賃金に関する基本的ルール


賃金額についてのルール
 
 「最低賃金法」によって、使用者が支払わなければならない賃金の最低限度額が定められています。たとえ労働者が同意したとしても、それより低い賃金での契約は認められません。最低賃金より低い賃金で契約したとしても、法律によって無効となり、最低賃金額で契約したものとみなされます。

 最低賃金には、すべての労働者とその使用者に適用される「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者とその使用者に適用される「特定最低賃金」があり、それぞれ都道府県ごとに決められています。両方の最低賃金が同時に適用される場合には高い方の最低賃金が適用されます。
 

                        
 

支払い方についてのルール 
 
 賃金が全額確実に労働者に渡るように、支払い方にも決まりがあり、次の4つの原則が定められています(労働基準法第24条)。

1 通貨払いの原則

 賃金は現金で支払わなければならず、現物(会社の商品など)で払ってはいけません。
 ただし、労働者の同意を得た場合は、銀行振込み等の方法によることができます。
 また、労働協約で定めた場合は通貨ではなく現物支給をすることができます。

 

2 直接払いの原則

 賃金は労働者本人に払わなければなりません。未成年者だからといって、親などに代わりに支払うことはできません。
 

3 全額払いの原則

 賃金は全額残らず支払われなければなりません。したがって「積立金」などの名目で強制的に賃金の一部を控除(天引き)して支払うことは禁止されています。
 ただし、所得税や社会保険料など、法令で定められているものの控除は認められています。
それ以外は、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と労使協定を結んでいる場合は認められます。

 

4 毎月1回以上定期払いの原則
 
 賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。したがって、「今月分は来月に2か月分まとめて払うから待ってくれ」ということは認められませんし、支払日を「毎月20日~25日の間」や「毎月第4金曜日」など変動する期日とすることも認められません。
 ただし、臨時の賃金や賞与(ボーナス)は例外です。

 

5 その他

(1) 減給の定めの制限(労働基準法第91条)
 労働者が、無断欠勤や遅刻を繰り返して職場の秩序を乱したり、職場の備品を勝手に私用で持ち出したりするなどの規律違反をしたことを理由に、制裁として、賃金の一部を減額することを減給といいます。一回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。
 また、複数回規律違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給なら月給の金額)の10分の1以下でなくてはなりません。

(2) 休業手当(労働基準法第26条)
 使用者の責任で労働者を休業させた場合には、労働者の最低限の生活の保障を図るため、使用者は平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければなりません。したがって、「働いていないから給料を支払わないのは仕方ない」ということはなく、休みが会社の都合である以上、一定程度の給料を保障する必要があります。

(3) 給与明細書(所得税法第231条)
 所得税法では、給与を支払う者は給与の支払を受ける者に支払明細書を交付しなくてはならないと定められています。したがって、会社には従業員に給与明細書を交付する義務があり、給与を支払う際に交付しなければいけません。

 

                         





 

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