・ 東海地震に係る労働災害防止対策要綱

愛知労働局

はじめに
  東海大地震は、いつ発生してもおかしくない地震と言われていますが、平成14年4月中央防災会議での震源域の見直しにともない、名古屋市を含む愛知県下の約3分の2にあたる58市町村が地震防災対策強化地域に指定され、一度、地震が発生すれば、県下の広い地域で大きな被害が発生することが予想されています。
  東海地震に係る防災対策は、県民の生命と財産を保護するため愛知県及び関係市町村等において取組まれているところでありますが、事業者には地震が発生した場合の労働者の被害を最小限にとどめるための予防措置、地震発生後の操業再開時における労働災害防止措置等に対する取組が必要であることから、愛知労働局では、東海地震の発生した際の労働者の労働の場における災害を防止するため、次のとおり労働災害防止対策要綱を定めました。

1 東海地震の基礎知識
(1)東海地震とは
  歴史的にみると、駿河湾から四国沖にかけての南海トラフ沿いの地域では、100年から150年間隔でマグニチュード(M)8程度の地震が発生しています。しかし、駿河湾領域は150年近く地震が起きていないため、プレートのひずみが相当蓄積されていると考えられます。
  1976年(昭和51年)静岡県を中心とした東海地域で「大地震が明日起きても不思議でない」という、いわゆる「東海地震説」が発表されました。それ以来、地震の観測体制が整えられ、静岡県西部・駿河湾一帯を震源とする、M8クラスの大規模地震にともなう強い揺れや津波などの被害が広い範囲で起こる東海地震が予測されてきました。
  2001年(平成13年)12月の国の中央防災会議「東海地震に関する専門調査会」の報告によると、予想される震源域が、従来の震源域よりも西(愛知県側)に大きく移動し、この結果、震度6弱以上が想定される地震防災対策強化地域として、2002年(平成14年)4月24日、名古屋市、豊橋市など57市町村が新たに指定され、既に指定されていた新城市を含め県内の58市町村がこの強化地域に含まれました。
  なお、58市町村の明細は以下のとおりです。

愛知県内の強化地域市町村(58市町村)
  名古屋市、豊橋市、岡崎市、半田市、豊川市、津島市、碧南市、刈谷市、豊田市、
  安城市、西尾市、蒲郡市、常滑市、新城市、東海市、大府市、知多市、知立市、高浜市、
  豊明市、日進市、東郷町、長久手町、七宝町、美和町、甚目寺町、大治町、蟹江町、
  十四山町、飛島町、弥富町、佐屋町、立田村、八開村、佐織町、阿久井町、東浦町、
  南知多町、美浜町、武豊町、一色町、吉良町、幡豆町、幸田町、額田町、三好町、
  設楽町、東栄町、津具村、鳳来町、作手村、音羽町、一宮町、小坂井町、御津町、
  田原町、赤羽根町、渥美町

(2)東海地震の予知から警戒宣言発令まで(平成16年1月修正予定)
  東海地震については、地震計、地殻岩石歪計などの観測機器が集中設置され、24時間体制で監視が行われているため、予知可能な地震と言われており、異常が観測されると一定の手続きを経て、地震防災対策強化地域の市町村に警戒宣言が発令されます。
  警戒宣言が発令されますと、その内容はテレビやラジオで放送されるほか、市役所・町村役場のスピーカーや広報車で広報が行われます。なお気象庁からは、地震観測データに何らかの変化があった場合、次の地震情報が発表されます。
  「観測情報」は、東海地震の観測データに異常が現れたものの、地震の前兆の可能性が直ちに判断できない場合などに出されます。その後地震の発生のおそれがなくなったと認められたり、東海地震の前兆現象とは直接関係ないと判断されたりすれば安心情報であることが明記され、追って発表されます。
  「注意情報」は、地震の前兆現象の可能性が高く、国や自治体、住民が防災対応の準備を開始すべき段階に出されます。
  「予知情報」は、地震の発生のおそれがあり、本格的な警戒態勢を取るように呼びかける場合に出されます。首相はこれを受けて警戒宣言を発令し、地震対策警戒本部が設置されます。
  従来の「判定会召集情報」にあたる情報は、「注意情報」の中で報じられます。


東海地震に関する新しい情報発表
             危険度
←
   予知情報          注意情報         観測情報
    ・警戒宣言          ・準備行動の開始      ・情報収集
    ・地震防災警戒本部の設置   ・救助部隊の派遣など
    ・地震防災応急対策の実施   ・住民に広報

