感染症対応は非常災害??

●私は、病院を経営しているんですが、最近、感染症対応で、業務量がとても増加しています。

 
〇医療従事者の皆様のご奮闘には改めて感謝申し上げます。本日はどのようなご相談ですか?

 
●感染症対応で、医師を含めた全ての従業員の業務量がとても増加しています。時間外労働は、36協定に定めた上限の範囲内で行わなければならないということは十分に理解していますが、今後も業務量が増え続けるようだと、一部の職種の従業員の時間外労働時間数が、36協定の上限を超えてしまう可能性があります。だからと言って、36協定を理由に、患者さんの受入れを断るわけにもいきません。どうすればいいでしょうか。
 
〇なるほど。まずは、36協定について幾つかお聞かせください。貴病院で締結している36協定には、特別条項を設けていますか?
 
●はい。医師以外については、特別条項付き36協定を締結しています。しかし、今年度の36協定を締結したときは、当院が感染症対応を行うことは想定していませんでした。そのため、特別条項を適用する事由に、感染症対応に関する記載はありません。

 
〇36協定の締結時に想定し得ない事由が生じた場合は、特別条項を適用する事由に明記していなくても、特別条項を適用できる場合があります。一般的には、感染症対応は、この場合に該当します。
 
●そうだったのですね。従業員の疲労のことも考えて、まずは、時間外労働を36協定の上限の範囲内とするよう努めます。しかしながら、一部の職種の従業員については、特別条項の上限を超えて感染症対応を行わなければならない可能性があります。
 
非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働届という届出をご存じですか?
 
●初めて聞きました。どのような制度ですか?
 
〇台風や地震をはじめとする災害対応等の避けることのできない事由によって、時間外労働や休日労働をさせなければならない時に、この届出を労働基準監督に届け出れば、その時間については、36協定がなくても時間外労働や休日労働をしてもらうことができるというものです。

 
●そのような制度があるんですね。感染症対応もその対象となるんですか?

 
〇急病への対応は、人命保護の観点から急務であると考えるので、要件に該当するものと考えられます。また、感染症予防のための、医薬品の増産やワクチンの接種に関する業務もこの制度の要件に該当するものと考えられます。詳しくは厚生労働省HPをご覧ください。
 
●届出の様式には、「許可申請書」と「届」が併記されていますが、事前に申請して、労基署から許可をもらわなければいけないんですか?
 
〇事前に届出された場合は、監督署長が許可をするかたちを採っています。このように事前の届出ができないケースも少なくありませんので、その場合は、事後の届出でも問題ありません。事後の届出の場合は、届出様式の「許可申請書」を抹消して届け出てください。
 
●この届出を労基署に提出しておけば、その分は36協定の対象に含めないということですね。
 
〇そのとおりです。しかし、この制度の対象となる時間外休日労働は、災害対応や感染症対応などの臨時的な事由によるものに限られ、恒常的な事由や単なる業務の繁忙等の事由によるものは認められません。また、この制度によって、時間外労働等を行う場合であっても、割増賃金の支払いは必要です。加えて、長時間労働になってしまった従業員には、医師による面接指導を実施するなどの必要なフォローをしてください。
 
●はい。従業員の健康管理には常に気を配っています。感染症対応に奮闘してくれている従業員に健康障害が生じてしまっては、元も子もないですからね。それでは、さっそく非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働届を提出する準備をしたいと思います。ありがとうございました。

 
 
 

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