個別労働紛争の相談が増加 あっせんの5割以上が雇用関係の終了をめぐる紛争【指導課】
神奈川労働局発表
平成20年5月30日
担
当 |
室 長 平 野 茂 樹
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労働紛争調整官 奥 澤 成 憲
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労働紛争調整官 太 田 真 人
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電 話 045-211-7357 |
個別労働紛争の相談が増加
あっせんの5割以上が雇用関係の終了をめぐる紛争
~平成19年度神奈川県内個別労働紛争解決制度施行状況~
神奈川労働局では、(1)県内14ヶ所の総合労働相談コーナーに配置された総合労働相談員による労働関係の相談への対応、(2)神奈川労働局長による助言・指導、(3)弁護士等の有識者で構成する神奈川紛争調整委員会による労使紛争事案のあっせん、を実施しているところであるが、平成19年度における利用状況は以下のとおりである。
なお、相談から発展して、本制度の「助言・指導制度」、「あっせん制度」を利用する場合も、14ヶ所の相談コーナーのどこでも受付・受理できる体制をとっており、相談者が相談しやすいコーナーでの利用が可能である。
また、「あっせん制度」を担当する「紛争調整委員」も平成17年度から弁護士の数を増やしており、本制度の特徴である「簡易・迅速・無料・プライバシーの保護」に沿った紛争の解決に向け体制を整備しているところである。
《ポイント》 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律施行状況(平成19年度)
1.総合労働相談件数 | : | 53,369件(対前年比 11.6%増) |
2.うち、民事上個別労働紛争関係の相談件数 | : | 12,972件(対前年比 5.5%増) |
3.助言・指導申出受付件数 | : | 168件(対前年比 31.3%増) |
4.あっせん申請受理件数 | : | 202件(対前年比 0.0%増減無) |
個別労働紛争解決制度は、平成13年10月の施行から6年半を経過したところであるが、本制度に基づく総合労働相談件数は依然として増加傾向にあり、昨年度減少した助言・指導については、31.3%と大幅に増加し、あっせんの利用件数は昨年度と同数であった。
その内容別内訳を見てみると、あっせん申請については、労働者にとって最も厳しいトラブルと思われる「解雇」「退職勧奨」等の「雇用関係の終了に係る紛争」の割合が依然として半数以上を占めている。
また「いじめ・嫌がらせ」のあっせん申請が平成17年度17件、平成18年度31件、平成19年度36件と増加している。 なお、本制度は、労働者のみならず事業主も利用できるものであり、平成19年度は事業主からのあっせん申請が6件と全体の3.0%を占めている。
1.相談受付状況
総数
神奈川労働局では、神奈川労働局、県内12の労働基準監督署内、横浜駅西口のテナントビル内の県内計14ヶ所に、労働に関するあらゆる相談にワンストップで対応するための「総合労働相談コーナー」を開設 ( 別紙1 参照) しているところであるが、平成19年度1年間に寄せられた相談は、全体で53,369件であった。
これは、平成18年度比で、11.6%の増加となっている。 このうち、関係窓口や手続等の案内で終了するもの、法違反を伴うため労働基準監督署の取り締まりの対象となるもの等を除いた、不当解雇や労働条件の引下げ等の民事上の個別労働紛争に関するものが12,972件、平成18年度に比べて5.5%の増加となっている(【表1】、【図1】)。
【表1】 年度別件数の推移
年度別 |
相談件数 |
||
労働相談 | 個別紛争 | ||
平成17年度 |
件 数 |
46,165 | 12,045 |
対前年比 |
+5.8% | +5.9% | |
平成18年度 |
件 数 |
47,812 | 12,293 |
対前年比 |
+3.6% | +2.1% | |
平成19年度 |