2 事業者が講ずべき対策
 東海地震の発生に備え、また東海地震が発生した場合に際し、事業者は以下の対策を講ずることが望まれます。
(1) 地震防災管理体制の確立
 事業者は、地震防災対策の統括管理を行うとともに、各職場における推進担当者の選任を行い、又地震防災対策を協議する場を設ける等、地震防災組織を確立すること。
  なお、安全管理組織を有する事業場にあっては、その活用に配慮すること。
  地震発生後及び警戒宣言発令後における防災措置を迅速かつ的確に実施するための組織の編成及び活動について確立しておくこと。
(2) 予防対策
 地震が発生した場合の被害を最小限に止めるため、以下の予防対策を講ずること。
 火災、爆発防止対策
(ア) 火気使用設備については、感震装置による燃料・空気のしゃ断又は放水装置等の自動消火設備を設置すること。
(イ) 火気使用箇所の付近は、不燃化すること。
(ウ) 燃料等の配管は、フレキシブルチューブの使用等により、ジョイント部の離脱防止の措置を講ずること。
 有害物等の漏えい防止対策
(ア) 特定化学物質等の有害物の大量漏えいのおそれのある設備については緊急しゃ断装置又は防油堤等を設置すること。
(イ) 危険物、有害物の漏えいの応急措置を行うための土のう、オイルフェンス、中和還元剤、被ふく材等の資材及び保護具は容易に使用できる状態に管理するとともに、予めその作業方法を定めておくこと。
(ウ) ガラス液面計は、金属マグネットフロート方式のもの等破壊しないものとすること。
(エ) 放射性物質の貯蔵施設は、耐震性のある構造のものとするとともに、放射線物質を貯蔵する容器は破損のおそれのない堅固な容器とすること。
 建築物、機械、設備等の倒壊、落下及び移動を防止するための対策
(ア) 床面積が小さく重心の高い機械、什器類等は床、壁、柱等に固定するか、それぞれを連結する等の措置を講ずること。
(イ) 煙突、高架水槽等は補強その他倒壊防止の措置を講ずること。
(ウ) ブロック積み等のへい・室内隔壁は、補強、低層化への転換等を行うこと。
(エ) 高所の床端、架台、棚等に集積された物品は、柵、引き戸等の設置(什器等の開き戸は、ロック装置の設置)、固定措置、安全な箇所への移動等を行うこと。
(オ) 3階以上の窓ガラスは、ガラスにフイルムを貼付け、ゴム材によるサッシへの固定、サッシ等の外れ止めの設置等を行うこと。
(カ) チェーン等で下げられた電灯は、固定方式にするか又は三点吊り等振動による破壊防止の措置を講ずること。
 適切な避難を行うための対策
(ア) 安全な避難場所を指定し、その場所への安全な通路の確保と周知徹底を図ること。
(イ) 建屋の階段・出入口は、2ヵ所以上とすること。なお、2ヵ所以上に階段を設置することが困難な場合には、タラップ等の避難用具を備え付けること。
(ウ) 出入口の戸は、外開き戸又は引き戸とし、戸の開錠は、内側からは、キーを要しないものとすること。
(エ) 緊急避難のための非常ベル、手動式サイレン、携帯用拡声器及び照明用具等を備え付けること。
(オ) 避難場所、避難場所への通路は定期的に点検を実施すること。
(カ) 出入口の屋外側には、上部からの落下物を防護するため庇等を設けること。
 被害者の救出、消火等のための対策
(ア) 被害者の救出に用いるロープ、トビ、バール、鋸、スコップ、照明用具等の機器材及び担架、副木、止血帯、包帯等の救急用具並びに消毒薬、火傷薬等は容易に使用できる場所に備え付けておくこと。また、救出機器材等は定期的に点検整備を行うこと。
(イ) 建築物、取扱物に応じた消火設備を屋外等適当な場所に必要な数量を備え付けておくこと。
 警戒宣言が発令された場合の措置
(ア) ラジオ、テレビ等で正確な情報の入手に努め、情報を末端労働者まで迅速かつ確実に伝達すること。
(イ) 一定規模以上の事業場については、対策本部を設置すること。
(ウ) 操業の継続、危険作業の停止、作業員の帰宅、保安要員の配置等の要否を判断し、適切な指示を行うこと。
(エ) 操業の継続、保安要員の配置を決定した場合においては、作業者、保安要員の安全を確保するため、危険区域への立入禁止、保護帽、頭布の着用、緊急避難路の確保等の措置を講ずること。
(オ) 作業の継続及び保安業務に必要な箇所を除き、電源のしゃ断、元栓等の閉止、火気使用停止等の緊急措置を講ずること。
(カ) ボイラー等の圧力を有するものは、極力減圧すること。
(3) 地震発生時及びその直後の緊急措置
 地震発生時の緊急措置
(ア) 地震発生とともに使用中の火気の消火、電源のしゃ断及び漏えいの危険のある元栓の閉止等に努めること。
(イ) 急迫した危険がある時は、直ちに作業を中止し、退避させること。
 地震発生直後の緊急措置
(ア) 必要な消火活動、救出活動を行うとともに漏えいした危険有害物の拡散防止の措置を講ずること。
(イ) 崩壊、倒壊、爆発等二次災害の危険のある箇所には、関係者以外立入禁止等の措置を行うこと。
(4) 被災した自社の建築物、機械、設備等の復旧作業に係る災害防止対策
 復旧作業に対応した安全衛生管理体制を確立してから、安全作業に当たること。
 建築物等の被災状況の事前調査結果に基づいて、安全対策等を明確化した復旧作業に係る作業計画を作成し、当該作業計画により作業を行うこと。
 作業ごとに作業指揮者を定め、その者に作業計画に基づき作業の指揮を行わせること。
(5) 建築物、機械、設備等の使用再開時における災害防止対策
 クレーン、エレベーター等については、法令で定められているところにより、地震後の点検を実施すること。
 定期自主検査、使用前点検が法令で定められている機械設備についても、作業再開前に点検を行うこと。
その他の建築物、機械、設備等についても使用再開前の点検に努めること。
(6) 教育、訓練
 上記(2)~(5)の諸対策を必要な教育、訓練を実施すること。 なお誤操作による災害を防止するため、特に重要な事項については適当な場所に掲示しておくこと。
(7) 地震防災計画の策定と推進
 大規模地震対策特別措置法により地震防災応急計画(又は地震防災規程)の策定が義務付けられている事業場はもちろんのこと、その他の事業場にあっても、業種、規模、設備、危険物の貯蔵等の状況に応じ、上記(1)~(6)の事項について自主的な「事業場における地震防災計画」(又は防災マニュアル)を策定し、その推進に努めること。
(8) 労働条件の確保
 地震防災応急計画(又は地震防災規程)を策定し推進する場合、これに従事する労働者の安全・衛生のみならず、労働時間等の労働条件の確保についても配慮すること。

   
     
     
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