第647回兵庫地方最低賃金審議会議事録

 
日時    令和3年7月28日(水)   9時30分~11時00分
場所  神戸地方合同庁舎3階 第7会議室
出席者 公益委員  梅野会長、岡崎委員、坂本委員、桜間委員、山口委員
労働者委員  岩﨑委員、日下委員、重宮委員、藤岡委員、堀井委員
使用者委員  倉本委員、林委員、松岡委員、松下委員、𠮷川委員
事務局  荒木労働局長、岸労働基準部長、青柳賃金室長、泉賃金指導官、倉本賃金主任、田村給付調査官
議題    (1)地域別最低賃金の目安に係る中央最低賃金審議会の答申について
   (2)最低賃金基礎調査結果等について
   (3)意見陳述について
   (4)その他
議事録 梅野会長   皆さんおそろいのようですので、ただ今から、第647回兵庫地方最低賃金審議会を開催いたします。
 事務局から、今日の会議の報告をお願いします。
泉賃金指導官  本日は、全員が御出席されていますので、最低賃金審議会令第5条第2項の規定による定足数を充足しておりますことを御報告いたします。
 また、傍聴者の方々には、受付でお渡ししております遵守事項に留意していただき、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 それでは、審議に入ります前に、兵庫労働局長の荒木より、御挨拶を申し上げます。 
荒木労働局長    皆様、おはようございます。連日の猛暑の中、早朝よりお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 前回の本審で申し上げましたけれども、報道でありましたように、今年度の最低賃金の改定の目安について、7月16日に中央最低賃金審議会で答申が取りまとめられています。後ほど、事務局より詳細については、報告させていただきますけれども、最低賃金の引き上げ目安額については、AランクからDランクまで、すべて一律28円ということで取りまとめられたということでございます。
 兵庫県においての審議につきましては、これから皆様方に御審議いただくわけでございますが、それぞれ立場は違う訳でございますけれども、審議におきましては、真摯に議論を積み重ねていただきまして、全会一致に向けての御尽力をたまわりますようお願い申し上げます。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。
梅野会長    それでは、本日の議題を確認したいと思います。
本日の議題は、
  1.   (1) 地域別最低賃金の目安に係る中央最低賃金審議会の答申について
  2.   (2) 最低賃金基礎調査結果等について
  3.   (3) 意見陳述について
  4.   (4) その他
となっています。
  では、最初の議題である(1)「地域別最低賃金の目安に係る中央最低賃金審議会の答申について」事務局から説明をお願いいたします。
青柳賃金室長    おはようございます。賃金室長の青柳でございます。よろしくお願いいたします。
 新聞等で中央での目安の結果は、御存知だと思いますが、答申内容につきましては、重要ですので、説明させていただきたいと思います。
 まず、目安の制度について、確認しておきたいと思います。地域別最低賃金につきましては、各地方最低賃金審議会の審議を経て、都道府県労働局長が決定又は改定するということになっておりますが、昭和53年からは、地域別最低賃金の全国的整合性を図るということで、中央最低賃金審議会におきまして、毎年、地域別最低賃金改定の目安を設定し、地方最低賃金審議会へ提示をするということとなっております。その目安の位置付けとしましては、地方最低賃金審議会の審議の参考として示すものであって、これを拘束するものではないとされています。
 これを踏まえまして、7月16日付けの令和3年度地域別最低賃金改正の目安について、内容を確認させていただきたいと思います。
 資料1に、7月16日に答申が出ました令和3年度地域別最低賃金改正の目安について、全文をつけております。
 まずは、1ページ目ですけれども、下のほうが、答申の全文になっております。重要なところを読み上げさせていただきます。

 令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)

 令和3年6月22日に諮問のあった令和3年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。
 
                記
 
  1 令和3年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。
  2 地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解(別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に提示するものとする。
  3 地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待するものである。
  4 中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げしやすい環境整備の必要性については労使共通の認識であり、生産性向上の支援や官公需における対応を含めた取引条件の改善等に引き続き取り組むことを政府に対し強く要望する。
  特に事業場内で最も低い時間給を引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金について、特例的な要件緩和・拡充を早急に行うことを政府に対して行うことを強く要望する。
  5 行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
 
 以上が答申文の内容でございます。
 答申文にございます別紙1の公益委員会見解が、次のページにございます。
 そこにAランクからDランクまでの目安金額が示されますけれども、本年度につきましては、局長が申し上げましたように、AランクからDランクまで金額はすべて28円となっており、兵庫については、Bランクですけれども、28円が示されているということでございます。
 続きまして、項目の2ですけれども、これは公益の見解をまとめるに当たって、主に検討を行った要素として①から⑦まで7点ございます。
  •   ① 賃金改定状況調査結果第4表や春季賃上げ妥結状況等における賃金上昇率は、昨年より上げ幅は縮小しているが、引き続きプラスの水準を示していること、また、昨年度は、最低賃金引上げ額の目安を示せず、最低賃金の引上げ率は0.1%となったこと、
