労災保険とは
労働者が業務上の事由または通勤によって負傷したり、疾病に見舞われたり、あるいは不幸にして死亡された場合に被災労働者や遺族を保護するため必要な保険給付を行っています。また、労働者の社会復帰の促進など、労働者の福祉の増進を図るための事業も行っています。
◎ 業務災害とは
業務が原因となった災害ということで、業務と労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡等との間に一定の因果関係があることをいいます。
この業務災害に対する保険給付は、労働者が労災保険の適用される事業場に雇われて働いていることが原因となって発生した災害に対して行われるものですから、労働者が労働関係のもとにあった場合に起きた災害でなければなりません。
なお、法人・個人を問わず一般的に労働者が使用される事業場は適用事業場となります。
◎ 通勤災害とは
(通勤災害制度については平成18年4月1日に一部改正されています。)
通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。
この場合の「通勤」とは、労働者が、就業に関して、次に掲げる移動を合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとされています。
通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。
この場合の「通勤」とは、労働者が、就業に関して、次に掲げる移動を合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとされています。
(1) | 住居と就業の場所との間の往復 |
(2) | 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動 |
(3) | 住居と就業場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。) |
さらに、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合には、逸脱・中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません。
ただし、逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって、労働省令で定めるやむを得ない事由により行うための最少限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除き「通勤」となります。
このように通勤災害とされるためには、その前提として、労働者の住居と就業の場所との間の往復、就業の場所から他の就業場所への移動、住居間の移動等が労災保険法における通勤の要件を満たしている必要があります。
◎ 労災保険給付の種類及び手続き
保険給付を受けるためには、被災労働者又はその遺族が所定の保険給付請求書に必要事項を記載して、被災労働者の所属する事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に提出しなければなりません。
給付の 種類 |
どんなときに | 請求書・申請書及び様式 | 提 出 先 |
療養 | 労災指定病院等で療養を受けるとき | 療養補償給付たる療養の給付請求書(5号) 療養給付たる療養の給付請求書(16号の3) |
病院や薬局を経て所轄労働基準督督署長 |
労災指定病院等以外で療養を受けるとき | 療養補償給付たる療養の費用請求書(7号) 療養給付たる療養の費用請求書(16号の5) |
所轄労働基準監督署長 | |
休業 | 療養のため労働することができず、賃金を受けられないとき | 休業補償給付請求書(8号) 休業給付請求書(16号の6) |
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傷病 | 療養開始後1年6カ月を経過しても傷病が治っていないで傷病等級に該当するとき | 傷病の状態等に関する届(16号の2) | |
障害 | 傷病が治ゆ(症状固定)した後に、身体に障害が残存したとき | 障害補償給付請求書(10号) 障害給付請求書(16号の7) |
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遺族 | 被災労働者が死亡したとき | 遺族補償年金支給請求書(12号) 遺族年金支給請求書(16号の8) |
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遺族補償一時金支給請求書(15号) 遺族一時金支給請求書(16号の9) |
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葬祭 | 死亡した被災労働者の葬祭を行うとき | 葬祭料請求書(16号) 葬祭給付請求書(16号の10) |
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介護 | 被災労働者が介護を受けているとき | 介護補償給付支給請求書 介護給付支給請求書(16号の2の2) |
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二次健診等 | 二次健康診断を受けるとき | 二次健康診断等給付請求書(16号の10の2) | 健診給付病院経由で労働局長 |
1 療養(補償)給付について
労働者が、業務上又は通勤により、負傷したり疾病にかかって療養を必要とするときに療養(補償)給付が支給されます。
療養(補償)給付には、「療養の給付」と「療養の費用の支給」との2種類があります。
給付の内容
「療養の給付」は、労災病院・労災指定医療機関・指定薬局等の指定医療機関等において無料で治療を受けられる現物給付です。
「療養の費用の支給」は、労災病院や労災指定医療機関以外の医療機関や薬局で治療を受けた場合に、その治療に要した費用について支給されます。
2 休業(補償)給付について
労働者が、業務上又は通勤により、負傷したり疾病にかかって療養のために労働することができず、そのために賃金を受けていないときに、賃金を受けない日の第4日目から支給されます。
なお、休業の初日から第3日目までを待期期間と言い、この間について業務災害の場合、事業主が労働基準法の規定に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行わなければなりません。
なお、休業の初日から第3日目までを待期期間と言い、この間について業務災害の場合、事業主が労働基準法の規定に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行わなければなりません。
3 傷病(補償)年金について
業務上又は通勤による負傷や疾病の療養開始後1年6ヶ月を経過しても治ゆせず、傷病等級(第1級~第3級)に該当するとき給付基礎日額の313日~245日分の年金が支給されます。
傷病補償年金が支給される場合は、療養(補償)給付は引き続き支給されますが、休業(補償)給付は支給されません。
4 障害(補償)給付について
