青森労働局長による職場訪問を実施

~トラック運転手の労働時間縮減等「2024年問題」対策について意見交換~

 青森労働局(局長 井嶋(いじま) (とし)(ゆき))では、「過労死等防止啓発月間」である11月に、過労死等をなくすため、様々な周知・啓発を行っています。
 その一環として、令和5年11月20日(月)に長時間労働の縮減をはじめとする働き方改革を積極的に推進している企業(ベストプラクティス企業)として、八戸市にある三八五流通株式会社(代表取締役社長 泉山(いずみやま) (はじめ))を井嶋労働局長が訪問し、常務取締役営業本部長宮古(みやこ)様、常務取締役営業本部副本部長杉本(すぎもと)様、取締役人事部長松山(まつやま)様からお話を伺いました。


意見交換の様子


 

 三八五流通株式会社は、昭和22年創業で、農作物等の輸送を主に行っています。
 冒頭、井嶋労働局長の挨拶と意見交換会参加者の自己紹介があり、意見交換が行われました。
 まず、宮古様から改善基準告示の遵守状況について「令和6年4月から拘束時間が1か月284時間が原則となるなか、現行の1か月293時間は遵守されていたものの、令和5年7月のデジタルタコグラフのデータから、長距離輸送を行う運転手のうち数名、284時間を超えている者が認められた。」と述べたうえで、「このままでは法令遵守もままならなくなるし、労働時間や賃金を含めた労働条件が魅力的である職場にしなければ将来運転手を志す者がいなくなり、道路貨物運送事業そのものが成り立たなくなると考え、労働時間の縮減に取り組む決意をした。拘束時間が284時間を超えている者が主に担当している運行ルートの所要時間の分析を行ったところ、運転以外の時間が多くあったことが判明したため、まずは自社で長距離運転を行う者の労働時間を縮減出来ないか検討した。」とお話しされました。
 三八五流通株式会社は、自社で行った取組として「荷扱いの分離」を挙げました。これにより、一人の労働者の拘束時間が増加しないような労務管理が可能になったとのことです。



 続けて宮古様は「荷扱いの分離のみで縮減出来る時間は限られているし、運転手を二人稼働させているためコストは間違いなく増加する。我々は休憩を除く運転以外の時間をどう縮減するかについて頭を悩ませており、代表的なものとして荷積み・荷降ろし・荷待ち時間があるが、特に荷待ち時間の縮減は急務であると考えている。しかしこれは我々のみの取組では縮減出来ない部分がほとんどだ。」とお話しされ、荷扱いの分離を行うことで一人の労働者の拘束時間を抑えることは一定程度可能ではあるものの、それだけでは改正改善基準告示の遵守は厳しく、法令遵守の水準まで労働時間を縮減することや、適正な運賃の収受のためには荷主企業との交渉が必要であることを明らかにしました。
 荷主企業との交渉について宮古様は「弊社では全てのトラックにデジタルタコグラフを搭載しており、これが交渉において役立った。」とお話されました。その理由について宮古様は「あらゆる交渉事において共通していると思うが、数字を基に話をしなければ相手方は我々が提示している条件が妥当かも分からず、そもそも話を聞いてくれないのではないかと思ったからだ。」とお話されました。
 また、荷主企業との交渉の方法については荷主企業に訪問することを原則とし、場合によっては複数の道路貨物運送事業者と共同で荷主企業との交渉を行うこともあったとのことでした。
 三八五流通株式会社では、荷主企業との交渉を行い、一部の運行ルートについて、①神奈川県横浜市までだったルートを埼玉県さいたま市までとし、所要時間が片道1時間程度短縮された、②1回の運行で積載する荷物の量を増やすことで荷物の総量は変えずに運行頻度の減少がなされた結果運転時間の縮減につながった、③荷積み箇所が複数箇所から1箇所になった結果、荷積み時間が縮減された、④契約内容の見直しにより運転手が荷積み・荷降ろし作業を行わなずに済む現場が生まれた結果、荷積み・荷降ろし・荷待ち時間が縮減されたなどの成果が得られたとのことでした。
 宮古様は、「①から④までのそれぞれの取組はトラック運転手の労働時間の縮減に貢献するものであり、それに加えて荷扱いの分離も行うことで、拘束時間を1か月284時間以内にすることは十分可能であると考えている。今後はこうした取組に協力してくれる荷主企業の数を増やして、我々としては無理なく労働基準法や改善基準告示を守っていき、同時にそれぞれの運行ルートで適正な運賃を頂くことで持続可能な道路貨物運送事業にしていきたい。」とお話されました。
 
 また、三八五流通株式会社では、労働時間縮減により期待される効果として、交通事故リスクの減少を挙げ、さらには、効率的な運行の実現により二酸化炭素の排出抑制にも努めたいとのことでした。
 
 最後に、井嶋労働局長は「本日は貴重なお話を伺うことができました。道路貨物運送事業の長時間労働の縮減には自社の取組だけでなく荷主企業の協力が不可欠であるとあらためて認識するとともに、荷主企業からの協力を引き出すにあたっては数字を基にした交渉が効果的であるということを実感しました。荷主企業とのパートナーシップ構築のために国もバックアップしていきたいと思います。」と述べました。
 
 青森労働局では、引き続き、県内の事業場の長時間労働の縮減や働き方改革の推進に向けた周知啓発に取り組んでまいります。

 

左から杉本様、井嶋労働局長、宮古様、松山様

 

 

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