就業規則!

A:会社には就業規則が必要って聞いたんですが?

 
B:そうですね。
 従業員が10人以上の会社では、就業規則を定めて、労働基準監督署長に届け出なければならないと規定されています。
 
A:へぇ~、10人以上だけなんですね。

 
B:労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する場合に作成し、届け出なければならないと規定していますが、10人未満の事業場でも会社内の規則や会社と従業員の決まりごとなど、就業規則として作成しておくことは重要だと思います。
 
   また、就業規則は会社が作成することができるのですが、作成した就業規則は従業員の意見を聞かなければならないとされ、その意見について意見書を作成して監督署へ届け出ることとされています。
 
A:今まで、いろんなセクションで就業規則のことが出てきましたが、実際のところ、何を規定しておけばよいのですか。

 
B:労働基準法上、必ず決めなければならない事項と会社で採用している場合に規定しなければならない事項があります。
 前者を絶対的必要記載事項、後者を相対的必要記載事項と言います。
 
A:なんか難しそうですね。

 
B:言葉は難しそうですが、内容はそうでもないと思いますよ。
 では、労働基準法の規定を見てみましょう。
 労働基準法第89条第1項に規定されている、必ず定めなければならない事項は次のものです。
 
 
① 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
 
② 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  ③ 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
 
A:えっ、これだけですか?

 
B:はい。必ず決めなければならない事項はこの3項目です。
 特に重要なのは、賃金に関することです。
 
A:そうですよね。
 働いてもらって、きちんと給料を支払わないなんてありえないですからね。
 
B:賃金のうち、基本給以外の部分、例えば皆勤手当とか家族手当とかなどの考え方も規定する必要があります。
 家族手当、通勤手当、住宅手当については、労働基準法とその規則で割増賃金の計算基礎から除かれることとされていますが、明確な基準がない場合、すべて割増賃金の計算基礎に入れることとなる可能性が高いので注意が必要です。
A:労働基準法やその規則で計算基礎から除くとされているのに算入しなければならないのですか?

 
B:これらの手当てが計算基礎から除かれるには理由があります。
 例えば、家族手当を割増賃金の計算基礎に入れるとすると、家族が多い人ほど割増賃金の単価が高くなって不合理であるため、除くとされているわけです。
 
A:なるほど、通勤手当でいえば通勤距離が長い人ほど割増賃金の単価が高いというのもなんか変ですもんね。

 
B:そのようなわけで、例えば、家族手当という名称でも、独身の従業員にも世帯で5人家族の従業員にも同額を支払っている場合には、家族を根拠としていないと考えられますので、単なる「加給」として割増賃金の計算基礎に入れなければならないとされることが多いです。
A:家族の数に影響されないからですね。
 
B:住宅手当や通勤手当も同様に、住宅の賃貸や所有、通勤距離に関係なく一律に支払われているような場合には「加給」とみなされる場合が多いです。
 
A:明確な基準が必要なわけですね。
 例えば、配偶者がいる場合いくらとか、子供1人につきいくらとか…。
 
B:そうですね。
 家族の範囲とか人数とかの基準を明確にしておく必要があると思います。
 
B:始業や終業の時刻、休日についても規定することとされています。
また、退職に関する規定も大切です。
定年のこともここに規定することとなります。
A:この規定には「解雇の事由を含む。」とされていますが・・・。

 
B:はい。解雇の事由については、少なくともどのような事実がある場合に解雇されることになるのかを明確にしておく必要があります。

 あってはいけないことですが、例えば非行を行った従業員を懲戒解雇とする場合、就業規則に懲戒規定を設けて、解雇の事由として明確にしておかないと、適法に処分を行うことができません。

 なお、労働者を解雇する場合には、合理的な理由が必要とされていますので、解雇の事由についても合理的な内容でないといけません。
 
B:これ以外に、会社で実施している場合に規定しなければならない事項は次のとおりです。

 
  ③ の2 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
  ④  臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
  ⑤  労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
  ⑥  安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  ⑦  職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  ⑧  災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
  ⑨  表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
  ⑩  前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
 
A:いろいろありますね。

 
B:そうですね。
 見た目はたくさんに見えますが、会社で賞与を支給しているのであれば、それを定めればよいことですし、退職金の制度があれば、それについて定めればよいのだと思います。
   就業規則を作成する際は、会社の実情と照らし合わせて作成していただくことが重要です。
 
B:先程、就業規則は会社が決めることができる、と説明しました。
しかし、作ればよいというものではなく、法令に違反していないこと、合理的であることが必要です。
 
A:法令に適合していない場合はどうなるのですか。

 
B:就業規則のうち、法令に合致していない規定は無効となり、法令の規定が適用されます。

 
A:就業規則すべてが無効となるわけではないんですね。

 
B:そうですね。
 法令に合致している部分や合理的な部分は有効とされます。
 
A:就業規則は作成したときに届ければよいのですか?

 
B:先程、就業規則は作成しただけではだめで、従業員の意見を聞いて労働基準監督署へ届け出なくてはならないと説明しましたが、改正した場合も同様の手続きをとる必要があります。
 
A:従業員の意見を聞いて、周知して、労働基準監督署に届け出るということなんですね。
B:就業規則と労働契約の関係について労働基準法では、就業規則の基準を下回る労働契約は、その下回る部分は無効とされ、無効とされた部分は就業規則の規定による、とも規定されています。
 
B:就業規則を一から作成するのは大変かもしれませんが、厚生労働省のホームページにある「スタートアップ労働条件」でユーザー登録すると、就業規則の作成を支援してくれるものがあります。
 
   また、全国の労働局や厚生労働省のホームページにはひな形があります。
 いろいろ見てみて、自分の会社にあったものをダウンロードしてみてください。
もちろん、ダウンロードしただけでは会社の実情に合っていないので、会社の実情に合わせて書き換えていただく必要はありますが、一通り読んでいただければ自分の会社と異なる部分がわかると思います。
 10人未満の事業場でも、ぜひ作成してみてください。
 
※ 就業規則のひな型を掲載しているホームページで、労働局や厚生労働省以外のものの中には有料のものもありますので、ご注意ください。
 
 
 








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