I 石綿(アスベスト)対策について
過去に石綿を製造し、又は取扱う業務に従事していた方々に、肺がん、中皮腫等の健康被害が発生しています。
石綿を製造し、又は取扱う作業については、昭和46年、労働省(当時)は「特定化学物質等障害予防規則」を制定し、換気装置の設置、作業主任者の選任等のばく露防止対策を義務づけるとともに、健康診断の実施、作業環境測定等の対策を講じてきました。
また、平成7年に、有害性の高いアモサイト(茶石綿)及びクロシドライト(青石綿)を含有する製品については、その製造・使用等を禁止し、さらに平成16年には、その他の石綿も、一部を除いて全面的な石綿製品の製造・使用等の禁止を行いました。
退職者の健康管理についても万全を期するために、一定の要件を満たす退職者に対しては、健康管理手帳を交付し健康診断を無償で実施しています。さらに、石綿による労働者の健康被害に対しては、労災認定の迅速な認定に努めてきました。
その後、平成17年2月、石綿製品が使用された建築物の解体工事等の増加が見込まれたこと等から、建築物の解体作業等における粉じんの飛散防止対策等を主な内容とする「石綿障害予防規則」が制定され、同年7月1日より施行されました。
さらに、石綿の事前調査の結果の掲示や負圧除じん装置の設置等の内容が新たに盛り込まれた改正石綿障害予防規則が平成21年4月1日より施行されました。
また、一部の船舶の解体等作業についても規制が強化され、平成21年7月1日より施行されます。
茨城労働局では、石綿(アスベスト)に多くの関心が寄せられている昨今の状況を受け、以下のような対応を図っています。
- 現に石綿製品を製造し、又は取り扱っている事業場、及び過去に石綿製品を製造し、又は取り扱っていた事業場に対する調査、指導等を実施し、石綿の製造等の作業に従事していた労働者の健康管理の状況等について確認するとともに、石綿障害予防規則等の遵守を徹底することとします。
- 健康管理手帳制度及び労災補償制度についての周知を、改めて行うこととします。
- 独立行政法人労働者健康安全機構茨城産業保健推進センターなどと連携し、労働者及び事業者の方々からの石綿のばく露防止対策に関する相談に対応します。
健康管理手帳制度とは
石綿を製造し、又は取扱う業務など一定の業務に従事して、一定の要件に該当する方は、離職の際又は離職の後に住居地の都道府県労働局長に申請することにより、健康管理手帳が交付されます。
健康管理手帳の交付を受けると、指定された医療機関又は健康診断機関で、定められた項目による健康診断を決まった時期に年2回(じん肺の健康管理手帳については年1回)無料で受けることができます。
申請先・申請方法は、茨城労働局健康安全課にお問合せください。
労災補償制度とは
労働者の業務災害、または通勤災害について、必要な保険給付を行う制度です。
現在雇用されている方や過去に雇用されていた方が、石綿肺、肺がん、中皮腫など、石綿との関連が認められる疾病にかかり、そのために療養したり、休業したり、あるいは不幸にして亡くなられた場合には、労災補償の対象となることが考えられます。
具体的には請求書を提出する等の手続が必要となりますので、最寄の労働基準監督署にご相談ください。
これまでの主な政省令改正(労働安全衛生法令関係)
昭和46年 |
特定化学物質等障害予防規則(以下「特化則」という。)が制定され、第2類物質として製造、取扱い作業における規制(発散防止設備の設置、特定化学物質等作業主任者の選任、作業環境測定の実施等)を開始。 |
昭和50年 |
特化則の改正により、石綿等の吹付け作業の原則禁止。 |
平成7年 |
労働安全衛生法施行令の改正により、アモサイト及びクロシドライトの製造、輸入、譲渡、提供又は使用の禁止、耐火建築物等における石綿除去作業に関する計画の届出の義務付け。
特化則の改正により、以下を規制。
・特定作業における保護具、作業衣等の使用
・吹き付けられた石綿等の除去作業における作業場所の隔離等による規制強化。 |
平成 8年 |
石綿取扱い業務に従事していた一定の要件の離職者に対する健康管理手帳の交付及び健康診断の実施(それ以前はじん肺の健康管理手帳の交付及び健康診断の実施。じん肺の健康管理手帳も引き続き交付)。 |
平成16年 |
労働安全衛生法施行令の改正により、建材、摩擦材等の石綿含有製品の製造、輸入、譲渡、提供又は使用の禁止(10月1日)。 |
平成17年 |
