家内労働?工賃?

A:家内労働者って労働者じゃないんですか?
B:家内労働者とは、「家内労働法」で定義されていて、「委託者」という製造業などを営んでいる事業者から、物品の製造加工などの委託を受け、その際、物品の提供を受け、その提供された物品を使った製造、加工などの仕事の委託を受けている人のことをいいます。
 労働基準法で規定された「労働者」には該当しない、という意味では「労働者」ではありません。
A:下請さんですか?
 
B:「内職」をしている人というほうがわかりやすいかもしれませんね。
 形態は物の加工などを請け負っているのですが、通常の「下請さん」のように他人を使用している場合は家内労働者とはされません。
 法律では、常態として単独又は同居の親族のみを使用している人を家内労働者と定義しています。
 ただ、他人を雇用していない場合は必ず家内労働者となる、ということではないんですよね。
A:内職さんならわかります。
 下請さんは工場のような作業場所を持っていて、そこで複数の人たちが働いているイメージで、内職さんは自宅で仕事をしているイメージですね。
 
B:家内労働者の人たちは、一般的には、自宅で作業している方が多いと思いますが、簡単な機械を使って作業するために音がしたり、有機溶剤などを使用するためににおいがするような場合、自宅以外の作業場所を持っている方もいます。
A:作業場所を持って仕事をしているとなると、下請さんと区別がつかないですね。
B:そうですね。
 でも、一般的に家内労働者は、物の加工などを委託する委託者から、加工前の材料の提供を受けていることが多いのも特徴だと思われます。
B:家内労働者の工賃とは、加工とか製造するもの1つについての単価が決められていて、出来上がった品物の数量に応じて工賃が支払われるものですので、製造や加工の代金に材料費とか人件費を入れて請求し、その金額を受領している場合や、高価な機械設備を保有して企業的な活動を行っている場合は、家内労働者には該当しないと思います。
A:そのような場合は、下請さんとなるんですね。
 
B:そうですね。
 さらに、家内労働者の場合は、始業時刻や終業時刻が決められておらず、また、 「仕事を発注する人」の指揮下にないので、労働基準法の労働者とも異なります。
 労働基準法の労働者の場合、原則として、始業、就業の時刻が決められていて、「使用者」の指揮命令下にありますので、家内労働者の態様とは異なりますね。
 
 話はそれますが、下請さんとか外注さんとか呼ばれていても、始業・終業の時刻が決められていたり、「仕事を発注する人」の管理下にあったり、指揮命令を受けていたりする場合、労働基準法の「労働者」となる可能性があります。
A:なるほど。
 物の製造や加工という、行っていることは通常の労働者と同じだけど、管理者などから命令されることがなく、自分の裁量で作業時間を決めたりできる人が「家内労働者」と考えられるわけですね。
B:そうですね。
 さらに、常態として他人を雇用していないことも「家内労働者」である重要な要件です。
 
A:そうすると、家内労働者に支払われるのは「賃金」ではないということになりますか?

 
B:そうですね。先ほども少し触れましたが、家内労働者や委託者には「家内労働法」という法律が適用されます。
 委託者と家内労働者を比較すると、委託する側である委託者の立場が、委託を受ける立場の家内労働者より優位と考えられますので、家内労働者を保護するため、「家内労働法」が制定されました。
B:その家内労働法では、家内労働者には「労働の対償として」、「工賃」が支払われます。
 ここでも「労働の対価」としての「賃金」が支払われる労働者と区別されています。
 この工賃は、委託を受けた物品ごとにあらかじめ単価が定められていて、家内労働者が製造したり、加工したものの、出来高で支払われることとされています。
 
A:出来高ですか。
 労働者にも「出来高払い制の労働者」という人たちがいますが、家内労働者はそれとも違うということなんですよね。
B:はい。
 出来高払い制の労働者の場合も、始業・終業の時刻が決められていて、使用者の管理下にあって、指揮命令を受けて働いているため、家内労働者とは異なります。
B:家内労働法には「委託者」や「家内労働者」の定義のほかに、委託条件の通知などについても規定されています。
 この通知には家内労働手帳を用いることとされ、様式が示されています。
 この様式と次にお話しする伝票形式のものは、参考様式として定められていますので、実際に家内労働者に渡したりするものは、これらの内容を備えていればよいということとされています。
基本委託条件の通知の様式は次のように示されています。
 
