じん肺管理区分決定申請をする皆様へ
◎じん肺とは
じん肺とは、じん肺法において「粉じんを吸入することによって肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病」と定義され、トンネル工事による土ぼこりや金属のアーク溶接による溶接ヒュームなどの粉じん作業によって発生する無機物又は鉱物性の粉じんを吸い続けることにより、肺の組織が線維化し硬くなることで呼吸が困難になる疾病です。
じん肺は一般に不可逆性のものであり、粉じん作業を止めた後も病気が進行し、肺炎等の感染症にかかりやすくなったり、肺がんなどの合併症を引き起こすことがあります。
〈1〉じん肺健康診断について
じん肺健康診断は、じん肺法に基づいて事業者が、粉じん作業に従事している労働者等に対して実施すべき健康診断であり、「就業時健康診断」、「定期健康診断」、「定期外健康診断」、「離職時健康診断」があり、胸部エックス線写真撮影検査、肺機能検査等を受けることになっています。
じん肺の定期健康診断の実施頻度は下表のとおりです。また、定期健康診断以外の実施時期については、福井労働局又は最寄りの労働基準監督署にご確認ください。
粉じん作業従事との関連 | じん肺管理区分 | 実施頻度 |
常時粉じん作業に従事している | 管理1 | 3年以内ごとに1回 |
管理2 | 1年以内ごとに1回 | |
管理3(イ、ロ) | ||
常時粉じん作業に従事したことがあるが、 現在は粉じん作業以外の作業に従事している |
管理2 | 3年以内ごとに1回 |
管理3(イ、ロ) | 1年以内ごとに1回 |
〈2〉じん肺管理区分について
じん肺管理区分は、じん肺健康診断の結果に基づき、じん肺の程度を管理1、管理2、管理3イ、管理3ロ及び管理4の5段階に区分したものです。管理1はじん肺の所見がないという区分で、管理2以上はじん肺の所見があるということを示しており、数字が大きくなるに従いじん肺が進行していることになります。
じん肺管理区分は事業者または労働者(粉じん作業に従事している労働者で、過去に粉じん作業に従事していた労働者を含む。)の申請に基づき都道府県労働局長が決定します。
≪じん肺管理区分決定の流れ≫
じん肺管理区分は事業者または労働者(粉じん作業に従事している労働者で、過去に粉じん作業に従事していた労働者を含む。)の申請に基づき都道府県労働局長が決定します。
≪じん肺管理区分決定の流れ≫
じん肺管理区分 | じん肺健康診断の結果 | |
管理1 | じん肺の所見がないと認められるもの | |
管理2 | エックス線写真の像が第1型で、じん肺による著しい肺機能障害がないと認められるもの | |
管理3 | イ | エックス線写真の像が第2型で、じん肺による著しい肺機能障害がないと認められるもの |
ロ | エックス線写真の像が第3型又は第4型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1以下のものに限る。) で、じん肺による著しい肺機能障害がないと認められるもの |
|
管理4 | 1 エックス線写真の像が第4型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1を超えるものに限る。)と認めら れるもの 2 エックス線写真の像が第1型、第2型、第3型又は第4型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1以下 のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能障害があると認められるもの |
型 | エックス線写真の像 |
第1型 | 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの |
第2型 | 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの |
第3型 | 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの |
第4型 | 大陰影があると認められるもの |
〈3〉じん肺管理区分の決定対象となる粉じん作業について
じん肺管理区分の決定対象となる粉じん作業は、じん肺法施行規則別表により定められています。じん肺管理区分の決定対象となる粉じん作業(じん肺法施行規則別表) | |
