熱中症って?

A:熱中症って、昔は日射病とかいったくらいだから、夏のものですよね?
B:そうですね。夏は熱中症になる人が多いですね。最近の気候では夏だけとは限りませんが。
 でも、どうして夏は熱中症になる人が多いのでしょうか?
A:蒸し暑いからでしょ。
B:はい。ではどうして蒸し暑いと熱中症になりやすいのでしょうか?
A:・・・。
B:まず、熱中症について考えてみましょう。

 熱中症とは、
 高温多湿な環境下において
 体内の水分及び塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり
 循環調節や体温調節などの体内の重要な調整機能が破綻する
 などして発症する障害の総称といわれています。
A:やっぱり高温多湿なんですよね。
B:今の説明では高温多湿の条件が定義されていないので、そのような感じになってしまうのだと思います。
 人によって気温が27度でも暑いと感じるでしょうし、32度でもまだ大丈夫と感じる人もいるでしょうから。
 そこで、客観的に熱中症の危険度を表すために、今はWBGT指数という基準を使うようになっています。
A:WBGT指数ってなんですか?
B:湿球黒球温度指数のことで、暑さ指数とも呼ばれています。

 熱中症の原因が暑さと湿度にあるといいましたが、その暑さと湿度を測ることができるのが湿球黒球温度計と呼ばれているもので、これらの測定値から計算して求められる値です。
  計算式は次のとおりです。
屋外 WBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×気温
屋内 WBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
A:計算で求めるのですか?
B:湿球黒球温度計を使った場合は計算することとなりますが、
「JIS B 7922」の規格に適合したWBGT指数計
なら、測定後すぐに結果が出るようになっています。
B:ここで注目してほしいのが、湿球温度、黒球温度、気温に乗じている数値です。
A:湿球0.7、黒球0.2、気温0.1のことですか?
B:はい、これらは、測定値が熱中症に与える影響を考慮して定められています。黒球温度は輻射熱に関する温度なので、気温より輻射熱、輻射熱より湿度が大きく関係していることがわかりますね。
A:輻射熱って?
B:急に輻射熱のことになってしまいましたが、輻射熱とは、あらゆる物体が出している熱のことで、それを人が受けると体が熱くなるものです。
 ここでは、人が周囲から受ける熱のことだと考えてください。

