従業員の方が裁判員等に選ばれた場合のご質問について取りまとめました

従業員の方が裁判員等に選ばれた場合について、よく寄せられるご質問に対する回答をご紹介します。

 その他のご質問については、こちら(裁判所ウエブサイトへリンク)をご覧ください。

 なお、就業規則を定めるに当たり不明な点等がある場合には、佐賀労働局労働基準部監督課(TEL:0952-32-7169)

又は各労働基準監督署にお問い合わせ下さい。

 

 問1 就業規則において
   (1) 裁判員候補者名簿記載通知を受けたこと
   (2) 裁判員候補者として呼出しを受けたこと
   (3) 裁判員や補充裁判員に選任されたこと
  について、使用者に対する報告を義務付けることは問題ないでしょうか。                                                  

 
 
答 裁判員法第101条第1項では、何人も、裁判員や裁判員候補者等の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる
  情報を公にしてはならないとされています。そして、「公にする」とは、そのような情報を不特定又は多数人の
 知り得る状態に置くことをいいますから、裁判員等が、休暇の取得のためその他の理由から、自分が裁判員等で
 あることを他
人に話したとしても、この規定に違反するものではないと考えられます。

   したがって、就業規則において、従業員に対し、(1)裁判員候補者名簿記載通知を受けたこと、(2)裁判員候
 補者として呼出しを受けたこと、(3)裁判員や補充裁判員に選任され たことについて、使用者に対する報告を義
 務付けた場合
であっても、それが、(1)から(3)までに該当する従業員が一定の期間不在となることに伴って、従
 業員の勤務体制の
変更等を行う必要があるなど、合理的な必要性があることに基づき、その必要性の範囲内で、
 報告を義務付けるもの
であるときは、その義務付け自体が裁判員法に違反することとはならないものと考えられ
 ます。

 

 

 問2 就業規則において、裁判員用の特別の有給休暇を取得した場合に
   (1) 裁判員として受領した日当は使用者に納付する
   (2) 日当を受領した時はその金額について給与から減額する
  などと定めることは問題ないでしょうか。  

 

答 例えば、(1)のように、裁判員として受領した日当は使用者に納付するという規定を置いた場合、その規定によ
 り実質的に労働者が不利益を被るような場合は、裁判員法第100条が禁止している不利益取扱いに該当する可能性
 があ
ります(例えば、受領した日当が1万円であり、特別の有給休暇に支払われる給与額が6000円である場合には、
 日
当を納付することで4000円の不利益を被ることになります。)。

  また、(2)のように、特別の有給休暇としているにもかかわらず、給与額から裁判員の日当を差し引くことは
 一般的に認められません。

  なお、例えば、「裁判員用の特別の有給休暇を取得した場合には、1日分に相当する給与額(例えば1万5000円)
 と日当相当額(例えば1万円)との差額(例えば5000円)を支給する。」というように、給与額と日当相当額との
 差額を支
給するような特別の有給休暇制度にすることは問題がないと考えられます。

 

 

 問3 就業規則において、従業員が裁判員候補者名簿記載通知を受け取った場合に、辞退の申出をす
  るかどうか及び裁判員として参加することが困難な時期についてどのよう に回答するかを使用
  者と協議の上決定すると定める
ことは問題ないでしょうか。

 

答 就業規則において、従業員が裁判員候補者名簿記載通知を受け取った場合に、辞退の申立てをするかどうか等に

  ついて使用者と協議しなければならないこととしたとしても、裁判員法第101条第1項に違反するものでないことに
 ついては、問1の答えと同様です。

   なお、労働基準法第7条において、労働者が裁判員の職務を遂行するために必要な時間を請求した場合には、使

  用者は拒んではならないとされていることから、参加の意思を持っている労働者に対して、当該労働者と協議をし
 た使用者が辞退を強要することはできないと考えられます。

 

 

  問4 従業員に対する有給休暇の付与を使用者に対して義務付ける前提として、全労働日の8割以上
   出勤することが必要であるところ(労働基準法第39条第1項、第2項) 同条第7項によれば、労
   働災害による休業や育児休業
等、一定の事由に基づく休業期間は、同条第1項、第2項の適用に
   当たっては「出勤したものとみなす」とされて
いますが、 従業員が無給休暇により裁判員候
   補者として出頭したり、裁判員等として職務に従事した場合、同
条第1項、第2項の適用に当た
   っては「出勤したもの」として扱うことになるのでしょうか。  

 

答 労働基準法第39条第7項において「出勤したもの」とみなす場合が規定されていますが、裁判員候補者として出
 頭したり、裁判員等として職務に従事した場合はこの規定に当てはまらないため、この規定によって「出勤した
 もの」
とみなすことはできません。

   そのような場合における不就業は、法律に定められた正当な手続により労働者が労働義務を免除されているも
  のであるため、8割出勤の算定に当たっては「全労働日」から除外して扱うべきものとされています。

   なお、当事者の合意によって、労働者に有利に「出勤したもの」として取り扱うことは差し支えありません。

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