東京労働局の企業訪問【テルモ株式会社】
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前田芳延東京労働局長は、平成30年9月10日にテルモ株式会社(本社:東京都渋谷区)の佐藤慎次郎代表取締役社長CEOを訪問し、同社の「働き方改革」の取組状況をお聴きするとともに、更なる取組の推進をお願いしました。
佐藤慎次郎代表取締役社長 CEO(左)に、リーフレット『「働き方改革」を進めましょう!』をお渡しする 前田芳延東京労働局長(右) |
【会社情報】
名称 | テルモ株式会社 |
本社所在地 | 東京都渋谷区幡ヶ谷2-44-1 |
創業年月 | 1921(大正10)年9月 |
従業員数 | 単体4,781人、連結23,319人(2018(平成30)年3月末) |
事業内容 | 医療機器・医薬品の製造、販売 |
URL | http://www.terumo.co.jp/ |
テルモ株式会社では、次のような「働き方改革」に積極的に取り組んでいます。
<取組の目的>
「医療を通じて社会に貢献する」との企業理念を根幹に、持続的な成長と企業価値の向上に向けて多様なアソシエイト※1の能力を最大に生かすため、「風通しの良い企業文化の醸成(ATM※2)」と「働きやすい環境の整備」を進めている。
※1 同社では、共に働く仲間という意味を込めて従業員を「アソシエイト」と呼称
※2 明るく(A)、楽しく(T)、前向きに(M)の頭文字をもとにしたフレーズ
<現在の取組>
「働きやすい環境の整備」の3つの柱と推進体制
同社では「働きやすい環境の整備」の3つの柱として「ダイバーシティ推進」「働き方改革」及び「健康経営」を掲げており、2013(平成25)年2月に会長の直轄として「ダイバーシティ推進室」を、2017(平成29)年6月に社長の直轄として「働き方改革推進チーム」及び「健康経営推進チーム」を設け、相互に連携しながらそれぞれの取組の企画・立案と推進を担っている。
がん治療と就労の両立支援
医療機器・医薬品の製造、販売を主たる事業とする同社では、「健康経営」を率先して進めており、その一つとして、2017(平成29)年1月からがん治療と就労の両立に関する制度を導入した。
具体的には、時効で失効した年次有給休暇をがん治療のために使用することができる「失効有休の1日単位利用」や、欠勤扱いとしないことで翌年の年休の発生を考慮した「無給休暇」の付与(上限なし)、1日の就業時間を最大2時間短縮できる「短時間勤務」、1日最大2時間の始業・終業時刻の繰上げ、繰下げが可能な「時差勤務」等の制度であり、がん治療中のアソシエイトは自身の体調や治療の状況を踏まえつつ、これらの制度を利用して就労との両立を図っている。
また、産業医・保健スタッフががん治療中のアソシエイトを通じて主治医と必要な情報を共有し、主治医の意見等を十分に尊重しながら各人に最適な形で治療と就労を両立できるように支援する取組も始めている。
このほか、がんを含めた各種疾病の予防や早期発見、早期治療のサポートにも力を入れており、健康をテーマとした社内セミナーやがん検診・人間ドック・禁煙外来等の受診補助、二次検査費用の全額補助等の取組により「健康経営」を実践している。
労働時間の短縮、年休の取得促進と生産性の向上
同社では働き方改革の目的を「人材の活性化を通じた競争力と企業価値の向上」と位置付け、労働時間の短縮・年休の取得促進と労働生産性の向上を両輪として各種の取組を進めている。
2014(平成26)年度に定年後再雇用のアソシエイトを中心メンバーとした「生産人材育成センター」を設立し、長年の経験で蓄積された技能等を若手のアソシエイトに着実に継承する仕組みを体系的に整備したほか、2017(平成29)年度には生産性向上に向けた取組として各事業所における好事例の発表や、新たなアイディア提案を募集する「働き方改革コンテスト(T-Styleコンテスト)」を実施した。新規提案部門で選ばれたアイディアの一部は、実現に向けた試行が始まっている。
また、36協定による時間外労働の上限の引下げやノー残業デーの設定(週1回)等により労働時間の短縮を進めるとともに、2017(平成29)年度から計画年休の対象を付与日数の半分まで拡大して年間を通じた計画的な年休の取得を進めているほか、勤続10年ごとの「リフレッシュ休暇」(5日間)の導入により、職業生活の節目を迎えたアソシエイトが連続休暇によって心身の十分なリフレッシュを図れるようにしている。
