家内労働者 健康と安全!

A:昔、家内労働者の方々が、ベンゼン糊でサンダルを接着させる業務を行っていて、ベンゼン中毒になったことがあるって聞いたんですが、家内労働者の安全衛生管理は、家内労働者任せなのですか?
 
B:ヘップサンダル事件のことですね。

 
A:ヘップサンダル事件?

 
B:ヘップサンダルとは、『ローマの休日』でオードリー・ヘップバーンが履いていたサンダルのことで、公開当時大流行しました。このサンダルの製造時にベンゼン糊を使用しており、家内労働者だけでなく、家族にまでも死亡を含む再生不良性貧血が多発して社会問題になったというものです。
B:家内労働者は、委託者から仕事の委託を受けているので、労働者とは区別されることは以前にお話ししました。
 
A:はい。でも、委託者との関係で委託の条件などについて保護規定が設けられているという説明でしたよね。
 
B:そのとおりです。
 家内労働法とその施行規則には、安全衛生管理についても規定されています。
 
A:でも、家内労働者は労働基準法やその関係の法令の「労働者」ではないですよね。

 
B:そうですね。
 家内労働法では、委託者と家内労働者の関係から、家内労働者自らが安全衛生管理を行う必要がある項目のほかに、委託者にも一定の安全管理や衛生管理の責任を定めています。
A:委託者が行わなければならないことってなんですか?

 
B:委託者は、家内労働の委託に関して、家内労働者に機械を貸与したり譲渡しようとする場合には、機械によっては、安全装置を取り付けて貸与などしなければならないと定められています。
 
A:どのような機械が安全装置を取り付けなければならない機械なんですか?

 
B:木工用丸のこ盤、手押しかんな盤、プレス機械及びシャーと定められています。
 また、木工用丸のこ盤の反発予防装置または歯の接触予防装置、手押しかんな盤の刃の接触予防装置、研削盤や研削といし研削といしの覆い、そして動力により駆動されるプレス機械については、労働安全衛生法第42条の規格を備えているか確認したうえでなければ提供などできない、とされています。
A:労働安全衛生法第42条って?

 
B:42条関連については別の機会に説明することとして、簡単に言うと、機械の性質などに応じた構造などが法令で定められていて、そのような機械を譲渡、貸与、設置する場合には、定められた構造を備えていなくてはならないとしている条文です。
 
A:先ほどの機械のうち、木工用丸のこ盤とか手押しかんな盤なら大体見当がつくのですが、シャーとか、どのような機械かよくわかりません。
 
B:シャーというのは、金属や紙などを「せん断」によって切断する機械です。
文房具の「押し切り」を大きくしたような機械だと思ってほぼ間違いないです。
A:研削盤って、グラインダのことですよね?
 
B:大体あってます。

 
B:このほかにも、回転部分に巻き込まれないように覆いを取り付けなければならないとか、電気機械器具の充電部分の絶縁覆いを取り付けなければならないなどの規定も設けられています。
 
A:充電部分って何ですか。

 
B:電気が流れているところと考えて間違いないです。

 
B:さらに、家内労働法施行規則の別表に定められた機械については、安全確保のための事項などについて、書面で家内労働者に交付しなければならないとも規定されています。
 
A:労働者を雇っている工場で行われている安全対策や労働者教育と似ていますね。
 でも、譲渡などする際に安全装置を取り付けなければならないとか書面で安全措置の内容を通知するなんていうのは、労働安全衛生法より厳しい規定なんですね。
B:そうですね。
 労働安全衛生法では、一定の機械は構造規格を備えていなければ譲渡などしてはならないとされていますが、安全装置まで取り付けなければならないとまでは規定されていません。
 家内労働者への機械の提供等は、より安全側に寄った規定と考えられます。
B:ただ、やはり家内労働者は、委託を受けて自らの裁量で作業をするため、家内労働者自身が実施しなければならないことについても定められています。
 例えば、家内労働者自身が用意した機械を使用する場合、今まで説明したような措置を、家内労働者自身がとる必要があるとされています。
A:家内労働者自身による安全確保、ということですね。

 
B:そうですね。

 
A:衛生対策についてはどうなっているのですか。

 
B:委託に関して有機溶剤などの有害物を提供する場合には、漏れたり、内容物が発散したりしないような容器に入れて提供等しなければならず、容器には、物質の名称と取り扱い上の注意を記載しなければならないとされています。
 
A:なんか当然のことが書いてあるような気がします。

 
B:そうですね。
 工場などで有機溶剤や特定化学物質などを含んだものを使用する場合には、購入した入れ物に名称や取り扱い上の注意が記載されていると思いますが、これらを家内労働者に提供する場合には、小分けにされることがほとんどで、その小分けにする容器は汎用のものであることが多いので、このような規定が設けられているのだと思います。
 当然のことですが、先ほどのベンゼン中毒の発生とも大きな関係があります。
A:現在、工場などで有害物を含んだものを取り扱う場合には、製造元などから安全データシート(SDS)を取り寄せることとされていますよね?
B:はい。
 家内労働者に、有害物の性質や取り扱い上の注意事項を渡す場合にも、安全データシートを交付することが望ましいとされています。
 安全データシートには、現在は、危険性や有害性を示すため、GHSで定められた世界共通の記号が表示されています。
 
A:このような表示がなされている有害物の取り扱いには、局所排気装置などの措置が必要ですね。
B:はい。労働安全衛生法では、事業者の措置義務とされているのですが、家内労働法では、局所排気装置などの設置は、家内労働者の努力義務と規定されています。
 また、防じんマスクや耳栓についても、委託者が使用させるのではなく、家内労働者自身が、使用しなければならない、補助者がいる場合には補助者とともに使用しなければならない、と定められています。
A:局所排気装置などを設置することは、家内労働者には、技術面や金銭面で困難なことが多いのではないのですか。
 
B:そうですね。
 家内労働法では、家内労働者が安全装置や局所配置装置を設置する場合には、委託者は必要な援助をするよう努めなければならないと規定されています。
 委託者は、家内労働者の安全対策や衛生対策に十分な配慮が必要だといえますね。
   
 
   
 
 
  








 

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