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~月給制の労働者の残業代について~ 
 まさか、月給制の労働者は、何時間残業させても良いというような考えを持っている方はいないと思います。
 月給制だといっても、24時間働くという契約をしたわけはなく、会社の決めた労働日の労働時間に働くという契約をしているのですから、それを超えた分については、追加で賃金を支払う必要があり、更に、超えた時間が法定労働時間を超えた場合には割増賃金を支払う必要があるということは、当然のこととして理解されていることでしょう。
 では、1か月間、24時間、休憩や休日無しで働かせるという契約をした場合の賃金が最低でいくらになるのか考えてみましょう。
 ここでは、時間額を1,000円と仮定して計算します。実際には、賃金は、都道府県ごとに定められた最低賃金額以上とする必要があります。現在の山梨県の最低賃金額はこちらで確認してください。
  また、所定労働時間を午前9時から午後5時の8時間と設定します。
 労働基準法第35条で、休日は週に1回、4週に4回と定められているので、31日の月では最低4日の休日があると考えられます、よって通常の労働日は、
   31日 ー 4日 = 27日
 よって、所定内労働の賃金は、
   27日 × 8時間 × 1,000円 = 216,000円
 休憩時間はないと仮定して、24時間から8時間を引くと、時間外労働時間は16時間、このうち深夜が7時間、深夜以外が9時間となります。
 1日の時間外労働時間は、次の日の所定始業時刻までとされています。
 通常の時間外労働には25%増しの割増賃金を支払わなければなりません。また、大企業では、1か月の時間外労働が60時間を超えた場合、50%増しの割増賃金を支払わなければなりません。そのため、時間外労働が60時間を超える前と後で分けて考えます。
 1日16時間の時間外労働を行った場合に、時間外労働時間が60時間となるのは、
 60時間 ÷ 16時間 = 3.75日
 つまり 3日と1日の75%を経過した時です。1日の時間外労働時間が16時間としているので、その75%は12時間になります。
   時間外労働は午後5時から開始するので、その12時間後は午前5時です。つまり、4日目の午前5時からの時間外労働の割増率は50%としなければなりません。
 
 割増率を25%で計算する3日目までの時間外労働に対して支払わなければならない割増賃金は、
  通常 9時間 × 1,000円 × 1.25 × 3日 = 33,750円
  深夜 7時間 × 1,000円 × 1.5  ×  3日 = 31,500円
   
 4日目は途中から50%増しの割増賃金を支払わなければなりませんので、
  通常 5時間 × 1,000円 × 1.25 = 6,250円
  深夜 7時間 × 1,000円 × 1.5 = 10,500円
  50%増し 4時間 × 1,000円 × 1.5 = 6,000円
   
 5日目以降の時間外労働時間には、通常50%増し、深夜75%増しで割増賃金を支払わなければなりませんので、
  通常 9時間 × 1,000円 × 1.5  ×  23日 = 310,500円
  深夜 7時間 × 1,000円 × 1.75 × 23日 = 281,750円
   
 月4日の法定休日には35%増し、法定休日の深夜には60%増しで割増賃金を支払わなければなりませんので、
  法定休日通常 17時間 × 1,000円 × 1.35 × 4日 = 91,800円
  法定休日深夜   7時間 × 1,000円 × 1.6  ×  4日 = 44,800円
   
 これらを合計すると1,032,850円になります。
 つまり、時間額1,000円の労働者を、1日中、休憩もなく24時間労働させ、さらに、休日もなく働かせようとすると、おおよそ103万円程度の月給が必要となります。
 所定労働に対する賃金は216,000円でしたので、時間外労働分の賃金は、全ての賃金である1,032,850円から216,000円を引いた816,850円となります。36協定を度外視すれば、この816,850円を固定残業代として支払うことで、いつ何時でも労働者を働かせることができる、ということになります。
 当然固定残業代ですから、実際の時間外労働時間が短かったとしても、全額支払う必要があります。
 さあ、どうでしょうか。
 これは、あくまでフィクションです。
 実際の所定労働時間は1週40時間以内、1日8時間以内、時間外労働時間は、月45時間以内、年間360時間以内と労働基準法に定められています。
 また、労働基準法では1日6時間を超えて労働させる場合は45分以上、1日8時間を超えて労働させる場合は1時間以上の休憩時間を与えることが義務づけられています。

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