石綿障害予防規則を制定・施行(7月)。 |
平成18年 |
労働安全衛生施行令の改正により、石綿を製造禁止物質に指定するとともに、石綿の定義を「石綿をその重量の0.1%を超えて含有する製剤その他の物」に変更(9月)。
吹き付けされた石綿等の封じ込め又は囲い込み作業にかかる措置等の内容を新たに盛り込んだ改正石綿障害予防規則の施行(9月)。 |
II 石綿(アスベスト)について
◆ 石綿(アスベスト)ってなんですか
石綿は、天然の鉱物性繊維です。日本語では、「いしわた」「せきめん」と呼んでいますが、英語では「アスベスト」を言います。
繊維の直径は、数ミクロンからクリソタイルでは0.02-0.03ミクロン程度、長さは数ミクロンから数十ミクロン程度のものが多いとされます。熱に強く、摩擦に強く切れにくく、酸やアルカリにも強いなど、丈夫で変化しにくいという特性を持ち、さらに軽く綿状の性質により、様々な形に加工しやすいという性格ももっています。
石綿の輸入量
日本の石綿輸入量は1960年代より増加し、1974年の35万トンを最高に年間約30万トン前後で推移してきたが、1990年代から年々減少傾向にあり、2004年の輸入量は8千トンまで減少しています。
◆ なぜ危険なのですか
石綿は、断熱性、耐火性、電気絶縁性、耐酸性、耐アルカリ性に優れているといった利点がある一方で、容易に飛散し、吸入されても石綿繊維は分解されず、肺の組織に刺さり、15年から40年の潜伏期間を経て、石綿肺、肺がん、悪性中皮腫などの病気を引き起こすおそれがあります。
石綿(アスベスト)による健康障害例
- ◆石綿肺(じん肺の一種)
- 肺が線維化するもので、せき等の症状を認め、重症化すると呼吸機能が低下することがあります。
- ◆肺がん
- 肺にできる悪性の腫瘍です。
- ◆胸膜、腹膜等の中皮腫(がんの一種)
- 肺を取り囲む胸膜等にできる悪性の腫瘍です。
これらの疾病については、石綿粉じんを少量吸い込んでも発症する可能性があり、また、石綿粉じんのばく露から発症までの期間が相当長いこともあります。
◆ どこで、何に使用されていましたか
石綿は、様々な用途に使用されてきましたが、石綿の使用量のうち9割以上が建材に使用され、その他、化学プラント設備用のシール材、摩擦材等の工業製品等に使用されています。
また、石綿が含有された製品が多く生産され、石綿糸、石綿布等の石綿紡績製品、石綿セメント又はこれを原料として製造される石綿スレート、石綿高圧菅、石綿円筒等のセメント製品、住宅用建材、ボイラーの被覆、船舶用隔壁のライニング、内燃機関のジョイントシーリング、ガスケット(パッキング)等にも耐熱性石綿製品が用いられました。
さらに、これら石綿又は石綿製品を直接取扱う作業の周辺等において、別の作業に従事していた労働者についても、間接的にばく露を受けていた可能性があります。
【石綿に係る作業のリスト】
- (1) 石綿鉱山又はその附属施設において行う石綿を含有する鉱石又は岩石の採掘、搬出又は粉砕その他石綿の精製に関連する作業
(2) 倉庫内等における石綿原料等の袋詰め又は運搬作業
(3) 以下の石綿製品の製造工程における作業
・石綿糸、石綿布等の石綿紡績製品
・石綿セメント又はこれを原料として製造される石綿スレート、石綿高圧菅、石綿円筒等のセメント製品
・ボイラーの被覆、船舶用隔壁のライニング、内燃機関のジョイントシーリング、ガスケット(パッキング)等に
用いられる耐熱性石綿製品
・自動車、捲揚機等のブレーキライニング等の耐摩耗性石綿製品
・電気絶縁性、保温性、耐酸性等の性質を有する石綿紙、石綿フェルト等の石綿製品
(電線絶縁紙、保温材、耐酸建材等に用いられている。)
又は電解隔膜、タイル、プラスター等の充填剤、塗料等の石綿を含有する製品
(4) 石綿の吹付け作業
(5) 耐熱性の石綿製品を用いて行う断熱若しくは保温のための被覆又はその補修作業
(6) 石綿製品の切断等の加工作業
(7) 石綿製品が被覆材又は建材として用いられている建物、その附属施設等の補修又は解体作業
(8) 石綿製品が用いられている船舶又は車両の補修又は解体作業
(9) 石綿を不純物として含有する鉱物(タルク(滑石)、バーミキュライト(蛭石)、繊維状ブルサイト(水滑石))等の取扱い作業
(10) 上記1~9の石綿又は石綿製品を直接取扱う作業の周辺等において、間接的なばく露を受ける可能性のある作業
◆ なぜ今アスベストが問題となるのですか?
