個別労働紛争解決物語



-はじめに-

 近年、企業における組織の再編、人事労務管理の個別化、労働者の就業意識・就業形態の多様化等を背景として、職場における個々の労働者と事業主との間で紛争が増加しています。その内容は、解雇、配置転換、賃下げ等労働条件に関するものから、いじめ・嫌がらせに関するものまで多岐にわたっています。
職場におけるトラブルは労使の話し合いによって自主的に解決されることが望ましいものですが現実的に難しいことが多く、また、最終的解決手段としては裁判制度がありますが、多くの時間と費用がかかってしまう現状にあります。
このため、平成13年10月1日から「個別労働関係紛争解決の促進に関する法律」が施行され、労働問題の高い専門性を有する労働局は、無料で個別労働紛争の解決援助サービスを提供し、個別労働紛争の未然の防止、迅速な解決を促進させているところです。
この物語においては、個別労働紛争の迅速な解決の一つの手法として、紛争調整委員会における「あっせん」を中心に個別労働紛争解決制度を紹介しています。

 

厚生労働省広島労働局


個別労働紛争解決物語(PDF:1.25MB)


■個別労働紛争とは

 個別労働紛争とは、労働条件その他労働関係に関する事項について、個々の労働者と事業主との間の紛争です。典型的な事例として、解雇(解雇無効、解雇による損害賠償等)、労働条件の切り下げ、配置転換、いじめ・嫌がらせにかかるものが挙げられます。しかし、労働者と事業主との間の紛争であっても、労働関係にない事項についての紛争、例えば、労働者と事業主の私的な関係における金銭の賃借に関する紛争などについては、個別労働紛争には含まれません。
また、個別労働紛争は、「個々の労働者」が一方の当事者となる紛争であります。したがって、労働組合、労働者の家族、労働者が死亡した場合の相続人等が当事者となる紛争は、個別労働紛争には該当しません。
なお、個別労働関係紛争事案は、労働者側からの解雇、配置転換、賃下げ、いじめ・嫌がらせなどだけでなく、企業側から従業員の職場規律保持、各種費用の返還請求等の事案も該当します。

 

■個別労働紛争が生じたら

 「個別労働関係紛争解決の促進に関する法律」において、個別労働紛争が生じたら、労使双方は、早期に、かつ、誠意をもって、自主的な解決を図るよう努めなければならないとされています。
個別労働紛争解決制度は、個別的労働紛争に関する裁判外紛争解決制度として位置づけられていますので、紛争当事者の自主的な解決を促進するものです。個別労働紛争解決処理システムは、

 

(1) 総合労働相談コーナーにおける、法令の解釈、制度の案内等の情報提供・個別相談
(2) 問題点を指摘し、解決の方向性を示唆する労働局長の助言・指導
(3) 広島紛争調整委員会あっせん委員が主張の要点を確かめ、双方に働きかけ、話し合いを促進することにより紛争の解決を図るあっせん。

 

の3つがあります。
この制度を活用して、早期解決に向けた支援を受けることができます。

 


 

あっせんにより、つぎのようなトラブルが解決されました

ケース1/退職金に係る事案(事業主・労働者双方からの申請)

 事業主は、労働者AとBの退職に際し、退職金制度がないことを踏まえ、退職金の支給を口頭で約束し、支払交渉を行ったが、度重なる交渉で感情的な対立も激しくなり、金額の隔たりも大きく、当事者同士の話合いが不可能な状況になり、事業主及び労働者があっせん申請を行った。
あっせんの結果、Aに○万円、Bに△万円支払うことで合意が成立した。

 

■事業主のコメント
労働者の業務成績に対してどのくらいの退職金を払ってよいか見当がつかない上、労働者との度重なる交渉で、仕事も手につかないほど、精神的に疲労していた。公正中立な立場で、迅速に話合いをつけてくれ、仕事にも専念できるようになって感謝している。

■労働者のコメント
話合いがつかず、退職金がちゃんと支払われるか心配だったが、納得できる金額で話合いがつき、感謝している。

 

ケース2/普通解雇に係る事案(労働者からの申請)

 申請人は、事務担当パートとして働いていたが、突然、製造現場への異動を通知された。申請人は当初の契約どおり事務担当パートの継続を要望したが聞き入れてもらえず、○月□日付け解雇予告を受けた。これは申請人を追い出す目的であったと感じたため、経済的・精神的苦痛に対する補償金○○万円の支払いを求めたが、事業主が応じなかったため、あっせん申請を行った。
あっせん委員が双方の主張を調整した結果、△△万円を支払うことで合意した。

 

■労働者のコメント
会社側と円満に合意することが出来てよかった。
新たな就職に向けて区切りがついた。

 

ケース3/労働者派遣に係る事案(労働者からの申請)

 申請人は派遣会社と1年間の有期契約を締結していたが、派遣先の都合により10ヶ月間で派遣契約が打ち切りとなり、その後派遣会社は、別の派遣先を紹介することなく放置し、1年の契約期間到来とともに雇用期間満了による退職扱いとされた。派遣契約の終了後、放置された期間について、派遣会社に補償として2か月分賃金の支払を求めてあっせん申請を行った。
あっせん委員により、派遣契約の打切りがあったとしても、雇用期間を一方的に短縮できないこと等を踏まえ両者の歩み寄りを促したところ、派遣会社は申請人に○万円の解決金を支払うことで合意が成立した。

 

■労働者のコメント
個々の労働者は企業と個別労働関係紛争について交渉しようとしても企業から拒否されるとどうしようもない状況である。そのような中で、今回第三者機関である紛争調整委員会のあっせん委員に企業との話し合いに立ち会って頂き、解決金の支払という合意が出来たことに大変感謝している。


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