長崎県内企業の働き方改革推進に係る意見交換会の概要

長崎県内企業の働き方改革推進に係る意見交換会の概要
令和5年11月8日(水)、長崎労働局において時間外労働の上限時間の適用が猶予されていた建設業を対象に、業務効率化等に積極的に取り組む建設企業、発注者及び行政による意見交換を実施しました。(事前告知のページはこちら
 
<意見交換会の様子>
 
 
【 意見交換で交わされた意見など(要旨)】
長時間労働が疑われる事業場に対しての労働基準監督署の監督指導では、建設業は4割近くに労働時間関連の法違反が認められているので、工事の発注者として重く受け止める必要があると考えている。DX等の効率化で捻出された時間が発注者との打ち合わせや、発注者に提出する書類作成などに使われてしまうようのであれば、発注者としても改善が必要だと感じた。(発注者意見)
 
(労働局からの補足)
   監督指導結果の資料は、あくまで長時間労働の疑われる事業場を選定して調査した結果を取りまとめたものであり、全建設企業の4割に労働時間関連の法違反があるということを示すものではない。
 
建設業における長時間労働の原因の1つとして、現場技術者が工事書類の作成に時間を取られているというものがある。九州エリアの行政では、工事書類の簡素化の合意ができているので、取組の成果といえる。今後も書類作成の簡素化を進めていきたいと考えている。(発注者意見)
 
各企業の取組の実施による労働者のワークライフバランスの改善などの成果について、労働時間の短縮についてはある程度の効果はあると考えるが、まだ道半ば。個別の企業だけの取組ではなかなか効果が目に見える形で表れにくく、業界全体及びサプライチェーンに関わる者全員で改善していかなくては本当の意味での改革にはならない。(建設企業意見)
 
休んだ分の給料が補償されないと現場の職人の中には休みたいと思わない人もいるのではないか。非常に難しい問題ではあるが、能力のある人がもっと仕事をしたいと思っていても働けないことになるので、その点にも少し目を向ける必要があるのではないか。(建設企業意見)
 
(労働局からの補足)
   時間外労働の上限時間を規制することとなった理由の1つとして、長時間労働により働く人の健康や命が失われることのないよう、長時間労働を是正する必要があったものであり、皆様と一緒に働く人々がいきいきと働ける環境を作っていけるよう取り組んでいきたい。
 
【 各参加者の取組内容(概要)】

【 建設企業サイド】
1 株式会社西海建設
 
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・基幹システムを独自に開発し、関係者間でのデータ連携や一元管理、ヒューマンエラーの低減を実現した。

・クラウドを活用しての関係者間でのデータ共有を実施。利用者のITリテラシーの醸成、システム管理者の教育、運用ルールの整備などが必要。

・RPAを活用して、定型業務(経費処理、申請書類チェックなど)を自動化。

・書類の収集や作成、注文や契約、図面作成などを専門に行う建設ディレクターを採用。分業化をすることで、現場作業の効率化が実現。
 
2 新長崎駅ビル(仮称)新築工事共同企業体(株式会社大林組)
 
<PRポイント>
・現場を効率的に進めるためには、効率的に進められる工事計画が重要。職人に無駄な作業を行わせないようにすること。
 
安全に仕事をすることが重要。安全が守られないと現場の進みが遅くなる。現場の居心地が良いと職人のやる気が上がり、作業効率が高くなる。
 
デジタルを活用しての朝礼の簡略化などはせず、職人に会って様子を確認しつつ、自分の意思を直接伝えることが重要。
 
自社職員は翌日の作業を踏まえて出勤をシフト制にした。前日に翌日の作業の指示をするので、全員が朝同じ時間に出勤する必要はなく、各自の作業の状況に合わせて出勤するようにして労働時間を短縮。
 
関係者間での連絡を円滑にするためにスマートフォンアプリの「ダイレクト」を導入。全員が閲覧できるので、一番できる人間が早く反応してくれるので、指示の授受が早くなる。また、グループ設定が可能で、職長や仕上げグループなど複数のグループが生まれていき、情報共有ができた。
 
安全管理に関しては、書面ではなく言葉で行うようにしていた。肌で感じて感覚の中で職人は仕事をしているので、直接職人のもとに行って聞かせないと人間は動かない。
 
【 発注者及び行政サイド】
3 九州旅客鉄道株式会社

※資料は画面への投影のみのため非掲載
 
<PRポイント>
建設企業と一体となって事業の推進を実施。定期的な朝礼への参加による安全意識の醸成、工事の着手前の事故防止会議の実施、繁忙期(ゴールデンウィークやお盆等)前の現場の安全点検を実施。
 
他の現場で発生した事故情報については、原因と対策を他の現場にも横展開して再発防止を徹底。
 
工期短縮に繋がるよう工事計画を策定する際、長崎県や長崎市への働きかけを建設企業と協働で実施。
 
業務の効率化のため、定例会議を毎週木曜日に実施、会議時間の終了目安時間の周知、会議の場で回答・解決できるよう事前準備を徹底。
 
デジタルモックアップを活用し、建造物の完成モデルなどをデジタル(VR)で作成し、物理的なモデルの作成時間を短縮。また、リモート会議による移動時間の低減、タブレットを活用してのペーパレス化による書類印刷時間の低減、BOXを活用したデータ共有の実施。
 