1 | 土石、岩石又は鉱物(以下「鉱物等」という。)(湿潤な土石を除く。)を掘削する場所における作業(次号に掲げる作業を除く。)。 ただし、次に掲げる作業を除く。 イ 坑外の、鉱物等を湿式により試錐する場所における作業 ロ 屋外の、鉱物等を動力又は発破によらないで掘削する場所における作業 |
1の2 | ずい道等(ずい道及びたて坑以外の坑(採石法(昭和25年法律第291号)第2条に規定する岩石の採取のためのものを除く。)をい う。以下同じ。)の内部の、ずい道等の建設の作業のうち、鉱物等を掘削する場所における作業 |
2 | 鉱物等(湿潤なものを除く。)を積載した車の荷台を覆し、又は傾けることにより鉱物等(湿潤なものを除く。)を積み卸す場所にお ける作業(次号、第3号の2、第9号又は第18号に掲げる作業を除く。) |
3 | 坑内の、鉱物等を破砕し、粉砕し、ふるい分け、積み込み、又は積み卸す場所における作業(次号に掲げる作業を除く。)。 ただし、次に掲げる作業を除く。 イ 湿潤な鉱物等を積み込み、又は積み卸す場所における作業 ロ 水の中で破砕し、粉砕し、又はふるい分ける場所における作業 ハ 設備による注水をしながらふるい分ける場所における作業 |
3の2 | ずい道等の内部の、ずい道等の建設の作業のうち、鉱物等を積み込み、又は積み卸す場所における作業 |
4 | 坑内において鉱物等(湿潤なものを除く。)を運搬する作業。 ただし、鉱物等を積載した車を牽引する機関車を運転する作業を除く。 |
5 | 坑内の、鉱物等(湿潤なものを除く。)を充てんし、又は岩粉を散布する場所における作業(次号に掲げる作業を除く。) |
5の2 | ずい道等の内部の、ずい道等の建設の作業のうち、コンクリート等を吹き付ける場所における作業 |
5の3 | 坑内であって、第1号から第3号の2まで又は前二号に規定する場所に近接する場所において、粉じんが付着し、又は堆積した 機械設備又は電気設備を移設し、撤去し、点検し、又は補修する作業 |
6 | 岩石又は鉱物を裁断し、彫り、又は仕上げする場所における作業(第13号に掲げる作業を除く。)。 ただし、次に掲げる作業を除く。 イ 火炎を用いて裁断し、又は仕上げする場所における作業 ロ 設備による注水又は注油をしながら、裁断し、彫り、又は仕上げする場所における作業 |
7 | 研磨材の吹き付けにより研磨し、又は研磨材を用いて動力により、岩石、鉱物若しくは金属を研磨し、若しくはばり取りし、若しく は金属を裁断する場所における作業(前号に掲げる作業を除く。)。ただし、設備による注水又は注油をしながら、研磨材を用い て動力により、岩石、鉱物若しくは金属を研磨し、若しくはばり取りし、又は金属を裁断する場所における作業を除く。 |
8 | 鉱物等、炭素を主成分とする原料(以下「炭素原料」という。)又はアルミニウムはくを動力により破砕し、粉砕し、又はふるい分け る場所における作業(第3号、第15号又は第19号に掲げる作業を除く。)。ただし、次に掲げる作業を除く。 イ 水又は油の中で動力により破砕し、粉砕し、又はふるい分ける場所における作業 ロ 設備による注水又は注油をしながら、鉱物等又は炭素原料を動力によりふるい分ける場所における作業 ハ 屋外の、設備による注水又は注油をしながら、鉱物等又は炭素原料を動力により破砕し又は粉砕する場所における作業 |
9 | セメント、フライアッシュ又は粉状の鉱石、炭素原料若しくは炭素製品を乾燥し、袋詰めし、積み込み、又は積み卸す場所におけ る作業(第3号、第3号の2、第16号又は第18号に掲げる作業を除く。) |
10 | 粉状のアルミニウム又は酸化チタンを袋詰めする場所における作業 |
11 | 粉状の鉱石又は炭素原料を原料又は材料として使用する物を製造し、又は加工する工程において、粉状の鉱石、炭素原料又 はこれらを含む物を混合し、混入し、又は散布する場所における作業(次号から第14号までに掲げる作業を除く。) |
12 | ガラス又はほうろうを製造する工程において、原料を混合する場所における作業又は原料若しくは調合物を溶解炉に投げ入れ る作業。ただし、水の中で原料を混合する場所における作業を除く。 |
