東京労働局の企業訪問【セイコーホールディングス株式会社】

 前田芳延東京労働局長は、平成31年2月7日にセイコーホールディングス株式会社(本社:東京都中央区)の中村吉伸代表取締役社長を訪問し、同社の「働き方改革」の取組状況をお聴きするとともに、更なる取組の推進をお願いしました。
 
訪問時写真 中村吉伸代表取締役社長(右)に、リーフレット『「働き方改革」を進めましょう!』をお渡しする前田芳延東京労働局長(左)
 
【会社情報】
名称 セイコーホールディングス株式会社
本社所在地 東京都中央区銀座1丁目26番1号
創業年月 1881(明治14)年
従業員数 単体137人 連結12,033人
(2018(平成30)年3月末時点)
主な事業内容 ウオッチ、電子デバイス、システムソリューション、クロック、高級宝飾・服飾・雑貨、設備時計等を扱う各事業会社の連結経営管理
URL https://www.seiko.co.jp/
 

 今回の訪問では、中村社長から同社の掲げる「女性活躍推進」「全員活躍推進」に関する取組について、「当社グループでは、2013年からの3か年計画に女性管理職比率の数値目標を掲げ、取組を進めてきた。女性活躍推進法の施行前で目標の数値化が社会的に浸透していなかったこともあり、数値目標は時期尚早ではないかとの意見もあったが、女性活躍、ひいては全員活躍は今後ますます重要となってくるだろうとの認識のもと、トップダウンで盛り込むこととした」とのご経験を伺いました。
 また、同社では就業時間帯を3種類から選択可能な「セレクティブタイム制度」や個人別に曜日を設定する「ノー残業デー」など、従業員がそれぞれの事情に合わせて働き方を選べる環境整備を進めています。
 これらを始めとした「働き方改革」の推進に関し、「取組の実行にはトップの揺るぎない、ぶれない意志が重要であり、管理職を始めとした従業員への浸透・定着のため、トップの意思を繰り返し表明することが大事だと考えている」とのお話や、同社グループは事業会社ごとに業態や男女割合が大きく異なり、様々な職種の従業員が働いていることを念頭に、「グループとしての一体感を大切にしつつ、各社の課題に応じた取組を進めることも重要である。また、従業員の公平性や納得性にも配慮が必要だ」とのお話がありました。
 
 訪問の最後に、1階ロビーにおいて、前田局長から中村社長に対し東京労働局の作成したリーフレット『「働き方改革」を進めましょう!』をお渡しし、一層の取組をお願いしました。
  
 セイコーホールディングス株式会社(以下「HD」と表記)と傘下の事業会社(以下「グループ各社」と表記)では、次のような「働き方改革」に積極的に取り組んでいます(なお、特記のない場合、記載の取組はHD単体のものです)。
 

1 取組の目的
 急激に変化する時代に対応し成長していくため、様々な人材がお互いの多様性を認め合い、誰もが生き生きと働くことができる「全員活躍推進」の取組を進め、これまでになかったアイデアや製品、イノベーションを生み出すことを目指している。
 
 
2 現在の取組
○ 「女性活躍推進」から「全員活躍推進」への継続的な取組
 2013(平成25)年度から、グループ全体で女性活躍の推進に積極的に取り組んでいる。取組の当初、グループの全従業員を対象とした女性活躍に関するアンケート調査により、現状把握・課題抽出を行った。これを踏まえ、方針の決定や取組の進捗管理・効果把握を担う「女性活躍推進委員会」(HDの社長が委員長を務め、グループ各社の人事担当役員で構成)と、従業員の意見の吸い上げや具体的な取組の企画・立案を担う「女性活躍推進プロジェクト」(HDとグループ各社の女性従業員と管理職で構成)を立ち上げ、取組の推進体制を整えた。
 取組の一例としては、アンケート調査の結果、特に男性管理職層と女性従業員とで女性活躍の現状認識にギャップのあることが判明したため、その差を埋めるべく、女性活躍推進委員会の方針決定の下、それぞれを対象とした研修や講習会を繰り返し実施していることが挙げられる。
 また、グループのイントラネット上に立ち上げた女性活躍推進の専用サイトで、女性活躍推進プロジェクトのメンバーがグループ内外で先進的な取組を実施している会社に取材した内容を発信するなど、意識改革のための取組も継続的に実施している。
 2015(平成27)年度には、取組の効果や残る課題・新たな課題を把握して更なる取組に生かすため、2回目のアンケート調査を実施した。さらに、2018(平成30)年度に3回目のアンケート調査を実施し、体系的にPDCAサイクルを回す仕組みが定着している。
 2017(平成29)年度からは、これまでの「女性活躍推進」の取組を基礎に「全員活躍推進」を掲げ、働き方改革など社員全員が活躍できる環境づくりに取り組んでいる。
 