 太陽が出ているときの日向は暑くて日陰は涼しいですよね。
 でも、太陽が沈んでしまっても、気温が下がらないこともありますよね。これは、ビルのコンクリートの壁やアスファルトの道路が、昼間に受けた熱を蓄えていて、夜になると放射することが原因の一つだといわれています。
A:ヒートアイランド現象ですね。
B:話を元に戻すと、熱中症のかかりやすさを決めている暑さ指数の7割は湿度だということです。
 湿度が高いときは、より熱中症にかからないような体調管理や水分補給などが必要、ということですね。
A:熱中症にならないためにはどうしたらいいんですか?
B:まず、熱に慣れていないときは、熱中症になりやすいということを理解してください。
A:熱に慣れるってどういうことですか?
B:熱順化といいます。
 つまり、暑い環境に慣れていくということですね。
 熱に順化するには、7日以上かけて、徐々に熱に接する時間を長くすることが必要ともいわれています。
 さらに、熱に接することを中断した場合、4日後には順化の喪失が始まり、3~4週間後には完全に失われるともいわれています。
A:だから夏の前に暑い期間が続くと暑さに慣れるけど、その後雨が降ったりして涼しい日が続くと、次の暑い日の暑さがつらいと思うんですね!
B:はい、気温がだんだん暑くなっていけば、体が慣れていくのですが、ここ何年かのような、急に暑くなったり、涼しくなったりを繰り返すような気候だと、熱に慣れないまま暑い環境に入ることとなるので、真夏になる前とか9月頃でも熱中症になってしまう、ということなんです。
B:熱中症にならないためには、まず、暑さ指数を把握すること。
 そして、暑くなっていく状況に応じて作業の計画を立てることが必要です。
 とても暑い5月に休憩も取らず暑い作業環境で作業することは、熱中症になる可能性がとても高くなる、ということはわかってもらえたと思いますので、暑さに慣れていく段階では、余裕を持った作業の計画が必要、ということなんですね。
A:ほかにはどのようなことがありますか?
B:まず、人の側ですが、こまめな給水ができるよう、作業場所のそばに水を用意すること、法令では、塩も置いておくよう求めていますが、ミネラルの入ったスポーツドリンクも有効だといわれています。
A:汗でミネラルも出てしまうことから、ミネラルの補給も必要、ということなんですね。
B:それと、健康管理が最も大切なんです。
 睡眠不足や深酒をしないということを心がける必要があります。
 睡眠不足は、どのような場合でも良くないのでわかってもらえると思います。
 お酒を飲むと、体から水分がでていきます。
 そのままの状態で高温多湿の場所で作業すると、元々少ない水分が汗となって出てしまうのですから、熱中症になりやすい、といわれています。
A:お酒を飲んで翌朝、喉が渇くことがよくありますものね。
B:次に設備の側です。
 屋外作業であれば、休憩場所に簡易な屋根をつけるだけでもかなり気温が下がりますし、できれば、作業場所のそばに冷房設備のある休憩室などを設けられれば良いですね。
 最近は、シャワーミストを取り付けている現場も増えましたよね。
A:気化熱で空気を冷やすものでしたよね。
B:また、服装も重要です。
 通気性の良い作業服を着ることによって、熱中症になる危険を少し下げることができると言われています。
 作業によっては、必ず長袖が必要ということもあるので、通気性のある服は重要です。また、ファンで服の内部に風を送るものや水を循環させて体を冷やす機能のある作業服もあります。
A:どうしても炎天下で作業しなければならない場合には、ファンや水を循環させる作業服は有効かもしれませんね。
B:もし熱中症になってしまったら、救急車を呼ぶことが必要となる場合もあるので、緊急時の対応について話し合っておくことも必要ですね。
A:熱中症では、救急車を呼ぶほどでもないって思ってしまいがちですよね。
B:涼しいところで水を飲んで休んでいれば治るから、救急車を呼ぶほどでもない、と考えてしまう人もいるかもしれません。
 しかし、熱中症は重症になれば死亡することもある危険なものです。

 熱中症の症状はいくつかあって、さらに重症度によって段階が設けられています。
 傷病名は、
 「熱失神」
 「熱けいれん」
 「熱疲労」
 「熱射病」
 の4つがあります。
 実際には、これらの症状が混在して発症するので、症状の重症度によって軽症(Ⅰ度)、中等症(Ⅱ度)、重症(Ⅲ度)に分類されています。
A:でも、これらは医師が診断する際のものなので、私たちが熱中症になった人を見て判断するものではないですね。
B:そうですね。
 実際に熱中症になった場合には、
  涼しい場所に移して
  大きな血管の通っているところを冷やす
  水分を補給する
 という、基本的な手当てをしても、状況が変わらない場合や悪化するような場合には、救急車を呼ぶ必要があると思います。
 熱中症かもしれないと言ってきた人が、頭痛がするとか吐き気がする又はおう吐する、けいれんするなどの重篤な症状があった場合には、すぐに救急車を呼ぶ必要があると思います。
 救急車が来るまでは、体を冷やして、水分を補給させることは必要です。

 注意していただきたいのは、熱中症になったことに気がつかないで作業を続けてしまうことがある、ということです。
 ちょっとふらふらするなとか頭が痛いくらいであれば、たいしたことないと思って作業を続ける人もいます。
 でも、周囲から見るとかなりふらふらしているとか、作業効率がかなり落ちているとかのサインが見られる場合も多くあります。
 高温多湿な作業状況では、他の人がどのような状況になっているのかを、時々見てみることも有効だと思います。
 熱中症と甘く考えずに、重症化すると死に至ることもある病気だと考えて、必要な対策を講じるようにしてください。

 厚生労働省では、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を展開して、熱中症の予防について呼び掛けています。
 このキャンペーンでは、熱順化のためもあり、4月を準備期間とした対策期間を定めていますので、是非厚生労働省のホームページをご覧ください。

その他関連情報

情報配信サービス

〒400-8577 甲府市丸の内1丁目1番11号

Copyright(c)2000-2011 Yamanashi Labor Bureau.All rights reserved.