厚生労働省 静岡労働局

 

 

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労働者派遣における労働基準法等の適用について




○労働者派遣と労務管理について

  労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(労働者派遣法)は昭和61年に制定され、その後平成16年の同法の改正により、製造業務への労働者派遣が解禁され、これに伴い、製造業の現場においても請負とともに労働者派遣の活用が増えてきました。

  こうした派遣労働者の労働時間管理や就労場所における安全衛生の確保などについて、派遣元事業主と派遣先事業主の責任分担を明確にし、それぞれが適正な雇用管理を行うことがますます重要となっています。

  労働者派遣とは、派遣元事業主と派遣先事業主との労働者派遣契約に基づき、派遣元が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令の下で派遣先のために労働に従事させることを指します。ですから、基本的な雇用関係は派遣元事業主とその事業主に雇用される労働者との間にあることになりますが、その労働者が実際に働く場所が、派遣元事業主の管理が及ばない場所であることが多く、そうした労働者を保護するためには、実際にその労働者に就労の指揮命令をし、働く場所を管理する者(この場合では派遣先事業主)が使用者としての責任を負った方がよいものを、法律の面で「特例適用」としています。

  特例適用の対象とされている法律は、労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法及び作業環境測定法です。
  ここで注意が必要なのは、この適用については、労働者派遣という就業形態に対して行われるものであることから、労働者派遣事業の実施について許可または届出をした適正な派遣元事業主が行う労働者派遣だけではなく、それ以外の不適法な事業形態(いわゆる偽装請負などが該当します)についても適用されることです。

  例えば、自己の雇い主が締結した請負契約にて他の事業場の構内にて就労する労働者が、元請事業場の指揮命令の下、元請事業場に雇用される労働者と渾然一体となって作業を行っている場合など、形式的には請負契約であっても実態が派遣であると判断されれば、この特例が適用されることになりますので注意が必要となります。

  なお、この労働者派遣と請負との違いについては、厚生労働省で区分基準を示しています。この基準の定める一定要件を満たさないものは、労働者派遣として取り扱うこととされています。

○労働基準法における特例適用について

 労動基準法の適用がある条文と派遣元、派遣先の責任分担一覧表

適用条項 ( )内は条文

派遣元

派遣先

備  考

第1章 総則

均等待遇(3)

 


男女同一賃金の原則(4)

 


 


強制労働の禁止(5)

 


中間搾取の排除(6)

(何人も)

 


公民権行使の保障(7)

 


 


第2章 労働契約

この法律違反の契約(13)、契約期間(14)

 


 


労働条件の明示(15)、賠償予定の禁止(16)

 


 


前借金相殺の禁止(17)、強制貯金(18)

 


 


解雇制限(19)、解雇の予告(20,21)

 


労働者の解雇権は派遣元

使用証明(22)、金品の返還(23)

 


 


第3章 賃金

賃金の支払(24)、非常時払制(25)

 


 


休業手当(26)、出来高払制の保障給(27)

 


 


第4章 労働時間、休憩、休日及び休暇

労働時間(32~33)

 


変形労働時間の定めは派遣元

休憩(34)

 


 


休日(35)

 


 


時間外及び休日の労働(36)

 


36協定の締結・届出は、」派遣元

時間外、休日及び深夜の割増賃金(37)

 


 


年次有給休暇(39)

 


 


労働時間及び休憩の特例(40)

 


 


適用の除外(41)

 


監視断続業務の許可を含む

第6章 年少者

最低年齢、年少者の証明書(57)

 


 


労働時間及び休日(60)

 


 


深夜業(61)

 


 


危険有害業務の就業制限(62)、坑内労働の禁止(63)

 


 


帰郷旅費(64)

 


 


第6章の2 女性

坑内労働の禁止(64の2)

 


 


妊産婦等に係る危険有害業務の就業制限(64の3)

 


 


産前産後(65)

 


休業に関するもの

産前産後(66)

 


時間外・休日労働、深夜業に係るもの

育児時間(67)

 


 


生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置(68)

 


 


第7章 技能者の養成

徒弟の弊害排除(69)

 


職業訓練に関する特例(70~74)

 


 


第8章 災害補償

災害補償(75~87)

 


いずれについても派遣元

第9章 就業規則

作成及び届出の義務(89)、作成の手続(90)

 


 


制裁規定の制限(91)

 


 