  •   ② 消費者物価指数は、横ばい圏内で推移しており、名目GDPは、令和2年度には落ち込んだものの、足下では一時期より回復していること、加えて、新型コロナウイルス感染症の感染状況など、少なくとも昨年度とは審議の前提となる状況が異なっていること、
  •   ③ 法人企業統計における企業利益は、足下では、産業全体では回復が見られること、また、一部産業では引き続きマイナスとなっているものの、政府として、「感染症の影響を受けて厳しい業況の企業に配慮しつつ、生産性向上等に取り組む中小企業への支援強化、下請取引の適正化、金融支援等に一層取り組む」方針であること、
  •   ④ 雇用情勢は、令和2年には悪化したものの、足下では横ばいの圏内で推移しており、有効求人倍率は1倍を超え、失業率も3%以下で推移していること、
  •   ⑤ 政府としては、最低賃金について、より早期に全国加重平均1,000円を目指すこととされているところ、①から④までの状況を総合的に勘案すれば、平成28年度から令和元年度までの最低賃金を3.0~3.1%引き上げてきた時期と比べて、今年度の状況は大きく異なるとは言えず、最低賃金をその時期と同程度引き上げた場合にマクロで見た際の雇用情勢に大きな影響を与えるとまでは言えないと考えられること、
  •   ⑥ 地域間格差への配慮の観点から少なくとも地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていく必要があること、また、賃金改定状況調査結果第4表のうちAランクとCランクが最も高い賃金上昇率であった一方、雇用情勢については昨年度においてAランクを中心に悪化したことを総合的に勘案する必要があること、
  •   ⑦ 最低賃金を含めた賃金の引上げにより、可処分所得の継続的な拡大と将来の安心の確保を図り、さらに消費の拡大につなげるという経済の好循環を実現させることや非正規雇用労働者の処遇改善が社会的に求められていることを特に重視する必要があること
 以上が、目安の公益委員見解の元になりました7項目ということで、これらで検討を行ったということが記載されているところでございます。
 続きまして、別紙2の中央最低賃金審議会小委員会報告には、労働者見解、使用者見解が載っております。
 それについても、読み上げさせていただきます、
 2の労働者見解ですが、「労働者側委員は、現在も新型コロナウイルス感染症による影響は予断を許さない状況であるが、コロナ禍から1年余が経過した今、先行きを見通す環境は確実に変化していることから、今年度は、ワクチン接種や世界・日本経済の回復など昨年度とは明らかに異なる環境変化を見極めた上で議論を尽くす必要があるとの認識を示した。その上で、最低賃金を改定しないことは社会不安を増大させ格差を是認することと同義であり、中賃の役割からしてあってはならず、最低賃金の確実な引上げにつながる有額の目安を示すことで、セーフティネットとしての機能を果たし、最低賃金法第1条にある「国民経済の健全な発展に寄与する」という目的を達成するべきであると主張した。
 さらに、日本の最低賃金は国際的に見ても低位であり、諸外国ではコロナ禍でも最低賃金の引上げを行っている中、グローバルスタンダードを見据え、ナショナルミニマムにふさわしい水準に引き上げるべきであると主張した。
 また、エッセンシャルワーカーの中には処遇が高くない労働者も少なくなく、コロナ禍で懸命に働き続けている労働者の努力に報いるためにも、最低賃金の引上げを行うべきであるとともに、新型コロナウイルス感染症対策としてのマスクや手指消毒液などの恒常的な支出増が、最低賃金近傍で働く者の家計に大きな影響を与えていることも考慮すべきであると主張した。
 加えて、1年余のコロナ禍により労働者の生活困窮度は深刻さを増し、緊急小口資金等による貸付はリーマンショックの50倍となっており、労働者は賃金を得て返済するしか術はないと主張した。
 さらに、中小企業が賃上げしやすい環境整備に向けては、最低賃金引上げの各種支援策の拡充と各省庁が連携した周知や、中小企業が生み出した付加価値を確実に価格に転嫁できる環境整備が重要であり、政府も政策対応をはかっていることを踏まえて審議すべきと主張した。
 以上を踏まえれば、「誰もが時給1,000円」を実現するため、今年度は「800円未達の地域をなくすこと」「トップランナーであるAランクは1,000円に到達すること」の両方を達成する目安を示すべきであると主張した。併せて、最低賃金の地域間格差は隣県や大都市圏への労働力流出の一因ともなっており、昨年度の地方審議の結果を見ても各地方は懸命に地域間格差の縮小の努力をしていることから、今年度は地域間の「額差」の縮小につながる目安を示すべきであると主張した。
 労働者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。」というのが、労働者側見解でございます。
 続きまして、3の使用者側見解ですが、「使用者側委員は、最初の緊急事態宣言から1年3ヶ月経過し、足下では新型コロナウイルス感染症の感染再拡大の兆候が見られ、第5波の到来が懸念されているうえ、休業要請等により経済活動が抑制された状況では、業況の回復はほど遠く、中小企業への貸付残高も上がっており、事業を立て直す上でも大きな負担となっていると指摘した。さらに、中小企業は、価格転嫁が困難であり、労働分配率も高いが、コロナ禍では、従前にもまして、賃金支払能力が乏しい状況にあるとの認識を示した。
 また、最低賃金は、各種データによる明確な根拠をもとに、納得感のある水準とすべきであり、賃金水準の引上げなど、法が定める目的以外に用いるべきでないと主張した。
 さらに、今年度は、コロナ禍における中小企業、とりわけ厳しい状況にある業種の中小企業の窮状を考慮すると、3要素のうち通常の事業の賃金支払能力を最も重視して審議を進めるべきであり、企業の業況が二極化している状況を踏まえ、平均賃金や平均的な状況のみに着目するのではなく、とりわけコロナ禍の影響が深刻な宿泊・飲食・交通・運輸などの業種における経営状況や賃金支払余力に焦点を当てるべきであると述べた。
 経済界が事業の存続と雇用の維持に最大限努めた結果、雇用情勢が悪化する状況には至っていないが、雇用への影響がデータに現れてからでは手遅れであり、最低賃金引上げが雇用調整の契機となることは避けるべきであることや、最低賃金の引上げによって、企業の人件費を増やした結果、倒産、廃業や雇用調整を招く懸念があり、そのトリガーを引くことになることは避けなければならないと主張した。