○ 「セレクティブタイム制度」の導入
 2018(平成30)年6月から、従業員が自身の都合に合わせて3種類の始業・終業時刻を選択できる「セレクティブタイム制度」をトライアルで導入している。
 従来、所定の勤務時間帯は原則として「①午前9時半から午後6時まで」の1種類だったが、本制度の導入により、新たに「②午前8時半から午後5時まで」と「③午前10時半から午後7時まで」が選択肢に加わった。
 前日までに申請すれば利用することができ、例えば夜に習い事のある日は②を選び、出勤前に役所での手続を済ませたい日は③を選ぶなど、私生活の都合に応じて柔軟に勤務できるようになったと従業員から好評である。
 また、同じ制度を導入しているセイコーウオッチ(株)では、営業部門において取引先の売場改装の応援業務を夜間に行うことが多いため、その日は③の時間帯を選択して朝遅めに出勤するといったように、業務上の都合にもある程度合わせることが可能になった。
 時間帯の幅を広げつつも一日の労働時間は変えないことで、フレックスタイム制と比較して従業員・会社ともに労働時間の把握・管理が容易であることや、導入済みの時間単位年休制度との併用で、私生活の都合に相当程度対応できるというメリットなどから、現在、HDでは約25%の従業員が本制度を利用している。
 
○ 個人別「ノー残業デー」の実施と「残業申請カード」の活用等
 特定日に定時退社を促す「ノー残業デー」については、2017(平成29)年度までは一律、毎週水・金曜日としていたが、2018(平成30)年度から、毎週金曜日は引き続き固定しつつ、もう1日は従業員が個別に曜日を選択できるようにした。
 各人が選択できる1日については週ごとに曜日の変更を可能としており、業務の見通しを踏まえて最適な日を「ノー残業デー」に設定することで、繁忙期でもメリハリを付けて業務に取り組めるようになった。さらに、毎月第3金曜日は「完全退社デー」として、当日朝に全従業員にメールで通知した上で午後7時には自動で一斉消灯している。
 また、残業する従業員は各自の机上に「本日は○時まで残業します(残業申請済み)」と記載された「残業申請カード」を掲示することとしており、事前申請の徹底と退社時間の見える化によって所定外労働の削減を進めている。
 そのほか、2018(平成30)年11月から、終業から翌日の始業までに最低10時間の休息期間を設ける「勤務間インターバル制度」を導入し、繁忙期であっても最低限必要な生活時間・睡眠時間を確実に担保することとした。
 
○ 計画的な年休取得の取組
 年次有給休暇の取得促進策の一つとして、年2日分は年度初めに取得予定日を設定し、土曜・日曜と合わせて4連休以上とする「計画休暇」を奨励している。急な業務でやむを得ず取得できなかった場合は改めて日を設定するという柔軟性を持たせつつ、各部署で従業員の年休取得状況を管理し、全員が年度末までに取得できるよう取り組んでいる。
 また、年1回、連続4日の年休を取得する場合に特別休暇を1日付与し、連続5営業日の休暇とする「リフレッシュ休暇」も設けており、従業員は任意に選択した1週間で旅行を楽しむなど、心身のリフレッシュを図っている。
 
○ 業務改善の取組
 業務改善・労働生産性向上の取組として、2017(平成29)年に全従業員を対象に、業務に潜むムダの発見等をテーマとした外部講師による「業務効率化研修」を実施した。その後、各部の従業員から成る「業務改善ワーキングループ」を立ち上げ、研修で得た知見も踏まえ、改善策の企画や改善事例の共有・展開を進めている。
 

3 今後の取組
○ 在宅勤務制度の導入検討
 現在は育児・介護中の従業員のみが利用可能な在宅勤務制度をトライアルで導入しているが、今後は本導入を検討している。
 

4 取組の効果
 ・所定時間外労働(月平均)
   2014(平成26)年度 22.9時間 → 2017(平成29)年度 16.0時間
 ・年次有給休暇取得率(年平均)
   2014(平成26)年度 53.1% → 2017(平成29)年度 56.3%
 ・女性管理職比率
   HD単体   2013(平成25)年 12.5% → 2018(平成30)年 23.8%
   グループ全体 2013(平成25)年 5.3% → 2018(平成30)年 11.8%
 
 
※取組内容や実績は訪問時点のものであり、現在とは異なることがあります。
※本記事はPDF形式でもご覧になれます。

【本件担当】 東京労働局 雇用環境・均等部 指導課 03-3512-1611

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