1年単位の変形労働時間制とは、労使協定を締結することにより、1箇月を超える1年以内の一定の期間を平均し1週間の労働時間が40時間以下(特例事業場も同じ。)の範囲内において、1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
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制度の例
年間休日=105日(日曜52日、土曜26日、祝日13日、年末年始7日、お盆7日)
↓
年間所定労働日=260日(365日-105日)
↓
年間所定労働時間=2,080時間(260日×8時間(所定労働時間))
↓
1週当たり労働時間=39時間54分(2,080時間÷365日×7)
(アンダーラインの部分が40時間以内になるように!)
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1 労働日数や労働時間に関する限度 |
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(1)労働日数の限度
対象期間が1年の場合は、労働日数は280日が限度です。
(※旧協定より1日や1週間の最長労働時間が増える場合は、旧協定より1日少ない日数が労働日数の限度となる場合があります。)
対象期間が3ヶ月を超え1年未満の場合は次の式により計算した日数となります。
(※小数点以下は切り捨て)
280日×対象期間の暦日数/365日
(2)1日及び1週間の労働時間の限度
1日の労働時間の限度は10時間、1週間の限度は52時間です。
ただし、対象期間が3箇月を超える場合は、次のいずれにも適合しなければなりません。
[1]労働時間が48時間を超える週を連続させることができるのは3週以下。
[2]対象期間を3箇月ごとに区分した各期間において、労働時間が48時間を超える週は、週の初日で数えて3回以下。
(3)連続して労働させる日数の限度
連続労働日数の限度は6日です。
ただし、特定期間(対象期間中で特に業務が繁忙な期間)における連続して労働させる日数の限度は、1週間に1日の休日が確保できる日数です。
(4)労働時間の特定
対象期間を1ヶ月以上の期間ごとに区分した場合、各期間の労働日数及び総労働時間を定める必要がありますが、最初の期間を除き協定時に全期間の労働日ごとの労働時間を示す必要はなく、区分された各期日の30日前までに労働日及び労働日ごとの労働時間を特定すればよいこととなっています。
なお、特定された労働日及び労働日ごとの労働時間を変更することはできません。
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2 対象労働者の範囲と割増賃金 |
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(1) 制度適用対象者のうち、下記の労働者については、規制があります。
[1] 年少者(満15歳~満17歳)
1日8時間、1週48時間を超えない範囲で適用できます。
なお、変形制をとらない場合でも1週40時間の範囲で1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合は他の日の労働時間を10時間まで延長できます。
[2]適用免除を申し出た妊産婦
適用できません。(妊産婦とは、妊娠中及び産後1年以内の女性労働者をいいます。)
[3]育児・介護等で特別の配慮を要する者
適用できますが、労働者が必要な時間を確保できるような配慮が必要です。
(2) 途中入社や退職者の実労働時間が次の計算式によって時間数がプラスとなった場合は、その分の割増賃金の支払いが必要です。
(就労期間における実労働時間)-(労働基準法第37条の規定に基づく割増賃金の支払いを要する時間)-(40×就労期間の暦日数/7)
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3 労使協定の締結(協定例) |
1年単位の変形労働時間制に関する協定 |
○○株式会社と従業員代表□□(又は△△労働組合)は、1年単位の変形労働時間制に関し、次のとおり協定する。 |
(勤務時間) |
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第1条 |
所定労働時間は、1年単位の変形労働時間制によるものとし、1年を平均して週40時間を超えないものとする。
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2 |
1日の所定労働時間は○時間○○分とし、始業・就業の時刻、休憩時間は次のとおりとする。
始業=午前○時○○分、終業=午後○時○○分、休憩=正午~午後1時 |
(起算日) |
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第2条 |
変形期間の起算日は平成○○年○月○日とする。
(休日) |
第3条 |
休日は別紙年間カレンダーのとおりとする。
(対象となる社員の範囲) |
第4条 |
本協定による変形労働時間制は、次のいずれかに該当する社員を除き、全従業員に適用する。
(1)18歳未満の年少者
(2)妊娠中または産後1年を経過しない女子社員のうち、本制度の適用免除を申し出た者
(3)育児や介護を行う社員、職業訓練または教育を受ける社員その他特別の配慮を要する社員に該当する者のうち、本制度の適用免除を申し出た者
(割増賃金) |
第5条 |