 コロナ禍でも、賃金引上げが可能な企業は賃上げに前向きに取り組み、消費の拡大につなげ、地域経済の活性化をはかることが望ましいが、現状では、飲食業や宿泊業のみならず、これらと取引のある関連産業も厳しい状況にある。最低賃金の引上げは、危機的な経営状況の経営者にとって、雇用を維持したいという切実な想いを切り捨てるものにほかならないとの認識を示した。
 以上を踏まえると、今は、「事業の存続」と「雇用の維持」を最優先すべきであり今年度は、最低賃金を引き上げず、「現行水準を維持」すべきであると主張した。
 使用者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。」というのが、使用者側の見解で、小委員会報告の別紙2に記載されております。
 続きまして、6ページのところですが、公益委員としては、今年度の目安については、平成29年度全員協議会報告を踏まえ取りまとめたというものです。
 平成29年度全員協議会報告については、要覧の178ページ掲載されていますので、御覧いただければと思います。
梅野会長  ただ今の説明につきまして、御質問、御意見はございますでしょうか。
松岡委員  よろしいですか。
梅野会長  はい、どうぞ。
松岡委員  使用者委員の松岡と申します。
 本年の目安額につきまして、金額を伺いましたが、その金額の根拠が不明ですので、労働局にお聞きしたいと思います。
 また、目安答申の別紙1の公益委員見解に、「経済財政運営と改革の基本方針2021及び成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップに配意した調査審議が求められることについて特段の配慮をした」とありますが、当審議会においても、同様に政府方針に配意することを諮問にて求められております。
 さらに、目安額にあっては、実体経済データから乖離したもので、平均賃金が上昇しないよう目安額を大きく上回る労働者の賃金を下げ、格差是正を図る前提がない限り、労使の話し合いによる合意が非常に難しいことが考えられます。
 オリンピック前に答申した東京都におきましては、採決により目安額と同額が答申されたと聞いております。
 政府の方針に早期に目指す金額が示されており、これに特段の配慮をした全国一律額の目安額が示され、事実上、地方においても、これに特段の配慮が求められるということであれば、地方審議会は、まったく形骸化してしまい、賃金に対する政府のコントロールを受け入れることになってしまいます。そもそも最低賃金は、最低の基準を示す、いわば護送船団方式で、社会全体の安全を担保しながら、その水準を上げていくものですが、今回の目安は、遅い船を置き去りにするということを前提にしていると言えます。
 政府方針にもある円滑な労働移動ができていない状況では、遅い船の船長・乗組員の皆さんは、船団から見捨てられてしまいます。
 政府の成長戦略会議のメンバーであるデービッド・アトキンソン氏は、5%の業界が悪影響を受けているからと言って、100%の日本経済に対して最低賃金の引き上げをしないのは、専門家からすると何の理屈にもならないとおっしゃっておりますが、我々は、5%の経営者と労働者を見捨てることはできません。
 この状況におきましても、使用者側は、誰一人置き去りにしない、完全雇用を前提とした健全で持続可能な雇用環境を維持してまいりたいと思いますので、御理解をお願いしたいと思います。以上です。
梅野会長  最初が質問で、後がコメントですけれど、御質問の引上げ額の根拠について、何か情報があればお答えください。
青柳賃金室長  28円の引上げの根拠自体が、目安の報告で示されていることでありまして、どれをもとにその金額を出したかについては、それこそ目安の小委員会の中で決定されたということしか申し上げようがないということでございます。
 後半の内容については、御意見として金額審議の中で、いろいろ参考にさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

梅野会長

 ほかにはないですか。よろしいですか。
 では、次の議題にまいります。最低賃金に関する基礎調査結果についてです。事務局から説明をお願いいたします。
青柳賃金室長  それでは、私から生活保護と改定状況調査について、説明させていただき、そのあと、担当者から基礎調査について説明させていただきます。
 まず、先ほどの資料1の公益委員見解の中の(2)として、生活保護水準と最低賃金について、乖離が生じていないことを確認するということが書いてありますが、資料の2に中央最低賃金審議会小委員会で示された内容でございます。それと、資料に兵庫労働局と書いてありますのは、兵庫労働局で確認をさせていただいたものです。
 生活保護との乖離の状況につきましては、毎年、最新のデータで行っており、最新のデータである令和元年度のもので計算した結果、今年度に関しましては、139円乖離ということで、生活保護より最低賃金が139円上回っている状況であります。令和2年度に関しましては、1円引き上がっておりますので、現在最低賃金とは140円の乖離が生じている状況でございます。
 続きまして、賃金改定状況調査ですけれども、資料3に令和3年の中賃の目安小委員会で出されました結果でございます。ただ、御存じのとおり、改定状況調査については、集計のミスがあったということでございましたので、令和3年度調査結果の訂正後の、後ろ2枚ですが、中賃の目安小委員会の方で訂正後に示されました   第4表の賃金上昇率の表を出していただいております。賃金改定状況調査につきましては、30人以下の規模の事業場で、令和2年6月の賃金と令和3年6月の賃金を調査対象といたしまして、どのくらい改定があったかを確認したものでございます。
第4表の一般労働者よりパート労働者の賃金上昇率ですので、後ろから2枚目の令和3年の調査結果の訂正後の方を御覧いただきたいと思います。A、B、C、Dのランクごとの令和2年と令和3年の賃金上昇率について書いております。左上には、1時間当たりの賃金額と賃金上昇率が書いてあります。それと、A、B、C、Dの男女計のところですが、Aランクは0.5、Bランクは0.1、Cランクは0.5、Dランクは0.3で、計は0.4となっています。
ちなみに、令和2年度につきましては、Aランクは1.5、Bランクは0.7、Cランクは1.3、Dランクは0.8で、計は1.2という賃金上昇率でございます。また、1時間当たりの額の業種別の賃金上昇率の下は、男女別の賃金上昇率になっております。