アスベストは、建材としては昭和30年頃から使われ始め、ビルの高層化や鉄骨構造化にともない、吹き付け石綿は鉄骨構造物などの軽量耐火被覆材として昭和40年代の高度成長期に多く使用されました。近年、アスベストを使用した建築物の老朽化が進み、その解体・改修工事が、今後ピークを迎えるといわれており、その際、飛散するアスベスト粉じんによる工事従事労働者等に対する健康障害の発生が懸念されています。
III 石綿等が使用されている建築物又は工作物の解体に係る対策について
石綿は、1970年から1990年にかけて大量に輸入され、その多くは建材として使用されました。今後、これらの建築物の老朽化による解体工事の増加に伴い、解体工事従事労働者の石綿による健康障害の発生が懸念されます。
このため、17年7月に石綿障害予防規則が制定・施行され、今後、関係労働者の健康障害防止対策の充実が図られることになりました。
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石綿原石
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IV 過去に在籍していた事業場で石綿を取扱う作業等に従事していた方へ
~健康管理手帳制度・労災補償制度について~
過去に在籍していた事業場で、【石綿に係る作業のリスト】に該当する作業を行っていた方は、石綿にばく露している可能性がありますので、胸部レントゲン検査等による健康診断を受けるようにしてください。その際、医師に自分が過去に石綿に係る作業を行っていた旨お伝えください。
厚生労働省から各事業場に対し、退職者に対しても健康診断を行うよう要請を行っておりますので、過去に在籍していた事業場から健康診断の連絡等があった場合は、積極的に利用してください。また、リストにある作業に従事していた方は、発がんリスクを高めることになるので、喫煙をしないようにしてください。
また、受診された結果、一定の所見が見られる場合は、住居地の労働局に申請していただければ、健康管理手帳の発行を受け、無料で定期的に健康診断を受けることができます。
また、石綿肺、肺がん、中皮腫等を発症した場合には、それが石綿にばく露したことが原因であると認められれば、労災補償を受けることができます。詳しくは最寄りの労働基準監督署へお問い合わせください。
健康管理手帳交付要件
(1) 石綿(これをその重量の0.1%を超えて含有する製剤その他の物を含む。)を製造し、又は取り扱う業務(直接業務)及びそれらに伴い粉じんを発散する場所における業務(周辺業務)に従事し、両肺野に石綿による不整形陰影があり、又は石綿による胸膜肥厚の陰影があること。(直接業務及び周辺業務が対象)
(2) 石綿の製造作業、石綿が使用されている保温材等の張り付け、除去等の作業、石綿の吹き付けの作業又は石綿が吹き付けられた建築物等の解体等の作業(吹き付けられた石綿の除去の作業を含む。)に1年以上従事した経験を有し、かつ、初めて石綿の粉じんにばく露した日から10年以上を経過していること。(直接業務のみが対象)
(3) 石綿を取り扱う作業(上の2の作業を除く。)に10年以上従事した経験を有していること。(直接業務のみが対象)
(4) (2の作業に従事した月数)×10+(3の作業に従事した月数)≧120であって、かつ、初めて石綿の粉じんにばく露した日から10年以上を経過していること。
「周辺業務」の対象者とは?
石綿の製造又は取扱の業務(直接業務)に伴い発生した石綿粉じんによる健康被害を防止するため、関係者以外の立入禁止措置を講じるよう規定された作業場内で石綿を取り扱わない作業に従事し、石綿の粉じんにばく露したおそれのある方が対象となります。なお、当該作業に従事していた時に、石綿によるじん肺健康診断を受診された方は対象となります。
V 石綿(アスベスト)に関する相談窓口
相談窓口 |
相談内容 |
茨城労働局又は労働基準監督署 |
石綿に関する健康管理手帳、健康診断、労災補償についてのお問い合わせ、ご相談は最寄りの労働局、労働基準監督署までお願いします。
・茨城労働局健康安全課(電話 029-224-6215) |
独立行政法人労働者健康安全機構茨城産業保健総合支援センター
(電話 029-300-1221) |
産業保健総合支援センターにおいて、産業保健関係者、石綿による健康被害を受けられた労働者及びその家族の方々からの健康に関するご相談を受け付けることとしています。最寄りの産業保健総合支援センターまでご相談ください。 |
独立行政法人労働者健康安全機構の各労災病院 |
労災病院において、石綿ばく露歴のある方、その家族の方々、開業医等からの診断・治療、健康診断に関するご相談を受け付けることとしましたので、最寄りの労災病院までお問い合わせください。対応可能な労災病院は以下のとおりです。
・福島労災病院(いわき市内郷綴町沼尻3番地 0246-26-1111)
・千葉労災病院(市原市辰巳台東2-16 0436-74-1111)
・東京労災病院(東京都大田区大森南4-13-21 03-3742-7301)
・関東労災病院(川崎市中原区木月住吉町1番1号 044-411-3131) |
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