労働契約等・労働条件の明示

令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます
 

労働契約

   労働契約とは、労働者が一定の労働条件のもとに労務を提供し、それに対し使用者(事業主)が対価(賃金)を支払うことを約束した契約のことをいい、書面による契約はもちろん、口頭による契約であっても労働者・使用者の両者がその契約内容に合意していれば労働契約は成立していることとなります。
   

労働基準法等違反の契約は無効です!

   労働契約において労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定めても、その部分は無効となります。
  無効となった部分は労働基準法が定める基準が適用されます。( 労働基準法第13条)
たとえば「時間外労働に対する割増賃金は支払わない」という内容の労働契約を結んでもこの部分は無効となり、労働基準法第37条で定める「時間外労働に対しては2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払う」こととなります。
 また、同様に、最低賃金に達しない賃金額で労働契約を結んでもこの部分は無効となり、その労働者が適用を受ける最低賃金と同額の賃金額で契約したものとみなされます。( 最低賃金法第5条)
 たとえば、A県最低賃金(時間額1,000円)の適用を受ける労働者が「時給800円」として労働契約を結んでもこの部分は無効となり、A県最低賃金と同額の「時給1,000円」で契約したものとみなされますので、「時給1000円で計算した賃金を支払う」こととなります。
   

賠償予定の禁止

  労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約をしてはいけません。( 労働基準法第16条)
 たとえば「途中でやめたら違約金を払え」や「会社に損害を与えたら○○円払え」といった内容の労働契約を締結することはできません。
  ただし、この法律は、あらかじめ金額を決めておくことを禁止することが趣旨であり、現実に労働者の責任により発生した損害について賠償を請求することまでを禁止したものではありません。
   

労働条件の明示

 
1. 使用者が労働者を雇用するときは、賃金や労働時間等の労働条件を書面などで明示しなければなりません。
2. 明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除することができます。
3. 2.の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合、使用者は必要な旅費を負担しなければなりません。
 
( 労働基準法第15条)
 
書面の交付による明示事項
口頭の明示でもよい事項
(1)
労働契約の期間
(2)
就業の場所・従事する業務の内容
(3)
始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換(交替期日あるいは交替順序等)に関する事項
(4)
賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締切り・支払の時期に関する事項
(5)
退職に関する事項(解雇の事由を含む)
(6)
昇給に関する事項
(7)
退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法、支払時期に関する事項
(8)
臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項
(9)
労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
(10)
安全・衛生に関する事項
(11)
職業訓練に関する事項
(12)
災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
(13)
表彰、制裁に関する事項
(14)
休職に関する事項
  なお、(1)~(6)は必ず明示しなければならない事項で、(7)~(14)は制度を設ける場合に明示しなければならない事項です。
  また、就業規則に当該労働者に適用される労働条件が具体的に規定されており、労働契約締結時に労働者一人ひとりに対し、その労働者に適用される部分を明らかにしたうえで就業規則を交付すれば、再度、同じ事項について、書面を交付する必要はありません。
   厚生労働省では「労働条件通知書」のモデル様式を作成しています。様式につきましては最寄りの労働基準監督署または厚生労働省ホームページの様式ダウンロードコーナーまで。

*労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになりました。
   

契約期間

   労働契約の期間は、期間の定めのないもの(たとえば一般的な正社員契約など)を除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(特定の業務に就く者を雇い入れる場合や、満60歳以上の者を雇い入れる場合には5年)を超えてはなりま せん。(詳しくは「労働契約期間の上限について」へ)
   また、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)の締結時及び契約期間満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、「有期労働契約 の締結、更新及び雇止めに関する基準」を定めています。( 労働基準法第14条)
   

 
 
 
 
 

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