 また、1枚めくった裏側ですが、パート労働者の賃金上昇率が、A、B、C、Dランクごとに書かれておりますので、参考にしていただければと思います。  改定状況調査については、以上でございます。
 基礎調査については、担当の倉本から説明させていただきます。
倉本賃金主任  賃金主任の倉本でございます。
 基礎調査結果については、私から説明させていただきます。
 資料4の令和3年度最低賃金に関する基礎調査結果を御覧ください。
 まず初めに、基礎調査自体の説明を簡単にさせていただきますので、46ページを開いていただけますでしょうか。
 基礎調査の目的は、最低賃金審議会における最低賃金の決定または改正のための審議資料に資するため特に低賃金労働者の賃金実態を明らかにするために統計法に基づく一般統計調査として実施しているものです。
 次に、調査の範囲ですが、県最賃につきましては、この46ページのⅡの1に記載されているアからクの8業種を対象にしており、本年6月1日現在の状況について、回答を依頼しております。
兵庫局の調査につきましては、47ページの5に記載しており、本年の県債賃の対象としては、1,335事業所で、特定最賃の事業所が、1,674の合計3,009事業所に対して48ページの調査票を郵送しております。
 集計については、事業所の労働者数が1~9人を規模1、10~29人を規模2、30~99人を規模3としまして、阪神地域、播磨地域、県北・淡路の3地域で分類しております。 
 調査結果については、全業種の総括表を資料4の10から13ページと14から17ページに掲載しており、10から13ページの総括表については、事業所の規模別、地域別、年齢別に集計したもので、14から17ページは、労働者の性別、年齢別に集計したものとなっております。
 この総括表の数値をもとに、各特性値の経年的推移を事業所の規模別、地域別にまとめたものが、この基礎調査結果の1ページになります。
 この1ページにある第1・二十分位数、第1・十分位数、第1・四分位数、中位数については、令和元年度調査から3年間の推移を取りまとめたものとなっております。
 例えば、集計区分が全数と記載されました1番上の行を御覧いただきますと、第1・二十分位数、第1・十分位数はともに令和2年度と今年度は同じ900円という結果になっております。この特性値の推移についてですが、6ページの上段のグラフを御覧いただきますと、これは、特性値の経年的な推移を視覚的にまとめたものとなっております。下段は、未満率、影響率の経年的な推移をグラフにまとめたものとなっております。本年の未満率については、時間額899円以下の方は、全体の1.53%であったという結果となっております。
 7ページは、特性値・未満率・影響率に関する言葉の説明となっております。第1・二十分位数というのは、数値を低いものから順に並べていった時に、全体の20分の1の順位、すなわち下5%の順位に該当する数値を指しております。
未満率という言葉は、現在設定されております最低賃金を下回っている労働者の割合で、影響率は、最低賃金を改定した場合に改定後の最低賃金額を下回る労働者の割合を言います。
 よって、本年の影響率につきましては、まだ改定額等が示されている状況にありませんので6ページ下からのグラフは空欄になっております。
 続きまして、18ページ、19ページには、最低賃金引上げ額・率と影響率の関係表というものを掲載しております。こちらは、現在の最低賃金900円を引き上げた際の影響率を、引上げ額1円から50円の範囲で取りまとめたものとなっております。仮に、中賃で示されました目安の28円を引き上げた場合の影響率は、18ページの下から8行目で、16.91%という結果になっております。
 続きまして、20ページですが、こちらは時間額に対する該当労働者数が何%いるかの分布でまとめたものになりますが、900円、910円、920円といったきりのいい数値のところに一定数の労働者が存在するということが読み取れるかと思います。
 次に、21ページは、労働者数の累積度数分布となります。
 22ページから45ページについては、総括表を掲載しておりますが、それぞれ製造業と卸売・小売業と、それ以外の業種の3分類したものとなっております。
 この総括表の数値をもとに2から4ページの特性値の経年的な推移を取りまとめております。
 最後ですが、9ページに本年の集計結果について、まとめておりますので御覧ください。
 私からの説明は以上になります。
梅野会長  ありがとうございました。
 ただ今の説明につきまして、御質問、御意見等がございましたらどうぞ。
各委員 (特になし)
梅野会長  これらの調査結果については、今後、金額審議の上で判断材料となりますので、御検討のほどお願いしたいと思います。
 では、次は10時から意見陳述が予定されているとのことですので意見陳述についての説明をお願いします。
青柳賃金室長  兵庫県最低賃金の改定決定に係る関係労使の意見陳述については、7月19日まで公示を行いましたところ、兵庫県パートユニオンネットワーク、兵庫県労働組合総連合、スイートガーデン労働組合神戸支部の3団体から意見書の提出がなされました。
 このうち、スイートガーデン労働組合以外の2団体から、口頭による意見陳述の希望がありましたので、本日おいでいただいております。
 各団体の意見書は、本日の資料の資料5から7として付けさせていただいております。
 また、7月20日に兵庫県労働組合総連合国民春闘兵庫県共闘委員会から、「兵庫地方の最低賃金をただちに1,000円以上に引き上げ、地域間格差を解消し、中小企業支援の拡充を求める要請書」の追加分として、178筆の個人署名が、兵庫労働局長及び兵庫地方最低賃金審議会会長あてに提出されておりますので、併せて御報告させていただきます。
 では、意見陳述の準備をさせていただきます。
順番は、兵庫県パートユニオンネットワーク、兵庫県労働組合総連合の順とさせていただきます。
 意見陳述の時間は10分以内とお願いしておりますので、それでは準備いたします。
  (兵庫県パートユニオンネットワーク意見陳述者2名着席)
泉賃金指導官  兵庫県パートユニオンネットワークの森口様と奥村様です。
梅野会長  おはようございます。ありがとうございます。
 最低賃金審議会の会長をしております梅野と申します。
 早速ですけれども、提出された意見書に基づいて、10分以内で意見陳述をお願いいたします。
意見陳述者  兵庫県パートユニオンネットワークの事務局長をしている森口です。お世話になります。
