労働局長による紛争解決援助事例

男女雇用機会均等法に基づく場合

事例:性別を理由とした昇進・昇格についての差別的な取扱いを受けたとする事例

     

【概要】

 会社内で男女差別的取扱いがあるために、男性が先に昇進したとして、会社に対し公正な人事評価を求める援助の申立てを行った。

 

【労働者の主張】

 雇用管理区分も業務内容も同じであるが、勤続年数の長い自分よりも先に、入社したばかりの男性が昇進したのは、男女差別的取扱いがあるためであり、性別によらない公平な人事評価を求める。

 

【事業主の主張】

 明確な人事評価基準はないものの、社内的な考課や勤務状況を踏まえ、対象者リストを作成し、三役での話し合いにより決定しているものであり、男女差別によるものではない。

 

【援助内容】

 実態として男性に比べ女性の昇進が遅れており、明確な昇進基準がないことや、会社から申立者へ検討結果や理由の説明が行われていないことから、申立者は性別による差別によるものと推測しており、意欲をなくしている。
 公正かつ透明な昇進・昇格基準を構築することが、労働者個人の能力発揮と企業の活性化につながることを会社に説明し、申立者への理由の説明と昇進を含め、今後の対応を検討するよう助言した。

 

【結果】

 会社は申立者の思いを真摯に受け止め、公正・透明な人事評価制度を構築し、それに基づき、申立者の格付けを行うこととした。会社から申立者へ新たな評価制度を含めた説明がなされ、双方が納得し、援助は終了した。

 

 

 

育児・介護休業法に基づく場合

事例1:育児休業を理由に職種変更されたとするとする事例

     

【概要】

 営業職(総合職)で採用された労働者が、育児休業からの復帰にあたり、事務職(一般職)での復帰しか認めないという会社に対し、休業前の営業職での復帰を求める援助の申立てを行った。

 

【労働者の主張】

 育児休業からの復帰にあたり、事務職での復帰しかなく、事務職の賃金表が適用されるので、基本給が下がると言われた。事務職での復帰ができない場合にはどうなるのかと聞いても、事務職しかないとの回答で、退職とは言われないが、退職勧奨ではないか。休業前の営業職での復帰を求める。

 

【事業主の主張】

 事務職であれば、転勤がなく残業も少ないので働き続けやすいと思い、提案した。
 育児休業を取得している申立者以外には、事務職への転換を勧めることはしていない。

 

【援助内容】

 育児休業を取得した申立者のみに、事務職の転換を勧めることは、育児休業を取得したことを理由とする不利益取扱いに当る可能性があることから、営業職として復帰させるよう助言した。

 

【結果】

 休業前の職場に営業職として復帰できることとなり、援助は終了した。

 

 

 

事例2:介護休業からの復帰にあたり復職を拒まれたとする事例

     

【概要】

 介護休業から復職しようとしたところ、拒まれたため、復職を求める援助の申立てを行った。

 

【労働者の主張】

 介護休業から復職しようとしたところ、上司に休業期間を延長するよう言われ、復職を認めてもらえない。復職させてもらいたい。

 

【事業主の主張】

 復帰にあたって、今後の介護の状況などが不明であったこと、また介護による精神的な疲労にも配慮し、もう少し休んではどうかと伝えた。
 会社としては、無理に休ませる意図や復職を拒もうとする意図はない。

 

【援助内容】

 上司のアドバイスが介護休業を延長するという選択肢を示す程度のものであれば問題ないが、介護休業の延長の強要あるいは復職の拒否と受け取られるようなことがないよう、適切な対応を行うよう助言した。

 

【結果】

 申立人と会社が改めて復帰に向けた話し合いを行った結果、申立者の希望どおり復職ができることになり、援助は終了した。

 

 

 

パートタイム・有期雇用労働法に基づく場合

事例:通勤手当の支給額に正社員と不合理な待遇差があるとする事例

     

【概要】

 申立者は、有期雇用労働者にのみ通勤手当の上限額が設定されていることは不合理な待遇差であるとして、正社員と同様に交通費の全額に相当する通勤手当を支給するよう紛争解決援助の申立てを行った。

 

【労働者の主張】

 同じ地域から通勤している正社員には交通費の全額にあたる通勤手当が支給されているが、有期雇用労働者のみ上限額を超えた分の交通費を自己負担していることは不合理な待遇差である。

 

【事業主の主張】

 正社員は全国転勤があり得るため通勤手当に上限額を設けていない。一方、有期雇用労働者は店舗採用であり店舗の近隣から通える者を採用しているため、通勤手当に上限額を設けている。

 

【援助内容】

 会社に正社員の人事異動の実態を聴取したところ、正社員の全国転勤はほとんど行われておらず、店舗間の異動も一部の社員に限られていた。パートタイム・有期雇用労働法では、全ての正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間で不合理な待遇差を禁止しており、人事異動の実態をふまえると正社員とパートタイム労働者との間で通勤手当の額に差があることは不合理と認められ得ることから、会社に対し通勤手当の支給額や算定方法について見直すよう助言した。

 

【結果】

 雇用環境・均等室(部)からの助言を受け、会社は有期雇用労働者の通勤手当について検討し、正社員と同様に交通費の全額に相当する通勤手当を支給することとしたため、援助は終了した。

 

 

 

労働施策総合推進法に基づく場合

事例:パワーハラスメント防止措置が講じられていないとする事例

     

【概要】

 職場の上司にパワハラを受け会社に相談したが、何も対応してくれず体調を壊し、休業することになった。復職するにあたり、上司からの謝罪、パワーハラスメントを防止するための事業主の方針の明確化と社内周知を行うよう紛争解決援助の申立てを行った。

 

【労働者の主張】

 自分が受けたのはパワーハラスメントである。謝罪はもちろん、パワーハラスメントの防止対策が徹底され、安心して働ける職場であることが確認できないと復職できない。

 

【事業主の主張】

 申立者に対して、パワーハラスメントを受けたとする具体的な状況や要望を確認し、併せて申立者の上司や同僚にパワーハラスメントの事実確認を行った。申立者は、業務を進めるのにケアレスミスが多く、期限を守れない等の問題があり、上司もきつい口調の注意になったとのこと。
会社は、上の発言は業務指示の範囲であり、パワーハラスメントではないと考えているが、パワーハラスメントを防止するための事業主の方針の明確化と社内周知を行っていなかった。

 

【援助内容】

 パワーハラスメント防止のための事業主の責務を説明し、パワーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置を講じることが義務であること、さらに、パワーハラスメント行為の事実が確認できなかった場合も、再発防止措置を講ずる必要があることを含め、今後の対応を検討するよう助言した。

 

【結果】

 今後同様の事案が発生しないようパワーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置を果たすことで双方が納得し、援助は終了した。

 

 

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