GHS!SDS!

A:会社で溶剤や製剤などを使う場合には、ラベルやSDSで危険性や有害性を確かめることとされているのですが、ラベルやSDSは、どのように決められているのですか。
 
B:SDSについては「家内労働者 健康と安全!」のところでも少しだけ説明しましたね。
 化学物質の容器や包み紙に貼っているラベルや、化学物質を提供されたときに配布されるSDSの記載方法は、GHSで規定されたものに準拠しているんです。
 GHSは、 The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals の頭文字を取ったもので、日本語にすると化学品の分類および表示に関する世界調和システム」となります。
 
                                                       ~GHSについて~
A:リンク先を見てみると、GHSは国連文書だと書いてありますが。
 
B:はい。
 以前は、化学物質の有害性などの表示方法は、国によって異なっていましたし、日本国内でも、様々な法律によって異なる表示方法が規定されていました。
 そのような状況では、化学物質の安全な使用などが困難であるということで、国際的に統一された表示方法が必要という認識から、平成15年7月に国連で、「化学品の分類および表示に関する世界調査システム」の実施促進のための決議としてGPSが採択されました。
この文書は、表紙が紫色なので「パープルブック」と呼ばれているそうですよ。

 
A:どくろなどのマークもGHSで決められているのですか。


 
B:はい。
 GHSには、化学物質の分類基準と情報の伝達方法が規定されています。
家内労働者のときは労働安全衛生関係法令で用いられている「標章」という言葉を使っていましたが、GHSでは、Pictograms=絵表示と呼んでいますので、今回は絵表示という呼び方に統一します。
 
A:GHSでは、化学物質の分類基準ってどのようになっているのですか。

 
B:GHSの分類基準は、爆発物、可燃性などの物理化学的危険性について17項目、急性毒性、発がん性などの健康に対する有害性10項目、水生環境有害性等の環境に対する有害性2項目に分けられています。


 
A:なるほど。その分類基準ごとに絵表示が定められているというわけなんですね。
A:絵表示の説明を読まなくても、絵表示を見ただけでなんとなく危険性や有害性がわかるような気がします。「腐食性」の絵表示は、試験管の液体が金属や手にかかっている様子を示しているようですね。

 
B:先ほど、GHSでは、化学物質の分類基準と情報の伝達方法が規定されているとお話ししましたが、情報伝達の方法として規定されているのが、ラベルとSDSなんですね。
 ラベルには、化学品の名称、注意喚起語、絵表示、危険有害性情報、注意書き、供給者を特定する情報を記載することとされています。
 そして、危険有害性を示す絵表示、注意喚起語と危険有害性情報はラベル上に一緒に配置されるべき、とされています。


 
A:「感嘆符」で表示する危険有害性の内容は、「腐食性」「どくろ」「健康有害性」で表示する危険有害性と重複していますね。
 
B:よくお気づきですね。詳しく見ていただくと、「どくろ」で表示する急性毒性は区分1から区分3、「感嘆符」で表示する急性毒性は区分4と記載されていることが分かります。区分とは、危険有害性の程度のことで、区分1が、最も危険又は有害であるとされています。
 また、絵表示には優先順位があります。具体的には、「腐食性」「どくろ」「健康有害性」は、「感嘆符」より優先します。

 
 例えば、区分1の急性毒性と区分2の皮膚刺激性がある化学品には、「どくろ」だけを表示し、皮膚刺激性に関る表示はしません。急性毒性がなく、区分2の生殖毒性と皮膚刺激性がある場合には、「感嘆符」を表示します。


 
A:なるほど。「どくろ」、「健康有害性」と「腐食性」、「感嘆符」の順で優先的に表示することになっているんですね。
 
B:GHSには、絵表示だけでなく、SDSに記載する項目も定められています。


 
B:GHSでは、これらの項目をこの順番どおりに記載することとされています。

 
                                                      ~日本での対応について~
A:では、日本での、SDSなどの作成基準については、どのようになっているのですか。

 
B:まず、日本でのGHSへの対応ですが、厚生労働省が幹事となって、消費者庁、消防庁、外務省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、GHS専門家小委員会や、製品評価技術基盤機構、日本化学工業協会で構成されたGHS関係省庁等連絡会議において行われています。

 GHSでは、化学物質の分類と情報伝達の方法が定められていると説明しました。日本では、この化学物質の分類を、経済産業省、厚生労働省、環境省などが連携して行っており、令和3年1月現在、約4,400種類に分類されているそうです。
 この化学物質の分類については、独立行政法人製品評価技術基盤機構のホームページで見られるそうですよ。