 私たちは、ユニオンの民間の非正規、また、自治労のパートの非正規、ネットワークを作って30年以上にわたって非正規労働者の地位と権利の向上のために活動を行っています。
 昨年は、兵庫県の最低賃金はたった1円しか上がりませんでした。
 ずっと続いていますこのコロナ禍が、経営基盤が脆弱な中小企業とか小規模事業者に、莫大な影響を与えていますし、また、そこで働く非正規労働者が一番、真っ先に首を切られています。労働相談を行っていますが、本当にそういう相談が多いです。
 今日は、最低賃金を本当に上げて、それこそコロナ禍だからこそ、生活と経済を守るためには、それが必要だと考えています。
 私たちは、非正規労働者として働いている当事者の生の声を意見書にあげています。
 1人目のヤマモトミチコさんは、今日は仕事が休めず来られなかったのですけれども、市役所で事務補助として27年間も働き続けています。
 しかし、年収は200万円以下の官製ワーキングプアといわれる状況に置かれています。ぜひこの意見書をしっかり読んでいただきたいと思っています。
 今から、もう一人の奥村さんに意見陳述していただきます。皆さん、本当にぜひ正規労働者で働く人の生の声をしっかり聞いていただいて、真摯にそれを受け止めていただいて、すぐに最低賃金の時給を1,000円または全国一律最低賃金にするということに向けての御審議をよろしくお願いいたします。
意見陳述者  奥村です。よろしくお願いします。
 今回、私に白羽の矢が立った意味ということを考えますと、一般論を話すのではなくて、最低賃金近傍で働く労働者としての実態に基づく、経験をもとにしたオリジナルな意見を、参考意見を述べるべきだと思ってここに来ました。
 中高年で失職しますと主要である職種のキャリア形成がなされていないと、失職した時に最低賃金近傍まで給与がダウンする可能性がありまして、この給与の下落幅が多い場合に生活設計の見直しを要します。
 その時に最低賃金をアップさせるというのが下落幅の緩和につながりますので、そういう意味でも最賃のアップというのは意味があると思っております。今回、私は姫路ユニオンとして来ましたので、最低賃金といいますか、賃金アップの運動について、過去行ったことを述べていきたいと思います。
 前の職場で姫路ユニオンの分会を設立しまして、使用者に対して、労働条件改善の要求をしました。それは、賃金アップを含めております。団体交渉を3回行いまして、その結果、すべてノー回答でした。ゼロ回答です。
 給与を上げるかどうかというのは、経営判断になりますから、対応できない根拠というものを資料で示したり、具体的な説明をする等の論拠を示されたりすることはありませんでした。まるで、賃上げというのは、使用者の経営判断であり、労働者に要求されたから上げると甘く見られる等の思いを感じるような内容でした。ユニオンの要求で今は答えたくないというような思いも感じました。
 私の主観なのですが、これがきっかけで私は不利益な取り扱いをされまして、最終的には解雇されました。これはあくまでも労働者側からの主観なのですけど、この経験をもとに私が感じたことは、賃上げをしたくないというような主張の根拠には、合理性がある場合とない場合があるということです。それが、すべての事業所に当てはまるというわけではないのですが、私は、そのような経験をしましたので、そのような考えを持つようになりました。そして、大きな内部留保を抱える大企業と中小企業の構造的な問題から生じる生産性の格差の問題を労働者に押し付けるべきではないと考えております。
 今回、もう一つお話ししたいのは、昨年に労働契約法20条に伴います同一労働同一賃金に関する裁判の判決が出たのですけれど、その判決の内容におきまして、休日手当、扶養手当等の諸手当に関しては、同一賃金制を認められるような内容の判例が出たと思っております。ただ、年間所得、生涯所得に大きく関与します賞与、退職金に関しては、同一賃金制を全く感じられるような内容ではありませんでした。
 よって、正規雇用と非正規雇用の格差を縮める気配というのを全く感じませんでした。ということは、この状態はやはり一つの家族に非正規雇用が何人いるかによってその家庭生活といいますか、豊かな経済性を維持するのに大きく変化するということになっております。
 現状が、格差が縮まっていないということを鑑みますと、せめて最低賃金だけでもアップさせまして、格差を縮めていくということが必要ではないかと思っております。
 私の発言としては、以上にさせていただきます。
梅野会長  ありがとうございました。ただ今の意見陳述について、何かお尋ねしたいこと等があれば、どちらからでもお願いします。
林委員 (挙手)
梅野会長  林さんどうぞ。
林委員  どうもわざわざお越しいただいてありがとうございます。
 先ほど意見陳述していただいたお二人のお話にもありました個別企業の対応というのは、いろいろあろうかと思います。ただ、私どもが付き合っている多くの経営者は、従業員に働き甲斐を感じて欲しいと思っている方が多いと思いますし、その中で、業績に貢献していただきたいと思っています。
 それから、大多数の経営者は、賃金が上がることを否定はしていません。賃金は上がる方が良いとは思っているはずです。多くの経営者は、こういう風に考えているとお考えいただきたいと思います。
 それと、確かに非正規、パートで働いている方というのは、先ほど言われましたように、中高年で就職をして、再就職をされるといった時に、賃金水準が下がってしまうというのは現実的にあったと思います。
 同一労働同一賃金などの見直しをされていますけれども、これも一つの流れであって、徐々に解決に向かって是正されていくのではないかと思いますし、経営者側としても、良くしたいと考えています。同一労働同一賃金に関する考え方については、いろんな意見がありますが、私どもが考えているのは、同一労働同一能力の人に対して同一の賃金をというのが、本来であろうと思いますし、そのあたりはいろいろと考え方があろうかと思います。
 ただ、改善はされていくのではないかと思っています。
 それで、一つお聞きしたいのは、そういった中で、大きな流れの中で、非正規の方の賃金の改善というのは進んでいくだろうと思っておりますし、そのために最低賃金を引き上げるということを否定はしませんが、今いるコロナの中で、中小企業が置かれている状況というのは、非常に厳しいものがあり、私どもが心配していますのは、支払能力が厳しい状況になっている中小企業が多く、また、非正規の方が雇用されている中小企業が多いだろうと思っていまして、雇用を維持していくことを最優先で考えていくべきではないかと思っています。コロナの中で失業したという方は、増えているだろうし、時短となった方もいるでしょう。最低賃金が大きく引き上がった時に。それを契機に場合によっては、職を失う方が、増えるのではないかと懸念しているのですが、そのあたり、どうお考えでしょうか。
