個別労働紛争の相談が増加 あっせん申請は5割以上が雇用関係の終了をめぐる紛争 【指導課】
神奈川労働局発表
平成21年5月22日
担
当 |
企画室長 平 野 茂 樹
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労働紛争調整官 奥 澤 成 憲
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労働紛争調整官 黒 澤 淳 一
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電 話 045-211-7357 |
個別労働紛争関係の相談が増加
あっせん申請は5割以上が雇用関係の終了をめぐる紛争
~平成20年度神奈川県内個別労働紛争解決制度施行状況~
神奈川労働局における、平成20年度の個別労働紛争解決制度(個々の労働者と事業主との間のトラブル(個別労働紛争)について行う相談、助言・指導、あっせんの制度)の利用状況は以下のとおりである。
ポイント
総合労働相談件数
個別労働紛争の相談件数は、対前年比で12.8%と増加しており、全国的には東京、大阪についで3位(※全国版参照)となっている。
総合労働相談コーナーを利用して行った相談件数はほぼ前年並みであるが、全国的には東京、大阪、愛知、埼玉についで5位(※全国版参照)である。
助言・指導
労働者が、相談から発展して事業主に対して「助言・指導」を行うよう求めた件数は、昨年から大幅に増加し、対前年比で1.5倍(52.4%増)となっている。
あっせん
あっせんの申請についても昨年に比し39.6%と4割近く増加し、その内容別内訳をみてみると、労働者にとって最も厳しいトラブルと思われる「解雇」「退職勧奨」等の「雇用関係の終了に係る紛争」の割合が依然として半数以上を占めている。
また「整理解雇」のあっせん申請が平成18年度7件、平成19年度11件、平成20年度20件と増加している。な
お、本制度は、労働者のみならず事業主も利用できるものであるが、平成20年度は事業主からのあっせん申請は3件(全体の1.1%)となっている。
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律施行状況(平成20年度)
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件 数 |
対前年比 |
民事上個別労働紛争関係の相談件数 |
14,件(12,974件) |
+ 12.8% |
助言・指導申出受付件数 |
256件(168件) |
+ 52.4% |
あっせん申請受理件数 |
282件(202件) |
+ 39.6% |
総合労働相談件数 |
53,255件(53,369件) |
- 0.2% |
※ ( )内は平成19年度の件数
平成20年度神奈川県内個別労働紛争解決制度施行状況
1 相談受付状況
総数
神奈川労働局では、神奈川労働局、県内12の労働基準監督署内、横浜駅西口のテナントビル内の県内計14ヶ所に、労働に関するあらゆる相談にワンストップで対応するための「総合労働相談コーナー」を開設(別紙1参照)しているところであるが、平成20年度1年間に寄せられた相談は、全体で53,255件であった。これは、平成19年度比で、0.2%の減となっている。
このうち、関係窓口や手続等の案内で終了するものや法違反を伴うため労働基準監督署の取り締まりの対象となるものなどを除いた、不当解雇や労働条件の引下げ等の民事上の個別労働紛争に関するものが 14,638件、平成19年度に比べて 12.8%の増加となっている。(【表1】年度別件数の推移 / 【図1】年度別件数の推移)
個別労働紛争にかかる相談内容の内訳
民事上の個別労働紛争にかかる相談内容の内訳は、「解雇」、「雇止め」、「退職勧奨」等の「雇用関係の終了」に関するものが37.6%と4割弱を占め、また、「労働条件の引下げ」等の「労働条件」に関するものが29.0%となっている。
整理解雇に関する相談内容が、平成18年度436件(2.9%)、平成19年度546件(3.3%)、平成20年度938件(4.9%)と年々増加している(【表2】個別労働紛争相談の内容別内訳 / 【図2】個別労働紛争相談の内容別内訳)
2 神奈川労働局長による助言・指導
総数
神奈川労働局長による助言・指導の申出受付件数は256件で、平成19年度に比し52.4%の増加であり、平成18年度の2倍の件数となっている(【図3】助言・指導の年度別件数の推移)。
助言・指導の申出内容の内訳
助言・指導申出内容の内訳は、「解雇」、「雇止め」、「退職勧奨」等の「雇用関係の終了」に関するものが39.4%、「労働条件の引下げ」等の「労働条件」に関するものが35.2%となっている。
申出内容の内訳を、平成19年度と比較すると、「いじめ・嫌がらせ」に関するものが全体に占める割合は平成19年度の13件から30件に増加している。(【表3】助言・指導の申出内容別内訳 / 【図4】助言・指導の申出内容別内訳)
助言・指導申出の処理状況
- 処理の状況