さらに、毎月第3金曜日を同社の「プレミアムフライデー」に設定し、該当日の15時以降は社内の会議・打合せを原則として禁止するとともに時間単位年休の取得を推奨している。試行段階では「一部の人しか休めない」、「そもそも月末は忙しい」といった否定的な意見も上がったが、月末ではなく第3金曜日に設定するなどの修正を経て、2017(平成29)年10月からこの取組を正式に導入することとした。
女性活躍を始めとしたダイバーシティの推進
グループ全体でアソシエイトの約7割が海外の事業所で勤務する同社では、ダイバーシティの推進を成長のエンジンと位置付け、多様な人材が最大限の能力を発揮して新しい価値を生む集団となるべく、積極的な取組を進めている。
女性の活躍推進の面では、2013(平成25)年以降、職場や世代の異なる女性アソシエイトがペアを組み、互いの経験や考え方を共有して成長につなげる「メンター制」や、女性管理職及びその候補を対象とした「メンタリング研修」「女性リーダー育成プログラム」などの取組を進めている。
また、「世代間ギャップ」や「ジェンダーバイアス」を題材に身近で起き得る出来事をマンガ形式で描き、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)への気付きや異なる属性・価値観を持つ他者への理解を促す「ダイバーシティ推進BOOK」を作成してアソシエイト向けに配信する取組を継続的に実施しており、ダイバーシティへの認識を深める一助となっている。
男性の育児参加の促進や介護と就労の両立支援
同社では男性の育児参加が当たり前の風土を目指して、様々な取組を進めている。子どもが生まれた男性アソシエイトを対象に、育児休業を取得しない理由についてアンケートを実施したところ、「上司・周囲に言いづらい」、「制度・手続が分からない」といった声があったことから、人事部門から子どもの生まれた本人だけでなく所属の上司と人事担当にもCCで育児休業の取得を奨励するメールを送付したり、制度や手続をまとめたハンドブックを配布するなどの取組を始めた。
さらに、育児休業を取得した男性アソシエイトの体験談を社内のイントラネットで紹介しており、そこに上司や同僚の応援メッセージも併せて掲載することで、取得した本人だけでなくサポートする上司や同僚もロールモデルとなるような仕掛けとしている。
また、介護との両立支援については、法定の各種制度だけでなく、介護に関する情報提供を行う「介護セミナー」や介護当事者であるアソシエイトが集まって状況を共有する「かいごカフェ」などの取組により、介護そのものや関連制度に対する認識を深めさせるとともに、すでに介護を行いながら就労しているアソシエイトへの積極的な支援を進めている。
制度・取組への理解の促進
両立支援制度を始めとした様々な制度・取組を定着させるためには、制度等の直接の対象とならない者を含めたアソシエイト全体に取組の意義をしっかりと理解してもらうことが重要であることから、同社では機会あるごとに経営トップ自らがその意義や必要性について発信し、理解の促進を図っている。
<今後の取組>
サテライトオフィスの整備を進めている。営業先など外出先から立ち寄って業務が可能になるほか、介護・育児中で短時間勤務を行う社員の通勤時間を有効に業務に充てることも可能になる。また、在宅勤務や時差勤務の対象社員の拡大、勤務間インターバル制度の導入を検討している。
<取組の効果>
○所定外労働時間数(月平均)
2013(平成25)年度 16.4時間 → 2017(平成29)年度 15.0時間
○年休取得率(年平均)
2013(平成25)年度 50.8% → 2017(平成29)年度 68.0%
○男性の育児休業取得率
2011(平成23)年度 3.8% → 2016(平成28)年度 50.0%
○女性管理職比率
2012(平成24)年度 3.9% → 2016(平成28)年度 5.7%
(同社全体の女性比率は約14%)
最後に前田局長から、年次有給休暇の取得率向上等に向けた一層の取組をお願いしました。
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この記事に関するお問合せ先
雇用環境・均等部 指導課 TEL : 03-3512-1611