件 数 |
53,369 | 12,972 |
対前年比 |
+11.6 % | +5.5% |
【図1】 年度別件数の推移(1)
個別紛争相談内容の内訳
また、民事上の個別労働紛争にかかる相談内容の内訳は、「解雇」、「雇止め」、「退職勧奨」等の「雇用関係の終了」に関するものが37.4%と4割弱を占め、また、「労働条件の引下げ」等の「労働条件」に関するものが27.9%となっている。
相談内容の内訳を、平成18年度と比較すると、「雇用関係の終了」に関するものの件数が増加し、いじめ・嫌がらせ等の「その他」に関するものが件数、割合とも増加している(【表2】、【図2】)。
【表2】 内容別内訳(1)
注: 「セクシュアルハラスメント」「女性労働問題」については、男女雇用機会均等法が平成 19年4月に改正されたことから平成19年度は「その他」に計上。(以下同じ)
【図2】 個別労働紛争相談の内容別内訳
2.神奈川労働局長による助言・指導
総数
平成19年度の助言・指導申出受付件数は168件で、平成18年度比31.2%の増加となっている(【図3】)。
【図3】 助言・指導の年度別件数の推移
申出内容の内訳
助言・指導申出内容の内訳は、「労働条件の引下げ」等の「労働条件」に関するものが42.8%、「解雇」、「雇止め」、「退職勧奨」等の「雇用関係の終了」に関するものが32.1%、となっている。
申出内容の内訳を、平成18年度と比較すると、「雇用関係の終了」に関するものが全体に占める割合は平成18年度の50.0%から大幅に減少し、「労働条件」に関するものが33.6%から増加している (【表3】、【図4】) 。
【表3】 内容別内訳(2)
【図4】 助言・指導の申出の内容別内訳
処理状況
平成19年度1年間に手続きを終了した事案について、神奈川労働局における処理状況をみると、平成19年度に申出を受けた事案168件全数について助言・指導を実施した。
処理を要した期間は、 1 件を除き1ヶ月以内となっている。(残りの1件については、2ヶ月以内)
申出人は、全数が労働者であった。
就労状況は、正社員が53.6%と最も多く、パート・アルバイトが14.3%、派遣労働者が10.7%、期間契約社員が13.1%となっている。
事業所の規模は、10~49人が32.7%と最も多く、次いで10人未満が14.9%、100~299人が13.1%となっている。
また、労働組合のない事業所(不明を除き)の労働者が75.9%である。
なお、助言・指導の実施事例は、 別紙2のとおりである。
3.神奈川紛争調整委員会によるあっせん
総数
平成19年度の、あっせん申請受理件数は202件で、平成18年度と同数である(【図5】) 。
【図5】 あっせん受理件数の年度別件数の推移
申請内容の内訳
あっせん申請の内容の内訳は、「解雇」、「雇止め」、「退職勧奨」等の「雇用関係の終了」に関するものが55.4%と5割を超え、また、「労働条件の引下げ」等の「労働条件」に関するものが17.3%、「いじめ・嫌がらせ」「募集・採用」等の「その他」に関するものが27.2%となっている。
申請内容の内訳を、平成18年度と比較すると、「その他」に関するものが23.7%から増加している (【表4】、【図6】) 。
【表4】 内容別内訳(3)
【図6】 あっせん申請の内容別内訳
処理状況
平成19年度1年間に手続きを終了した事案195件の処理状況をみると、紛争当事者が手続きに参加しない(「不参加」)ため打ち切りとなった事案は59件(30.3%)、申請が取下げられた等のため処理を行わなかったものは36件(18.5%)で、実質的にあっせん委員があっせんの処理を行ったものが100件である。
この100件のうち、合意に至ったものが59件(59.0%)、合意に至らず打ち切ったものは41件(41.0%)であり、全体195件のうち30.3%があっせんにより解決をしている。 (【図7】)
処理に要した期間は、1ヶ月以内が59.5%、1ヶ月を超え2ヶ月以内が30.3%となっている。
平成19年度1年間に申請を受理した事案202件についてみてみると、6件が事業主からの申請、残りの196件が労働者からの申請であり、事業主からの申請が平成17年度 1件、18年度0件から増加している。