法令及び労働契約との関係(92)

 


 


効力(93)

 


 


第10章 寄宿舎

寄宿舎(94~96の3)

 


いずれについても派遣元

第12章 雑則

法令等の周知、義務(106)

派遣先は就業規則を除く

労働者名簿(107)、賃金台帳(108)

 


 


記録の保存(109)

 


第13章 罰則

罰則(117~120)、両罰規定(121)

 


 労働基準法において、労働時間の適用については派遣先が労働基準法上の使用者となり、時間外・休日労働、変形労働時間制の労使協定等、年次有給休暇の付与、産前産後休業については派遣元(育児時間、生理日の就業については派遣先)が労働基準法上の使用者となります。

  したがって、派遣先と派遣元との間の労働者派遣契約において、一日8時間を超えてあるいは法定休日に就労することができる旨定めていたとしても、派遣元において時間外・休日労働の協定(36協定)の締結・届出をしていなければ、派遣先は派遣労働者に対して時間外労働や休日労働を命じることはできなくなります。

  ですから、派遣を受け入れる事業場(派遣先)においては、派遣元との契約時に当該労働者に適用される有効な36協定の存在について、変形労働時間制の適用状況と併せて確認をする必要があります。

  また、労働者を派遣する事業場(派遣元)においても、派遣先事業場の労働条件や作業環境についてきちんと説明を受けておく必要があると言えるでしょう。

○労働安全衛生法における特例適用について

 労動安全衛生法の適用がある条文と派遣元、派遣先の責任分担一覧表

適用条項 ( )内は条文

派遣元

派遣先

備  考

第1章 総則

事業者の責務(3-1)

職場の安全衛生確保

労働者の責務(4)

事業者等の災害防止措置への協力

共同企業体(5)

 


第3章 安全衛生管理体制

統括安全衛生管理者(10)

事業場規模等によって規定されている条文においては、「常時使用する労働者」数に派遣労働者数も含めること。

安全管理者(11)

 


衛生管理者(12)

安全衛生推進者等(12の2)

産業医等(13)

作業主任者(14)

 


統括安全衛生責任者(15)

 


元方安全衛生管理者(15の2)

 


店社安全衛生管理者(15の3)

 


安全衛生責任者(16)

 


安全委員会(17)

 


衛生委員会(18)

安全衛生委員会(19)

第4章 労働者の危険または健康障害を防止するための措置

事業者の構ずべき措置(20~25の2)

 


 


労働者の遵守すべき事項(26)

 


 


元方事業者の構ずべき措置等(29、29の2)

 


 


特定元方事業者等の構ずべき措置等(30、30の2)

 


 


注文者の構ずべき措置(31の2)

 


 


第5章 機械等及び有害物に関する規制

定期自主検査(45)

 


 


化学物質の有害性の調査(57の3~58)

 


 


第6章 労働者の就業に当たっての措置

安全衛生教育(59-1)

 


雇入れ時

安全衛生教育(59-2)

作業内容変更時

安全衛生教育(59-3、60の2)

 


危険有害業務への就業時(特別教育)

職長教育(60)

 


 


就業制限(61-1)

 


 


中高年齢者についての配慮(62)

 


第7章 健康の保持増進のための措置

作業環境測定(65)

 


 


作業環境測定結果の評価(65の2)

 


 


作業の管理(65の3)

 


 


作業時間の制限(65の4)

 


 


健康診断(66-1)

 


一般健康診断

健康診断(66-2,-3)

 


有害業務に関する健康診断

健康診断の結果の記録(66の3)

 


健康診断の結果についての医師等からの意見聴取(66の4)


 


健康診断実施後の措置(66の5)

 


病者の就業禁止(68)

 


 


健康教育等(69)

 


体育活動等についての便宜供与(70)

 


第7章の2 快適な職場環境の形成のための措置

快適職場の形成のための事業者の措置(71の2)

 


 


第9章 安全衛生改善計画等

安全衛生改善計画(78~80)

 


 


第10章 監督等

計画の届出等(88~89の2)

 


 


※派遣労働者が被災した場合、派遣先及び派遣元事業者は、それぞれ「労働者死傷病報告(法第100条第1項 労働安全衛生規則第97条)」を所轄労働基準監督署に提出しなければなりません。
また、派遣先事業者は、その写しを派遣元事業者に送付することが必要です。(労働者派遣法施行規則第42条)

 


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