解雇・退職

 

 

解雇・退職とは

  解雇は使用者が行う労働契約の終了(解除)の意思表示です。
退職は労働者が行う労働契約の終了(解除)の意思表示です。
労働契約は使用者、労働者双方について、労働契約に基づく義務を有していますので、労使双方は労働契約を終了させる時には法律等に基づく手続きを踏んで、適正に実施していただくようお願いします。
   

 

解雇に関する労働基準法上の規制について

  労働基準法では解雇について以下のとおり規制を設けています。
 
1. 合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない事由による解雇の無効 (労働基準法第18条の2)
2. 労働者に一定の事由がある場合の解雇の制限 (労働基準法第19条 )
3. 解雇予告期間の設定(労働基準法第20条)
4. 解雇理由の証明(労働基準法第22条第2項)
   

 

 合理的理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇の無効について

   労働契約法第16条では「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとみなし無効」である旨が定められています。
 この条文は解雇の内容に関するルールを定めたものです。解雇の内容に関するルールは一般に「解雇権濫用法理」と呼ばれ、昭和50年の最高裁判決以降、判例として確立されたもので、平成15年の労働基準法改正により法文上明記されましたが、平成20年労働契約法の施行にともなってこの労働基準法の規定をそのまま同法へ移し、労働契約法16条としたものです。よって「合理的な理由の無い、社会通念上妥当と判断されない解雇」は無効となり、解雇そのものが否定され、労働契約は依然として存在することになります。
  解雇に合理的な理由等があるか否かの判断は個別、具体的に行うことになりますが、会社の経営不振等を理由とする労働者の「整理解雇」については、判例においていわゆる整理解雇の4要件が以下のとおり示されています。整理解雇を適正に実施するためには原則として、以下の4要件全てを満たす必要があります。
 
1. 経営上の必要性
  倒産寸前に追い込まれているなど、整理解雇をしなければならないほどの経営上の必要性が客観的に認められること
2. 解雇回避の努力
  配置転換、出向、希望退職の募集、賃金の引下げその他整理解雇を回避するために会社が最大限の努力を尽くしたこと
3. 人選の合理性
  勤続年数や年齢など解雇の対象者を選定する基準が合理的で、かつ、基準に沿った運用が行われていること
4. 労使間での協議
  整理解雇の必要性やその時期、方法、規模、人選の基準などについて、労働者側と十分に協議し、納得を得るための努力を尽くしていること
   

 

 労働者に一定の事由がある場合の解雇の制限について

  労働基準法第19条では
 
1. 労働者が業務上負傷または病気になり、その療養のため休業する期間及びその後30日間
2. 産前産後の女性が労働基準法第65条(産前産後の休暇)の規定により休業する期間及びその後30日間
  は解雇が出来ない旨が定められています。よって、上記の期間は如何なる理由が あっても解雇は出来ません。
  但し労働基準法第19条では
 
1. 労働災害により被災した労働者の解雇制限については、使用者が労働基準法第81条の規定に基づく打切補償を支払った場合
2. 天災地変その他やむを得ない事由により事業の継続ができなくなり、事業の継続ができなくなったことについて所轄の労働基準監督署長の認定を受けた場合
  は解雇制限の規定は適用されずに、解雇することができます。
  なお、打切補償を支払う場合には労働者を解雇できますが、この規定は労災保険制度が整備される前に制定された規定であり、使用者に代わって国が労災補償を行っている現在では、実務上あまり問題になっていません。
  また、天災事変等により事業の継続が不可能になったことにより、使用する労働者を解雇する必要があるため、所轄労働基準監督署長の認定を受けようとする使用者は、管轄の労働基準監督署に「解雇制限解雇予告除外認定申請書」(様式第二号)を提出して認定を受ける必要があります。
「解雇予告、解雇制限除外認定申請書」の様式例
   

 

 解雇予告期間の設定について

   労働基準法第20条では「使用者は労働者を解雇する場合は少なくとも30日前に予告をしなければならない、30日前に予告をしない使用者は30日分の平均賃金を支払って解雇しなければならない」旨が定められています。
  労働者を解雇する時には少なくとも30日前に予告することが原則です。具体的には解雇予告(口頭でも文書でもよいが文書による予告が望ましい。)をした次の日から起算して30日後が解雇日となるよう、予告を行うことが必要となります。
  予告日を全く設けない解雇(即時解雇)、予告期間が30日に満たない場合は、予告期間30日に対応する解雇予告手当を支払う必要があります。
 
解雇予告手当の計算例
例1 即時解雇の場合
  解雇予告手当=平均賃金×30日分(不足予告日数30日)
例2 5月15日に5月31日付け解雇の予告を行った場合
  解雇予告手当=平均賃金×14日分(不足予告日数14日)
  「平均賃金」の説明はこちらにあります。
  また、解雇予告が原則ですが、以下の場合
 
1. 天災事変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合
2. 労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合
 