A:様式の任意性ってことですか。
 
B:そうですね。
 また、委託者と家内労働者を明示して、工賃の支払場所や支払期日、物品の受け渡し場所なども記載することとなっています。
A:不良品の取り扱いについても記載することになっているんですね。
B:はい。
 家内労働法の施行規則で、不良品の取り扱いに関する定めをする場合には、その定めを家内労働手帳に記載しなければならないとされているため、参考様式にも項目が設けられています。
A:家内労働者は、委託を受けて仕事をしているから、不良品を出した責任を取らなければならないこともある、ということなんですね。
B:そうですね。
 ここも労働者と違うところですね。
 工賃の支払いなどと同様、後々のトラブルを避けるために、あらかじめ決めておく必要がかなり高い項目であると考えられています。
B:次は、物品の委託を受け取りの際に記載する様式で、伝票形式のものです。

 
   
 
B:上は委託者が家内労働者に物品の加工などを委託するときに記載するもの、 下は、委託者が家内労働者から委託した加工などが終わった物品を受け取るときに記載するものです。
 
A:委託者が支払う工賃についても何か規定があるのでしょうか?

 
B:家内労働法には、工賃について、最低工賃を定めることができるという規定もあります。

 
A:工賃にも最低賃金のように最低基準が適用される場合があるんですね。

 
B:はい。
 すべての家内労働の種別に設定されているわけではないのですが、全国45都道府県で、それぞれの地域の状況に応じた最低工賃が決められていて、令和3年3月7日現在で98件あります。
 最低工賃は、その地域で必要と認められる工賃について、審議会の調査審議によって労働局長が決定する、と規定されています。
 これも最低賃金の制度に似ていますね。

 山梨県では、婦人服製造業(ニットを含む)、電気機械器具製造業、貴金属製品製造業の3工賃について最低工賃が定められています。
B:それと、もう一つ、家内労働に関して注意しなければならないことがあります。

 
A:どのようなことですか?
B:家内労働で高収入が得られるとか、家内労働をするための講習会を開いたりするような折り込み広告などです。
 例えば、「自宅で少し働いて、ラクして高収入」、「経験は不要。誰にでもできる簡単なお仕事です。」、「興味がある方は、○○までご連絡ください。」、「先着○○名様までの受付です。」というようなフレーズがあり、少し小さめに「このお仕事には専用のミシンが必要です。」とか、「専用のパソコンが必要です」などと記載されていたりします。
 最近はSNSでもそのような広告が出る場合があるそうです。

 その広告を見てその業者に連絡すると、その仕事をするためには専用のミシンなどが必要で、そのミシンなどはその業者から購入しなければならない、と説明されます。
B:そのミシンなどは、かなり高額な価格設定されているのですが、相手方の、「高収入を得られるのですから、初期投資ですよ」などという言葉に乗せられ、高収入を見越して高いミシンなどを買ったところ、その業者からは仕事は全く来ず、連絡しても連絡が取れなくなってしまうことがあるようです。

 そして、よく聞いてみると、ほかにも被害者がいること、当該業者の行方は全く分からなくなってしまっていることがわかります。
 
A:詐欺ですか?
B:はい。
 詐欺の場合もあるようです。
 このような話は、毎年、全国のどこかで起こっており、山梨県でもしばらく前にはあったように聞いています。
A:内職を探すのも、詐欺にあわないように注意する必要がありますね。

 
B:どのような広告でもそうですが、よく見極める必要があると思います。
 このようなトラブルについては、都道府県に相談窓口がある場合があるので、都道府県のホームページをチェックされることも、お勧めします。
A:トラブルになる前に確認することが必要ですね。
B:そうですね。
 怪しいと思ったら、まず、周りの人に相談しましょう。
  ラクして高収入、専用の機械の購入が必要などの甘い言葉には気を付けましょう。
 
 
 
  








 

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