東京労働局の企業訪問【株式会社日建設計総合研究所】

 前田芳延東京労働局長は、平成31年3月6日に株式会社日建設計総合研究所(本社:東京都千代田区)の野原文男代表取締役所長を訪問し、同社の「働き方改革」の取組状況をお聴きするとともに、更なる取組の推進をお願いしました。 
 
訪問時写真 野原文男代表取締役所長(右)に、リーフレット『「働き方改革」を進めましょう!』をお渡しする前田芳延東京労働局長(左)
 
【会社情報】
名称 株式会社日建設計総合研究所
本社所在地 東京都千代田区飯田橋2丁目18番3号
創業年月 2006(平成18)年1月
所員数 78人(2019(平成31)年1月時点)
主な事業内容 都市経営、都市デザイン、環境エネルギーに関する調査研究
URL http://www.nikken-ri.com/
 

 今回の訪問では、野原所長から、「持続可能な社会の構築」を掲げて都市経営や環境エネルギー等の調査研究を主たる事業とする同社が、2006(平成18)年の設立当初からフリーアドレスを導入するなど、日建グループの先陣を切って働き方改革に取り組んできた経緯を伺いました。
 その中には、同社が2012(平成24)年に制度化し、現在では毎月約4割の所員が利用する「在宅勤務制度」のように、同社での取組の定着が契機となって、親会社で同様の取組が始まったものもあります。
 また、取組を進めるには「何よりも会社と所員の相互信頼が重要」とした上で、「立派な制度を作ってもそれだけでは不十分で、所員が実際に利用・経験し、良さを実感できるような工夫が大事だ。」とのお話や、「様々な取組は一度に導入できるものではなく、小さな取組でも改良を加えつつ着実に進める中で働き方改革の意識が所員に浸透し、新たな取組がより円滑に進むスパイラルアップができてくる。」とのお話がありました。
 
 訪問の最後に、前田局長から野原所長に対し、東京労働局の作成したリーフレット『「働き方改革」を進めましょう!』をお渡しし、一層の取組をお願いしました。
 
 株式会社日建設計総合研究所では、次のような「働き方改革」に積極的に取り組んでいます。
 

1 取組の目的
 2015(平成27)年に「ワンダフル・ワークライフ・ワークプレイス」の「3W」を掲げ、様々なライフスタイルを持ち、様々なライフステージにいる所員の誰もが、モチベーション高く生き生きと働くことができる就労環境の整備を推進している。

 
2 現在の取組
○ 「ノンテリトリー・フリーアドレス」の導入
 2006(平成18)年の創立当初から、研究員の席を固定しない「ノンテリトリー・フリーアドレス」を導入している。
 当初は戸惑いも見られたものの、研究員は様々な人から幅広い知見を得て新たな着想に繋げることが重要であり、席を固定しないことで専門領域の異なる研究員同士の交流が図れることや、並行してペーパーレスが進むこと、スペースを有効活用できることなどのメリットが大きく、オフィスを移転した現在も継続され、定着している。
 なお、デスクトップパソコンで大量のデータを取り扱う研究員や、間接部門で機密情報を扱う所員には固定席を設けるなど、必要に応じ柔軟な運用を行っている。
 
○ 在宅勤務制度の導入
 2011(平成23)年の東日本大震災の発生後、災害時の事業継続性と電力消費量調査の観点から、同年夏、夏季休暇と合わせて2週間オフィスを閉鎖し、間接部門も含めた全所員による在宅勤務を試行した。
 試行で判明したメリット・デメリットを踏まえ、2012(平成24)年1月より在宅勤務制度を正式に導入した。原則として毎月10日まで利用することができ、毎月月末までに翌月の実施予定日を事前申請する。月末近くには、事前申請を承認する企画部長が全所員に対し、積極的な利用を促している。
 在宅勤務は、頻繁な打合せを伴うような業務には不向きであるものの、入力・集計作業のように単独で集中して行う業務に効果的であるほか、例えば長距離通勤の所員や定期的に家族の通院に付き添う必要のある所員から、通勤による身体的負担の軽減や家庭生活との両立に有効だとの声も聞かれている。
 このような同社での取組の定着を契機に、2014(平成26)年には親会社の(株)日建設計でも同様の制度が導入された。
 現在では、毎月約4割の所員が平均3日、在宅勤務を利用しており、多様なワークスタイルを実現する方策の一つとして定着している。
 
