労災保険は、日本国内の事業場において事業主に使用され賃金を支払われている労働者を対象とした制度であり、事業主、自営業者、家族従事者などの方や、海外の事業場に派遣された方は、本来は対象となりません。
しかしこれらの方の中には、その業務や通勤の実態、災害発生状況からみて労働者に準じて保護するにふさわしい方がいますし、派遣先の国における労災保険制度が十分でないために、わが国の労災保険による保護が必要な方がいます。
このためこれらの方に対して、労災保険本来の建前をそこなわない範囲で、労災保険の加入を認めようとするのが「特別加入制度」です。
特別加入制度は、強制的なものではなく、加入を希望する者の任意によるものですが、加入・脱退等について都道府県労働局長の承認が必要となります。
特別加入をすることができる者は、(1)中小事業主等、(2)一人親方等、(3)特定作業従事者、(4)海外派遣者の4種類に分類されます。
(1) 中小事業主等(第1種特別加入) イ 中小事業主 中小事業主(※)であって、その事業について労働保険に加入し、その事務を労働保険事務組合に委託する者 ※ 労働者数が常時300人以下(金融・保険・不動産・小売業の場合は50人以下、卸売・サービス業の場合は100人以下)であること ロ 事業主が行う事業に従事する者 労働者以外の者で、その事業に常態として従事する者(個人事業の場合は、通常、家族従事者。法人の場合は、代表者以外の役員のうち労働者性の認められない者)
(2) 一人親方等(第2種特別加入)
労働者を使用しないで、次のイ~トのいずれかの事業を行うことを常態とする者及び当該事業に常態として従事する労働者でないもの(家族従事者)であって、一人親方の団体の構成員である者 イ 自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業 ロ 建設の事業 ハ 漁船による水産動植物の採捕の事業 ニ 林業の事業 ホ 医薬品の配置販売の事業 ヘ 再生利用の目的となる廃棄物の収集、運搬、選別、解体等の事業 ト 船員法第一条に規定する船員が行う事業
チ 柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師が行う事業
リ 創業支援等措置に基づく事業
ヌ あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律に基づくあん摩
マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師が行う事業
ル 歯科技工士法第2条に規定する歯科技工士が行う事業
(3) 特定作業従事者(第2種特別加入)
次の作業に従事する者 イ 特定農作業従事者 ロ 指定農業機械作業従事者 ハ 職場適応訓練従事者 ニ 事業主団体等委託訓練従事者 ホ 危険有害作業の家内労働者 ヘ 労働組合等の常勤役員 ト 介護作業従事者
チ 芸能関係作業従事者
リ アニメーション制作作業従事者
ヌ ITフリーランス
(4) 海外派遣者(第3種特別加入)
日本国内で行われる事業(建設の事業は除く)から派遣されて、海外の支店、工場、現場、現地法人、提携先企業等国外で行われる事業に従事する労働者
(1) 中小事業主等の場合
特別加入の申請をしようとする事業主は、労働保険の事務を委託している労働保険事務組合を通じて、「特別加入申請書」を所轄の労働基準監督署を経由して都道府県労働局長に提出し、その承認を受けなければなりません。
(2) 一人親方等・特定作業従事者等の場合
特別加入の申請をしようとする一人親方等(自営業者)又は特定作業従事者等は、その所属する一人親方等・特定作業従事者の団体から、「特別加入申請書」を所轄の労働基準監督署を経由して都道府県労働局長に提出し、その承認を受けなければなりません。
(3) 海外派遣者の場合
海外派遣者について特別加入の申請をしようとする派遣元の団体または事業主は、「特別加入申請書」を所轄の労働基準監督署を経由して都道府県労働局長に提出し、その承認を受けなければなりません。
※ 特別加入をする方のうち、一定の方(粉じん、振動、鉛、有機溶剤等)については、加入時に健康診断を受けることが必要となります。
■特別加入者の保険料
特別加入者の保険料(1年分)は、本人の所得水準に見合った給付基礎日額(3500円~25000円)に365を乗じた額に、次の保険料率を乗じて算定します。
ア 中小事業主の場合
第一種特別加入保険料率(通常の労災保険率と同じ)〔平成30年4月1日改定〕
イ 一人親方等・特定作業従事者の場合
第二種特別加入保険料率〔令和4年7月1日施行〕
ウ 海外派遣者の場合
なお、年度途中に新たに特別加入者として承認された場合や年度途中で特別加入を脱退した場合は、特別加入期間に応じた月数分の保険料を算定します。
【お問い合わせ窓口】
・労働局(労働保険徴収課)TEL 022-299-8842