会社は、業務の都合上やむを得ない事情がある場合には、所定労働時間を超え、または所定休日に労働を命じることがある。その場合には労働基準法第37条(又は就業規則第○条)に基づく時間外割増賃金を支払う。 |
2 |
変形期間の途中で採用された者、出向等で転入した者、退職する者等については、その者が実際に労働した期間を平均して1週あたり40時間を超えた労働時間分について、労働基準法第32条の4の2の規定に基づく割増賃金を支払う。
(有効期間) |
第6条 |
本協定の有効期間は起算日から1年間とする。
平成○○年○月○○日 ○○株式会社 代表取締役 ○○○○ 印
従業員代表 □□□□ 印
(又は△△労働組合 執行委員長 △△△△ 印)
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4 就業規則の変更 |
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労働者が常時10名以上である事業場は、就業規則の作成・所轄労働基準監督署長への届出が義務付けられています。
1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、就業規則にその旨記載をし、変更をする必要があります。
なお、継続的に1年単位の変形制を採用する場合には、その初年度において就業規則の変更を行えば次年度以降の変更は必要ありませんが、年間カレンダーを就業規則の附属規定としている場合は、毎年度の改定が必要となります。
以下に就業規則の規定例を示します。
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(労働時間及び休憩時間)
第○条 |
当社は従業員代表との書面協定により、毎年○月○日を起算日とする1年単位の変形労働時間制を採用し、1週間の所定労働時間は1年間を平均して、1週間あたり40時間以内とする。 |
2 |
1日の所定労働時間は○時間○○分とし、始業・就業の時刻、休憩時間は次のとおりとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、または繰り下げることがある。
始業=午前○時○○分、終業=午後○時○○分、休憩=正午~午後1時
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3 |
第1項で定める書面協定においてその適用を受けない者とされた従業員の労働時間、始業、終業の時刻及び休憩時間については第△条の定めるところによる。
(休日)
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第○条 |
休日は従業員代表との1年単位の変形労働時間制に関する書面協定の定めるところにより、毎年○月○日を起算日とし、1週間ごとに1日以上、1年間に○○○日以上となるよう次の日を指定して、年間カレンダーに定め、毎年○月○日までに各人に通知する。 |
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(1)日曜日 (2)国民の休日(日曜日と重なった場合は翌日) (3)年末年始(12月○○日~1月○日) (4)夏季休日(○月○日~○月○日) (5)その他会社が指定する日
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2 |
前項の書面協定においてその適用を受けない者とされた従業員の休日については第△条の定めるところによる。 |
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なお、作成・変更された就業規則は、各労働者に配布するか職場の見やすい場所に掲示する等により、労働者に周知させる必要があります。
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5 労働基準監督署長への届出 |
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上記3による「1年単位の変形労働時間制に関する協定」は、年間カレンダー等を添付のうえ、所定の様式とともに所轄労働基準監督署長に届け出てください。
所定の様式はここからWord形式でダウンロードできます。
また、上記4により変更された就業規則については、労働者代表の意見書を添付したうえで、同様に所轄労働基準監督署長あて届け出る必要があります。
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☆参考☆ ~協定届の過半数代表者について~
1年単位の変形労働時間制に関する協定などの労使協定における労働者側の締結当事者や就業規則を提出する際の意見者は、その事業場に、パートタイマーなども含んだ全労働者の過半数で組織する労働組合(過半数労働組合)がある場合には、その労働組合となります。
過半数労働組合がない場合に限り、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)が締結当事者となります。
なお、過半数代表者は次の条件を満たす必要があります。
(1)労働基準法第41条第2号に規定する監督、管理者でない者
(2)労使協定等の締結者、就業規則への意見者としての過半数代表者の選出である旨を明らかにして行われる投票・挙手等で選出された者
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