労働相談における紛争調整委員会によるあっせん

あっせんとは

当事者の間に学識経験者である第三者が入り、双方の主張の要点を確かめ、場合によっては、両者が採るべき具体的なあっせん案を提示するなど、紛争当事者間の調整を行い、話合いを促進することにより、紛争の円満な解決を図る制度です。

 

紛争調整委員会とは

弁護士、大学教授等の労働問題の専門家である学識経験者により組織された委員会であり、都道府県労働局ごとに設置されています。この紛争調整委員会の委員のうちから指名されるあっせん委員が紛争解決に向けてあっせんを実施することとなります。

 

紛争調整委員会によるあっせんの特徴

1. 多くの時間と費用を要する裁判に比べ、手続きが迅速かつ簡便であり、また、弁護士、大学教授等の労働問題の専門家である紛争調整委員会の委員が、円満な紛争解決に向け無償で、あっせんを行います。


2. 紛争当事者間であっせん案に合意した場合には、受諾されたあっせん案は民法上の和解契約の効力をもつことになります。


3. あっせんの手続きは非公開であり、紛争当事者のプライバシーを保護します。
労働者があっせんの申請をしたことを理由として、事業主が労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。

 

対象となる紛争

対象となる範囲は、労働条件その他労働関係に関する事項についての個別労働紛争です。

・ 解雇、雇止め、配置転換・出向、昇進・昇格、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争

・ いじめ・嫌がらせなどの職場環境に関する紛争

・ 会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止などの労働契約に関する紛争

・ その他、退職に伴う研修費用の返還、営業車など会社所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争

 など
 

対象とならない紛争

次のような紛争は対象となりません。

・ 労働組合と事業主の間の紛争や労働者と労働者の間の紛争

・ 募集・採用に関する紛争 

・ 裁判で係争中である、または確定判決が出ているなど、他の制度において取り扱われている紛争

・ 労働組合と事業主の間で問題として取り上げられており、両者の間で自主的な解決を図るべく話し合いが進められている紛争

 など
 
 

紛争調整委員会によるあっせんの手続きの流れ

 

『あっせん申請書』(WORD:56KB)は、こちらをクリックしてください。 

 

あっせんによるトラブル解決の事例

 

▼解雇に係るあっせんの事例

【事案の概要】
申請人は業務命令の不履行、販売員として不適格等の理由により解雇の通告を受けた。
申請人は解雇理由は不当であり第1に解雇の撤回復職を求め、また、復職が受け入れられないのであれば第2に金銭支払いを求めるとしてあっせん申請を行った。

【あっせん結果】
会社は解雇の正当な理由としては不十分であることに理解を示し解雇の撤回には応じたものの、復職に応じることには難色を示した。そこで、あっせん委員は金銭解決で調整したところ、会社が○○万円の解決金を支払うことで合意が成立した。

 

▼採用内定取り消しに係るあっせんの事例(労働契約が成立していると同視できるものに限る)

【事案の概要】
申請人は採用が内定したため勤務先を退職したものであるが、その後、採用内定について、会社から「今回は決め手がないのですみません。」と採用と取り消された。
申請人は採用内定取り消しにより収入の見込みがなくなったので、生活補償費として金銭支払いを求めるとしてあっせん申請を行った。

【あっせん結果】
会社は採用決定について、曖昧な対応をしたことにより結果として迷惑をかけたことを認め、○○万円の解決金を支払うことで合意が成立した。

 

▼上司等からのいじめ・嫌がらせをめぐるあっせんの事例

【事案の概要】
申請人は事務職員として勤務していたものであるが、決済業務について、過去には問題なくとおっていたものが、特定の上司から繰り返し必要以上に激しく叱責を受けたり、指示事項をメモしていたところ「紙が無駄になった。」等とげのある口調で言われる等個人的な嫌がらせとしか思えない行為を受けた。
申請人は会社にこれらのことを相談したが対応してくれなかったとして、謝罪を求めあっせん申請を行った。

【あっせん結果】
会社はいじめ・嫌がらせの事実は否定したものの、業務指導に関し配慮を欠いた点、適正な労働環境調整を怠ったことを認め、不快なつらい思いをさせたことを謝罪し双方和解した。 







 
この記事に関するお問い合わせ先
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