健康経営として、人間ドック、特定保健指導などで社員の健康づくりを推進。
 
4 国土交通省九州地方整備局
 
<PRポイント>
公共工事の品質確保法により、発注者の責務として「適正価格での発注、設計変更」「適正工期の確保、設定」を行う必要がある。
 
新3K(給与、休暇、希望)を実現するための取組を実施。
 
国交省直轄工事における週休2日の「質の向上」に向け、以下の施策パッケージを取組中。
(週休2日を標準とした取組)令和3年度時点で約97%の工事で週休2日制を実施できており、令和5年度からは全ての工事で発注者指定の週休2日制工事に取組を実施。
令和6年度からは月単位での週休2日制を目指す(現状は工期内で4週8休)。
(工期設定のさらなる適正化)天候や猛暑日等による作業不能日を見込んで工期設定するように改正。
(柔軟な休日の設定)工期の一部で閉所から交代制への途中変更を試行
(経費補正の修正)休日が増えることによる経費増加も積算。
(他の公共発注者と連携しての一斉閉所日の取組を拡大)九州ブロックでの月1回以上の閉所日や各県ごとに一斉閉所日の設定を進めていく。
 
建設現場における遠隔臨場により、段階確認、立会等の待ち時間を短縮し、労働時間縮減。
 
メタバースの活用やデジタル技術を活用した「災害査定」などデジタルトランスフォーメーション(DX)の取組も促進。
 
5 長崎県土木部
 
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建設業への入職促進として、令和4年度に建設業の魅力を発信するウェブサイト(長崎県建設業就職ポータルサイト Build! Up! Nagasaki!)を開設。X(旧ツイッター)で学生やその家族をターゲットとして広告を実施。
 
建設企業の労働者の給与上昇、完全4週8休制の実施などの取り組みを促進するため、最低制限設計価格の設定範囲を、現行の90%~92%から、一律92%に見直しを実施。
 
週休2日制の実現のため、モデル工事を発注。従前は受注者希望型で4週6休以上となっていたが、令和5年10月からは、設計金額4,500万円以上かつ一般競争入札の発注工事で発注者指定型を新設し4週8休以上の実施としている。
 
建設企業や職人の方々の意識を改革するため、建設企業の経営者に対して意識改革セミナーを長崎県建設業協会と連携して実施。令和4年度は2回実施(合計200名参加)しており、アンケート調査では、99%の方が意識の変化があったと回答。
 
6 長崎労働局
 
<PRポイント>
建設業の職種は他の職業と比較して有効求人倍率が高く人手不足が深刻。労働基準監督署による監督指導においても月80時間を超える長時間労働も複数の企業で見られ、人手不足対策とともに長時間労働抑止の対策を進めていく必要がある。
 
時間外労働の上限規制等をはじめとする働き方改革関連法の理解を深めるため、企業への個別訪問や各種機会をとらえての説明会等において助言指導を実施。また、長崎働き方改革推進支援センターにおいては、専門家の派遣等により長時間労働の削減など働き方の見直しに対する相談対応・助言支援を実施。
 
県内各地域において、建設業を含む全業種を対象として、時間外労働の上限規制等に関する説明会を実施。また、各団体と連携し、各団体が主催する研修等の場を活用して働き方改革関連法等の説明を実施。
 
生産性を向上させ、時間外労働の削減等に取り組む中小企業事業主を対象として、労働能率向上に寄与する設備、IT機器等の導入、専門家によるコンサルティングなどの経費を一部助成する働き方改革推進支援助成金の活用促進を実施。
 
過労死等を防止することの重要性について、県民の自覚を促し、関心と理解を深めるため、「過労死等防止対策推進シンポジウム」の開催(令和5年11月24日)等を通じた啓発を実施。
 
7 一般社団法人長崎県建設業協会
 
<PRポイント>
長崎県建設産業団体連合会と長崎労働局が共同で「今こそ建設業」というPR誌を作成し、学生に建設業への理解を深めてもらうため、建設業の魅力やICT活用事例などを紹介している。
 
100年に一度の変換期をむかえた長崎を舞台にしたミニドラマ(全12回)を制作。長崎で働くことや建設業の魅力などを伝えるもの。県内の若者が建設業への理解を深めてもらう材料になればと考えている。
 
8 長崎働き方改革推進支援センター
 
<PRポイント>
各企業の労務管理の悩みについて専門家による相談対応、支援を行っている。来所、電話、企業への訪問の無料相談、セミナー等への講師の無料派遣などを実施。
 
相談で多いものは、労働時間関係、就業規則に関する相談。建設業の企業からは、労働時間、就業規則、助成金、年次有給休暇、36協定、同一労働同一賃金などの相談が多い。
 
長崎県建設業協会とは、業種別団体支援という形で会員向けのセミナーを9支部で実施。
 
労務管理、快適な職場形成への改善などお気軽にご相談を。
 

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