13 | 陶磁器、耐火物、けい藻土製品又は研磨材を製造する工程において、原料を混合し、若しくは成形し、原料若しくは半製品を乾 燥し、半製品を台車に積み込み、若しくは半製品若しくは製品を台車から積み卸し、仕上げし、若しくは荷造りする場所における 作業又は窯の内部に立ち入る作業。ただし、次に掲げる作業を除く。イ 陶磁器を製造する工程において、原料を流し込み成形 し、半製品を生仕上げし、又は製品を荷造りする場所における作業ロ 水の中で原料を混合する場所における作業 |
14 | 炭素製品を製造する工程において、炭素原料を混合し、若しくは成形し、半製品を炉詰めし、又は半製品若しくは製品を炉出し し、若しくは仕上げする場所における作業。ただし、水の中で原料を混合する場所における作業を除く。 |
15 | 砂型を用いて鋳物を製造する工程、砂型を造型し、砂型を壊し、砂落としし、砂を再生し、砂を混練し、又は鋳ばり等を削り取る 場所における作業(第七号に掲げる作業を除く。)。ただし、設備による注水若しくは注油をしながら、又は水若しくは油の中で、 砂を再生する場所における作業を除く。 |
16 | 鉱物等(湿潤なものを除く。)を運搬する船舶の船倉内で鉱物等(湿潤なものを除く。)をかき落とし、若しくはかき集める作業又は これらの作業に伴い清掃を行う作業(水洗する等粉じんの飛散しない方法によって行うものを除く。) |
17 | 金属その他無機物を製錬し、又は溶融する工程において、土石又は鉱物を開放炉に投げ入れ、焼結し、湯出しし、又は鋳込み する場所における作業。ただし、転炉から湯出しし、又は金型に鋳込みする場所における作業を除く。 |
18 | 粉状の鉱物を燃焼する工程又は金属その他無機物を製錬し、若しくは溶融する工程において、炉、煙道、煙突等に付着し、若し くは堆積した鉱さい又は灰をかき落とし、かき集め、積み込み、積み卸し、又は容器に入れる場所における作業 |
19 | 耐火物を用いて窯、炉等を築造し、若しくは修理し、又は耐火物を用いた窯、炉等を解体し、若しくは破砕する作業 |
20 | 屋内、坑内又はタンク、船舶、管、車両等の内部において、金属を溶断し、又はアークを用いてガウジングする作業 |
20の2 | 金属をアーク溶接する作業 |
21 | 金属を溶射する場所における作業 |
22 | 染土の付着した藺草を庫入れし、庫出しし、選別調整し、又は製織する場所における作業 |
23 | 長大ずい道(著しく長いずい道であつて、厚生労働大臣が指定するものをいう。)の内部の、ホッパー車からバラストを取り卸し、 又はマルチプルタイタンパーにより道床を突き固める場所における作業 |
24 | 石綿を解きほぐし、合剤し、紡績し、紡織し、吹き付けし、積み込み、若しくは積み卸し、又は石綿製品を積層し、縫い合わせ、切 断し、研磨し、仕上げし、若しくは包装する場所における作業 |
〈4〉じん肺管理区分の決定申請の種類と申請に必要な書類
(1)事業者による申請① 事業者によるエックス線写真等の提出(じん肺法第12条)≪事業者が行う一般的な申請です≫
事業者は、じん肺健康診断を行ったとき、その診断において労働者が「じん肺の所見がある」とされた場合は、遅滞なく「じん肺管理
区分の決定」のために必要なエックス線写真等を都道府県労働局長あてに提出しなければなりません。
申請に必要な書類
Ⅰ.エックス線写真等の提出書【じん肺則様式第2号(第13条関係)】
Ⅱ.じん肺健康診断結果証明書【じん肺則様式第3号(第13条、第20条、第22条関係)】
Ⅲ.エックス線写真
Ⅳ.撮像表示条件確認表 〔DR(FPR)撮像表示条件確認表〕 又は 〔CR撮像表示条件確認表〕
《注意》
エックス線写真は直接撮影による胸部全域が写っている写真でなければなりません。また、エックス線写真の撮影装置に応じて、
撮像条件を満たさなければなりません。
なお、エックス線写真の撮影装置は医療機関毎に異なるため、撮像表示条件確認表のは、エックス線写真を撮影した医療機関に
記入してもらいエックス線写真と一緒に提出してください。
・半導体平面検出器を搭載した一般撮影装置による写真(DR(FPD)写真)の場合
→DR(FPR)撮像表示条件確認表を添付する
・コンピューテッドラジオグラフィーによる写真の場合
→CR撮像表示条件確認表を添付する
※ 提出されたエックス線写真が条件に合致しない場合、再提出を求める場合があります。
② 随時申請(じん肺法第16条)≪事業者が行う例外的な申請です≫
事業者は、いつでも、常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者であった者について、じん肺健康診
