事業主が対応するべき措置(義務化された内容)
事業主は、職場でのセクシュアルハラスメント対策として、
次の9項目の措置を必ず講じなければなりません。
■9項目のポイント ・・・ 1~9の各文をクリックすると具体的な措置内容を確認できます。
未然に防止するために
- (1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- (2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
起きてしまったら
- (3)事後の迅速かつ適切な対応
継続的に
- (4)(1)~(3)と併せて講ずべき措置
☆ ☆ 規定等をつくれば良いというものではありません ☆ ☆
それを従業員に周知することが防止対策です。
■9項目の具体的な措置の内容
(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
項目 1.
職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること
(方針を明確化し、労働者に周知・啓発していると認められる例)
◆ 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、あってはならない旨の方針を規定し、内容と併せ、労働者に周知・啓発すること。 ◆ 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に内容及びあってはならない旨の方針を記載し、配布等すること。 ◆ 内容及びあってはならない旨の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。
★ | 「その他の職場における服務規律等を定めた文書」として、従業員心得や必携、行動マニュアル等就業規則の本則ではないが就業規則の一部をなすものが考えられます。 |
★ | 「研修・講習等」を実施する場合には、調査を行うなど等職場の実態を踏まえて実施する、管理職層を中心に階層別に分けて実施する等の方法が効果的と考えられます。 |
項目 2.
職場におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること
(方針を定め、労働者に周知・啓発していると認められる例)
◆ 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、セクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること ◆ セクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者は、現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発すること
★ | 「対処の内容」を文書に規定することについては、セクシュアルハラスメントに係る性的な言動をした場合に具体的にどのような対処がなされるのかをルールとして明確化し、労働者に認識させもってセクシュアルハラスメントの防止を図ることを目的とするものです。したがって、懲戒規定を定める場合には、「懲戒事由となるセクシュアルハラスメントに係る言動」及びそれに対応する「制裁の種類」を具体的に決定する必要があります。 |
★ | 懲戒規定を就業規則の本則以外において定める場合には、就業規則の本則にその旨の委任規定を定めておくことが必要となりますので注意してください。 |
具体的な対応例〈会社の状況に応じて必要な例を活用できます〉
明確化することが必要な事項は | |
1 | セクシュアルハラスメントの内容 |
2 | 職場におけるセクシュアルハラスメントは許さないという方針 |
3 | 行為者に対しては厳正に対処する旨の方針 |
4 | 行為者に対する処分の内容 です。 |
3・4については就業規則その他の職場における服務規律を定めた文書での規定が必要ですが、方針の徹底についても文書により周知することが効果的です。 |
ここでは、規定を定める例、チラシの例を紹介します
~定められたものを従業員に周知することが必要です~
例1 就業規則 服務規程例
(セクシュアルハラスメントは許さないという方針を規定)
例(1) | ||
第○章 服務規律 | ||
(セクシュアルハラスメントの禁止) | ||
第12条 | 相手方の望まない性的言動により、他の従業員に不利益を与えたり、就業環境を害すると判断される行動等を行ってはならない。 | |
例(2) | ||
第○章 服務規律 | ||
(遵守事項) | ||
第11条 | 従業員は、次の事項を守らなければならない。 | |
(1) ~略~ | ||
(7) 性的な言動によって他の従業員に不利益を与えたり、就業環境を害さないこと | ||
例(3) | ||
従業員は、執務場所等において、他の社員等の就業に影響を与えるような性的言動を行い、秩序又は風紀を乱してはならない |
例2 就業規則に委任規定を設けた上で、詳細を別規定に定めた例
(別規定にセクシュアルハラスメントの内容及び行為者に対し厳正に対処する方針、対処の内容及びプライバシーの保護、不利益取扱いをしないことも定め、相談窓口・相談対応を全て含め規定)
ダウンロード記載例1 ←クリックしてください
例3 就業規則の服務規程・懲戒規定に詳細を定め、社内報やチラシにより周知をしている例
(就業規則の懲戒規定が詳細に定められており、その中でセクシュアルハラスメントが行われた場合の対処等が既に読み込めるものとなっている場合に、セクシュアルハラスメントについての適用を社内報やチラシ等周知した例)
ダウンロード記載例2 ←クリックしてください
例4 行為者に厳正に対処すること、対処の内容を就業規則(懲戒規定)に定めた例
ダウンロード記載例3 ←クリックしてください
参考 国家公務員に対するセクシュアルハラスメント対策の中での懲戒処分の指針
ア | 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員は、免職又は停職とする。 |
イ | 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。この場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ストレスの重責による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とする。 |
ウ | 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする。 |
(注)処分を行うに際しては、具体的な行為の態様、悪質性等も情状として考慮のうえ判断するものとする。 | |
http://www.jinji.go.jp/kisya/0503/tyoukai.pdf |
(2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
項目 3.
