職場での転倒防止対策 ~増える中高年女性の転倒労災~
近年、職場での転倒が増えています。
その件数(休業4日以上の労働災害を集計)は10年前の1.7倍に上り、労働災害の事故の型別で最も多くなっています。
平均休業日数は42.8日で、約5割が50代以上の女性です。
就業者全体に占める中高年の割合が増えていて、労働力人口の高齢化が今後進む中、職場での転倒予防対策が求められます。
沖縄労働局は、県内事業所における転倒予防対策を進めていただくため、この3年間(平成24~26年)の労働災害を分析するとともに、『職場環境の転倒リスク簡易診断シート』やリーフレットを準備しました。
リーフレット「気づいてます! 職場での転倒リスク~女性のための転倒防止対策を!~」▸
<転倒(平成24~26年)の発生状況のポイント>
(1) 平成24~26年の休業4日以上の転倒は668件(人)で、10年前(平成14~16年)の400件(人)と比べて1.7倍まで増加
(2) 転倒の46.7%は50代以上の女性 【図3】。
(3) 転倒の平均休業日数は42.8日 【図4】。 転倒によるケガは「骨折」が63%で最も多く、「捻挫、亜脱臼」が15%と続く 【図5】。
(4) 転倒により「骨折」した割合は男女とも年齢階層が上がるに伴って増加し、50代以上の女性の場合は7割超 【図6】。
(5) 骨折箇所は「手首」が15%で最も多く、次いで「ひざ」が7%、「足首」が5%と続く 【図7】。 転倒要因は「滑る」が37%で最も多く、
次いで「物につまずく」が19%、「段差等でつまずく」が11%、「つまずく(障害物なし)」が9%、「階段で足を踏み外す」が7%と
続く 【図8】。
沖縄労働局では、職場環境の転倒リスクと対策の必要度を可視化する「転倒リスク簡易診断シート」を作成しました。
診断方法はカンタン!床がよく濡れているところ、通路にものが置かれているところ、凹凸があるところ、などの箇所数を入力すると、データ図になって結果が表示され、社内での説明資料としてもお使いいただけます。
あくまでも簡易診断ですが、対策を講じるきっかけになるかもしれません。
< 見 本 >
【 1 】 診断方法
次の5つに当てはまる箇所数などを入力するため、御社の職場環境を見回って下さい。
社屋や構内が広い場合は、例えば階層や関連部門ごとにシートを作成してみてください。
Q1 床が滑りやすい。よく濡れていることがある。
Q2 荷物や台車が無造作に置かれている。コードが通路を横断している。
Q3 床の凹凸や段差がある
Q4 台車などを使わないで荷物の運搬を行う
Q5 暗くて足下が見えずらい
【 2 】 活用方法
上の5つに当てはまる箇所数を入力したら、5角形のデータ図に「職場環境の転倒リスクと対策の必要度」が可視化されます。
5角形が大きいほど、転倒リスクが高く対策が必要ということになります。
見本の例だと、「3 段差の解消・表示」のところが一番大きく伸びていますが、これは優先度が高い対策であることを意味しています。
「職場環境の転倒リスクと対策の必要度」は、転倒要因の統計的分析をもとに係数(優先度)を掛けて出力しています。 つまり、統計から見た一般的な対策の必要度(優先度)です。 もしも御社に、「危うく転びそうになった」などのヒヤリハット事例がある時は、まずはその対策を優先させてください。 |
出力された結果から、改善策を安全衛生委員会や衛生委員会、あるいはこれに類する会議で審議してください。
【改善策】
1 清掃
・水濡れ・油分はこまめに拭き取る。改装などの際は床材や床塗装も考えてみましょう。また、濡れた床面での作業がある場合などは、靴選びが大事です。
2 整理整頓
・通路にものを置かない、在庫や用具、台車など所定の置き場を決めておく。職場の整理・整頓をしましょう。業務効率アップも期待できます。
3 段差の解消・表示
・通路の段差、継ぎ目、横断するコードを解消しましょう。直ぐに難しい時は、表示をして注意して通行するよう促しましょう。
4 作業改善
・両手がふさがる荷物の運搬は階段を避ける、台車を使う、複数人で運搬する、小分けするなど、転倒リスクを避ける方法をとりましょう。
5 照明
・暗い通路には照明を確保しましょう。
上記の改善策とともに、「急ぐ・慌てる」ような、転倒リスクを高める環境をなくしましょう。
【 3 】 定期的に診断
診断は定期的に行って下さい。
前回の診断よりも5角形が小さくなっていれば、対策が進展していることを可視化して確認できます。
また、前回の診断時とは職場環境が変わっていて、新たなリスク箇所が発生しているかもしれません。
【 参 考 】 転倒を防ぐための靴選びのポイント
まず、足のサイズに合った靴を選びましょう。
サイズが小さい靴 |
足指が自由に動かしにくく、バランスを崩した時に足の踏ん張りが効かなくなります 。 |
サイズが大きな靴 |
歩行のたびに足が前後斜めに動いて、靴のつま先やかかとが、足の動きに追随できなくなります 。 |
また、転倒の主な原因のうち、「滑り」と「踏み外し」は、靴底の耐滑性能を上げることで転倒リスクを下げることができます。
「つまずき」は、靴底の構造によって、ある程度の効果を出すことができます。
① 靴の屈曲性
靴の屈曲性が悪いと、足に負担がかかるだけでなく、擦り足になり易く、つまずきの原因となります。
② つま先部の高さ
つま先部の高さ(トゥスプリング)が低いと、ちょっとした段差につまずき易くなります。
加齢によって擦り足で歩行する傾向があるため、よりつまずき易くなります。
③ 靴底と床の耐滑性のバランス
滑り易い床には滑りにくい靴底が有効ですが、滑りにくい床に滑りにくい靴底では、摩擦が強くなりすぎて歩行時につまずく場合があります。
靴底の耐滑性は、職場の床の滑り易さの程度に応じたものとする必要があるので、靴はできるだけ履いてみてからお選びになることをお勧めいたします。
耐滑性能に優れた靴底を持つJIS規格安全靴には「F」(friction=摩擦 の頭文字)の記述が入っていて、また、JSAA規格プロテクティブスニーカーには、ベロ裏に耐滑性を示すピクトが入っています。
耐滑性能には寿命があり、靴底の摩耗が進み、靴底の凹凸が完全に磨滅してしまうと、耐滑性が急激に低下しますので、靴底の凹凸が残っているうちに交換することをお勧めします。
(資料出所:「STOP!転倒災害プロジェクト2015」特設サイト(厚生労働省)をもとに作成)