平成20年度1年間に助言・指導の申し出の手続きを終了した事案について、神奈川労働局における処理状況をみると、平成20年度に申出を受けた事案256件全数について助言・指導を実施した。処理を要した期間は、1ヶ月以内が248件であり、1ヵ月を超え2ヶ月以内が6件、2ヶ月を超え3ヶ月以内が1件、3ヶ月超えが1件となっている。 - 申出人の状況
申出人は全員が労働者であった。その就労形態は、正社員が52.7%と最も多く、パート・アルバイトが21.1%、期間契約社員が10.9%、派遣労働者が8.2%となっている。労働者の所属する事業所の規模は(不明除く)、10~49人が43.1%と最も多く、次いで10人未満が23.9%、100~299人が15.7%となっている。
また、労働組合のない事業所(不明を除き)の労働者は、76.8%である。
なお、助言・指導の実施事例は、別紙2のとおりである。
3 神奈川紛争調整委員会によるあっせん
平成20年度の、あっせん申請の受理件数は282件で、平成19年度に比し39.6%の増加となっている。(【図5】あっせん受理件数の年度別件数の推移)
あっせん申請の内容の内訳
あっせん申請の内容の内訳は、「解雇」、「雇止め」、「退職勧奨」等の「雇用関係の終了」に関するものが52.5%と5割を超え、また、「労働条件の引下げ」等の「労働条件」に関するものが22.7%、「いじめ・嫌がらせ」「募集・採用」等の「その他」に関するものが24.8%となっている(【表4】あっせん申請の内容別内訳 / 【図6】あっせん申請の内容別内訳)。
あっせん申請の処理状況
- 処理の状況
平成20年度1年間に手続きを終了した事案268件の処理状況をみると、紛争当事者が手続きに参加しない(「不参加」)ため打ち切りとなった事案は106件(39.6%)、申請が取下げられた等のため処理を行わなかったものは26件(9.7%)で、実質的にあっせん委員があっせんの処理を行ったものが136件である。 - あっせん委員によるあっせんの状況
あっせん委員があっせんの処理を行った136件のうち、合意に至ったものが63件(46.3%)、合意に至らず打ち切ったものは73件(53.7%)であり、全体268件のうち23.5%があっせんにより解決をしている。(【図7】あっせん申請の処理状況) - 申請者の状況
成20年度1年間に申請を受理した事案282件についてみてみると、3件が事業主からの申請、残りの279件が労働者からの申請であり、事業主からの申請は18年度0件、19年度6件であり、ほとんどが労働者からの申請である。労働者の就労形態は、正社員が52.8%と最も多く、パート、アルバイトが18.4%、派遣労働者が14.2%、期間契約社員が12.1%となっている。労働者の所属する事業所の規模は(不明を除き)、10~49人が42.6%と最も多く、次いで10人未満が20.7%、100~299人が14.3%となっている。
また、労働組合のない事業所(不明を除き)の労働者が85.3%である。
なお、あっせんの実施事例は、別紙2のとおりである。
4 本制度の利用方法
労働問題のトラブル・悩みを抱えた方(労働者側・事業主側を問わず)が本制度を利用するためには、県内14ヶ所に開設している「総合労働相談コーナー」(別紙1参照)に対して相談を寄せていただくこととなる。
特に、横浜駅西口の横浜STビル内に開設している「横浜駅西口総合労働相談コーナー」は、労働局・労働基準監督署とは独立した「気軽に相談を受けられる場所」として開設しており、積極的にご利用いただきたい。同コーナーの相談時間は午前9時30分から午後6時30分までとなっており、5時以降の相談に対応できるようにしている。
用語説明
個別労働関係紛争
個別労働関係紛争の範囲は、「労働条件その他労働関係に関する事項についての」紛争で、労働関係に関する事項についての個別の労働者と事業主との紛争であれば、分野、内容に関係なく、すべての個別労働関係紛争に含まれる。
ただ、労働組合と事業主との間の紛争や、労働者と労働者の間の紛争は、個々の労働者と事業主との間の紛争ではないので、個別労働関係には含まれない。
個別神奈川紛争調整委員会によるあっせん制度
神奈川労働局長が委任している神奈川紛争調整委員会(岡田尚会長)によるあっせん制度は、あっせん委員が紛争当事者の間に立って、当事者間の話合いを促進することにより、紛争の解決を促進する制度である。
具体的には、双方の主張の要点を確かめ、必要に応じて参考人からの意見を聴取する等により、事実の調査を行った上で、紛争当事者間の話合いを促進し、その間を仲介して、双方または一方の譲歩を求めたり、具体的な解決の方策を打診している。
なお、あっせんにより、当事者間に合意が成立した場合において、当該成立した合意は、民法上の和解契約となる。
神奈川労働局長による助言・指導制度
神奈川労働局長による助言・指導制度は、紛争当事者に対して、問題点を指摘し、解決の方向性を示唆することにより、紛争の解決の促進を図るものである。
具体的には、事実関係を調査・整理した上で、労働関係法令や関係判例等に基づき、さらに、必要に応じて大学教授、弁護士等専門家の意見を参考にしながら、都道府県労働局長が助言・指導を行っている。