相談への対応のための窓口(相談窓口)をあらかじめ定めること
(あらかじめ定めていると認められる例)
◆ 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること ◆ 相談に対応するための制度を設けること ◆ 外部の機関に相談への対応を委託すること
★ | 形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいいます。 |
★ | 労働者が利用しやすい体制を整備しておくこと、労働者に対して周知されていることが必要です。 |
★ | 雇用均等室への相談では、企業の中の相談窓口がわからないという相談者が多くいます。 窓口を定めていても周知されていなければ活用できません。そして、相談窓口が機能していなければセクシュアルハラスメントがあっても事業主は把握できず、対応が遅れ、事態がより深刻になりかねません。事業主の不作為が問われる問題にも発展します。 |
項目 4.
事項3の相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
(相談窓口の担当者が適切に対応することができると体制と認められる例)
また、相談窓口においては、職場におけるセクシュアルハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。
◆ 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。 ◆ 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
★ | 「広く相談に対応」とは、職場におけるセクシュアルハラスメントを未然に防止する観点から、相談の対象として、職場におけるセクシュアルハラスメントそのものでなくともその発生のおそれがある場合、セクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合も幅広く含めることを意味します。例えば、勤務時間後の宴会等で生じたセクシュアルハラスメントについても相談も幅広く対象とすることが必要です。 |
★ | 「留意点」には、いわゆる「二次セクシュアルハラスメント(相談者が相談窓口の担当者の言動等によってさらに被害を受けること)」を防止するために必要な事項も含まれます。 |
★ | 「留意点」には、いわゆる「二次セクシュアルハラスメント(相談者が相談窓口の担当者の言動等によってさらに被害を受けること)」を防止するために必要な事項も含まれます。 |
★ | セクシュアルハラスメントは時間が解決してくれる問題ではありません。放置しておくとより問題が悪化し、被害が拡大していきます。また、初期の段階での迅速な対応が、行為者のためにも必要なこともあります。 |
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(3)事後の迅速かつ適切な対応
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項目 5.
事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること
(確認していると認められる例)
◆ 相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び行為者とされる者の双方から事実関係を確認すること。また、相談者と行為者とされる者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。 ◆ 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合等において、均等法第18条に基づく調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること
項目 6.
事項5により、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置及び被害者に対する措置をそれぞれ適正に行うこと。
(措置を適正に行っていると認められる例)
◆ 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における職場におけるセクシュアルハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。併せて事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復等の措置を講ずること。 ◆ 均等法第18条に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を講ずること。
項目 7.
改めて職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。
(再発防止に向けた措置を講じていると認められる例)
なお、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。
◆ 職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針及び職場におけるセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等すること。 ◆ 労働者に対して職場におけるセクシュアルハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。
(4)(1)~(3)と併せて講ずべき措置
項目 8.
職場におけるセクシュアルハラスメントに係る相談者・行為者等の情報はその相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又はそのセクシュアルハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。
(プライバシーを保護するための措置を講じていると認められる例)
◆ 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、そのマニュアルに基づき対応するものとすること。 ◆ 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと ◆ 相談窓口においては相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に掲載し、配布等すること。
労働者の個人情報については、「個人情報の保護に関する法律」及び「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」に基づき、適切に取り扱うことが必要です。 |
項目 9.
労働者が職場におけるセクシュアルハラスメントに関し相談したこと又は事実関係の確認に協力したこと等を理由として、不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること
(不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発することについて措置を講じていると認められる例)
◆ 就業規則その他の職場における職務規律等を定めた文書において、労働者が職場におけるセクシュアルハラスメントに関し相談をしたこと、又は事実関係の確認に協力したこと等を理由として、その労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発すること。 ◆ 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に、労働者が職場におけるセクシャルハラスメントに関し相談をしたこと、又は事実関係の確認に協力したこと等を理由として、その労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布等をすること。
★ | 実質的な相談ができるようにし、また、事実関係の確認をすることができるようにするためには、相談者や事実関係の確認に協力した者が不利益な取扱いを受けないことが必要であることから、これらを理由とする不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、さらにそれを労働者に周知・啓発することを定めています。 |
★ | 事業主の方針の周知・啓発の際や相談窓口の設置にあわせて、周知することが望ましいでしょう。 |