個別労働紛争解決事例(3)
新潟労働局雇用環境・均等室
近年、就労形態の多様化等の要因により、個々の労働者と事業主との間に労働関係のトラブルが増加しています。これに伴いADR(裁判外における紛争解決制度)の活用も増加しています。そこで、新潟労働局の総合労働相談コーナーに寄せられた労働相談事例の中から、新潟紛争調整委員会によるあっせんによって円滑に解決できた事例を紹介します。 |
▼申請の概要
申請人(労働者)は派遣労働者として派遣元事業場Aと1年間の有期雇用契約を締結し、被申請人である派遣先事業場に派遣された。
当該契約期間が満了するに際し、被申請人に派遣されていた派遣労働者の内、申請人を除き契約更新が行われたが、申請人については「女性の喫煙が社風に合わない。」という理由で被申請人から差別的な取り扱いをされ、結果として派遣元事業場Aが雇止めを行った。
申請人はこの差別的取扱いを不服として、被申請人である派遣先事業場に対し、慰謝料の支払いを求めて、あっせんの申請を行った。
▼紛争当事者の主張
【申請人=労働者】
申請人は、業務上で特段の支障なく勤務しており、喫煙についても被申請人のルールどおりに所定の喫煙場所で喫煙をしていたものである。
以前より被申請人の担当者から「女性職員が、所定の喫煙場所といえども公衆の前でたばこを吸うことは社風に合わず、お客さんに見られるとみっともない。」などと注意を受けていた。
女性である派遣労働者が喫煙したことを理由に、被申請人が派遣労働者を選別し、派遣元事業場Aに働きかけるようなことは認められず、これら一連の被申請人の対応により被った精神的苦痛に対し、慰謝料の支払いを求める。
【被申請人=派遣先事業場】
被申請人は、申請人が所属する派遣元事業場Aから4名、派遣元事業場Bから1名の合計5名の派遣労働者を受け入れていた。
そして今般、業務が多忙になったことから、派遣労働者を6名とすることとし、当該派遣契約が満了するに際し、改めて派遣元事業場A及びBの2社から、3名ずつの派遣労働者を派遣してもらう契約を締結した。
新しい派遣契約による3名ずつの人選には、被申請人は関与していない。
ただし、従前より被申請人は、(1)申請人がしゃがんで喫煙している様子について外来者から苦情があったこと、(2)申請人が再三の注意にも拘らず制服の着用について業務命令違反を行ったこと、(3)遅刻・早退・欠勤が頻繁にあったこと等を申請人に注意し、かつ派遣元事業場Aに報告を行っている。
(1)については、被申請人の担当者が申請人に対し、外来者からの苦情の事実を伝えただけで、「女性の喫煙が社風に合わない。」と発言し、女性差別をした事実はないと主張した。
▼あっせんの内容
申請人及び被申請人に個別面談の上、あっせん委員が紛争の経過について尋ねたところ、紛争の発端となった喫煙に係る事実関係の認識には隔たりがあり、また、被申請人は、申請人の雇止めについては全く関与しておらず、雇止めの判断は雇用主である派遣元事業場Aの決定であり被申請人には責任が無い旨を主張した。
紛争当事者双方の主張内容を踏まえ、あっせん委員は紛争当事者双方に対して、歩み寄りを求めたところ、双方ともこのまま争いを放置することは本意ではないとの意思の合致があったため、和解に向けて調整が行われた。
▼結果
あっせんの結果、被申請人は申請人に対して、和解金として○ヶ月分の賃金相当額を支払い、一方、申請人は本件に関して第三者に口外しないことで紛争当事者双方が合意するに至り、合意文書を取り交わした。
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