労働保険料の額は、基本的には、事業場内の全労働者に対して当年度中に支払う賃金総額に保険料率を乗じて算定します。
ただし当年度中の賃金総額は、年度末にならないと確定しないため、納付する額は賃金支払見込額に基づく概算保険料とし、翌年度の納付時点で、賃金総額の確定額に基づいて確定保険料を計算して過不足を精算します。
なお、労働保険料の納付に当たっては、石綿健康被害救済法に基づき、あわせてアスベスト健康被害者の救済費用に充てるための一般拠出金も納付することとなっています。
■賃金総額の算定方法
(1)「賃金総額」の計算の原則
賃金総額(申告書における「算定基礎額」です)は、見込額については、1か月当たり賃金総額×月数+賞与等臨時給与の額で計算し、確定額については1年度間の実績額となります。
(2)「賃金」の範囲
「賃金」とは、賃金、給与、手当、賞与など名称の如何を問わず労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてのものをいい、一般的には労働協約、就業規則、労働契約などにより、その支払いが事業主に義務づけられているものです。
(3)「労働者」の範囲
「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業に使用される者で賃金を支払われる者をいいます。法人の役員や事業主と同居する親族については通常「労働者」と認められません。
労災保険ではすべての労働者が適用対象となりますが、雇用保険では労働者のうち次に該当する者は適用対象外としており、両者で対象者の範囲が異なります。
<雇用保険の被保険者とならない者>
・
次に該当する者は雇用保険の被保険者となりません a 「1週間の労働時間が20時間以上」または「31日以上雇用される事が見込まれる」という要件のいずれかに該当し、その者の労働時間その他の労働条件が就業規則等で明確に定められている者ではない者 b 反復継続して就労せず、その者の受ける賃金が家計の補助的な者(学生アルバイト等)
・
そのため従業員の中にこれら雇用保険の適用対象外となる者が含まれている場合は、雇用保険における賃金総額(算定基礎額)は、これらの従業員分を控除した額となり、労災保険における賃金総額(算定基礎額)と異なることになります。
・
なお、4月1日現在で満64才以上の労働者については、平成31年度までは労働保険料のうちの雇用保険分の徴収が免除となっているため、従業員の中にそれらの者が含まれている場合、雇用保険における賃金総額(算定基礎額)は、それらの従業員分を控除した額となり、労災保険における賃金総額(算定基礎額)と異なることになります。
(4) 労務費率による賃金総額の算定
建設業において、工事が数次の請負で施工される場合、元請負事業主が下請事業の労働者分も一括して労災保険に加入しなければなりませんが、元請負事業主は、下請事業の労働者の賃金の総額まで正確に把握することが困難な場合があります。この場合は、「工事請負金額」(※)に労務費率〔平成30年4月1日改定〕を乗じて算定した額を「賃金総額」とする特例が認められています。
※ 事業主が注文者から、その事業に使用する「工事用の資材」を支給されたり「機械器具」を貸与された場合、これらの価格又は損料は「工事請負金額」に含めます。また、機械装置の組立て又は据付けの事業の場合、「機械装置」の価額は「工事請負金額」に含めません。
■保険料率
(1)労働保険の保険料率
労働保険の保険料率は、労災保険率と雇用保険率を合計したものとなります。
(2)労災保険率
労働保険料のうちの労災保険分は、全額事業主負担で、その保険率(労災保険率〔平成30年4月1日改定〕)は事業の種類によって定められています。
・労災保険率のメリット制
労災保険においては、事業の種類ごとに保険率に違いがありますが、さらに個々の事業における災害率の高低に応じて、労災保険率または確定保険料の額が一定の範囲内(±40%、木材伐出業は±35%)で引き上げまたは引き下げられます。
この仕組みは、事業の種類が同一であっても、作業環境、災害防止努力等によって災害率にかなりの差が認められることから、事業主負担の公平性を保つとともに、事業主の災害防止努力を促進することを目的として設けられたものです。
このメリット制を適用した労災保険率は、継続事業の場合は、労働保険料の納付の手続(年度更新)のために毎年度労働局から各事業場へ送付される「労働保険 概算・増加概算・確定保険料申告書」の用紙に印書されていますので、事業主が自ら計算する必要はありません。
一括有期事業の場合は、メリット制の適用がある年度について、労災保険料決定通知書が申告書に同封して送付されるので、該当する事業のメリット率により保険料を算定してください。
単独有期事業については、請負金額または素材生産量などによって示されている規模が一定水準以上であるか、または確定保険料の額が40万円以上であればメリット制が適用されます。
所定の安全衛生措置を講じると、通常のメリット制以上の労災保険率の増減率が適用されます
(3)雇用保険率
労働保険料のうちの雇用保険分は、事業主と労働者(被保険者)の双方で負担することになっており、その保険率(雇用保険率)は下表のとおりです。 (令和元年~3年度現在)
事業の種類
保険率
事業主負担分
被保険者負担分
一般の事業
9/1000
6/1000
3/1000
農林水産清酒製造の事業(※)
11/1000
7/1000
4/1000
建設の事業
12/1000 8/1000 4/1000
※ 農林水産業のうち、牛馬の育成・酪農・養鶏又は養豚の事業、園芸サービスの事業及び内水面養殖事業は一般の事業(9/1000)と同じ料率になります。
労働保険料のうちの雇用保険分の被保険者負担額は、被保険者本人に支払われた賃金額に上表の被保険者負担率を乗じて算出します。この被保険者負担額は、事業主が労働者に対して支払う賃金から控除することができますが、その際、端数がでた場合は0.5円以下切り捨て、0.51円以上は切り上げとなります(ただし、労使の間で慣習的な取扱い等の特約がある場合には、この限りではありません)。
■ 労働保険料の精算の仕組み
労働保険料は、毎年度、当年度分の賃金総額に基づいて算定しますが、当年度分の賃金総額は、当年度末にならないと確定しないため、当年度の保険料の納付額は、賃金支払見込額に基づいて算定された概算保険料の額となります。
翌年度になると、前年度の賃金総額が確定しているため、それに基づいて前年度の労働保険料の確定額を算定することができます。もしその額が前年度に納付した概算保険料の額よりも多ければ不足額が生じ、少なければ還付額が生じることになります。
そこで翌年度においては、この前年度分を精算し、翌年度の概算保険料に前年度分の不足額を加算(または還付額を控除)した額を納付することになります。
【お問い合わせ窓口】
・労働局(労働保険徴収課)TEL 022-299-8842