 
A:情報の伝達って、ラベルとSDSで行うんですよね。
 
B:そうですね。日本では、ラベルとSDSの表記内容を、日本産業規格で定めています。

 
A:あれ、日本工業規格とは別の規格があるんですか。


 
B:いいえ。日本工業規格は、令和元年7月1日から日本産業規格と名称が変更されています。
 英語表記は、「Japanese Industrial Standards」で「JIS」のままで変わりません。
 
A:ラベルやSDSの表示はJISで義務とされているのですか。

 
B:いいえ。
 日本では、ラベルやSDSについて、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化管法)、「労働安全衛生法」(安衛法)、および「毒物及び劇物取締法」(毒劇法)の3つの法律で、作成や交付を義務付けています(令和3年8月末現在)。
 これらの法律で必要とされているラベルやSDSは、JISで定められている項目を表示すれば、要件を満たすこととされていますので、JISが土台となっています。

B:例えば、労働安全衛生法では、以下の項目をラベルに記載することとしています。
 


 
B:さらに、SDSでは、以下の項目を記載することとされています。

B:安衛法でのラベルやSDSに関して、化学物質対策に関するQ&A(ラベル・SDS関係というページがあるので参考になると思います。

 
A:ラベルの表示やSDSの交付をしなければならない化学物質は、どれくらいあるのですか。
 
B:安衛法やその関係政省令で、 その物質を提供したり譲渡したりする事業者にラベルの表示及びSDSの交付を義務付けている物質は674種類です(令和3年8月末日現在)。
 現在は674物質ですが、危険性や有害性が明らかになった場合には、新たに対象を追加することとされています。
 また、この674物質以外のもので、危険性や有害性がある物質については、ラベルの表示及びSDSの交付が努力義務とされています。
 
A:安衛法以外の規制はどうなっているのですか。

 
B:先ほど説明した通り、日本の法律でSDSの交付義務を定めているのは、化管法、 安衛法、毒劇法の 3つです。
 これらの法律について、詳しく知りたい場合には、経済産業省や厚生労働省、職場の安全サイト、国立医薬品食品研究所などのHPを見てください。


 
A:日本では、世界共通のGHSをもとに、JISで、ラベルやSDSの表示の方法を規定していて、そのラベルやSDSの表示や交付については、3つの法律で定められているということなんですね。
 
                                                     ~SDSについて~
A:そういえば、MSDSっていうのもあったと記憶していますが。SDSとMSDSは違うんですか。

 


 
B:以前MSDSと呼ばれていたものが、平成24年にSDSと名称変更されました。
  職場の安全サイトでは、化学物質のSDSを確認することができます。


 
B:職場の安全サイトで作成した「メタノール」のSDSの一部です。
 
B:このSDSでは、危険有害性の要約のところに絵表示が記載されていますね。

 
A:ところで、絵表示が表示されているラベルは、一般の消費者が手にするようなものにも表示する義務があるのでしょうか。


 
B:先ほどの3つの法律では、絵表示、ラベルやSDSは、事業者などの間の取引の際に表示等が義務付けられているもので、一般の消費者に渡るものには、明確な表示の義務はありません。
 しかし、業界団体が独自に表示するためのガイドラインを設けています。
ガイドラインが設けられているものとして塗料や接着剤などがあります。
 
A:なるほど。危険性や有害性のある物質が含まれているかどうかを知ることは、消費者にとっても大切ですよね。
 
B:そうですね。
 国連文書であるGHSには、消費者製品への表示についても言及されていることから、日本では、経済産業省が独立行政法人製品評価技術基盤機構に対して具体的な手法を示すよう委託して、ガイダンスができています。
 このガイダンスに基づいて、先ほどの接着剤や塗料などの業界団体が自主表示のガイドラインを作っているということです。


 
A:職場で扱っている様々な物質について、まず絵表示を見て、絵表示があれば、GHSやJISで定められている危険性や有害性の情報が記載されているラベルやSDSを確認することが大切ってことですね。
 
B:そうですね。
 働く現場では、日々新しい化学物質も使用されてきますし、今まで使用していたものの代わりに異なる化学物質を使用することもありますよね。
 そのような場合には、まず絵表示があるか、絵表示がある場合にはSDSはどうなっているのかを確認することは非常に大切です。
 絵表示がない物質でも、ラベルやSDSが努力義務とされている物質が含まれているかもしれないので、その物質の提供元に確認するとよいと思います。

 
 厚生労働省では、ラベルでアクションという取り組みを進めています。
 健康被害を防ぐためのリスクアセスメントのためにも、一度ご覧になるとよいでしょう。


 
 
 

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