介護施設の労働災害防止対策について

 近年、介護サービスの需要増大を背景として介護施設における労働災害が著しく増加しており、その発生率は全産業の平均値より高く、平均休業見込み日数も1ヶ月を超えるなど重篤なものが多くなっています。

介護施設における労働災害の現状
 令和4年の全国の全産業における休業4日以上の労働災害の件数は132,355件となっており、介護施設における件数はその約7%を占めています。さらに、全産業における労働災害の件数は近年増加傾向にあり、過去10年間で11%(12,779件)の増加となっていますが、介護施設における労働災害は約78%(約4,000件)増加しており、全産業の増分のうちの約3割を占め、介護施設における労働災害が全体の件数を押し上げている状況にあります。
 また、令和3年の介護施設における労働災害の発生率は、全産業平均と比較して約1.6倍となっています。介護施設は労働災害が発生しやすい職場であり、その傾向が加速している状況となっています。
 介護施設において多発している労働災害は、労働者の転倒による骨折等や腰痛等の動作による身体の部位の負傷となっており、この2類型で全体の約7割を占め、平均休業見込み日数(休業4日以上の労働者死傷病報告を集計したもの。)は約39日と長期になっています。
労働災害防止のために必要な取組
 介護施設において多発している労働者の転倒による骨折等や腰痛等の動作による身体の部位の負傷を防ぐためには、特に次の取組が重要です。
  1. 労働者の転倒による骨折等の防止
 労働者の転倒による骨折等は、労働者の不注意によって発生するものと考えられがちですが、中高年齢労働者による災害が若年の労働者のそれより著しく多くなっており、実際には、通路の段差等の設備的要因と、労働者の加齢に伴う身体機能の低下とが相まって発生しています。このため対策として、労働者への注意喚起にとどまらず、厚生労働省が作成したリーフレットを参考に設備的要因の解消を図るとともに、労働者が転倒しにくい・怪我をしにくい身体づくりの取組を進めることが重要です。
  1. 腰痛等の動作による身体の部位の負傷の予防
 介助中の腰痛等の動作による身体の部位の負傷への対策として、厚生労働省等が作成した「介護者の腰痛予防のための安全衛生活動チェックポイント」「介護作業者の腰痛予防対策チェックリスト」を活用し、介護作業における腰痛リスクの洗い出しや各施設にあった安全衛生活動を実践するとともに、「腰痛を防ぐ職場の事例集」も参考としつつ身体の負担軽減のための介護技術であるノーリフトケアを積極的に導入してください。
厚生労働省による労働災害防止のための事業者への支援策等
  • エイジフレンドリー補助金
 厚生労働省においては、労働者の転倒による骨折等の労働災害の防止や腰痛等の動作による身体の部位の負傷の予防のための対策(設備的対策や身体機能の維持向上のための運動指導の導入、ノーリフトケアの修得のための教育)等を行う中小企業事業者に対して一定の補助金を交付しています。詳細はこちらを参照してください。
  • 中央労働災害防止協会(特別民間法人)による中小規模事業場安全衛生サポート事業
 厚生労働省の補助により、中央労働災害防止協会において、介護施設を含めた小規模事業所に対する安全衛生対策の指導・支援(無料)を実施しています。詳細はこちらを参照ください。

 厚生労働省においては、介護事業者を含めた事業者による労働災害防止の優れた取組を顕彰する「SAFEアワード」を実施しています。介護事業者が自施設における取組を進める上で参考するとともに、各事業者において実施されている取組について応募してください。顕彰された事業者においては、労働者が安心して働くことができる職場づくりを進める事業者であることをアピールすることができます。

宮崎県内の介護施設における労働災害の発生状況等

 宮崎県内の令和5年の全産業における休業4日以上の労働災害は1,508件発生しており、介護施設における件数はその約8%を占めています。さらに労働災害件数は増加傾向にあり、全産業では過去10年間で17%(221件)の増加となっていますが、介護施設における労働災害は約98%(58件)増加しており、全産業の増分のうち約3割を占め、介護施設における労働災害が全体の件数を押し上げている状況にあります。
 同年に県内の介護施設で発生した休業4日以上の死傷災害117件を分析した結果は次のとおりです(概要)

  • 事故の型別で見ると、「転倒」による災害が全体の45%で最も多く、しかも転倒災害は73%が休業見込期間1月以上と重傷化の傾向が認められる。
  • 転倒災害の特徴として、男性より圧倒的に女性の発生割合(98%)が高い。
  • 高年齢労働者(60歳以上)の災害の割合が59%で増加している。
 多発している転倒災害に大きく影響している加齢による運動機能の低下に対して、以下の取組みを積極的に行ってください。

 ① 身体的能力(転倒等リスク)のチェック
 ② 体操・ストレッチ等運動プログラム導入(身体機能低下抑制)
 ③ 特に女性は加齢とともに骨折のリスクも著しく増大するため「骨粗鬆症検診」の受診
※参考ツール

危険の見える化

 見える化で作業の安全を(PDF)
 ポスター 《腰痛・転倒防止》
  その1(PDF Word) その2(PDF Word
  その3(PDF Word) その4(PDF Word
  その5(PDF Word) その6(PDF Word

パンフレット・リーフレット等

介護中の転倒に要注意(ポスター PowerPoint)
労働者の転倒災害を防止しましょう(ポスター PowerPoint)
(職場の皆さまへ)転倒災害に注意しましょう(ポスター PowerPoint)
社会福祉施設における安全衛生対策マニュアル ~ 腰痛対策 と KY活動 ~(パンフレット PDF)
労働安全衛生のポイント~労働災害を防止するために~(宮崎労働局)(パンフレット PDF)
社会福祉施設における安全衛生対策_腰痛対策・KY活動
 

その他関連情報

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