○ 「有給休暇取得奨励日」の設定による年次有給休暇の取得促進
 計画的な年次有給休暇の取得を促すため、同社では年初に年間の「有給休暇取得奨励日」を設定し、所員に周知して該当日の年休取得を奨励している(主に土日祝日に繋げて連休となるよう設けており、2019(平成31)年は計11日)。
 また、各所員は、目標設定に関する上司との年初の面談において、年間の年休取得予定を提出することとしている。これにより上司が部下の年休取得予定を把握し、それを見据えた業務配分や指示を行えるようにしている。
 
 
○ 「いつでもフライデー」の実施
 2018(平成30)年2月から、「いつでもフライデー」の取組を実施している。毎月、所員が各自で設定した1日について、午後3時以降に早退して何らかの活動・交流を行う場合、「いつでもフライデー報告書(140文字)」により事後に自己申告すれば奨励金を支給するもので、所長の発案で始められた。
 以前は通常の「プレミアムフライデー」として取り組んでいたものの、月末金曜は業務が多忙との声があり、実施者が少なかった。そこで、各所員が業務の繁閑を踏まえて任意の日を設定できる形に変更し、名称も2019(平成31)年より「いつでもフライデー」とした。
 この変更に合わせて奨励金の支給を開始したこともあり、現在では毎月5割以上の所員が「いつでもフライデー」を利用し、まち歩きや映画・美術鑑賞、スポーツ観戦、会食等を楽しんでいる。
 また、例えば「都市のにぎわい創出」の調査研究を担う研究員が平日夕方の街に繰り出して様々な体験をすることで、研究の新たなヒントを得るといった効果も期待されている。
 
○ 「大人の社会見学」を始めとした所員の交流を促す取組
 在宅勤務制度等により所員の多様なライフスタイルに対応する一方で、日常的なコミュニケーションの機会が減少することのないよう、所員同士の交流を深める仕掛けづくりも積極的に進めている。
 代表的なものが2008(平成20)年から始まった「大人の社会見学」で、年1回、日建グループの創立記念日(有給休暇取得奨励日)に所員とその家族が様々な施設や企業を訪問している。
 これまでに産業廃棄物処理施設や日本銀行本店などを訪ねており、普段はあまり話す機会のない所員同士であっても、見学中に自然な形で会話が弾み、交流が進んでいる。参加は任意で交通費等は会社が負担しており、毎回20人ほどが参加する。
 そのほか、月1回の約1時間、研究員の自主研究報告会等に合わせて、会社が軽い飲食物を用意する「交流会」や、育児中の所員が仕事との両立に関する悩みなどを話し合う「ランチミーティング」を開催するなど、様々な形で交流のきっかけ作りを進めている。


3 今後の取組
○ 「リモートワーク制度」の試行
 2019(平成31)年5月から「リモートワーク制度」を試行する。すでに定着した在宅勤務制度を拡充するような形で、介護や配偶者の転勤による離職の防止等を目的として、1年ごとの申請により、同社の事業所のない地域であっても転居先での在宅勤務により就労を継続できる制度である。
 すでに申請を承認された所員がおり、今後、試行の中でどのようなメリットや課題があるか等の検討を進めていく予定である。

 
4 取組の効果
 ・所定時間外労働(月平均)
   2017(平成29)年度 13.1時間 → 2018(平成30)年 12.2時間
 ・年次有給休暇取得率(年平均)
   2017(平成29)年 55% → 2018(平成30)年 68%
 
 
※取組内容や実績は訪問時点のものであり、現在とは異なることがあります。
※本記事はPDF形式でもご覧になれます。

 【本件担当】 東京労働局 雇用環境・均等部 指導課 03-3512-1611

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