労働者の就労状況は、正社員が53.0%と最も多く、パート、アルバイトが17.8%、期間契約社員が17.3%、派遣労働者が9.4%となっている。
事業所の規模は、10~49人が35.6%と最も多く、次いで10人未満が26.7%、100~299人が17.3%となっている。
また、労働組合のない事業所(不明を除き)の労働者が84.2%である。
なお、あっせんの実施事例は、 別紙2 のとおりである。
【図7】 あっせんの処理状況
本制度の利用方法
労働問題のトラブル・悩みを抱えた方(労働者側・事業主側を問わず)が本制度を利用するためには、県内14ヶ所に開設している「総合労働相談コーナー」( 別紙1 参照)に対して相談を寄せていただくこととなる。
特に、横浜駅西口の横浜STビル内に開設している「横浜駅西口総合労働相談コーナー」は、労働局・労働基準監督署とは独立した「気軽に相談を受けられる場所」として開設しており、積極的にご利用いただきたい。
同コーナーの相談時間は午前9時30分から午後5時までとなっているが、平成19年度から横浜STビルの1階「ハローワークプラザよこはま」内に同コーナー出張所を設け、出張所の相談時間を午後6時30分まで延長している。
≪用語説明≫
個別労働関係紛争
個別労働関係紛争の範囲は、「労働条件その他労働関係に関する事項についての」紛争で、労働関係に関する事項についての個別の労働者と事業主との紛争であれば、分野、内容に関係なく、すべての個別労働関係紛争に含まれる。
ただ、労働組合と事業主との間の紛争や、労働者と労働者の間の紛争は、個々の労働者と事業主との間の紛争ではないので、個別労働関係には含まれない。
神奈川紛争調整委員会によるあっせん制度
神奈川労働局長が委任している神奈川紛争調整委員会(宗哲朗会長)によるあっせん制度は、あっせん委員が紛争当事者の間に立って、当事者間の話合いを促進することにより、紛争の解決を促進する制度である。
具体的には、双方の主張の要点を確かめ、必要に応じて参考人からの意見を聴取する等により、事実の調査を行った上で、紛争当事者間の話合いを促進し、その間を仲介して、双方または一方の譲歩を求めたり、具体的な解決の方策を打診している。
なお、あっせんにより、当事者間に合意が成立した場合において、当該成立した合意は、民法上の和解契約となる。
神奈川労働局長による助言・指導制度
神奈川労働局長による助言・指導制度は、紛争当事者に対して、問題点を指摘し、解決の方向性を示唆することにより、紛争の解決の促進を図るものである。
具体的には、事実関係を調査・整理した上で、労働関係法令や関係判例等に基づき、さらに、必要に応じて大学教授、弁護士等専門家の意見を参考にしながら、都道府県労働局長が助言・指導を行っている。
別紙1
平成20年4月1日現在
神奈川県内「総合労働相談コーナー」設置場所一覧
名 称 | 所 在 地 | 電話番号 | FAX番号 |
☆ 神奈川労働局総合労働相談コーナー | 〒231-8434 横浜市中区北仲通5-57 横浜第2合同庁舎13階 神奈川労働局総務部企画室内 |
045-211-7358 | 045-212-4312 |
☆ 横浜駅西口総合労働相談コーナー
(同出張所)
|
〒220-0004 横浜市西区北幸1-11-15 横浜STビル11階 (同ビル1階ハローワークプラザよこはま内) |
045-317-7830 (045-410-1010) |
045-892-7831 |
横浜南総合労働相談コーナー | 〒231-0003 横浜市中区北仲通5-57 横浜第2合同庁舎9階 横浜南労働基準監督署内 |
045-211-7374 | 045-651-1628 |
横浜北総合労働相談コーナー | 〒222-0033 横浜市港北区新横浜3-24-6 横浜港北地方合同庁舎3階 横浜北労働基準監督署内 |
045-474-1251 | 045-474-1256 |
横浜西総合労働相談コーナー | 〒247-8555 横浜市栄区笠間1-2-4 横浜西労働基準監督署内 |
045-892-3141 | 045-892-3143 |