には、所轄労働基準監督署長の認定を受けて解雇予告を行わずに解雇することができます。
  この場合、天災事変等により事業の継続が不可能になったことにより、使用する労働者を解雇する必要があるため、所轄労働基準監督署長の認定を受けようとする使用者は、管轄の労働基準監督署に「解雇制限解雇予告除外認定申請書」(様式第二号)を提出して認定を受ける必要があります。
  「解雇予告、解雇制限除外認定申請書」の様式例

  また、労働者の責に帰すべき事由に基づいて労働者を解雇する必要があるため、所轄労働基準監督署長の認定を受けようとする使用者は、管轄の労働基準監督署に「解雇予告除外認定申請書」(様式第三号)を提出して認定を受ける必要があります。
  「解雇制限除外認定申請書」の様式例

  なお、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合には、所轄の労働基準監督署長の認定を受ける必要がありますが、認定についての考え方、認定基準等については、行政通達(昭和23・11・11基発第1637号、昭和31・3・1基発第111号)により示されています。その考え方は解雇予告の保護を与える必要のない程度に重大または悪質なものに限られていますので、労働者の責に帰すべき事由により労働者を解雇する場合は、事前に兵庫労働局労働基準部監督課または最寄りの労働基準監督署にお問い合せしていただき、慎重に判断するようお願いします。

   

 

 解雇予告の例外について

   労働基準法第21条では以下の労働者について、解雇を行う場合には、解雇予告を行わなくてもよい旨が規定されています。
 
1. 日々雇入れられる者
2. 2か月以内の期間を定めて使用される者
3. 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
4. 試の使用期間中の者
  但し、
 
1. 日々雇入れられる者が1か月を超えて引き続き使用されている場合
2. 2か月以内の期間を定めて使用される者がその期間を超えて引き続き使用されている場合
3. 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者がその期間を超えて引き続き使用されている場合
4. 試の使用期間中の者が14日を超えて引き続き使用されている場合
  には、解雇を行う時には解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要となります。
   

 

 解雇理由の証明について

   労働基準法第22条第2項では使用者は解雇の予告を受けた労働者が退職の日までの間に解雇の理由についての証明書を請求した時は遅滞なく解雇理由の証明書を当該労働者に交付しなければならない旨が規定されています。
上記のとおり、解雇理由の証明は予告期間中から解雇日までに該当労働者が使用者に対して請求をすることが必要となります。解雇後に解雇理由証明書の交付を請求することはできません。この場合、解雇後は労働基準法第22条第1項に基づく退職時の証明を請求することとなります。退職時の証明は解雇の場合、その理由を証明しなければならないので、結果的には解雇理由の証明と同じ効果を持つことになります。
 解雇の証明、退職の証明の説明は以下のとおりです。
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 退職に関する労働基準法の規定について

  労働基準法では退職について以下のとおりの規定を設けています。
 
1. 退職時の証明(労働基準法第22条)
2. 金品の返還(労働基準法第23条)
   

 

 退職時の証明について

   労働基準法第22条第1項では使用者は労働者が退職の場合に、在職中の契約内容などについて証明書の交付を請求した時は遅滞なく証明書を当該労働者に交付しなければならない旨が規定されています。
 証明すべき事項は
 
1. 使用期間
2. 業務の種類
3. 当該事業場における地位
4. 賃金
5. 退職の理由(退職の事由が解雇の場合、その理由を含む)
   証明書の交付の請求を受けた使用者は上記全ての項目を証明することのではなく、労働者が請求した事項に限り証明しなければなりません。
   

 金品の返還について

   労働基準法第23条では使用者は労働者の死亡または退職の場合で権利者の請求があった場合には、請求を受けた日から7日以内に賃金を支払い、積立金保証金等名称の如何を問わず労働者の権利に属する金品を返還しなければならない旨が規定されています。
  賃金は通常、締切り日・支払日は決められ、決められた支払日に支払うことでよいのですが、労働者の退職、死亡の場合には、この規定により、支払日までも権利者からの請求があれば、支払日に関係なく、請求のあった日から7日以内に支払わなければなりません。
  積立金等の労働者の権利に属する金品(労働者が所有権を有する金品)についても権利者からの請求があれば、請求のあった日から7日以内に当該金品を返還しなければなりません。
  なお、賃金または金品に関して争いがある場合、異議のない部分について支払い、または返還をおこなわなければなりません。
   

 退職について

   労働基準法は主として使用者に対する規制を行っていますので、労働者が行う意思表示である退職については規制をあまり設けていません。特に退職の予告時期には労働基準法では定めを設けていません。退職の予告時期は、あらかじめ就業規則等により、定めておくことが望ましいです。
  就業規則等で退職の時期が定められていない場合には、民法の規定(雇用契約)により判断することになります。民法第627条では、期限の定めのない雇用契約は2週間前に解約(退職)の申入れを行う旨が定められています。
  また、同条では、月給制等の期間を以て報酬を定めた場合の解約の申入れ時期(同条第2項)、6ヶ月以上の期間を以て報酬を定めた場合の解約の申入れ時期(同条第3項)の定めがあるので参考として下さい。

 
 
     

    

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