意見陳述者  私が知っている中小企業というか、個人事業主とかは、このコロナ禍の中で、家賃さえも払えないという中で頑張っている方もいらっしゃいます。
 でもそれは、政府の支援策が不足しているということであって、そこで働く労働者には、何の罪もないというか、そのせいじゃないと思います。
 それで、最低賃金を上げたから解雇する人が増えるということ自体は、全然、別の問題だと思います。それは違う制度できちんと支援するなりしていくべきことではないかと思っています。
梅野会長  他にどうですか。
日下委員 (挙手)
梅野会長  日下委員どうぞ。
日下委員  日下と申します。貴重な御意見ありがとうございました。
 最低賃金の引き上げに関しましては、労側としましては、今現状900円なのですけれども、これが生活する上で最低額という認識はありませんので、これからも引き上げについては、実際の労働者の声とかを聞かせていただいて、取り組みを進めていきたいと思います。
  1点だけお尋ねしたのですが、先ほど団体交渉をして、経営者側としては、回答がなかったというようなお話があったのですが、元々その企業としては、最低賃金が引き上げられた段階でしか賃上げがなされていなかったというのかと、そういう職場において、労働者の定着率はどうだったのかなと思うのですが、毎年毎年離職する人が多いとか、定着しているとか、どの程度おられるかというのがわかる程度で教えていただきたいと思います。お願いします。
意見陳述者  先ほどの質問ですけれど、やはり定着率は悪かったです。
 最低賃金というのは、最低賃金法に則ってラインは確保されておりましたけれど、一部微妙な部分がありまして、人件費削減に過剰なまでに執着心があったように感じました。
 で、申し上げにくい部分もあるのですが、我々としましては、誠意を感じませんでしたので、いろいろと団体交渉したりとか、ビラ配りしたりとかで、対応させてもらったのですが、それが、正当な要望と、傲慢な要望と受け取られたというのはあるのかなと思います。
 そのあたり、労働者、使用者双方の理解を示していることが必要ですので、我々の方も、もう少しアプローチに仕方もあったのかもしれないのですが、結果的には残念な結果にはなりました。
梅野会長  ありがとうございます。時間が来ておりますので、今日はこれで意見陳述は終わります。どうもありがとうございました。
では、次の意見陳述の方の案内をお願いします。
  (意見陳述者退席)
 (兵庫県労働組合総連合2名着席)
泉賃金指導官  兵庫県労働組合総連合の成山様と中村様です。
梅野会長  お忙しい中お越しくださりありがとうございます。
 審議会長の梅野でございます。早速、意見書に基づいて意見陳述をお願いいたします。
意見陳述者  私は、兵庫県労働組合総連合、略称は兵庫労連といいますが、そこで議長を務めております成山です。
 今回の答申では、中央審議会の目安として示された28円引き上げにとらわれず、早期に1,000円を目指すという政府の方針に沿って、また、兵庫県の場合は、特に東京との格差113円、大阪との64円、この格差を解消するために、大幅な引き上げを答申していただきたいと思います。
 私は、郵政産業労働者ユニオンという郵便局の労働組合です。郵便局では現在全国で40万人の労働者が働いておりますが、半数の約20万人が非正規雇用労働者ということになっております。神戸中央郵便局に私は5年前まで勤めていました。現在、1,200人の労働者が働いておりますけれども、正社員は、350人ということで、7割以上が、時給制の非正規雇用ということになっております。
朝の9時から17時までの日勤帯で内部作業を行っている非正規雇用労働者の場合は、時給が6段階に分かれておりまして、1番下が920円です。
 最初雇用された時が920円から始まり、半年に1回管理者の評価によって評価が上がったら、時給が上がるという仕組みになっています。6段階の最高で、1,080円というのが現状です。何年働いても、1,080円以上には上がりません。これでは、フルタイムで年間2,000時間で計算しても、年収は200万円そこそこということです。
大企業が、まともな生活ができないような低賃金で、人を雇用していることに社会的責任も問われると思いますけれども、同時に賃金を大幅に引き上げることによる賃金の底上げが、切実に求められていると思います。
 1995年に当時の日経連が出した新時代の日本的経営に基づいて、終身雇用で賃金が右肩上がりの正社員が減らされて、賃金が時給制で不安定な非正規雇用労働者が急増してきました。今だいたい、全国の労働者の4割が非正規雇用労働者となっています。
 全国の労働者数は5,500万人とか5,700万人とか言われるますけれども、そのうちの4割といいますと、少なくとも2,200万人が、非正規雇用で働いており、そのうちの半分の1,100万人以上が、年収200万円に満たないという、いわゆる働く貧困層、ワーキングプアということになっているのが現状です。
 その結果、1997年を頂点にして日本で働く人の実質賃金が下がり続けています。このことは、増え続けてきた非正規雇用労働者が、まともな生活ができないという中で、結婚できないし、子供を育てられない、親の老後は面倒が見られないと、こういう問題の原因となっていますし、同時に、日本経済が、停滞し、活性化しないということにも直結していると思います。
 そういうことから、私たちの兵庫労連では、雇用は正社員が当たり前だ、という社会に戻そうということとともに、例え非正規雇用であっても誰でもどこでもどんな仕事をしていても、フルタイムで働けば、まともに暮らせる社会にしたい、ということを訴えて活動しています。それは、労働者一人ひとりの生活を守るということと同時に、日本経済を立て直して活性化させるために不可欠な条件だと考えています。
それから、まともに暮らせるという、まともな暮らしというのはどんな水準か、という問題があろうかと思いますが、この間、私たち全労連では、各県労連で最低生計費調査というものを行っています。25歳の独身一人暮らしというモデルを作って、持ち物調査などのアンケートを行って、7割以上の人が持っている物は、持っていて当然という考えに基づいて生活費をはじき出したところ、どこの府県でも都市部と地方の違いなく1か月に23万から24万円が必要という結果が出ております。時給に換算しますと1,500円から1,600円程度ということになります。そして、都市部と地方の違いについては、都市部では確かに家賃は高いのですが、地方に行きますと車を持っていなければ生活ができない、ということで、住宅費と交通費が相殺されて、生活費には全国的に違いがないということが結果として表れています。
