公正な採用選考について

「就職」ということは、一人の人間にとって、生活の安定や社会参加を通じての生きがい等、生きていく上で極めて重要な意義を持っているものであり、人生を左右しかねない重大な決定にかかわるものです。わが国の憲法において「職業選択の自由」を基本的人権の一つとしてすべての国民にこれを保障しているのも、このような趣旨に基づくものです。
一方雇用主にも、採用方針・採用基準・採否の決定など、「採用の自由」が認められています。しかし「採用の自由」は、応募者の基本的人権を侵してまで認められているわけではありません。労働者の採用選考を行うに当たっては、何よりも『人を人としてみる』人間尊重の精神、すなわち、応募者の基本的人権を尊重することが重要です。
 
 
 
「職業選択の自由」ということは、国民がどんな職業でも自由に選べるということですが、不合理な理由で就職の機会が制限されている状況であれば、その精神を実現することはできません。つまり「職業選択の自由」の精神を実現するためには、不合理な理由で就職の機会が制限されないということ、すなわち「就職の機会均等」が成立しなければなりませんが、それを実現するためには、雇用する側が応募者に広く門戸を開いた上で、差別のない合理的な基準による採用選考を行っていただくことが不可欠になってきます。
差別のない合理的な基準による採用選考ということは、人種・信条・性別・社会的身分又は門地などではなく、本人の適正と能力のみを基準として採用選考を行うことにほかなりません。
 
 
 
雇用主の皆様におかれましては、就職の機会均等の確保を図る当事者として、同和関係者、女性、障害者、在日外国人などの立場や人権問題全般に対する正しい理解と認識を深めていただきながら、公正な採用選考の実施にむけたさらなる取り組みをお願い申し上げます。
 
                                   記
 
1 採用選考の基本的な考え方
    採用選考は、
(1) 『人を人としてみる』人間尊重の精神、すなわち、応募者の基本的人権を尊重すること
(2) 応募者の適正・能力のみを基準として行うこと
の2点を基本的な考え方として実施することが大切です。
 
2 公正な採用選考の基本
    『公正な採用選考』を行う基本は、
(1) 応募者に広く門戸を開くこと、
(2) 本人のもつ適正・能力以外のことを採用基準にしないこと
にあります。
 
3 「採用選考時に配慮すべき事項」~就職差別につながるおそれがある14事項事項~
     就職差別につながるおそれがある具体的事項として、少なくとも、
(1) 適正・能力に関係のない事項(本人に責任のない事項や、本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること))を、応募用紙・面接・作文などによって把握すること
(2) 身元調査・合理的必要性のない採用選考時の健康診断を実施すること
など14事項をあげることができます。
 
4 企業における人権問題への取り組み
 
企業は、社会の一員として基本的人権を尊重した行動が求められますが、近年は特に、CSR(社会的責任ある活動)という観点からも、「人権尊重」や「差別撤廃」に対する取り組みが重要視されてきています。
 
5 公正採用選考人権啓発推進員制度
 雇用主が、同和問題などの人権問題について正しい理解と認識のもとに、公正な採用選考を行っていただくため、一定規模(鳥取県の場合10人)以上の事業所等に「公正採用選考人権啓発推進員」を選任していただいています。
 
⇒ 推進員の新たな選任又は選任替えをした場合の届出はハローワークへ
 「公正採用選考人権啓発推進員」制度は、選任しただけ・研修会に出席しただけではなく、各事業所内で『公正な採用選考』の実現のための旗振り役となり、『公正な採用選考』が実際に実現できてこそ意義があります。
   企業によっては、採用選考の具体的な方法を決めたり応募者と実際に面接したりするのは、企業トップクラスや「公正採用選考人権啓発推進員」ではない担当者(支店・営業所 などの出先を含む)である場合も多いのですが、その場合、「公正採用選考人権啓発推進員」 からそれらの企業トップクラスや担当者に対して『公正な採用選考』の考え方をいかに的確に伝えていくかが重要なポイントとなります。

6 採用選考の具体的な方法
(1)採用選考のための社内体制 
  (1) 採用選考の担当者のうちの一人でも、就職差別につながるような不適切な対応を行えば、企業全体の社会的な信頼を失いかねませんので、担当者全員が、『公正な採用選考』の考え方を理解し、それを実行するような社内体制(『公正採用選考システム』)を整えましょう。
     (2) 『公正な採用選考』のための社内体制は、責任の所在の明確化、マニュアルやガイドラインなどによる全担当者への周知徹底、採用選考の方法や基準などに関する点検や修正のしくみ、などに配慮して整備しましょう。
 