断を行い、都道府県労働局長に「じん肺管理区分の決定申請」をすることができます。
◇ 特別申請について
過去にじん肺管理区分申請を行い、都道府県労働局長から管理2以上のじん肺管理区分決定をされた者が、その後のじん肺健康
診断を行ったときの診断において、「じん肺の所見がない(=管理1)」と診断された場合、管理1とするためには都道府県労働局長あ
てにじん肺管理区分決定申請を行い、管理区分を決定しなければなりません。
申請に必要な書類
Ⅰ.じん肺管理区分決定申請書【じん肺則様式第6号(第20条関係)】
Ⅱ.じん肺健康診断結果証明書【じん肺則様式第3号(第13条、第20条、第22条関係)】
Ⅲ.エックス線写真
Ⅳ.撮像表示条件確認表 〔DR(FPR)撮像表示条件確認表〕 又は 〔CR撮像表示条件確認表〕
(2)労働者又は労働者であった者による申請
① 随時申請(じん肺法第15条)≪労働者が行う申請です≫
常時粉じん作業に従事する労働者又は常時粉じん作業に従事する労働者であった者は、いつでも、じん肺健康診断を受けて、都道
府県労働局長に「じん肺管理区分の決定申請」をすることができます。
申請に必要な書類
Ⅰ.じん肺管理区分決定申請書【じん肺則様式第6号(第20条関係)】
Ⅱ.じん肺健康診断結果証明書【じん肺則様式第3号(第13条、第20条、第22条関係)】
※ 「粉じん作業の職歴」欄が未記入の場合は、粉じん作業の職歴及び粉じん作業以外の職歴〔福井局様式〕
を別途提出してください。
Ⅲ.エックス線写真
Ⅳ.撮像表示条件確認表 〔DR(FPR)撮像表示条件確認表〕 又は 〔CR撮像表示条件確認表〕
◇ 事業者による証明が得られない場合
じん肺管理区分の決定は、原則、事業者による証明がなければ行えませんので、会社が倒産して代表者が行方不明である等、
やむを得ない理由により事業者証明を得ることができない場合は、福井労働局にご相談ください。
〈5〉申請先
福井労働局 労働基準部 健康安全課
〒910-8559
福井県福井市春山1丁目1番54号
福井春山合同庁舎9階
電話 0776-22-2657 |
事業場の所在地を管轄する都道府県労働局
(2)労働者又は労働者であった者による申請
申請者の住所地を管轄する都道府県労働局
〈6〉じん肺管理区分の決定を受けた事業者のとるべき措置
事業者による申請〔エックス線写真等の提出書(じん肺法第12条)及び随時申請(じん肺法第16条)〕によりじん肺管理区分の決定をされた場合、事業者はじん肺管理区分を労働者に通知しなければなりません。また、管理区分に応じて下表の措置を実施する必要があります。
管理区分 | 事業者が講ずべき措置 | 備 考 |
管理1 | 就業上の特別な措置は不要 | |
管理2 | 粉じんばく露の低減措置(努力義務) | |
管理3イ | ||
労働局から作業転換の勧奨を受けた場合 →粉じん作業からの転換(努力義務) |
転換手当(注2) 30日分 |
|
管理3ロ | 粉じん作業からの転換(努力義務) | |
労働局から作業転換の指示を受けた場合 →粉じん作業からの転換 |
転換手当60日分 | |
管理2又は管理3で 合併症にり患(注1) |
療養 (休業とするか、就業しながらの治療とする かの選択は医師の判断に基づく) |
|
管理4 |
及び「原発性肺がん」の6つです。
(注2) 転換手当とは、労働者が粉じん作業から転換することを促進し、永年親しんできた職場を離れることに対する見舞金の意味合いとし
て支払う手当のことで、平均賃金を元に計算します。労働契約の期間満了による退職等の場合は支給の対象にはなりません。
〈7〉じん肺管理区分の決定を受けている労働者が退職するとき
粉じん作業に従事した事業場に勤務している間は、事業場において定期的なじん肺健康診断を実施して、労働者の健康管理を実施する必要がありますが、事業場を退職した後は、労働者本人が自身でじん肺の進行状態を把握していく必要があります。そのため、じん肺管理区分が「管理2」または「管理3イ、ロ」の決定を受けている労働者が退職するときは、事業者がじん肺の健康管理手帳の交付申請の事務を代行していただき、退職労働者の健康管理手帳の取得にご協力をお願いします。
健康管理手帳の交付申請手続きについては「健康管理手帳の交付申請をする皆様へ」のページをご参照ください。
この記事に関するお問い合わせ先
労働基準部 健康安全課 TEL : 0776-22-2657