鶴見総合労働相談コーナー | 〒230-0051 横浜市鶴見区鶴見中央2-6-18 鶴見労働基準監督署内 |
045-501-4968 | 045-501-4931 |
☆ 川崎南総合労働相談コーナー | 〒210-0012 川崎市川崎区宮前町8-2 川崎南労働基準監督署内 |
044-244-1271 | 044-244-1275 |
☆ 川崎北総合労働相談コーナー | 〒213-0001 川崎市高津区溝口1-21-9 川崎北労働基準監督署内 |
044-820-3181 | 044-820-3184 |
横須賀総合労働相談コーナー | 〒237-0072 横須賀市長浦町1-1609 横須賀労働基準監督署内 |
0468-23-0858 | 0468-23-0824 |
平塚総合労働相談コーナー | 〒254-0047 平塚市追分1-1 平塚労働基準監督署内 |
0463-32-4600 | 0463-23-4288 |
☆ 藤沢総合労働相談コーナー | 〒251-0054 藤沢市朝日町5-12 藤沢総合労働庁舎3階 藤沢労働基準監督署内 |
0466-23-6753 | 0468-23-4288 |
☆ 小田原総合労働相談コーナー | 〒250-0004 小田原市浜町1-7-11 小田原労働基準監督署内 |
0465-22-7151 | 0465-22-0074 |
☆ 厚木総合労働相談コーナー | 〒243-0014 厚木市旭町2-2-1 厚木労働基準監督署内 |
046-228-1331 | 046-228-1334 |
☆ 相模原総合労働相談コーナー | 〒229-0036 相模原市富士見6-10-10 相模原地方合同庁舎4階 相模原労働基準監督署内 |
042-752-2051 | 042-752-1558 |
☆ 女性相談員がいます。
別紙2
平成20年4月1日現在
助言・指導、あっせんの解決事例
助言・指導-1 いじめ・嫌がらせと解雇 | |||
事案の概要 | 相談者である労働者は事業場においていじめ・嫌がらせを受けていること、また、労働者に詳しい解雇事由の説明なく、懲戒解雇をされたとのことで、助言を求めた事例。 | ||
結 果 | 懲戒解雇は撤回され、解雇予告手当を支払い普通解雇による退職扱いとなり、円満に解決をした。 | ||
助言・指導のポイント | 懲戒解雇事由の有無、労働者に対する説明の必要性等について、事業主に説明をし、懲戒解雇を撤回したもの。 |
助言・指導-1 いじめ・嫌がらせと解雇 | |||
事案の概要 | 相談者である労働者は病気等を理由に退職を決意し、適正に退職届を提出をしたが、事業主は無理に引きとめを行い辞めさせてくれないとのことで、助言を求めた事例。 | ||
結 果 | 事業主は、必要な人材ということで引きとめていたが、労働者の強い意志を確認し、退職に同意したもの。 | ||
助言・指導のポイント | 民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)等、法の趣旨などを含め、事業主に説明をしたところ、事業主は理解を示し、退職に合意したもの。 |
あっせん-1 (解雇について、解決金支払で和解した事例) | |||
事案の概要 | 嘱託社員が契約期間の途中で、成績が上がらないことを理由に解雇された事に対して、契約期間終了までの3か月分の賃金支払いを求めた事例。 | ||
結 果 | 事業主が解決金を支払うことで解決した。 | ||
あっせんのポイント | あっせん委員から解雇に到るまでに事業主が必要な指導等を行っていなかったことなどを説明し、解決金を支払うことで合意したもの。 |
あっせん-2 (パワーハラスメントによりうつ病になり慰謝料を求めた事例) | |||
事案の概要 | パワーハラスメントによりうつ病及び失語障害になり退職に到った労働者が、精神的、経済的損害に対して賠償を求めた事例。 | ||
結 果 | 事業主が解決金を支払うことで解決した。 | ||
あっせんのポイント | 事業主側と労働者側との間にパワーハラスメントの有無について主張に隔たりが見られたが、事業主側に一部責任があるのではないかとあっせん委員が説明をしたところ、事業主も金銭による解決を図ることで合意したもの。 |