したがって、最低賃金というのは、日本は都道府県別に決められていますが、全国一律が望ましいという結果だと思います。
それで、今回、中央の目安が3,1%、28円の引き上げということで出ましたけれども、昨年が全国平均で1円の引き上げに留まったことを考えますと、また、政府も2020年までには1,000円への引き上げということを掲げていたことも考えて、冒頭にも申しましたけれども、28円ではまだまだ低すぎると思います。特に、全国平均を下回っているのが兵庫県の実情ですから28円に上積みをして東京や大阪、または、京都、京都は昔、兵庫県と同じだったのですけれども、今は同じBランクでも9円の差がついていますので、この格差を解消していただきたいと思います。
 それから、日本の最低賃金というのは、世界の先進国と比べても、極端に低すぎるということも強調しておきたいと思います。ヨーロッパ諸国では、フランス、イギリス、ドイツなどでは、1,200円から1,300円程度の水準だと言われていますし、アメリカも州平均ではすでに1,000円を超えておりますし、その上にバイデン政権になってから全国の最賃15ドル、日本円では1,600円に引き上げると掲げてもいます。
 また、韓国でも、今年も5%の引き上げで、来年1月から9,160ウオンということで、ウオンというのは、円の10分の1ですから916円のことだと思っていますけど、報道によりますと、最近円高なのかどうか知りませんけれど、880円とも報じられていました。いずれにしても、韓国の最賃は、全国一律ですから日本の最賃額にも、ほぼ並んだといえると思いますし、韓国には、韓国独自の週給手当という制度がございまして、週5日・40時間働きますと、48時間分の賃金が支給されるそうであります。そうしますと、実質的には20%増しということになりますから、韓国の最賃で働くと完全に日本の最賃を追い越すという事態になっています。ちなみに、韓国の最賃というのは、1988年に実施されました。時給490ウオンということで、日本円で49円から出発しました。1988年当時の兵庫県の最低賃金は490円でした。33年前に10分の1の最賃から出発した韓国に33年間で追い抜かれるという状況になっています。
 世界の国々との比較でも、このまま、日本の賃金が下がり続けると、労働者が年々貧しくなる国ということになって、そのことがGDPも大きくならなくて、経済成長しないという世界でも珍しい国になっています。これは、労働者の賃金の引き上げ、とりわけ賃金の引き上げが重要な喫緊の課題として求められていると思います。
 最後に、最賃引上げの反対意見の論拠として、兵庫県であれば、但馬とか淡路などの地方の問題、それから中小企業の経営が苦しいところでは、最賃の大幅な引き上げができないという議論があるかと思います。しかし、私の淡路島の友人に聞いた話では、最賃ぎりぎりで求人しているのは、淡路島では、イオンとかの大手のスーパーなどで、中小企業としては、人手不足という背景から割と高い賃金で募集しているという話を聞いています。最賃を上げれば、地方が大変、中小企業は大変という話が決まっているように言われますけれども、最賃に張り付いている企業というのは、非正規化を進めてきた、体力もあるくせに人件費を削って儲けたいという大企業なのではないかと私は考えています。
 それから、また、中小企業で本当に苦しいところもあろうかと思います。その点については、中小企業に対する様々な支援策を国が実施すべきであるし、そういうことを求めていくべきだと思いますし、世界の韓国だとか、ヨーロッパ諸国の例からも学んで、中小企業支援を本格的にやるべきだということが求められると思います。経営が苦しいから最賃は上げられないというのではなくて、上げるためにはどうすればよいのか、最賃を上げるためにはこういう支援が必要だということを労使一体となって国に政府に求めていくという姿勢が求められているのではないかと思います。
 以上です。どうもありがとうございました。
梅野会長  ありがとうございます。
それでは、ただ今の意見陳述について、御意見等がございましたらどうぞ。
各委員 (特になし)
梅野会長  ないようですので、終わります。
ありがとうございました。
  (意見陳述者退席)
梅野会長 それでは最後に、意見書が出されておりますスイートガーデン労働組合について、事務局から意見書の内容の説明をお願いします。
泉賃金指導官  事務局の泉からお話しさせていただきます。
 スイートガーデン労働組合神戸支部から7月19日の県最賃の改定審議にあたって、意見書が出されました。資料は、お手元の資料のインデックス7番になります。
 意見書は55ページあり、そのうち50ページにわたって趣旨説明がありますので、すべてを読み上げることはできませんが、一部を紹介させていただきます。
 まず、引き上げ前の議論として、2ページあたりに書いてあるのですが、審議委員には、最賃のみで生活するつもりで議論してもらいたい。時給1,200円の主張であり、これで、そういう生活をするつもりで議論していただければわかっていただける。これは、毎年要望していただいているとのことです。
 2つ目として、県最賃は、兵庫県外の人口流出だとか、若者の流出対策としても意味がある。そういう意味でも大幅引き上げが必要と書いてあります。
 3つ目として、最賃の答申発表時の広報の強化についてです。これは、審議会委員の皆様というより事務局に対してというところであろうかと思いますが、最賃が改定された場合ですが、改定額だけでなく、建議だとか、異議の申立て制度についても、広報の際に触れること、また、広報するよう審議会の皆様から事務局へ指摘の改善を求めることが記載されております。
 4つ目ですが、国連の社会権規約委員会が、2013年に我が国に対し、上昇する生活費に最賃が満たない旨の懸念を表明しているということ、また、ILO条約でも最賃水準決定の際に考慮する要素として、我国では、通常の事業の賃金支払い能力というところを、労働者の生計費や労働者の賃金とともに規定されていますが、これを法律から削除するべきだというお立場での意見書となっております。
 5つ目ですが、最賃法改正の意義を平成20年の改正のことを念頭に書かれているのですが、最低賃金法改正の意義を考慮した大幅引き上げをということが、ここに書かれております。特に最賃法には、最賃決定において、労働者の生計費を考慮するにあたり、生活保護関連施策との整合性が明記されている。
