」との意見を聞くことができました。
 また、現在は「アクティブ体操🄬」は2種類(partⅠ、partⅡ)がありますが、是非partⅢも開発して欲しいとの意見も聞かれました。


「局長は腰が全然下りていなかったですよ!」と叱咤激励されるシーンもあり、成毛局長は苦笑いでした。


「アクティブ体操🄬」が労働者のみなさんに定着し、その効果を認められていることを感じることができました。
 


続いて「棒線工場」で行われている安全対策等を視察しました。
 
 
 
工場内においても労働者の身体能力を補助するリフトを設置されるなど、行動災害(腰痛)防止対策を取り入れられているのが印象的でした。
 
  
 
最後に成毛局長から全国及び岡山県内における行動災害の発生状況等を説明しました。(報道陣向け)
 
「全国における労働災害の発生状況の推移を型別に見ていただきます。平成元年ははさまれ・巻き込まれや墜落・転落による災害が多く発生していましたが、近年は転倒や腰痛など人の行動に起因する「行動災害」の発生数の増加が著しく、昨年は転倒による死傷病者数が3万5千人を超え、労働災害全体に占める割合も過去最高(約27%)となりました。
続いて昨年の岡山県内の状況をご覧いただきますが、こちらも労働災害全体の23%を転倒、16%を動作の反動・無理な動作による腰痛などが占めており、行動災害への対策が重要だということがわかります。
とりわけ事業者の皆様におかれましては転倒災害についてはハード面の対策のみならず、本日視察させていただいたJFEスチールのような体力づくりといったようなソフト面の対策にも力を入れていただければと思います。」



TV局から取材を受ける乍氏



記念撮影
右: JFEスチール 堀澤所長
左: 成毛局長


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