休憩?手待ち時間??

A:私は、接客業で正社員として勤務しています。拘束時間が長い割に、手取りが少ないような気がしています…相談に乗ってもらえないでしょうか。
B:なるほど。それは、休憩の取扱いの問題かもしれませんね。まず、基本的な労働条件を確認させてください。その会社で働き始めたときに、労働条件通知書はもらいましたか?また、その労働条件通知書の所定労働時間の欄はどのような記載になっていますか?

 
A:はい。本日、その労働条件通知書を持参しています。労働条件通知書の所定労働時間の欄には、7時00分に始業、10時から5時間の休憩をはさんで、20時00分に終業と記載されています。実労働時間は8時間となっていますが…
B:なるほど。接客業の場合、営業時間の関係で、本件のような労働時間制度を採用している会社は少なくありません。問題は、この5時間の休憩を適切に取得できているかどうか、にあります。
A:休憩ですか。言われてみれば、今まで考えたことがありませんでした。休憩についても法律で決まっていることがあるんですか?
B:はい。労働基準法に定められています。労働基準法では、実際の労働時間に対して、取得させなければならない休憩時間が次の表のとおり定められています。
 
実際の労働時間    必要な休憩  
6時間以下 不要
6時間を超える 45分
8時間を超える 60分
  
A:そういえば、学生の頃、コンビニエンスストアでアルバイトをしていたんですが、5時間のシフトに入るときは、休憩なしで、8時間のシフトに入るときは、休憩を取得するよう店長から言われていました。これもちゃんと法律に基づいた取扱いだったということですね。
 
B:そういうことになりますね。休憩の取扱いで大切なことは、3点あります。
ポイント1 労働時間の途中に取得させているか。
ポイント2 所定労働時間ではなく、実際の労働時間に対して取得させているか。
ポイント3 休憩の取扱いが不適切で、いわゆる手待ち時間になっていないか。
の3点です。ポイント3は、本件のご相談にとても関連の深いことなのでしっかり聞いてくださいね。
 
A:ポイント1はなんとなく分かりますよ。始業前や終業後に休憩をもらっても、休憩の意味がないですよね。
B:そのとおりです。ポイント2は、さきほどのコンビニエンスストアのシフトで考えると分かりやすいかもしれません。もともと5時間のシフトを予定していた場合は、休憩がありませんでしたね。これが表の1段目にあたります。一方で、当日、急にシフトを延長しなければならないこともままあるかと思います。5時間のシフトを8時間に延長した場合は、表の2段目にあたるので、8時間のシフトの間に少なくとも45分の休憩を取得させなければならないのです。

 
 
A:なるほど。実際の労働時間というのは、予定していた労働時間に加えて、残業等の予定していなかった労働時間も含めた時間ということですね。
B:そのとおりです。稀なケースかもしれませんが、ここからさらに労働時間を延長して、実際の労働時間が8時間を超えた場合は、追加で15分の休憩を取得させなければなりません。表の3段目にあたるケースです。
A:分割したとしても、合計で60分の休憩を取得できていればいいんですね。
B:さて、話をご相談の内容に戻しましょう。ポイント3について説明させてください。現在お勤めの会社では、5時間の休憩が定められているということでした。労働基準法は、労働条件の最低条件を定める法律ですから、8時間の所定労働時間に対して45分以上の休憩を設けること自体は何ら問題ないことです。しかしながら、休憩が適切に確保されていなければ元も子もありません。
 
A:適切な休憩とはどういうことでしょうか。現在の勤め先には、休憩室があり、休憩中は、ここで食事や仮眠をとっています。一方、休憩室での待機が義務付けられているということではなく、なかには、一度家に帰る職員もいます。
 
B:なるほど。そのような取扱いであれば、労働から離れることが保障されていると言えるので、休憩の取扱いは適切ですね。反対に、作業には従事していないけれども、会社から待機を義務付けられている時間のことを手待ち時間と言います。この手待ち時間は休憩にはあたりません。
A:現在の勤め先で考えると、実際にお客様の対応をした時間だけでなく、お客様の対応のために待機している時間も労働時間に含まれるということですね。私の会社だけでなく、接客業全般に共通した話のように感じます。
 
B:接客業以外の業種でも、手待時間が問題になる例があります。タクシー運転者が、駅前や車庫で乗客を待っている時間や、トラック運転手が、荷積み先で荷物を待っている時間も、労働から離れることが保障されていなければ手待ち時間になります。
 
A:接客業の場合、お客様を待たせる訳にもいかず、私は、休憩中でも、窓口が混雑すれば対応にあたっています。繁忙期は、所定の半分ほどしか休憩を取得できないことも少なくありません。このような場合、会社はどうしたらいいのでしょうか。
 
B:会社としては、休憩時間中に、何かしらの対応をしてもらわざるを得なくなった場合、その分の休憩時間をずらして取得してもらえれば問題ありません。また、労働時間の途中に取得していれば、分割して休憩を取得させることも可能です。
A:繁忙期には、休憩をずらすことも、分割することも出来ない場合があります。
B:たとえ繁忙期であっても、会社は、少なくとも、さきほど表でお示しした休憩時間を確保しなければなりません。また、休憩を取得できなかったことによって、所定時間外労働が生じることになりますので、追加で賃金を支払わなければなりません。場合によっては、割増賃金の支払いが必要になることもあります。

 
A:なるほど。休憩をずらして取得できなかったことは過去にも何度かありましたので、今後も賃金清算が必要なケースは想定できます。今回うかがった話を会社に持ち帰って、社長に話してみたいと思います。社長と話をしても埒が明かない場合、労基署に間に入ってもらうことは可能でしょうか。
 
B:労基法に関する問題ですので、労基署の調査の対象とすることも可能です。社長と話をして、事態が好転しない場合は改めてご相談ください。
A:分かりました。本日はありがとうございました。
 
 

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