 ただ、中央だとか、地方の審議において、生活保護基準というのは、低く設定されすぎている。その結果、最低賃金額も低く抑えられてしまっている。これは、中賃の労側委員だとか日弁連の主張、国連の社会権規約委員会でも指摘されているところであるので、生活保護基準の見直しが議論できるような資料の作成を求めています。
 それで、2ページ目の(2)額の議論にあたって、として県最賃を1,200円以上に、そして、1,500円が必要であるということが、スイートガーデン労働組合神戸支部の趣旨です。
 続く、パートの募集賃金額の項では、県内の募集賃金の平均は、この参考資料によると1,150円近くに上ると、そして、県最賃も我が国の最低賃金も低すぎる。先進国では、1,300円以上であるという中で、少なくとも1,000円以上の最低賃金が決定されるべきである、ということです。
 そして、兵庫でも全国の加重平均を上回る最低賃金にということと、大阪の964円との格差是正を踏まえた議論をしていただきたいということです。
 最後、(3)建議のために、のところですが、時給1,200円以上を出すための議論とそのための建議をということです。
 今年の建議の検討に当たっては、昨年までの建議を踏まえるとともに、以下にまとめていただいている兵庫県議会の意見書、国連の社会権規約委員会の勧告、ILO条約、地方議会や各地方審議会の建議、日弁連の主張などを考慮していただきたいとのことです。
 併せて、中小企業の社会保険料の負担だとか、税の減免制度の創設等の内容についても記載されているものでございます。
 それと、全国一律最低賃金制度について、そのための法整備が必要ということが記載されているところでございます。
 以上簡単ですが、説明をさせていただきました。
梅野会長  ありがとうございます。
 スイートガーデン労働組合からの意見書について、何か御質問等はございますでしょうか。
各委員 (特になし)
梅野会長  ないようでしたら、これで意見陳述は終了します。
 では、最後の議題のその他です。事務局から説明をお願いします。
青柳賃金室長  資料について、若干説明させていただきます。
 まず、特定最低賃金の申出の一覧表ですけれども、前回、自動車小売の記載が間に合っていませんでしたので、記載したものを今回資料とさせていただいていますので、御確認いただければと思います。
また、特定最低賃金につきましては、前回、必要性から専門部会で行うということで、現在、委員推薦の公示を行っているところでございます。
 それで、特定最低賃金の答申と発効の時期につきましては、資料の9に最短の答申日と発効日の関係が書かれています。ちなみに、12月1日に発効する場合は、1番右に12月1日と書かれているところの左の答申と書かれているところを見ていただきますと、10月1日の金曜日が答申の期限となっています。例えば、それが10月4日の月曜日だと発効日が12月2日となり、順次繰り下がっていくことになります。
 机上配布しております資料ですが、一つは、昨日、中小企業支援の一環ということで、業務改善助成金の要件の緩和ということが、報道で発表されていますので、資料として机上に配布させていただいております。変更内容につきましては、コースの新設と上限額が450万から600万円になったということ、それから、年度内に2回の申請が可能となったこと、上限加算の対象人数が増大したということ、助成対象について、設備投資の中に、パソコンとか特殊自動車の購入は対象外としていたのですが、今回の改正では、助成対象とするということを聞いております。
 それから、もう一つは、今年は周知広報の一環としまして、平成30年に1度行ったのですが、最低賃金キャッチフレーズの募集ということで、今年また周知広報の活動をしていきたいと考えております。
 つきましては、今日にでもホームページにアップしたいと思っていますが、各委員の組織の方でも、周知をお願いできればと思っております。また、今回優秀賞の選定については、審議会の方からも審議会長賞ということで選考したいと思っておりますので、個別に審査員をお願いさせていただきたいと考えております。
 以上が、資料の説明となります。あとは、次回、地賃の本審が8月5日の予定としておりますが、8月5日は、10月1日発効の期限ということでございます。
 専門部会につきましては、明後日の30日から順次開催していく予定であり、8月5日の午前中に専門部会を予定させていただいております。それで、8月5日の本審につきましては、午後2時からこの建物の3階で予定させていただいております。
 その年によりまして、専門部会が午前中から午後へと長引くような場合もございまして、その場合は、専門部会が終わってから本審ということになりますので、本審の委員の方には、少し待機していただくことになると思いますが、御理解をいただければと思います。
 続きましては、次回の本審の公開・非公開の判断について、お願いをしたいと思います。以上でございます。
梅野会長  それでは、次回の本審は8月5日木曜日の午後2時からとします。
 公開・非公開ですが、審議会は、原則公開でありますし、今年度の地賃もいろいろ注目を浴びております。昨年も公開でありましたので、今年も本審は公開でよろしいでしょうか。
各委員  異議なし
梅野会長  それでは、8月5日木曜日の午後2時から、公開ということで審議会を行います。
 事務局からほかに何かございますか。
泉賃金指導官  お手数ですが、この後、公益委員の先生には、連絡事項がございますのでそのままお待ちいただきますようお願いします。
青柳賃金室長  使用者側の先生方は、この後、打ち合わせをされるということですので、別室を用意しております。終了後で御案内いたします。
以上でございます。
梅野会長  ありがとうございました。
 それでは、今日の審議会は終了いたします。
 お疲れさまでした。
                                                                        梅野 巨利
                                                                      日下 修次
                                                                      松岡 直哉

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