労働者が、業務上又は通勤による負傷や疾病が治ったとき、身体に一定の障害が残っている場合に支給されます。障害の程度に応じて、年金又は一時金があり、障害等級第1級~第7級の場合は、給付基礎日額の313日~131日分の障害(補償)年金が、また、第8級~第14級の場合は給付基礎日額の503日~56日分の障害(補償)一時金が支給されます。
5 遺族(補償)給付について
遺族(補償)給付には、遺族(補償)年金又は遺族(補償)一時金の2種類があります。
労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた一定の範囲の遺族に対し遺族 (補償)年金が、その年金受給者がいないときは、一定の範囲の遺族に対して給付基礎日額の1,000日分の遺族 (補償)一時金が支給されます。
6 葬祭料(葬祭給付)について
葬祭を行った者に対し315,000円+給付基礎日額の30日分又は給付基礎日額の60日分のいずれか高い方が支給されます。( 支給金額については、平成12年4月1日より施行されている額です。)
7 介護(補償)給付について
一定の障害により障害(補償)年金又は傷病(補償)年金を受給し、かつ、現に介護を受けている場合、介護(補償)給付が支給されます。
常時介護の場合は、介護の費用として支出した額が166,950円を上限として支給されます。
ただし、親族等の介護を受けていた方で、介護の費用を支出していない場合又は支出した額が72,990円を下回る場合は、一律72,990円が支給されます。
また、随時介護の場合は、介護の費用として支出した額が、83,480円を上限として支給されます。
ただし、親族等の介護を受けていた方で、介護の費用を支出していない場合又は支出した額が36,500円を下回る場合は、一律36,500円が支給されます。
( 支給金額については、令和2年4月1日より施行されている額です。)
8 二次健康診断等給付について
労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の結果、肥満、血圧、血糖、血中脂質の4項目全てに異常の所見が認められた場合には、二次健康診断及び特定保健指導を受けることが出来ます。(既に脳・心臓疾患の病状を有している者を除きます。)
二次健康診断及び特定保健指導検査の内容は以下のとおりです。
二次健康診断
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空腹時血中脂質検査
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空腹時血糖値検査
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ヘモグロビンA1C検査(一次健康診断で受診している場合は、二次健康診断では支給されません。)
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負荷心電図検査又は胸部超音波検査(心エコー検査)
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頚部超音波検査(頚部エコー検査)
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微量アルブミン尿検査
特定保健指導
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栄養指導
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運動指導
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生活指導
※請求期間
二次健康診断等給付の請求は、一次健康診断の受診日から3か月以内に行わねばなりません。
一次健康診断の受診日から3か月を過ぎて請求が行われた場合、二次健康診断等給付を受ける
ことはできません。ただし、次のようなやむを得ない事情がある場合は除きます。
一次健康診断の受診日から3か月を過ぎて請求が行われた場合、二次健康診断等給付を受ける
ことはできません。ただし、次のようなやむを得ない事情がある場合は除きます。
(1) | 天災地変により請求を行うことができない場合。 |
(2) | 一次健康診断を行った医療機関の都合等により、一次健康診断の結果の通知が著しく遅れた場合。 |
◎ 給付基礎日額について
「給付基礎日額」とは、原則として、労働基準法の平均賃金に相当する額を言います。
また、平均賃金とは、原則として、業務上又は通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日又は医師の診断によって疾病の発生が確定した日 (賃金締め切り日が定められているときは、その日の直前の賃金締め切り日) の直前3ヶ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額をその期間の歴日数で割った1歴日あたりの賃金です。
◎ 治ったときとは
「治ったとき」とは、傷病の状態が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその効果が期待できなくなったときをいい、これを「治ゆ」又は「症状固定」と言います。
すなわち、負傷の場合は創面の治ゆした場合、疾病の場合は、急性症状がなくなり慢性症状は持続しても医療効果が期待できない状態と判断される場合をいいます。
したがって、「治ゆ」とは必ずしも、もとの身体状態に回復した場合だけをいうものではありません。
◎ 請求に係る時効
1 | 療養(補償)給付 |
療養の給付については現物給付であるから、請求権の時効は問題となりませんが、療養の費用は、費用の支出が確定した日から2年を経過しますと、時効となります。 | |
2 | 休業(補償)給付 |
療養のため労働できないため賃金を受けない日毎に請求権が発生し、その翌日から2年を経過しますと、時効となります。 | |
3 | 障害(補償)給付 |
傷病が治った日の翌日から起算して5年を経過しますと、時効となります。 | |
4 | 遺族(補償)給付 |
被災者が亡くなられた日の翌日から5年を経過しますと、時効となります。 | |
5 | 葬祭料・葬祭給付 |
被災者が亡くなられた日の翌日から2年を経過しますと、時効により請求権が消滅することとなります。 | |
6 | 二次健康診断等給付 |
労働者が一次健康診断の結果を了知し得る日の翌日から2年を経過しますと、時効により請求権が消滅することとなります。
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◎ 社会復帰促進等事業について
労災保険は業務災害又は通勤災害に対して保険給付を行うこととあわせて、これらの労働災害による被災労働者の福祉の増進に寄与することを目的とした次のような社会復帰促進等事業を実施しております。
I 社会復帰のための各種援護制度
1 長期療養者職業復帰援護金
2 振動障害者社会復帰援護金
3 振動障害者雇用援護金
4 振動障害者職業復帰促進事業特別奨励金
5 アフターケア
6 外科後処置
7 義肢・補装具等の支給(修理)
8 労災はり・きゅう施術特別援護措置
II その他の各種援護制度
1 長期家族介護者援護金
2 労災就学等援護費
3 年金担保資金の貸付
4 労災ホームヘルプサービス事業
お問い合わせは、山梨労働局労働基準部労災補償課または最寄りの労働基準監督署へ