労務管理にあたって留意する点について
厳しい経済情勢が続く中で、労働問題を巡る相談が増加しています。
最近の労働相談を分析すると、労働契約を結ぶ際の説明不足や、その後の労使間の理解不足が原因となっているものが少なくありません。
このため、以下の事項をよく理解して、適切な労務管理を実施して下さい。
労働条件の明示(労働基準法第15条)
使用者が労働者を採用するときは、賃金、労働時間、その他の労働条件を書面で明示しなければなりません。(労働条件通知書の交付)
書面の交付による明示事項
- 労働契約の期間
- 就業の場所・従事する業務の内容
- 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
- 賃金の決定、計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払の時期に関する事項
- 退職に関する事項(退職の事由及び手続、解雇の事由等)
*この書面の交付がないことからのトラブルは少なくありません。働く方も必ず交付を受けて下さい。
解雇の予告(労働基準法第20条)
労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。(ただし、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合において、その事由について労働基準監督署長の認定を受けたときは、この限りではありません。)
退職時の証明(労働基準法第22条)
労働者が退職の場合に、在職中の契約内容等について証明書を請求したときは、使用者は遅滞なく、これを交付しなければなりません。証明事項は、1使用期間、2業務の種類、3当該事業における地位、4賃金、5退職の事由(退職事由が解雇の場合は、その理由)です。
また、労働者が労働基準法第20条第1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求したときは、使用者は遅滞なく、これを交付しなければなりません。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付する義務はありません。
賃金の支払い(労働基準法第24条)
賃金は、1通貨で、2労働者に直接、3全額を、4毎月1回以上、5一定の期日を定めて支払わなければなりません。賃金から税金、社会保険料等法令で定められているもの以外を控除する場合には、労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との労使協定が必要です。罰金や損害金などと称して賃金から一方的に控除して支払うことは出来ません。なお、一定の条件(1労働者の同意を得ること 2労働者の指定する本人名義の預貯金口座に振り込まれること 3賃金の全額が所定の支払日に払い出し得ること)を満たせば金融機関への振込みにより支払うことが出来ます。
賃金の額について、最低賃金の適用除外の許可を受けた場合を除き、青森県最低賃金を下回って支払うことは出来ません。
休業手当の支払い(労働基準法26条)
使用者の都合により労働者を休業させた場合は、休業させた所定労働日について、平均賃金の6割以上の手当(休業手当)を支払わなければなりません。
労働時間(労働基準法第32条)
労働者に休憩時間を除いて1週間に40時間(特例措置として、商業・映画演劇業・保健衛生業・接客娯楽業で労働者10人未満の事業場については44時間)、1日に8時間を超えて労働させてはいけません。
休日(労働基準法第35条)
週少なくとも1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
時間外及び休日の労働(労働基準法36条)
時間外労働または休日労働をさせる場合には、「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結し、事前に労働基準監督署長に届け出なければなりません。
割増賃金の支払(労働基準法第37条)
労働者に法定労働時間を超えて時間外労働又は深夜(午後10時~午前5時)労働を行わせた場合には2割5分以上、法定休日労働を行わせた場合には3割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
なお、1カ月60時間を超える法定時間外労働を行わせた場合は、5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。また、この場合には、事業場で労使協定を締結すれば、2割5分以上から5割以上に引き上げられた部分の割増賃金の支払いに代えて、有給の休暇(代替休暇)を付与することができます(ただし、1カ月60時間を超える法定時間外労働に対する割増賃金の支払いについては、当面の間、中小企業に対しては適用が猶予されています)。
年次有給休暇の付与(労働基準法第39条)
年次有給休暇は、雇入れの日から起算して、6ケ月以上継続勤務し、全所定労働日の8割以上出勤した労働者に対して最低10日を与えなければなりません。いわゆるパートタイマーやアルバイトについても同様です。
継続勤務年数 |
0.5 |
1.5 |
2.5 |
3.5 |
4.5 |
5.5 |
6.5以上 |
付与日数 |
10 |
11 |
12 |
14 |
16 |
18 |
20以上 |
なお、週所定労働時間が30時間未満で、週所定労働日数が4日以下又は年間所定労働日が216日以下の労働者の場合は、その勤務日数に応じて比例付与されます。
就業規則の作成(労働基準法第89条)
常時10人以上の労働者を使用している事業場では就業規則を作成し、労働者代表の意見書を添えて、労働基準監督署長へ届け出なければなりません。
健康診断の実施(労働安全衛生法第66条)
常時使用する労働者に対して健康診断(1.雇入れ時 2.毎年1回)を行わなければなりません。
詳細については、青森労働局労働基準部監督課又は労働基準監督署までお問合せ下さい。
労働条件に関する総合情報サイト 「確かめよう 労働条件」
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