個別労働紛争解決事例(1)

                                      新潟労働局雇用環境・均等室
 企業組織の再編や人事労務管理の個別化等に伴い、労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争が増加しています。そこで、新潟労働局の総合労働相談コーナーに寄せられた労働相談事例の中から、紛争調整委員会によるあっせんによって円滑に解決できた事例を紹介します。

▼申請の概要
 
申請人(労働者)は設計業を営む株式会社の課長職として、同業他社から転職し、一年半に渡り設計担当課長として勤務してきたが、被申請人(会社)から突然「社風に合わない。業務能力が著しく劣る。」という理由で解雇の予告がなされた。
 申請人はこの解雇を不服として補償金の支払いを求め、あっせんの申請を行った。

▼紛争当事者の主張
【申請人=労働者】
 申請人は知人の紹介で、事業を拡大するために優秀な人材を探していた被申請人の面接を受けた。面接の際には、申請人の手がけた設計・デザインが審査され、その結果、「どうしても当社に課長職で迎えたい。」との強い勧誘を受け、勤めていた会社を退職し、被申請人と雇用契約を締結した。
 入社一年半が経過し、申請人は設計担当課長として勤務していたところ、いきなり担当部長から口頭で解雇を通告されたが、この解雇に納得できなかったため、文書による説明を求めたところ解雇予告通知書が申請人に対し交付された。
 そしてその解雇理由として業務能力が著しく劣ることが挙げられていた。
 申請人としては、入社一年半でこれといった設計デザインの仕事も無く、初期段階の設計プランの仕事ばかりで本来の設計・デザイン能力を発揮できるような仕事はさせてもらっておらず、その中で、業務能力が著しく劣ると言われるのは承服できない。
 被申請人は、入社前の面接時に、申請人の過去の設計やデザインの完成品の写真等で申請人の設計・デザイン能力は確認した上で、申請人を採用したものであり、申請人は被申請人から強く誘われなければ、前の職場で何事も無く働き続けていたはずである。
 今回の紛争は、被申請人に責任があり、解雇されたことにより被った経済的損害及び精神的苦痛を償ってもらうための措置として補償金の支払いを求める。

【被申請人=事業主】
 被申請人は、早急に設計・デザイン能力の高い人材を求めていたところ、取引先から紹介を受け、申請人を課長職として採用した。
 しかし、デザインアイデアに乏しく、設計スピードも期待していたレベルより劣っており、顧客との交渉力も乏しいことから、管理職として雇用し続けるに値しないと判断した。
 被申請人としては、申請人に対し○ヶ月分の賃金補償を提示しているが、これ以上の上乗せは他の労働者との均衡上不可能である。

▼あっせんの内容
 申請人及び被申請人に個別面談の上、あっせん委員が紛争の経過について尋ねたところ、紛争の発端となった解雇にかかる経過については紛争当事者双方ともあっせん申請書に記載されている内容に大きな争いはなかった。
 その上で、紛争当事者双方の主張内容を踏まえ、あっせん委員は被申請人に対して、申請人の請求内容について受け入れ可能な内容を打診したところ、「賃金補償としてではなく、退職金として△ヶ月間の賃金相当額の支払いをすることは可能」と申し立てた。これを受け、申請人は、「紛争のこれ以上の長期化は望まない。被申請人の譲歩を受けて和解したい」と申し立てた。

▼結果
 あっせんの結果、被申請人は申請人に対して、退職金として△ヶ月分の賃金相当額を支払い、一方、申請人は補償金の支払いについてこれ以上請求しない旨を譲歩することで紛争当事者が合意するに至り、紛争当事者双方で合意文書を取り交わした。





 

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