(2)採用基準・選考方法
     (1) 労働者の募集を行うに当たっては、あらかじめ、適正・能力のみによる「採用基準」を明確化しておきましょう。
     (2) その上で、適正・能力のみを客観的に評価する「選考方法」をとりましょう。
  身元調査においては、居住地域等の生活環境等を実地に調べたり、近所や関係者への聞き込みや様々な書類・データを収集することなどによって、本人やその家族に関する情報を広く集めることになりますが、その中で、意図しなくても、本人の本籍・生活環境や家族の状況・資産などの本人に責任のないことや、思想信条にかかわることなど、本人の適正・能力とは関係のない、差別の原因となるおそれのある事項が把握されることとなります。
   また、身元調査によって収集される情報の中には、無責任な風評・予断・偏見が入り込んだ情報が含まれることがあり、それが採用を左右するおそれがあります。
   このようなことから、結果として身元調査は就職差別につながるおそれがあります。
 
(3)求人の提示
    (1) 企業が求職者に提示する「求人」の中で、職務を遂行するために必要な適正・能力以外の要素を「労働者に求める応募条件」としないようにする必要があります。
 
(4)応募の受け付け(応募書類・エントリーシート)
    (1) 応募者から提出させる応募書類には、就職差別につながるおそれのある事項を含まないものを用いましょう。
    (2) エントリーシート(インターネットによる応募用入力画面)においても、就職差別につながるおそれのある入力項目を設定しないようにしましょう。
     ⇒ 応募用紙については、次のように定められていたり推奨されています。
         ア  新規中学校卒業予定者
         イ  新規高等学校卒業予定者
         ウ  新規大学等卒業予定者
        エ   一般求職者
 
(5)学力試験・作文
    (1) 学力試験・作文を行う場合、応募者が、求人職種の職務遂行上必要な適正・能力(知識)をもっているかどうかを判断するための方法として適当かどうか検討しましょう。
    (2) 作文を書かせる場合は、「私の家族」「私の生いたち」等本人の家庭環境にかかるものや、思想・信条を推測するためのものをテーマとしないようにしましょう。
 
(6)適性検査
    (1) 「職業適性検査」「職業興味検査」「性格検査」などを用いる場合は、目的に応じて適切な種類の検査を選んだ上で、専門的な知識と経験をもった人が用いるようにしましょう。
    (2) 適性検査の結果を絶対視したり、うのみにしないようにしましょう。
 
(7)面接
    (1) 面接における質問事項はあらかじめ決めておきますが、その内容は「職務遂行のために必要な適正・能力」を評価するために必要な事項とします。
    (2) 面接の中で、就職差別につながるおそれのある事項をうっかり尋ねるなどのことがないよう、公正採用選考の基本的な考え方を十分理解しておくことが必要です。
    (3) 面接は、応募者の基本的人権を尊重する姿勢、応募者の潜在的な可能性を見いだす姿勢で臨みましょう。
    (4) 複数の面接担当官で面接する場合は、全員で公正採用選考の考え方に基づいた対応ができるよう、改めて確認・徹底をし、意思統一を図っておきましょう。
    (5) 面接における応募者に対する評価は、あらかじめ評価基準を決めておき、できるだけ客観的かつ公平に行いましょう。
 
(8)採否の決定(内定)
    (1) 採否の決定は、本人が求人職種の職務を遂行するために必要となる適正・能力を有しているかどうかという観点で、あらかじめ定められた基準にしたがって、総合的に評価しましょう。
 
7 求職者等の個人情報の取扱い
 
職業安定法では、労働者の募集業務の目的の達成に必要な範囲内で、募集に応じて労働者になろうとする者等の個人情報を収集、保管、使用しなければならない旨規定しています。
   また、併せて、法に基づく指針が公表され、原則として収集してはならない個人情報等を規定しています。
                                      次の個人情報の収集は原則として認められません   
(1)人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれ   のある事項
     ・家族の職業、収入、本人の資産等の情報
     ・容姿、スリーサイズ等差別的評価につながる情報

  (2)思想及び信条
     ・人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書

(3)労働組合への加入状況
     ・労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報
 
※個人情報の収集は、本人から直接又は本人の同意の下で収集することが原則です
 
                                                                 違反したときは
(1)違反行為をした場合は、職業安定法に基づく改善命令を発出する場合があります。

(2)改善命令に違反した場合は、罰則(6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)が科せられる場合もあります。

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