特定化学物質障害予防規則改正(金属アーク溶接等作業への規制強化)について

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金属アーク溶接等で発生する「溶接ヒューム」「塩基性酸化マンガン」について、労働者に神経障害等の健康障害を及ぼすおそれがあることが明らかになったことから、労働安全衛生法施行令、特定化学物質障害予防規則等が改正され、令和3年4月1日より順次、特定化学物質を取り扱う作業に準じた作業環境管理、健康管理措置が義務づけられます。
このページでは、その改正内容(追加される措置義務)のポイントについて解説しています。


目次

1 省令改正の背景
2 規制対象となった物質
3 措置義務の一覧
5 Q&A
6 参考

 省令改正の背景

厚生労働省が開催した「化学物質による労働者の健康障害防止に係る検討会」の報告において、溶接ヒュームに含まれる「塩基性酸化マンガン」のばく露による神経機能障害が多数報告され、また、国際がん研究機構(IARC)が2017年に溶接ヒュームをグループ1(ヒトに対する発がん性)に分類したこと等から、令和2年4月22日に政省令(特定化学物質障害予防規則、作業環境測定法施行規則等)を改正し、規制対象物質として「塩基性酸化マンガン」「溶接ヒューム」が追加され、作業環境管理や健康管理について省令に規定する水準の措置が事業者に義務付けられることになりました。

 規制対象となった物質

  • ※溶接ヒューム・・・金属アーク溶接等作業(※※)において加熱により発生する粒子状物質
  • ※※金属アーク溶接等作業・・・金属をアーク溶接する作業、アークを用いて金属を溶断し、またはガウジングする作業、その他の溶接ヒュームを製造し、または取り扱う作業(燃焼ガス、レーザービーム等を熱源とする溶接、溶断、ガウジングは含まれません
溶接ヒューム
主な有害性 性状
  • ヒトに対する発がん性:国際がん研究機関(IARC)グループ1
  • 神経機能障害:溶接ヒュームに含まれる酸化マンガン(MnO)、三酸化二マンガン(Mn2O3)
  • 呼吸器系障害:三酸化二マンガン(Mn2O3)
溶接により生じた蒸気が空気中で凝固した固体の粒子(粒径0.1~1μm程度)

※塩基性酸化マンガンとは、マンガンの酸化数が2または3の塩基性酸化物であり、代表的な物質として酸化マンガン(MnO)三酸化二マンガン(Mn2O3)が挙げられます。

             
酸化マンガン 三酸化二マンガン
主な有害性 性状 主な有害性 性状
神経機能障害
  • 緑色個体
  • 融点1785℃
  • 神経機能障害
  • 呼吸器系障害
  • 黒色個体
  • 融点1650℃

 措置義務の一覧

  • (1)、(2):金属アーク溶接等作業を屋内作業場等で行う場合に適用
  • (3)~(5):屋内・屋外作業場に共通して適用
  • ↓各項目をクリック(またはタップ)すると詳細が表示されます。
  • 金属アーク溶接等作業に関する溶接ヒュームを減少させるため、全体換気装置による換気の実施またはこれと同等以上の措置を講じる必要があります。
    「同等以上の措置」には、プッシュプル型換気装置、局所排気装置が含まれます。
    「全体換気装置」とは、動力により全体換気を行う装置をいいます。なお、全体換気装置は、特定化学物質作業主任者(↓(3)を参照)が、1月を超えない期間ごとに、その損傷、異常の有無などについて点検する必要があります。
    (令和3年4月1日より義務化されています)

  • 「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場(※)の場合、その作業方法を新たに採用(既に採用している場合を含む)し、または変更しようとするとき(※※)は、以下の措置を講じる必要があります。
    ※「継続して行う屋内作業場」には、建築中の建物内部等で金属アーク溶接等作業を同じ場所で繰り返し行わないものは含まれません(本規制の対象ではありません。)
    ※※変更しようとするときとは、溶接方法の変更、溶接材料・母材や作業場所の変更が溶接ヒュームの濃度に大きな影響を及ぼす場合をいいます。

    • ①溶接ヒュームの濃度の測定
    •  
    • ②換気装置の風量の増加、その他必要な措置(①で測定結果がマンガン0.05mg/㎥以上の場合、それ以外は④へ)
    •  
    • ③再度、溶接ヒュームの濃度測定
    •  
    • ④測定結果に応じ、有効な呼吸用保護具を選択し、労働者に使用させる
    •  
    • ⑤面体を有する呼吸用保護具の場合、1年以内ごとに1回、フィットテストを実施
    ※②~③は測定結果が0.05mg/㎥を下回るまで何度も行う必要まではありませんが、最初の測定で0.05mg/㎥以上の場合は必ず②の措置を行ってください。
    ※①~⑤の詳細は、リーフレットを参照してください。
    (溶接ヒュームの濃度測定は令和4年3月31日までに行う必要があります。) ◎三重県内の作業環境測定機関(登録機関)の一覧【pdf】
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  • 「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者のうちから作業主任者を選任し、次の職務を行わせることが必要です。
    (令和4年3月31日まで経過措置あり)

    ① 作業に従事する労働者が対象物に汚染され、吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮すること

    ② 全体換気装置その他労働者が健康障害を受けることを予防するための装置を1か月を超えない期間ごとに点検すること

    ③ 保護具の使用状況を監視すること
    ◎三重県内で登録をしている教習機関の一覧(R3.12現在)【pdf】

  • 金属アーク溶接等作業に常時従事する労働者に対しては、これまで「じん肺健康診断」の実施が義務付けられていましたが、これとは別にマンガン中毒に係る検診項目(以下参照)について健康診断(特殊健康診断)を実施することが義務付けられました。

    雇い入れまたは当該業務への配置換えの際及びその後6月以内ごとに1回、定期に、以下の事項について健康診断を実施する必要があるとともに、その健康診断結果について、遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告する必要があります。(各種様式については下の参考資料からDLできます。)

    また、健康診断の結果(一次検診の結果)、他覚症状が認められる者で、医師が必要と認めるものに対し、2次検診を受診させる必要があります。
    (令和3年4月1日より義務化されています)

    ■溶接ヒュームの検診項目

     
    一次検診
    • ①業務の経歴の調査
    • ②作業条件の簡易な調査
    • ③溶接ヒュームによるせき等のパーキンソン病症候群様症状の既往歴の有無の検査
    • ④せき等のパーキンソン病症候群様症状の既往歴の有無の検査
    • ⑤握力の測定
    二次検診
    • ①作業条件の調査
    • ②呼吸器に係る他覚症状等がある場合における胸部理学的検査等
    • ③パーキンソン病症候群様症状に関する神経学的検査
    • ④医師が必要と認める場合における尿中等のマンガンの量の測定
  •  
  • ※「作業環境の簡易な調査」について

    労働者のばく露状況の概要を確認するため、以下の項目等について、医師が当該労働者から聴取することにより調査をするものです。この調査の問診票については、◎作業条件の簡易な調査における問診票(例)【docx】を参考にしてください。

    • ①前回の特殊健康診断以降の作業条件の変化
    • ②環境中の当該物質の濃度に関する情報(*1)
    • ③作業時間
    • ④ばく露の頻度
    • ⑤当該物質の蒸気の発散源からの距離
    • ⑥保護具の使用状況
    • ⑦(経皮吸収されやすい化学物質について)皮膚接触の有無(*2)
    •  
    • (*1):当該労働者から聴取する方法のほか、衛生管理者等から作業環境測定の結果等を、あらかじめ聴取する方法があります。
    • (*2):皮膚への付着が常態化している状況や、保護具を着用していない皮膚に固体、液体又は高濃度の気体の状態で接触している状況等がある場合に、過剰なばく露をして いるおそれがあるため、必ず皮膚接触の有無を確認してください。
       
  •  
  • ※「作業環境の調査」について

    労働者のばく露状況の詳細を確認するため、当該労働者のほか、衛生管理者や作業主任者をはじめとした関係者から聴取することにより、調査をするものです。

       
  • ※「医師が必要と認める場合」について

    健康診断の必須項目の結果や、前回までの当該物質の健康診断の結果などを踏まえて、医師が判断します。この場合の「医師」は、主に、健康診断を実施する医師、事業場において選任されている産業医、産業医の選任義務のない労働者数50人未満の事業場においては健康管理を行う医師等となります。

       
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  • ■参考資料
  • ◎健康診断結果個人票(特定化学物質用)【docx】
  • ◎健康診断結果報告書(特定化学物質用)【pdf】
  • ◎特定化学物質に係る特殊健康診断実施機関名簿(三重県)【pdf】
  • ※医療機関によって取扱いが異なるため、アーク溶接に係る健康診断実施可能かどうかは医療機関に直接問い合わせてください。
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  • 以下①~⑨までについては、作業場所の屋内外を問わず令和3年4月1日より義務化されています。
  • ① 安全衛生教育(安衛則第35条)
    労働者を新たに雇い入れたときや、労働者の作業内容を変更したときは、 労働者が従事する業務に関する安全または衛生のため必要な事項について、 教育を行う。

  • ② ぼろ等の処理(特化則第12条の2)
    対象物に汚染されたぼろ(ウエス等)、紙くず等を、ふた付きの不浸透性 容器に納めておく。

  • ③ 不浸透性の床の設置(特化則第21条)
    作業場所の床は、不浸透性のもの(コンクリート、鉄板等)とする。

  • ④ 立入禁止措置(特化則第24条)
    関係者以外の立入禁止と、その旨の表示を行う。

  • ⑤ 運搬貯蔵時の容器等の使用等(特化則第25条)
    対象物を運搬、貯蔵する際は、堅固な容器等を使用し、貯蔵場所は一定の場所にし、関係者以外を立入禁止にする。

  • ⑥ 休憩室の設置(特化則第37条)
    対象物を常時、製造・取り扱う作業に労働者を従事させるときは、作業場所以外の場所に休憩室を設ける。

  • ⑦ 洗浄設備の設置(特化則第38条)
    以下の設備を設ける。

    • ・洗顔、洗身またはうがいの設備
    • ・更衣設備
    • ・洗濯のための設備
  • ⑧ 喫煙または飲食の禁止(特化則第38条の2)
    対象物を製造・取り扱う作業場での喫煙・飲食の禁止と、その旨の表示を行う。

  • ⑨ 有効な呼吸用保護具の備え付け等(特化則第43条、第45条)
    必要な呼吸用保護具を作業場に備え付ける。

 Q&A

省令改正に関する主要な質問とそれに対する回答(Q&A)は以下を参照してください。

このページに関する問い合わせ先
労働基準部 健康安全課 
059-226-2107 

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